中部電力の安井稔(やすい・みのる)氏が、2026年10月1日付で同社の社長に就任することになりました。
中部電力は2026年9月14日、浜岡原子力発電所の耐震設計に関するデータ不正問題を受け、林欣吾社長と勝野哲会長が9月30日付で辞任すると発表しました。
林氏の後任として社長に就くのが、現在、取締役・専務執行役員を務めている安井稔氏です。
安井氏は東京大学工学部を卒業後、1988年に中部電力へ入社。火力発電所の現場からキャリアをスタートさせ、その後、エネルギー事業、子会社経営、経営戦略、アライアンス、グループ経営など幅広い部門を経験してきました。
2026年6月に中部電力の取締役に就任したばかりでしたが、浜岡原発問題による経営陣刷新という異例の状況の中で、トップを任されることになりました。
この記事では、安井稔氏の学歴や経歴、これまでの仕事内容、新社長として直面する課題についてわかりやすく紹介します。
| 氏名 | 安井 稔(やすい みのる) |
|---|---|
| 生年月日 | 1965年5月16日 |
| 年齢 | 61歳(2026年9月時点) |
| 出身地 | 愛知県 |
| 最終学歴 | 東京大学工学部舶用機械工学科卒業 |
| 入社 | 1988年4月 中部電力入社 |
| 主な経歴 | 碧南火力発電所長、中部電力ミライズ取締役、シーエナジー社長、中部電力専務執行役員など |
| 現職 | 中部電力取締役・専務執行役員 |
| 新役職 | 2026年10月1日付で中部電力社長に就任 |
安井稔氏は愛知県出身です。
大学は東京大学工学部舶用機械工学科を卒業しています。
1988年3月に東京大学を卒業し、翌4月に中部電力へ入社しました。
「舶用機械工学」は船舶のエンジンや動力システムなどを扱う工学分野ですが、その基礎となる熱力学、機械工学、エネルギー工学などは火力発電所の設備や発電技術とも関係が深い分野です。
安井氏が中部電力で火力発電部門を長く経験していることを考えると、大学で学んだ工学系の知識を生かしたキャリアだったことがうかがえます。
安井氏は1988年4月、中部電力に入社しました。
その後、発電設備や投資計画、火力発電などの部門を中心に経験を積んでいきます。
確認されている主な経歴は次の通りです。
| 年 | 主な役職・経歴 |
|---|---|
| 1988年 | 中部電力入社 |
| 2004年 | 経営戦略本部 設備・投資計画グループ課長 |
| 2007年 | 火力センター 碧南火力発電所 保修課長 |
| 2009年 | 発電本部 火力部 開発グループ課長 |
| 2012年 | 発電本部 火力部 業務グループ部長 |
| 2016年 | 碧南火力発電所長 |
| 2017年 | 碧南火力発電所長兼技術部長などを歴任 |
| 2018年 | 販売カンパニー エネルギー事業部部長 |
| 2019年 | 販売カンパニー エネルギー事業部長 |
| 2020年 | 中部電力ミライズ取締役・執行役員 事業戦略本部長兼ガス事業本部長 |
| 2022年 | シーエナジー代表取締役社長 |
| 2024年 | 中部電力常務執行役員 |
| 2025年 | 中部電力専務執行役員 |
| 2026年6月 | 中部電力取締役に就任 |
| 2026年10月 | 中部電力社長に就任 |
安井氏の経歴でまず注目されるのが、火力発電の現場を長く経験していることです。
2007年には碧南火力発電所の保修課長となり、その後も火力部の開発、業務部門などを担当しました。
そして2016年には碧南火力発電所長に就任しています。
碧南火力発電所は愛知県碧南市にある大規模な石炭火力発電所で、中部電力グループの電力供給を支える重要な発電拠点の一つです。
巨大な発電所のトップを務めた経験は、設備管理だけではなく、安全管理、人員管理、地域との関係、発電所全体の運営などを統括した経験を意味します。
安井氏は、いわゆる事務系の経営者というよりも、技術系のバックグラウンドと発電現場での管理経験を持つ経営者と見ることができます。
安井氏のキャリアは2018年ごろから大きく変化します。
2018年には販売カンパニーのエネルギー事業部に移り、2019年にはエネルギー事業部長となりました。
さらに2020年4月には、中部電力の小売電気・ガス事業などを担う中部電力ミライズの取締役・執行役員に就任。
事業戦略本部長とガス事業本部長を兼務しました。
発電所という「電気をつくる側」だけではなく、エネルギーを顧客に販売し、新しいサービスや事業をつくる側へと仕事の範囲を広げていったことになります。
2022年には、中部電力グループの株式会社シーエナジーの代表取締役社長に就任しました。
シーエナジーは法人向けを中心に、エネルギーサービス、LNG(液化天然ガス)供給、省エネルギー、再生可能エネルギーなどの事業を展開している会社です。
ここで安井氏は、中部電力本体の一部門を担当する立場ではなく、グループ会社のトップとして経営を担うことになります。
技術部門、発電所運営、エネルギー販売に加えて、企業経営そのものを経験したことが、その後の中部電力本体での経営幹部への登用につながったと考えられます。
安井氏は2024年4月、中部電力本体に戻り、常務執行役員に就任しました。
経営戦略本部のアライアンス推進室長と地域インフラ事業推進室長を担当しています。
2025年4月には専務執行役員に昇格。
グループ経営推進部を統括するとともに、経営戦略本部のアライアンス推進部長などを務めました。
「アライアンス」とは、他企業や自治体などとの提携・協業を意味します。
中部電力は従来の電力会社という枠から、不動産、地域インフラ、デジタル、海外事業、再生可能エネルギーなどへ事業領域を広げています。
安井氏はこうした中部電力グループ全体の事業戦略や他社との連携を担う立場へとキャリアを進めていきました。
2026年6月26日の定時株主総会で、安井氏は新たに中部電力の取締役に選任されました。
取締役就任時、中部電力は安井氏について、中部電力ミライズの事業戦略本部長、シーエナジー社長、アライアンス推進部門、グループ経営推進部門などを歴任し、「当社事業に精通している」と評価していました。
つまり、今回の突然の社長交代によって急浮上した人物というわけではありません。
2025年に専務執行役員、2026年に取締役と着実に経営中枢へ入っており、もともと将来の経営トップ候補の一人として位置づけられていたと考えるのが自然でしょう。
今回、安井氏が社長に就任する直接のきっかけとなったのが、浜岡原子力発電所をめぐる耐震データの不正問題です。
浜岡原発3、4号機の再稼働に必要な原子力規制委員会の審査をめぐり、耐震設計の基準となる「基準地震動」の策定過程でデータが不適切に扱われていたことが問題となりました。
地震による揺れを実際より小さく評価する方向でデータが操作されていた疑いが明らかになり、中部電力は外部の弁護士らによる調査委員会を設置しました。
2026年9月11日に調査委員会の報告書を受領。
その内容を受けて、林欣吾社長と勝野哲会長が経営責任を取り、9月30日付で辞任することになりました。
さらに中部電力は、浜岡原発3号機と4号機について進めていた新規制基準への適合性審査の申請を取り下げることも決めています。
こうした状況の中、中部電力は安井稔氏を2026年10月1日付で新社長に起用することを決定しました。
安井氏にとって極めて難しい状況での社長就任となります。
通常の社長交代とは異なり、最大の使命は売上や利益を伸ばすことだけではありません。
失われた信頼を取り戻し、会社のガバナンスを立て直すことが最優先の課題となります。
今回の社長人事で興味深いのが、安井氏のこれまでの公式な経歴を見る限り、原子力部門を中心に歩んできた人物ではないという点です。
安井氏の主なキャリアは、
・火力発電
・発電所運営
・エネルギー事業
・ガス事業
・子会社経営
・経営戦略
・企業間アライアンス
・グループ経営
といった分野です。
今回問題となった浜岡原発とは一定の距離があるキャリアを歩んできた人物といえます。
これは、新しい経営トップに原子力部門内部の人物を据えるのではなく、グループ経営全体を経験してきた人物に組織改革を任せるという人事とも見ることができます。
ただし、安井氏自身が今後どのような方針で浜岡原発問題や原子力部門の改革を進めるのかについては、新体制発足後の発言や具体策を見ていく必要があります。
安井氏の約38年間にわたる中部電力でのキャリアを振り返ると、大きく3段階に分けることができます。
第1段階は、発電技術・火力発電所の現場。
東京大学工学部を卒業後、火力部門を中心に経験を積み、最終的には碧南火力発電所長となりました。
第2段階は、エネルギービジネスと会社経営。
販売・ガス事業へ移り、中部電力ミライズの取締役やシーエナジー社長を経験しました。
第3段階は、中部電力グループ全体の経営戦略。
アライアンス、地域インフラ、グループ経営推進などを担当し、2025年に専務、2026年に取締役へ昇格しています。
技術者としてスタートし、発電所長、事業部門、子会社社長、経営戦略部門を経て本体社長になるという、非常に幅広い経歴です。
安井氏にとって最大の課題は、浜岡原発の再稼働そのものよりも、まず中部電力という会社への信頼をどう回復するかでしょう。
データの信頼性は、原子力発電所の安全審査の根幹です。
そのため、単に関係者を処分したり経営トップを交代したりするだけでは、問題が解決したことにはなりません。
不正がなぜ長期間発見されなかったのか、現場から経営陣まで情報が正しく伝わる仕組みになっていたのか、問題を指摘できる企業文化が存在していたのか、といった組織全体の検証が求められます。
さらに、浜岡原発3、4号機の審査申請を取り下げたことで、再稼働への道のりも大幅に見直されることになります。
安井氏には、
・浜岡原発問題の原因究明と再発防止
・企業統治(ガバナンス)の立て直し
・原子力部門の組織改革
・原子力規制委員会や地元自治体との信頼関係の再構築
・中部電力グループ全体のコンプライアンス強化
・電力の安定供給と脱炭素への対応
という非常に重い課題が待ち受けています。
安井稔氏は1965年5月16日生まれ、愛知県出身。
東京大学工学部舶用機械工学科を卒業後、1988年に中部電力へ入社しました。
碧南火力発電所長など火力発電の現場を経験した後、エネルギー事業、中部電力ミライズ、シーエナジー社長、経営戦略、アライアンス、グループ経営へと担当領域を広げてきました。
2025年に専務執行役員、2026年6月に取締役に就任。そして浜岡原発のデータ不正問題を受けて林欣吾社長と勝野哲会長が辞任することになり、2026年10月1日付で中部電力社長に就任します。
今回の人事は、単なる世代交代ではありません。
浜岡原発をめぐる問題によって大きく損なわれた中部電力への信頼を回復するための「再建人事」という意味合いが強いといえます。
火力発電の技術者から発電所長、エネルギー事業、子会社社長、経営戦略へと幅広い経験を積んできた安井氏が、中部電力の組織文化やガバナンスをどこまで変えることができるのか。
2026年10月に発足する新体制の最初の取り組みが注目されます。