山中竹春(やまなか・たけはる)氏は、医学・がん研究の分野で統計解析を行ってきた研究者であり、現在の横浜市長です。
早稲田大学で経済学と数学を学び、九州大学医学部附属病院、アメリカ国立衛生研究所、国立がん研究センターなどを経て、横浜市立大学の医学部教授や大学院データサイエンス研究科長を務めました。
2021年8月の横浜市長選挙で初当選し、横浜市が進めていたIR・カジノ誘致の撤回や、データを活用した市政運営を掲げました。
2025年8月の横浜市長選挙でも当選し、現在は2期目を務めています。
一方、2026年には市幹部職員への言動をめぐる問題が表面化しました。7月30日に公表された第三者調査報告書では、複数の言動がパワーハラスメントに当たると認定され、山中市政のガバナンスが改めて問われています。
本記事では、山中竹春市長の学歴、研究者としての経歴、横浜市長になった経緯、人物像、2026年に公表された第三者調査の結果について整理します。
| 氏名 | 山中竹春 |
|---|---|
| 読み方 | やまなか・たけはる |
| 生年月日 | 1972年9月27日 |
| 年齢 | 53歳(2026年7月30日時点) |
| 現在の役職 | 横浜市長 |
| 市長就任 | 2021年8月 |
| 現在の任期 | 2期目 |
| 専門分野 | 生物統計学、臨床統計学、データサイエンス |
| 出身高校 | 早稲田大学本庄高等学院 |
| 出身大学 | 早稲田大学政治経済学部、早稲田大学理工学部 |
| 最終学歴 | 早稲田大学大学院理工学研究科修了 |
| 学位 | 博士(理学) |
| 前職 | 横浜市立大学医学部教授、大学院データサイエンス研究科長など |
山中竹春氏は、1991年に早稲田大学本庄高等学院を卒業しました。
早稲田大学本庄高等学院は、埼玉県本庄市にある早稲田大学の付属・系属高校です。卒業生の多くが早稲田大学へ進学します。
山中氏は高校時代にラグビー部で活動していました。本人の公式プロフィールでは、ラグビーを通じてチームワークや粘り強さを培ったと紹介されています。
高校卒業後は、早稲田大学政治経済学部経済学科へ進学し、1996年に卒業しました。
政治経済学部は、政治学、経済学、国際関係、公共政策などを学ぶ早稲田大学の代表的な学部です。
山中氏は経済学を学ぶ中で、社会や経済の問題を感覚だけで判断するのではなく、データによって分析する方法に関心を持つようになったとされています。
この経験が、後にデータサイエンスや医学統計の道へ進むきっかけになりました。
山中氏の学歴で特に注目されるのが、政治経済学部を卒業した後、早稲田大学理工学部数学科へ進んでいる点です。
一般的な大学生のように一つの学部を卒業して就職したのではなく、経済学を学んだ後に数学を本格的に学び直しました。
1998年に早稲田大学理工学部数学科を卒業しています。
文系分野に位置付けられる経済学と、理系分野の数学の両方を専門的に学んだことになります。
この学歴は、山中氏が後に専門としたデータサイエンスと深く関係しています。
データサイエンスでは、数学や統計学の知識だけでなく、分析結果を現実社会の問題解決に生かす能力が必要です。経済学と数学の双方を学んだ経験は、研究者としての土台になったと考えられます。
理工学部数学科を卒業した山中氏は、早稲田大学大学院理工学研究科へ進学しました。
2000年に大学院を修了し、その後も研究を続け、2003年に博士(理学)の学位を取得しています。
山中氏の学歴を時系列で整理すると、次のようになります。
| 年 | 学歴 |
|---|---|
| 1991年 | 早稲田大学本庄高等学院卒業 |
| 1996年 | 早稲田大学政治経済学部経済学科卒業 |
| 1998年 | 早稲田大学理工学部数学科卒業 |
| 2000年 | 早稲田大学大学院理工学研究科修了 |
| 2003年 | 博士(理学)取得 |
山中竹春氏は、医学部教授や国立がん研究センターの部長を務めた経歴があるため、医師だと思われることがあります。
しかし、山中氏は医学部医学科を卒業した医師ではありません。
取得している学位は医学博士ではなく、博士(理学)です。専門は生物統計学や臨床統計学であり、医療データを数学・統計学の方法で分析する研究者です。
医学研究では、新しい薬や治療法が本当に有効なのか、安全性に問題がないのかを、患者のデータから客観的に判断する必要があります。
その研究計画やデータ解析を担当する専門家が、生物統計家や臨床統計家です。
山中氏は医師として患者を診察する立場ではなく、医学研究や臨床試験を統計学の面から支える専門家としてキャリアを積んできました。
| 時期 | 主な役職・所属 |
|---|---|
| 2000年~2004年 | 九州大学医学部附属病院・文部教官助手 |
| 2002年~2004年 | アメリカ国立衛生研究所研究員 |
| 2004年~2005年 | 財団法人先端医療振興財団研究員 |
| 2006年~2012年 | 国立病院機構九州がんセンター室長など |
| 2012年~2014年 | 国立がん研究センター部長など |
| 2014年~2021年 | 横浜市立大学医学部教授、特命副学長、大学院データサイエンス研究科長など |
| 2021年8月 | 第33代横浜市長に就任 |
| 2023年4月 | 世界気候エネルギー首長誓約理事に就任 |
| 2023年10月 | OECDチャンピオン・メイヤーに就任 |
| 2025年8月 | 横浜市長選挙で再選、第34代横浜市長として2期目を開始 |
大学院を修了した山中氏は、2000年に九州大学医学部附属病院の文部教官助手となりました。
当時の「助手」は、現在の大学における助教などに相当する研究・教育職です。
数学を専門としていた山中氏は、医学研究に必要な統計解析や臨床研究の設計に携わりました。
薬や治療法の効果を調べる臨床試験では、単に治療後の数字を比較するだけでは十分ではありません。
患者の年齢、性別、病気の進行度、治療条件などの違いを考慮しながら、結果が偶然なのか、治療による効果なのかを判断する必要があります。
山中氏は、こうした医療データの解析を専門とする研究者として経験を積みました。
2002年から2004年にかけて、山中氏はアメリカ国立衛生研究所で研究員を務めました。
アメリカ国立衛生研究所は、英語でNational Institutes of Health、略称NIHと呼ばれる世界有数の医学研究機関です。
山中氏が所属したのは、NIHを構成する機関の一つである国立環境衛生科学研究所でした。
横浜市の公式プロフィールでは、九州大学医学部附属病院の在籍期間とNIH研究員の期間が重なっています。そのため、九州大学に在籍しながらアメリカで研究活動を行っていた時期が含まれるとみられます。
海外の研究機関で統計学や医学研究に携わった経験は、山中氏の国際的な研究活動の基礎となりました。
帰国後は、先端医療振興財団の研究員を経て、2006年から国立病院機構九州がんセンターで勤務しました。
九州がんセンターでは室長などを歴任し、がんの臨床研究や治療成績の解析に携わりました。
2012年には国立がん研究センターへ移り、部長などを務めています。
国立がん研究センターは、日本のがん研究、診療、予防政策の中心となる国立研究機関です。
山中氏は、がん治療そのものを行う医師ではなく、臨床試験の計画、データ解析、研究結果の評価などを担う統計学の専門家として活動しました。
2014年、山中氏は横浜市立大学へ移り、医学部教授に就任しました。
横浜市立大学では、臨床統計学の研究や教育に加え、データサイエンス教育の整備にも関わりました。
医学研究だけでなく、横浜市が抱える行政課題についても、データを活用して解決策を考える取り組みを進めています。
たとえば、がん患者の状況、将来の救急車出場件数、保健医療政策などを、統計データから分析する研究に携わりました。
横浜市立大学では、次のような役職を歴任しています。
山中氏は、横浜市立大学がデータサイエンス分野の教育を拡大していく過程で、中心的な役割を担った研究者の一人でした。
新型コロナウイルスの感染が拡大した時期には、横浜市立大学の研究チームによる抗体研究やワクチン研究にも関わりました。
感染経験者の抗体がどの程度持続するのか、ワクチン接種によって変異株に対する抗体が作られるのかといった問題を、臨床データから分析する研究です。
山中氏は医療統計やデータサイエンスの専門家として研究に参加しました。
こうした研究活動により、2021年の横浜市長選挙では「コロナ対策の専門家」「データサイエンスの専門家」として紹介される機会が増えました。
山中氏は2021年、横浜市立大学を退職し、横浜市長選挙へ立候補しました。
当時の横浜市では、カジノを含む統合型リゾート、いわゆるIRを誘致する計画が大きな争点となっていました。
山中氏はIR誘致への反対を明確にし、新型コロナウイルス対策やデータに基づく市政運営を訴えました。
選挙では、前国家公安委員長の小此木八郎氏、当時の横浜市長だった林文子氏、元長野県知事の田中康夫氏など、過去最多となる8人が立候補しました。
山中氏は50万票を超える票を獲得して初当選し、2021年8月30日に第33代横浜市長へ就任しました。
就任後は選挙公約に基づき、横浜市のIR誘致を撤回しました。
山中氏は2025年8月に行われた横浜市長選挙へ立候補し、再選されました。
2期目の市政では、子育て支援、防災、医療・福祉、公共交通、脱炭素化、デジタル化、GREEN×EXPO 2027の開催準備などを主要課題に掲げています。
横浜市の公式プロフィールでは、1期目は「第33代横浜市長」、2期目は「第34代横浜市長」と表記されています。
これは別の人物に交代したという意味ではありません。横浜市では市長の代数を任期ごとに数えるため、同じ人物が再選した場合も代数が一つ進みます。
山中氏の市長就任後に最も大きく変わった政策の一つが、IR誘致の撤回です。
前市政では山下ふ頭を候補地としてIR誘致が進められていましたが、山中氏は選挙公約に基づいて誘致を撤回しました。
その後は、山下ふ頭をどのように再開発するかが横浜市政の課題となっています。
山中市政では、子どもの医療費助成の拡充や、中学校給食の全員実施に向けた準備などが進められました。
横浜市は人口規模が大きく、子育て施策の変更には多額の予算や学校施設の整備が必要です。
山中氏は、子育て世代への支援を市政の重点分野に位置付けています。
山中氏が研究者時代から重視してきたのが、データに基づく意思決定です。
行政が行った事業について、実施したという事実だけでなく、どのような効果があったのかを数字で検証する考え方です。
山中氏は、政策効果の見える化や行政データの活用、オンライン手続きの拡大などを進めてきました。
一方、行政運営では数字だけでなく、職員や市民との対話、組織内の信頼関係も必要です。
2026年に表面化した市長の言動をめぐる問題は、山中氏の組織マネジメントを検証する重要な出来事となりました。
2026年1月、当時の横浜市総務局人事部長だった久保田淳氏が、山中市長の言動について実名で問題を提起しました。
久保田氏は、市長から書類を投げられたことや、職員に対する暴言、威圧的な発言、深夜や休日の業務連絡などがあったと主張しました。
人事部長は、市職員の人事制度、服務規律、労務管理、ハラスメント対策などに関わる立場です。
その現職人事部長が実名で市長の言動を告発したことから、極めて異例の事態として全国的に報じられました。
山中氏は当初、外見や容姿を中傷する発言や、市長室への出入りを禁止したとの主張などを否定しました。
一方、幹部職員に厳しい批判をすることはあると説明し、自身の言動については一層注意するとしていました。
山中市長と久保田氏の説明には大きな違いがあったため、横浜市は外部の弁護士による第三者調査を実施しました。
調査を担当したのは、神奈川県弁護士会から推薦された弁護士3人です。さらに補助員の弁護士3人が加わり、関係者への聞き取りや資料の確認が行われました。
市長から人事上の影響を受ける可能性がある職員が安心して情報提供できるよう、市の組織から一定の独立性を持つ調査体制が取られました。
2026年7月30日、第三者調査の報告書が横浜市へ提出され、市議会と市民に公表されました。
調査では、山中市長による複数の言動がパワーハラスメントに当たると認定されました。
認定された主な内容には、次のようなものがあります。
第三者調査は、個々の発言だけでなく、一連の言動が市役所の職員や職場環境に与えた影響を重く見ました。
そのうえで、職員の尊厳を傷つけ、職場環境を悪化させる、看過できない重大なパワーハラスメントがあったと評価しました。
ただし、告発されたすべての発言や行為が認定されたわけではありません。
証拠が十分でないと判断され、真偽不明とされた内容もあります。
そのため、「告発された内容がすべて事実だった」と単純化するのではなく、第三者調査が認定した事実と、認定に至らなかった内容を区別する必要があります。
山中氏は2025年8月に再選されたばかりであり、現在は横浜市長として2期目を務めています。
一方、2026年7月に公表された調査報告書は、市長本人の言動だけでなく、横浜市役所の組織運営やハラスメント防止制度にも課題があったと指摘しています。
今後は、次のような点が焦点になります。
研究者として高い専門性を持ち、データに基づく政策形成を掲げてきた山中氏にとって、今後は政策の成果だけでなく、組織を率いる責任や職員との関係についても厳しく評価されることになります。
山中氏は、経済学を学んだ後に数学を学び直し、医学統計とデータサイエンスの専門家になった異色の経歴を持っています。
既存の進路にとらわれず、関心を持った分野へ進んだ点に、研究者としての探究心が表れています。
公式プロフィールによると、趣味や特技は次のとおりです。
家族については、妻、長男、親子の猫2匹がいることを本人が公表しています。
高校時代にラグビーへ打ち込んだ経験もあり、スポーツへの関心が高い人物です。
一方、第三者調査で重大なパワハラが認定されたことで、政策を迅速に進めようとする姿勢と、職員に対する接し方の間にどのような問題があったのかが問われています。
早稲田大学です。
最初に政治経済学部経済学科を卒業し、その後、理工学部数学科を卒業しました。さらに早稲田大学大学院理工学研究科を修了しています。
医師ではありません。
医学部教授やがん研究機関の部長を務めましたが、医学部医学科の卒業者ではなく、数学や統計学を専門とする研究者です。
取得している学位は博士(理学)です。
生物統計学、臨床統計学、データサイエンスです。
臨床試験や医療データを統計的に分析し、治療法や薬の効果を客観的に評価する分野を専門としてきました。
横浜市立大学の医学部教授、特命副学長、大学院データサイエンス研究科長などを務めていました。
その前には、九州大学、アメリカ国立衛生研究所、九州がんセンター、国立がん研究センターなどで研究者として勤務しています。
2期目です。
2021年8月の横浜市長選挙で初当選し、2025年8月の選挙で再選されました。
2026年7月30日に公表された第三者調査報告書では、複数の言動がパワーハラスメントに当たると認定されました。
報告書は、一連の言動について、職員の尊厳を傷つけ、職場環境を悪化させる重大なパワーハラスメントがあったと評価しています。
ただし、告発されたすべての内容が認定されたわけではなく、証拠不足などから真偽不明とされたものもあります。
山中竹春氏は、早稲田大学で経済学と数学の双方を学び、医学統計やデータサイエンスの専門家となった横浜市長です。
九州大学医学部附属病院、アメリカ国立衛生研究所、九州がんセンター、国立がん研究センターなどで研究経験を積み、横浜市立大学では医学部教授、特命副学長、大学院データサイエンス研究科長などを務めました。
2021年の横浜市長選挙で初当選し、IR誘致の撤回やデータに基づく市政運営を進めました。2025年には再選され、現在は2期目を務めています。
一方、2026年7月30日に公表された第三者調査報告書では、市幹部職員らに対する複数の言動がパワーハラスメントと認定されました。
山中氏の経歴は、文系と理系を横断してデータサイエンスの専門家になり、研究者から大都市の市長へ転身した異色のものです。
今後は、その専門性や政策実行力だけでなく、重大と認定されたパワハラをどのように受け止め、横浜市役所の組織運営と職員との信頼関係を立て直すのかが厳しく問われることになります。