大手ゼネコン「竹中工務店」の河井辰巳(かわい・たつみ)氏が注目を集めています。
河井氏は、大阪・関西万博のシンボルとなった「大屋根リング」などの建設工事で、竹中工務店側の総括作業所長を務めていた人物です。
2026年8月19日、大阪・関西万博の会場工事費をめぐる背任の疑いで大阪府警に逮捕されたことが報じられ、一気に名前が知られることになりました。
しかし、今回の報道で突然名前が出てきた人物というわけではありません。
過去の竹中工務店の資料や建設業界の報道を確認すると、大型病院の建設で作業所長を務めたほか、大阪本店の技術・工務部門で責任ある立場を経験し、その後、世界的にも注目された大阪・関西万博の建設工事を取りまとめていたベテラン技術者であることが分かります。
また、逮捕後の報道では、当初明らかになった約1370万円の水増し請求疑惑だけでなく、別の万博関連工事についても水増し請求の疑いがあることや、自宅・マンション・親族が経営する飲食店などの改修工事との関連について捜査が進められていることが明らかになっています。
ここでは、河井辰巳氏の経歴や竹中工務店での役職、大阪・関西万博でどのような仕事をしていたのか、そして2026年8月21日までに報じられた事件の最新情報について整理します。
| 氏名 | 河井辰巳(かわい・たつみ) |
|---|---|
| 年齢 | 61歳(2026年8月時点) |
| 勤務先 | 株式会社竹中工務店 |
| 主な職種 | 建築施工・工務関連 |
| 過去の主な役職 | 作業所長、大阪本店技術部長、大阪本店工務部長、総括作業所長など |
| 主な担当工事 | 大阪国際がんセンター、大阪・関西万博会場整備工事など |
| 万博での役割 | 竹中工務店JVの総括作業所長 |
河井氏の出身地や出身高校、出身大学などについては、現時点で信頼できる公開資料から確認できる情報がほとんどありません。
一方、竹中工務店における施工関係の経歴については複数の公開資料から確認することができます。
河井辰巳氏は、長年にわたって竹中工務店の建築施工部門に携わってきた人物です。
大型建築物の作業所長を務めた後、大阪本店の技術部門や工務部門でも責任ある立場を経験し、最終的には大阪・関西万博という巨大プロジェクトの総括作業所長を任されました。
竹中工務店は鹿島建設、大林組、大成建設、清水建設と並び、「スーパーゼネコン」と呼ばれる日本を代表する大手建設会社の一つです。
その会社で大規模工事の作業所長や総括作業所長を任されるには、施工管理、工程管理、安全管理、品質管理、予算、資材調達、協力会社との調整などについて豊富な現場経験が求められます。
河井氏が複数の大規模プロジェクトで重要な役割を務めてきたことからも、竹中工務店の施工部門で経験を積んできた技術者だったことがうかがえます。
河井辰巳氏の名前が竹中工務店の資料で確認できる代表的なプロジェクトの一つが、現在の大阪国際がんセンターです。
大阪国際がんセンターは大阪市中央区にある大規模ながん専門医療機関で、建物は地下2階・地上13階、延床面積約6万8000平方メートルという大規模施設です。
工事期間は2014年6月から2016年11月。
竹中工務店の建築作品資料では、このプロジェクトの「作業所長」として河井辰巳氏の名前が記載されています。
病院建築は一般的なオフィスビルとは異なり、医療設備や高度な空調・電気設備、安全性、衛生管理、患者や医療スタッフの動線など、非常に複雑な条件が求められます。
そのような大型病院の建設で作業所長を担当していたことからも、河井氏が竹中工務店の施工部門で高い実務経験を持っていたことがうかがえます。
公開されている企業人事情報では、河井辰巳氏は竹中工務店の大阪本店技術部長を務め、その後、2018年11月には大阪本店工務部長に就いたことが確認されています。
現場の作業所長だけでなく、本店側で工事や技術を管理する立場も経験していたことになります。
スーパーゼネコンでは、多数の建設現場を同時に動かしています。
工務部門は、それぞれの現場の工程や施工計画、コスト、資材、技術的課題などを支援・管理する重要な部署です。
河井氏は現場と本店の双方で経験を積んだ後、再び大型プロジェクトの第一線に立ち、大阪・関西万博の建設工事に関わることになります。

その後の報道では、河井氏は大阪・関西万博の工事について、入札が行われていた2021年ごろから関わっていたとされています。
万博会場の工事は2023年以降本格化しましたが、その前段階となる入札や施工計画の時期から関与していたことになります。
完成間近の現場だけを担当したのではなく、プロジェクトの比較的早い段階から工事に携わっていたとみられます。
河井辰巳氏の経歴の中で最も注目されるのが、2025年大阪・関西万博の会場建設です。
万博会場の象徴として建設されたのが、巨大な木造建築「大屋根リング」でした。
大屋根リングは全周約2キロに及ぶ巨大な構造物で、世界最大の木造建築物としてギネス世界記録にも認定されました。
工事は複数の工区に分けて行われ、このうち西側約700メートルを含む西工区を、竹中工務店を中心とする共同企業体(JV)が担当しました。
河井氏は、この竹中工務店JVで総括作業所長を務めていました。
「総括作業所長」という名称は一般にはあまり聞き慣れないかもしれません。
簡単に言えば、大規模建設プロジェクトの現場全体を取りまとめる責任者です。
大規模工事では、元請け企業だけでなく数多くの専門工事会社や下請け会社が参加します。
総括作業所長には、工事全体を俯瞰しながら、工程、安全、品質、施工方法、資材搬入、人員配置、発注、協力会社との調整などを統括する役割があります。
大阪・関西万博のような巨大プロジェクトの場合、通常の建設工事以上に多くの企業や関係者との調整が必要になります。
その後の事件報道では、河井氏は万博工事で発注や調達を取り仕切る立場にあったとも報じられており、現場で大きな権限を持つ立場だったことがうかがえます。

竹中工務店JVが担当した大屋根リング西工区では、当初の予定より約2か月早く基本構造の上棟を終えたことが建設業界で注目されました。
その背景には、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)や3Dモデルを利用した施工計画、工場で部材をできるだけ加工してから現場に運ぶ「オフサイト化」、デジタル加工技術などがありました。
河井氏自身も当時の取材で、こうした新しい施工技術について説明しています。
大屋根リングは、日本の伝統的な木造建築に用いられてきた「貫」の考え方を現代の技術によって発展させた構造が特徴です。
竹中工務店JVでは約30万点に上る部材を効率的に組み立てるため、生産性向上を目的とした施工計画なども取り入れられました。
河井氏は総括作業所長として、こうした施工方法について建設業界のメディアなどの取材にも応じていました。
河井辰巳氏は、大屋根リングそのものの施工だけでなく、建設現場で働く人たちの環境改善についても取材を受けています。
万博会場のある大阪・夢洲は、夏場には強い日差しや地面からの照り返しを受ける厳しい環境となります。
竹中工務店の万博工事現場では、熱中症対策として凍らせて飲む飲料の配布や、サーモグラフィーを搭載したドローンによる温度把握など、新しい技術を利用した対策が行われていました。
また、作業員の身体的な負担を減らすための取り組みや、デジタル化・機械化による働き方改革も進められていました。
河井氏は総括作業所長として、こうした「人にやさしい現場づくり」についてメディアの取材に応じていました。
こうした経歴を持つ河井辰巳氏ですが、2026年8月19日、大阪府警が背任の疑いで逮捕したことが報じられました。
報道によると、河井氏は2025年2月から6月にかけて、万博工事に関わっていた奈良県の下請け業者と共謀し、会場内の仮設事務所の内装工事費などを複数回にわたって水増し請求させた疑いが持たれています。
これによって竹中工務店に生じたとされる損害は、約1370万円です。
報道によって「約1300万円」「約1400万円」などと表現されていますが、約1370万円という金額を報じているメディアもあります。
大阪府警は8月19日、竹中工務店本社などを家宅捜索しました。
警察は河井氏の認否を明らかにしていません。
捜査関係者への取材では、水増しされたとされる金額が、河井氏の自宅などのリフォーム工事に使われた可能性があると報じられています。
河井氏は、万博工事を請け負っていた下請け業者を通じて、自宅などの改修工事を別の施工業者に依頼していたとみられています。
リフォームを担当した施工業者は、その費用について万博関連工事の代金であるかのような名目の請求書を作るよう下請け業者側から指示された、という趣旨の説明を捜査当局にしていると報じられました。
つまり、本来は私的な改修工事にかかった費用を、万博工事にかかった費用のように処理した疑いが持たれていることになります。

逮捕翌日の2026年8月20日には、今回の逮捕容疑となった約1370万円以外についても、河井氏が万博関連工事の代金を水増しさせていた疑いがあることが新たに報じられました。
大阪府警は、今回の事件が一度だけのものだったのか、それとも別の工事でも同様の方法が使われていたのかについて調べています。
このため、事件の規模は今後の捜査によってさらに拡大する可能性があります。
今回の事件については、その後の報道で「6000万円以上」という数字も出ています。
ただし、この6000万円という数字については注意が必要です。
一部の報道では、万博関連工事で水増し請求された総額が6000万円を超える可能性があると伝えられています。
一方で別の報道では、河井氏の自宅、マンション、親族が経営する飲食店などで行われた改修工事の総額が6000万円以上であり、警察がその費用についても水増し請求によって捻出された可能性を調べている、とされています。
したがって、2026年8月21日時点で「6000万円全額の水増しが立証された」と断定することはできません。
現段階で逮捕容疑として具体的に示されているのは約1370万円であり、それ以外の費用については警察が関連を調べている段階です。
その後の報道では、河井氏の自宅以外にも、マンションや親族が経営する飲食店などで改修工事が行われていたとされています。
これらの改修費と万博関連工事の水増し請求との間にどのような関係があったのかについて、大阪府警が資金の流れを調べています。
逮捕当初は自宅のリフォームが中心に報じられていましたが、捜査が進むにつれて対象となる工事や金額が広がっていることが分かります。
水増し請求に関わったとされる下請け業者と河井氏との関係についても、新たな情報が報じられています。
警察によると、河井氏と下請け業者の代表は約20年前に仕事を通じて知り合い、その後も同社は竹中工務店の工事を請け負っていたとされています。
大阪・関西万博では、この下請け業者は会場内の仮設事務所の内装工事だけでなく、大屋根リングのトイレ工事なども請け負っていました。
大阪府警は、下請け業者の代表についても水増し請求に関与した可能性があるとみて、任意で事情を聴いていると報じられています。
河井氏は万博工事の総括作業所長として、単に施工現場を監督するだけでなく、発注や調達などにも関わる立場だったと報じられています。
大型建設工事では、どの協力会社にどの工事を発注するのか、見積もりをどのように査定するのかといった業務も非常に重要です。
今回の事件では、発注側で大きな権限を持つ河井氏と、長期間取引関係にあった下請け業者との間で、どのようなやり取りが行われていたのかも捜査の焦点の一つになっています。
河井辰巳氏は逮捕翌日の2026年8月20日、背任容疑で送検されました。
大阪府警は、逮捕容疑となった約1370万円の水増し請求だけでなく、別の万博関連工事についても同様の請求がなかったか調べています。
また、自宅やマンション、親族の飲食店などの改修費についても、万博工事費との関連や詳しい資金の流れを調べているとみられます。
竹中工務店は今回の事件について、事態を厳粛に受け止め、警察による捜査に全面的に協力するとしています。
また、事実関係を確認したうえで会社として厳正に対処する方針を示しています。
今回の事件では、河井氏個人の行為の有無だけでなく、大規模工事における発注や請求のチェック体制がどのようになっていたのかについても今後注目される可能性があります。
ここで重要なのは、河井辰巳氏について現在報じられている内容は、あくまで捜査機関が持っている容疑だという点です。
逮捕されたからといって、その時点で犯罪行為が確定したわけではありません。
2026年8月21日時点でも、警察は河井氏の認否について明らかにしていません。
また、約1370万円を超える水増し請求や、6000万円以上とされる改修費との関連についても捜査中です。
そのため現段階では、「6000万円を不正に水増しした」「6000万円を私的に流用した」などと断定するのではなく、警察がその可能性を調べている段階であることを区別して考える必要があります。
河井辰巳氏の出身高校や出身大学についても注目されています。
しかし、2026年8月21日時点で確認できる竹中工務店の資料や信頼性の高い報道では、河井氏の出身高校・大学・学部などは明らかになっていません。
竹中工務店で長年建築施工に携わり、大阪本店技術部長や工務部長などを歴任したことは確認できますが、具体的な学歴については不明です。
河井辰巳氏は、竹中工務店で長年にわたって建築施工に携わり、大型病院の建設から大阪・関西万博という国家的な大型プロジェクトまで担当してきたベテラン技術者です。
大阪国際がんセンターの作業所長、大阪本店技術部長、工務部長などを経て、大阪・関西万博ではシンボルである大屋根リングなどを担当する竹中工務店JVの総括作業所長を務めました。
万博開催前には施工技術や現場の働き方、熱中症対策などについてメディアの取材に応じるなど、竹中工務店の万博建設を代表する技術者の一人でもありました。
その人物が2026年8月19日、万博会場工事費をめぐる背任の疑いで逮捕されました。
逮捕容疑として具体的に明らかになっているのは、2025年2月から6月にかけて下請け業者と共謀し、工事費を複数回にわたり水増し請求させ、竹中工務店に約1370万円の損害を与えたというものです。
さらに逮捕後には、別の万博関連工事についても水増し請求の疑いがあることや、自宅、マンション、親族が経営する飲食店などの改修費との関連について捜査が行われていることが報じられています。
一部では「6000万円以上」という金額も報じられていますが、その全額について不正が確定したわけではありません。
河井氏の認否も明らかにされておらず、事件は現在も捜査中です。
今後は、水増し請求とされる金額の全容、私的な改修工事との資金の流れ、約20年前から取引関係があった下請け業者との関係、そして竹中工務店の発注・請求管理体制について、捜査によってどこまで明らかになるのかが焦点となりそうです。