茂木正(もぎ・ただし)氏は、経済産業省出身の官僚です。通商産業省、現在の経済産業省に入省して以降、製造業政策、エネルギー政策、中小企業政策、商務・サービス政策、大阪・関西万博関連の調整など、幅広い分野を担当してきました。
近年は、内閣官房長官秘書官として政権中枢に近いポストに就いたことで注目されました。さらに、週刊誌報道で公費出張をめぐる疑惑が取り上げられ、2026年6月には6月30日付で交代する人事が報じられたことから、その経歴や人物像に関心が集まっています。
本記事では、茂木正氏の学歴、経済産業省での主な経歴、資源エネルギー庁や大阪・関西万博との関わり、官房長官秘書官としての役割、そして今回の報道の背景について整理します。
| 名前 | 茂木 正(もぎ ただし) |
|---|---|
| 生年月日 | 1966年5月23日 |
| 年齢 | 60歳 |
| 出身地 | 静岡県 |
| 学歴 | 北海道大学工学部卒業、北海道大学大学院工学研究科修了 |
| 入省 | 1992年、通商産業省に入省 |
| 主な所属 | 経済産業省、資源エネルギー庁、中小企業庁、内閣官房など |
| 主な役職 | 資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長、商務・サービス審議官、首席国際博覧会統括調整官、官房長官秘書官など |
茂木正氏は、静岡県出身です。北海道大学工学部を卒業し、同大学院工学研究科を修了しました。理系の専門教育を受けた後、1992年に通商産業省へ入省しています。
通商産業省は、2001年の中央省庁再編によって経済産業省となりました。経済産業省は、日本の産業政策、通商政策、エネルギー政策、中小企業政策、技術政策などを担う重要な省庁です。企業活動やエネルギー安全保障、産業競争力に関わる政策が多く、霞が関の中でも経済政策の中枢を担う組織といえます。
茂木氏は理系出身の官僚として、技術や産業、エネルギー政策と関わりの深い部署を中心にキャリアを重ねていきました。経済産業省の官僚には、法律や経済を学んだ文系出身者も多くいますが、茂木氏の場合は工学系のバックグラウンドを持っている点が特徴です。
茂木正氏の経歴をたどるうえで、まず注目されるのが製造産業局での役職です。
2013年には、経済産業省製造産業局化学課長を務めました。化学産業は、日本の製造業を支える基盤産業の一つです。樹脂、化学品、電子材料、医薬品原料、繊維、塗料、半導体材料など、さまざまな分野とつながっています。
その後、2016年には同じ製造産業局の素材産業課長を務めています。素材産業は、鉄鋼、非鉄金属、化学素材、機能性材料など、日本のものづくりの土台となる分野です。自動車、電機、建設、航空宇宙、半導体など、多くの産業が素材技術に依存しています。
つまり、茂木氏は経産官僚として、単に行政手続きを担当してきたのではなく、日本の産業競争力の根幹に関わる分野を経験してきた人物といえます。
茂木氏のキャリアの中で特に重要なのが、資源エネルギー庁での経験です。
2017年には、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部政策課長に就任しました。省エネルギー・新エネルギー部は、再生可能エネルギー、省エネ、水素、分散型エネルギー、次世代エネルギーシステムなどを扱う部署です。
日本はエネルギー資源の多くを海外に依存しているため、エネルギー政策は産業政策であると同時に、安全保障政策でもあります。電力の安定供給、再生可能エネルギーの導入、燃料価格の変動、脱炭素社会への移行など、非常に難しい政策課題が並んでいます。
茂木氏はその後、2020年に資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長に就任しました。部長職は、単なる担当者ではなく、その分野の政策全体を取りまとめる立場です。この時期、日本では再生可能エネルギーの主力電源化、2050年カーボンニュートラル、洋上風力、水素社会、電力システム改革などが大きなテーマになっていました。
省エネ・新エネ政策に長く関わったことから、茂木氏は経産省内でもエネルギー政策に詳しい官僚の一人と見られてきました。
2018年には、中小企業庁長官官房総務課長を務めました。
中小企業庁は、日本経済を支える中小企業や小規模事業者を支援する組織です。日本の企業の多くは中小企業であり、地域経済、雇用、下請け構造、事業承継、資金繰り、災害復旧など、社会に密着した課題を扱います。
長官官房総務課長は、組織全体の調整や庁内運営に関わる重要なポストです。エネルギーや製造業のような大きな産業政策だけでなく、地域企業や中小企業政策にも関わった点は、茂木氏の経歴の幅広さを示しています。
2019年には、経済産業省大臣官房参事官となり、技術・高度人材戦略を担当しました。また、危機管理・災害対策室長も兼ねています。
技術・高度人材戦略とは、日本の産業競争力を支える技術開発や専門人材の確保に関わる分野です。AI、半導体、ロボット、エネルギー、バイオ、宇宙、デジタル産業など、先端分野では高度な人材の育成と確保が不可欠です。
また、危機管理・災害対策室長を兼ねていたことから、災害時の産業・エネルギー供給への対応にも関わっていたと考えられます。日本では地震、台風、豪雨などの自然災害が多く、経産省は電力、ガス、燃料、工場、サプライチェーンなどの面で重要な役割を担います。
この時期の茂木氏は、産業政策と危機対応の両面に関わるポジションにいたことになります。
2022年には、商務・サービス審議官および商務・サービスグループ長に就任しました。
商務・サービスグループは、流通、物流、小売、観光、ヘルスケア、コンテンツ産業、クールジャパン、サービス産業の生産性向上など、非常に広い分野を扱います。製造業やエネルギー政策に比べると、より消費者や生活に近い政策分野です。
日本経済では、サービス産業の生産性向上が長年の課題とされています。人手不足、物流危機、デジタル化、インバウンド需要、医療・介護周辺産業、コンテンツの海外展開など、商務・サービス分野には多くのテーマがあります。
茂木氏はこのポストを通じて、エネルギー政策や製造業政策だけでなく、サービス産業や消費関連分野にも関わるようになりました。
茂木正氏の名前が一般にも知られるようになった大きなきっかけの一つが、大阪・関西万博です。
2024年7月から、茂木氏は大臣官房政策立案総括審議官を務めるとともに、首席国際博覧会統括調整官を兼ねました。首席国際博覧会統括調整官とは、万博関連の調整を担う重要な役職です。
大阪・関西万博は、国、自治体、経済界、海外参加国、博覧会協会、建設業界、交通機関、警備、観光、メディアなど、非常に多くの関係者が関わる国家的イベントです。会場整備、海外パビリオン、交通アクセス、予算、警備、運営体制、国際調整など、課題は多岐にわたります。
首席国際博覧会統括調整官は、そのような複雑な関係者の間に立ち、政府側の調整を進める役割を担ったと考えられます。特に大阪・関西万博は、準備の遅れや費用の増加などがたびたび報じられていたため、実務面での調整力が強く求められるポストでした。
茂木氏は、経産省の中でも万博実務に深く関わった官僚の一人といえます。
茂木氏はその後、内閣官房長官秘書官に就任しました。官房長官秘書官は、官房長官を補佐する重要な役職です。
官房長官は、政府の要ともいえるポジションです。内閣の調整役であり、各省庁との連絡、危機管理、政策調整、記者会見、国会対応、政権運営など、非常に広い役割を担います。
その官房長官を支える秘書官は、日程調整や資料作成だけでなく、各省庁からの情報整理、政策課題の把握、官邸内での連絡調整などにも関わります。官房長官の近くで仕事をするため、政権の方針や重要政策に触れる機会も多いポストです。
官房長官秘書官は、目立つ存在ではありませんが、政権運営の裏側で重要な役割を果たします。そのため、どの省庁出身の官僚が起用されるかは、政権の人事や政策の方向性を読み解くうえでも注目されます。
茂木正氏は、高市政権下で官房長官秘書官に起用されました。報道では、高市氏が経済産業副大臣だった時代に秘書官を務めていたことも紹介されています。
経済産業省出身の官僚が官邸中枢に近いポストに入ること自体は珍しいことではありません。経産省は、エネルギー、産業競争力、経済安全保障、デジタル、半導体、GXなど、政権の重要政策に深く関わる省庁だからです。
ただし、官房長官秘書官というポストは、官僚としての能力だけでなく、政権幹部との信頼関係も重視されます。茂木氏がこのポストに起用されたことは、高市政権の中で一定の信頼を得ていたことを示す人事と受け止められました。
その一方で、政権中枢に近い人物であるほど、公私の区別や公費の使い方に対する世間の視線は厳しくなります。今回の報道が大きく注目された背景には、単なる一官僚の問題ではなく、官邸に近い立場の人物だったという事情があります。
2026年6月、茂木正氏をめぐって、公費出張に関する疑惑が報じられました。
報道によると、茂木氏が大阪・関西万博の首席国際博覧会統括調整官を務めていた当時、公費で大阪に出張した際の行動について、不適切な点があった疑いが指摘されています。具体的には、私的な関係にある女性との行動が、公費出張と重なっていたのではないかという内容です。
ここで重要なのは、「公費出張そのものが直ちに問題」というわけではない点です。万博の調整役であれば、大阪への出張は職務上必要になることがあります。問題になるのは、公務として認められる範囲を超えた私的利用があったのかどうか、公費負担の妥当性に疑義があるのかどうかです。
また、報道内容はあくまで週刊誌報道に基づくものであり、今後、政府や経済産業省側の調査や説明によって、事実関係がさらに整理される可能性があります。
報道では、政府が茂木正氏を6月30日付で交代させる人事を発表したとされています。これについては「事実上の更迭」との見方も出ています。
人事上の「交代」と「更迭」は、厳密には意味が異なります。政府が正式に「更迭」と表現するとは限らず、形式上は通常の人事異動や交代として発表されることがあります。しかし、疑惑報道の直後にポストを外れる場合、メディアや世論からは「事実上の更迭」と受け止められることがあります。
今回も、報道のタイミングや交代の時期から、疑惑報道との関係が注目されています。今後、経済産業省や政府側がどのような説明を行うのかが焦点になります。
報道では、茂木氏の後任には経済産業省大臣官房総括審議官の佐々木啓介氏が就くとされています。
官房長官秘書官は政権運営を支えるポストであるため、後任人事も重要です。特に、経済産業省出身者が続けて起用される場合、政権が経産省系の政策課題を重視していることを示す可能性もあります。
高市政権では、経済安全保障、エネルギー政策、産業競争力、半導体、AI、宇宙、国土強靱化など、経済産業省と関係の深い政策分野が多くあります。そのため、官邸に経産省出身者が入る意味は小さくありません。
茂木正氏の経歴を整理すると、いくつかの特徴が見えてきます。
第一に、エネルギー政策に強い官僚であることです。省エネ・新エネ政策課長、省エネルギー・新エネルギー部長などを歴任しており、再生可能エネルギーや脱炭素政策と関わりの深いキャリアを歩んできました。
第二に、製造業と素材産業にも関わってきたことです。化学課長、素材産業課長を務めた経験は、日本のものづくり政策に近い経歴といえます。
第三に、商務・サービス分野や中小企業政策にも関わっていることです。これは、エネルギーや製造業だけでなく、より広い経済政策を経験してきたことを示しています。
第四に、大阪・関西万博という大型国家プロジェクトの調整役を務めたことです。万博は単なるイベントではなく、国際関係、地域経済、観光、産業政策、技術発信などが絡む大規模事業です。その調整役を担ったことは、茂木氏のキャリアの中でも大きな意味を持ちます。
第五に、官房長官秘書官として政権中枢に近づいたことです。これは、官僚としての実務経験だけでなく、政治との距離の近さを示す経歴でもあります。
今回の報道が注目された理由は、単に一人の官僚の私的な問題としてではなく、公費の使い方や政権中枢の人事と関わる問題として受け止められたからです。
公務員の出張費は税金によって支えられています。そのため、公務として必要な出張であったか、私的な目的が混在していなかったか、宿泊や移動の費用負担が適切だったかは、重要な論点になります。
特に、官邸に近いポストにある人物の場合、本人の行動は政権全体の信頼にも影響します。官僚は選挙で選ばれた政治家ではありませんが、国の政策を動かす重要な役割を担っています。そのため、説明責任や倫理意識が強く求められます。
今回の件では、万博関連の公費出張という点も注目されています。大阪・関西万博は、多額の公費や公的支援が関わる事業であり、国民の関心も高いテーマです。そのため、万博調整に関わる人物の出張が問題視されたことは、より大きな関心を呼ぶ結果となりました。
今後の焦点は、まず事実関係の確認です。報道で指摘された出張が、どのような目的で行われたのか、公務として必要だったのか、費用負担に問題があったのかが問われます。
次に、政府や経済産業省がどのような説明をするかです。調査中である場合には、調査結果をどのように公表するのか、処分の有無や内容はどうなるのかが注目されます。
さらに、官邸人事への影響もあります。官房長官秘書官は政権運営を支える重要なポストです。今回の交代が単なる個人の問題にとどまるのか、それとも政権の人事管理や公費出張のあり方にまで議論が広がるのかもポイントです。
茂木正氏は、北海道大学工学部、同大学院工学研究科を経て、1992年に通商産業省へ入省した経済産業省出身の官僚です。
経歴を見ると、製造産業局で化学・素材分野を担当し、資源エネルギー庁では省エネ・新エネ政策に深く関わりました。その後、中小企業庁、大臣官房、商務・サービスグループ、大阪・関西万博関連の調整役などを歴任し、幅広い経済政策を経験してきました。
特に、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長や首席国際博覧会統括調整官としての経歴は、茂木氏を特徴づける重要な要素です。エネルギー政策と大型国家プロジェクトの双方に関わってきた官僚といえるでしょう。
一方で、2026年6月には公費出張をめぐる疑惑が報じられ、官房長官秘書官を6月30日付で交代する人事が明らかになったとされています。政権中枢に近い人物だっただけに、今回の問題は公費の使い方、官僚倫理、政権の説明責任という観点からも注目されています。
茂木正氏の経歴は、経産官僚としての実務経験の広さを示す一方で、高い役職にある公務員には能力だけでなく、公私のけじめと説明責任が強く求められることを改めて示すものとなっています。