海外のニュースや国際結婚について調べていると、「民事婚(みんじこん)」という言葉を目にすることがあります。
「普通の結婚とは違うの?」「事実婚のこと?」「教会で結婚しないという意味?」と疑問に思う人もいるかもしれません。
結論からいうと、民事婚とは、宗教的な儀式ではなく、国や自治体などの公的な制度によって成立する法律上の結婚を意味する言葉です。
英語では一般に「civil marriage(シビル・マリッジ)」と呼ばれます。
ただし、日本では「民事婚」という言葉自体は日常的にはあまり使われません。むしろ、ヨーロッパなど「宗教婚」と「法律上の婚姻」を区別する国について説明するときによく登場する言葉です。
この記事では、民事婚とは何なのか、日本の結婚制度との違い、宗教婚や事実婚との違いについてわかりやすく解説します。
民事婚とは、宗教とは切り離された形で、国家の法律に基づいて成立する婚姻のことです。
たとえば、市役所などの公的機関で婚姻の手続きを行ったり、行政機関の担当者の前で結婚の意思を確認したりすることで、法律上の夫婦になります。
国によって制度は異なりますが、民事婚では一般的に次のような手続きが行われます。
つまり、結婚を「宗教上の儀式」ではなく、法律上の契約・身分関係として成立させる仕組みと考えるとわかりやすいでしょう。

民事婚を理解するうえで重要なのが「宗教婚」との違いです。
| 項目 | 民事婚 | 宗教婚 |
|---|---|---|
| 基本的な意味 | 法律に基づいて成立する婚姻 | 宗教上の教義・儀式に基づく婚姻 |
| 執り行う主体 | 行政機関・登録官など | 神父、牧師、司祭、宗教指導者など |
| 場所 | 役所、登録所、認められた会場など | 教会、寺院、モスクなど |
| 法律上の効力 | 原則としてある | 国によって異なる |
| 宗教 | 原則として関係しない | 関係する |
重要なのは、宗教婚を行っただけで法律上も夫婦になるかどうかは国によって異なるということです。
宗教的な結婚式だけでは法律上の婚姻とは認められず、別途、民事婚の手続きが必要な国もあります。
民事婚を理解しやすい代表例がフランスです。
フランスでは法律上の結婚は行政による婚姻手続きによって成立します。一般的には市役所(Mairie)で民事婚の式を行います。
そのうえで、希望するカップルが教会などで宗教的な結婚式を行います。
つまりイメージとしては、
市役所で民事婚 → 必要であれば教会などで宗教婚
という順番になります。
フランスでは宗教上の結婚式を民事婚より先に行うことは認められていません。
日本人から見ると「役所で結婚式をする」という感覚は少し不思議に感じるかもしれませんが、フランスでは役所で行われる民事婚こそが法律上の結婚の中心となっています。
では、日本には民事婚という制度があるのでしょうか。
日本の法律では通常、「民事婚」という名称の婚姻制度が別個に設けられているわけではありません。
しかし、制度の性質だけを見ると、日本で通常行われている法律婚は広い意味では民事婚に近い仕組みと考えることができます。
日本では婚姻届を市区町村役場に提出し、法律上の要件を満たした届出が受理されることによって婚姻が成立します。
神社で神前式を挙げたか、教会で結婚式を挙げたか、あるいは結婚式そのものを行ったかどうかは、法律上の婚姻成立とは基本的に別の問題です。
たとえば日本では、
というカップルも珍しくありません。
この場合でも、婚姻届が法律上有効に受理されれば正式な夫婦です。
反対に、盛大な結婚式を挙げたとしても、婚姻届を提出していなければ、それだけで日本の法律上の婚姻が成立するわけではありません。
その意味では、日本の婚姻制度も宗教儀式とは切り離された制度になっています。
日本では神前式、教会式、仏前式などさまざまな形式の結婚式があります。
しかし、これらは通常、結婚を祝うための儀式と法律上の婚姻手続きが別になっています。
たとえば教会風のチャペルで結婚式を挙げても、それ自体によって法律上の夫婦になるわけではありません。
法律上重要なのは婚姻届です。
そのため、日本では「民事婚と宗教婚のどちらを選ぶのか」という発想そのものがあまり一般的ではありません。
「民事婚」という言葉から、「事実婚」と同じようなものではないかと思う人もいるでしょう。
しかし、両者は基本的に別のものです。
| 項目 | 民事婚 | 事実婚 |
|---|---|---|
| 法律上の婚姻 | 成立する | 婚姻届による法律婚ではない |
| 公的な手続き | 必要 | 婚姻届は提出しない |
| 法律上の夫婦 | 原則としてなる | 法律婚の夫婦とは異なる |
| 英語の代表的表現 | Civil marriage | De facto marriage / common-law relationshipなど |
つまり、
民事婚=法律上正式に結婚すること
事実婚=婚姻届を出さず、実質的に夫婦として生活すること
という違いがあります。
名称が似ているため混同されがちですが、むしろ法律上の位置付けではかなり異なります。
もう一つ混同されやすいものに「シビル・ユニオン(civil union)」や「シビル・パートナーシップ(civil partnership)」があります。
これも民事婚(civil marriage)とは必ずしも同じものではありません。
国によって制度は大きく異なりますが、シビル・ユニオンやシビル・パートナーシップは、婚姻とは別のパートナー関係を法律で認める制度として作られている場合があります。
したがって、
という違いがある場合があります。
特に海外の制度を調べる場合、「civil」という単語だけを見て同じ制度だと判断しないことが重要です。

日本人にはあまりなじみのない「民事婚」という言葉が海外で使われる背景には、結婚と宗教との歴史的な関係があります。
ヨーロッパをはじめとする多くの地域では、かつて結婚が宗教と強く結びついていました。
しかし、近代国家が成立していく過程で、国民の婚姻・離婚・相続などを国家の法律によって管理する必要性が高まります。
さらに、国民すべてが同じ宗教を信仰しているとは限りません。
そこで、宗教とは切り離して、国家が法律上の婚姻を認定する仕組みが整えられていきました。
これが現在の民事婚につながっています。
もちろんできます。
むしろ民事婚の大きな特徴は、特定の宗教を信仰していることを前提としない点です。
たとえば、
であっても、その国の法律が定める条件を満たせば民事婚を行うことができます。
一方、宗教婚の場合には、その宗教独自の結婚条件が設けられていることがあります。
民事婚という言葉が特に重要になるのが国際結婚です。
日本人が外国で結婚する場合、現地の法律に従った方式で婚姻を成立させるケースがあります。
外国の方式によって婚姻が成立した場合、日本側でも戸籍に婚姻を反映させるための届出が必要になる場合があります。
その際には現地で発行された結婚証明書などが重要になります。
逆に、日本に住んでいる外国人が日本で婚姻届を提出して結婚する場合には、国籍によって婚姻要件具備証明書などの書類が必要となることがあります。
国際結婚の場合は「結婚式をしたか」よりも、どこの国の法律に基づいて、いつ法律上の婚姻が成立したのかが非常に重要になります。
「民事婚=書類を提出するだけ」と思われることもありますが、これも国によって異なります。
海外では、行政機関の担当者が立ち会い、結婚する二人が意思を確認し、証人の前で署名するなど、民事婚そのものが一種の結婚式として行われることがあります。
家族や友人が出席する場合もあります。
その後にレストランやホテルなどへ移動して披露宴を行うケースもあります。
したがって、民事婚とは「結婚式をしない結婚」という意味ではなく、宗教ではなく法律に基づいて行われる結婚という意味で理解する方が正確です。
日本人にとって一番わかりやすく言い換えるなら、民事婚は「役所を通じて法律上の夫婦になる結婚」に近いものです。
日本では婚姻届を提出することが当たり前になっているため、それをわざわざ「民事婚」と呼ぶことはほとんどありません。
一方、宗教上の結婚と国家による結婚が明確に区別されている国では、「民事婚」という言葉に大きな意味があります。
民事婚とは、宗教上の儀式ではなく、国家の法律や公的な手続きによって成立する婚姻のことです。
英語では「civil marriage」と呼ばれます。
特にヨーロッパなどでは、役所などで行う民事婚と、教会などで行う宗教婚が明確に区別されることがあります。
一方、日本では「民事婚」という言葉はあまり一般的ではありません。しかし、婚姻届を役所に提出することによって法律上の夫婦になる日本の婚姻制度は、宗教とは切り離されているという点で民事婚に近い仕組みといえます。
また、民事婚と事実婚は別物です。
民事婚は法律上の結婚、事実婚は婚姻届を提出せずに夫婦として共同生活をする関係という点を押さえておくと理解しやすいでしょう。
海外のニュースや国際結婚の記事で「民事婚」という言葉が出てきた場合には、「宗教的な結婚ではなく、国の法律によって成立する結婚」と読み替えると、その意味がわかりやすくなります。