東京大学大学院教育学研究科の本田由紀(ほんだ・ゆき)教授が、2026年9月、自身のX(旧Twitter)への投稿をめぐって注目を集めています。
三笠宮家の彬子さまに関する別のユーザーの投稿を引用したうえで、「遺伝的要因のおそろしさを感じる」などと書き込んだことから、SNSでは「血統や出自を理由に人物を評価する差別的な表現ではないか」とする批判が相次ぎました。
本田教授は東京大学で教育社会学を研究する著名な研究者であるだけでなく、現在は日本教育学会の会長も務めています。そのため、今回の発言は個人のSNS投稿という枠を超えて注目されることになりました。
この記事では、本田由紀教授の学歴、これまでの経歴、専門分野、代表的な研究や著書、そして今回話題となったSNS投稿について詳しく見ていきます。
| 名前 | 本田由紀(ほんだ ゆき) |
|---|---|
| 生年 | 1964年 |
| 職業 | 教育社会学者、大学教授 |
| 所属 | 東京大学大学院教育学研究科 |
| 職位 | 教授 |
| 専門 | 教育社会学 |
| 学位 | 博士(教育学・東京大学) |
| 主な研究分野 | 教育と仕事、若年労働市場、家庭教育、教育格差、教育と社会の関係 |
| 主な役職 | 日本教育学会会長、東京大学大学院教育学研究科附属学校教育高度化・効果検証センター長 |
本田由紀教授は1964年生まれです。
1983年に東京大学文科三類へ入学し、東京大学教育学部で教育社会学を学びました。
1987年に東京大学教育学部教育学科教育社会学コースを卒業。その後、東京大学大学院教育学研究科へ進学しています。
大学院では教育社会学を専門とし、1994年に博士課程を単位取得退学しました。その後、東京大学から博士(教育学)の学位を取得しています。
大学入学から大学院まで一貫して東京大学で教育学・教育社会学を研究してきた研究者ということになります。
本田教授が研究者として本格的なキャリアをスタートさせたのは1994年です。
1994年4月から2001年3月まで、日本労働研究機構の研究員を務めました。
日本労働研究機構は、雇用や労働政策、職業、若年者の就職などについて調査研究する機関で、現在の独立行政法人労働政策研究・研修機構につながる組織です。
本田教授が後に主要な研究テーマとする「学校から仕事への移行」「若者の雇用」「教育の職業的意義」などは、この時期の研究とも深い関係があります。
2001年、本田教授は東京大学社会科学研究所助教授に就任しました。
社会科学研究所では、教育だけを独立した問題として捉えるのではなく、雇用、家族、社会階層などとの関係から教育を分析する研究を進めています。
本田教授の研究の特徴の一つは、「学校」「家庭」「仕事」という社会のそれぞれの領域を別々に研究するのではなく、それらの関係がどのように変化しているかを分析する点にあります。
特に1990年代以降の日本について、学校から職業への移行が難しくなったことや、非正規雇用の増加、家庭教育への負担の増大などを研究してきました。
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2007年4月、本田教授は東京大学大学院教育学研究科准教授に就任しました。
そして2008年11月に同研究科教授となり、現在まで東京大学で教育・研究活動を続けています。
東京大学では教育社会学を担当し、教育システムと労働市場、家族、社会構造などとの関係について研究しています。
また、東京大学大学院教育学研究科附属の学校教育高度化・効果検証センターのセンター長も務めています。
本田教授の専門である教育社会学とは、学校教育だけを見るのではなく、教育と社会との関係を社会学的な方法で研究する学問です。
例えば、「家庭環境によって子どもの学力に差が生じるのはなぜか」「学校で身につけた能力は就職後にどの程度役立っているのか」「学歴は社会的地位や収入にどのような影響を与えるのか」といった問題も教育社会学の研究対象になります。
本田教授は特に、家族と教育、教育と仕事、仕事と家族という3つの領域の関係を研究してきました。
東京大学が紹介している研究テーマでも、「教育システムと他の社会システムとの関係とその変化に関する実証的・理論的研究」が掲げられています。
研究キーワードとしては、若年労働市場、家庭教育、教育のレリバンス(教育内容が社会や仕事とどの程度関連しているか)などがあります。
本田教授の代表的な研究テーマの一つが教育と仕事との関係です。
日本では長い間、高校や大学を卒業すると学校を通じて企業へ就職し、企業の中で長期間働くという仕組みが一般的でした。
しかし、バブル崩壊後の1990年代以降、非正規雇用やフリーターなどが増加し、学校卒業から安定した職業へ移行する従来の仕組みが弱くなりました。
本田教授はこうした変化を教育社会学の立場から分析し、「学校で何を学ばせるべきなのか」「教育は仕事や社会生活とどのようにつながるべきなのか」といった問題を論じています。
本田教授の研究を語るうえで知られている言葉の一つが「ハイパー・メリトクラシー」です。
メリトクラシーとは一般に、家柄などではなく能力や業績によって人が評価される「能力主義」を意味します。
本田教授は、現代社会では学校の試験で測ることのできる学力だけではなく、コミュニケーション能力、意欲、創造性、問題解決能力、対人能力など、本人の人格や性格に近い部分まで「能力」として評価される傾向が強まっていると指摘しました。
こうした状態を「ハイパー・メリトクラシー」と表現しています。
この考え方を本格的に論じたのが、2005年に刊行された『多元化する「能力」と日本社会――ハイパー・メリトクラシー化のなかで』です。
同書は高く評価され、第6回大佛次郎論壇賞奨励賞を受賞しました。
本田教授は教育、若者、労働、家族、能力主義などをテーマに多数の著書を発表しています。
代表的なものとして、『若者と仕事――「学校経由の就職」を超えて』『多元化する「能力」と日本社会』『教育の職業的意義』『軋む社会』『「家庭教育」の隘路』『社会を結びなおす』『教育は何を評価してきたのか』『「日本」ってどんな国?』などがあります。
また2025年には、本田教授の編著による『「東大卒」の研究――データからみる学歴エリート』が刊行されました。
同書では東京大学卒業者を対象とした調査データなどを通じ、家庭環境、ジェンダー、出身地域、職業、収入などと「東大卒」という学歴との関係を分析しています。
本田教授は大学での研究・教育活動だけでなく、学術界でもさまざまな役職を務めてきました。
2014年10月から2020年9月まで日本学術会議会員を務めています。
日本教育学会では、2021年から事務局次長、2023年から機関誌編集委員長を務めるなど、長年にわたって学会運営に携わってきました。
2025年8月、本田教授は日本教育学会会長に就任しました。
日本教育学会は1941年に設立された教育学分野の主要学術団体で、教育研究に携わる研究者など約2700人の個人会員を擁しています。
本田教授は2025~2026年度の会長として学会を代表する立場にあります。
そのため、2026年9月に問題となったSNS投稿は、「東京大学教授の発言」というだけでなく、「日本教育学会会長の発言」という点でも大きく注目されることになりました。
今回問題となったのは、2026年9月1日に本田教授がXへ投稿した内容です。
本田教授は、三笠宮家の彬子さまや麻生家について批判する別のユーザーの投稿を引用したうえで、
「この人たちを目にするたびに、遺伝的要因のおそろしさを感じる。露出の増加が逆効果になるかもしれない」
と投稿しました。
この「遺伝的要因」という表現について、SNS上では「本人の行動ではなく血統や出自によって人物を評価することになるのではないか」「差別につながる表現ではないか」などの批判が相次ぎました。
一方で、投稿がどのような意図で書かれたのかについては、本人の説明と切り分けて考える必要があります。批判が多いという事実だけをもって、その意図まで断定することは適切ではありません。
J-CASTニュースの取材に対し、東京大学は2026年9月3日、このSNS投稿について把握していることを明らかにしました。
大学側は、東京大学では構成員に対して人権を尊重し、高い倫理観を持って行動することを求めているとの原則を示し、今後も人権尊重やコンプライアンスの重要性を周知していくとしています。
ただし、この回答の段階で、本田教授に対する具体的な処分などが発表されたわけではありません。
本田教授が会長を務める日本教育学会も、この投稿と寄せられている批判について把握しています。
同学会は、問題となった投稿について「日本教育学会の公式な見解を示すものではない」との立場を示しています。
さらに2026年9月3日時点で、倫理委員会において対応を検討中であることを明らかにしました。
したがって現段階では、「本田教授が処分された」「会長を辞任することになった」などと決まったわけではありません。
今後、倫理委員会や学会がどのような判断を示すのかが注目されます。
本田由紀教授は、東京大学教育学部から同大学大学院へ進み、日本労働研究機構、東京大学社会科学研究所を経て、東京大学大学院教育学研究科教授となった教育社会学者です。
長年にわたり、教育と仕事、若者の雇用、家庭教育、教育格差、能力主義など、日本社会が抱える教育と労働の問題を研究してきました。
『多元化する「能力」と日本社会』で大佛次郎論壇賞奨励賞を受賞するなど、教育社会学分野では広く知られた研究者でもあります。
また、日本学術会議会員や日本教育学会の要職を歴任し、2025年からは同学会会長という日本の教育学界を代表する立場の一つを務めています。
それだけに、今回の「遺伝的要因のおそろしさを感じる」というSNS投稿が大きな議論を呼んだ背景には、発言内容そのものに加え、教育や差別、社会的格差を研究してきた教育社会学者であり、日本教育学会会長でもある人物の発言だったという事情があります。
2026年9月3日時点では、日本教育学会の倫理委員会が対応を検討している段階です。今回の問題について、本田教授本人や日本教育学会が今後どのような説明・判断を示すのかが焦点となりそうです。