2026年の次期国連事務総長選で、有力候補の一人として注目されているのが、コスタリカ出身の経済学者・国際機関幹部レベカ・グリンスパン(Rebeca Grynspan)氏です。
グリンスパン氏は、コスタリカ副大統領を務めた後、国連開発計画(UNDP)の幹部やイベロアメリカ事務総長などを歴任。
2021年には国連貿易開発会議(UNCTAD)の事務局長に就任し、UNCTAD創設以来初めての女性トップとなりました。
2026年3月にはコスタリカ政府から次期国連事務総長候補として正式に推薦されています。
同年7月30日に行われた第1回の非公式投票「ストローポール」では、候補者の中で最多となる支持10票を獲得して首位に立ちました。
8月21日の第2回投票では支持7票となり、ガイアナのキャロリン・ロドリゲス=バーケット氏に首位を譲りましたが、依然として次期国連事務総長の有力候補の一人です。
では、レベカ・グリンスパン氏とはどのような人物なのでしょうか。
| 氏名 | レベカ・グリンスパン・マユフィス |
|---|---|
| 英語表記 | Rebeca Grynspan Mayufis |
| 生年 | 1955年 |
| 出身地 | コスタリカ・サンホセ |
| 国籍 | コスタリカ |
| 職業 | 経済学者、国際機関幹部、元政治家 |
| 学歴 | コスタリカ大学で経済学を学び、英国サセックス大学で経済学修士号を取得 |
| 主な経歴 | コスタリカ副大統領、UNDP副総裁、イベロアメリカ事務総長、UNCTAD事務局長 |
| 現在 | UNCTAD事務局長、次期国連事務総長候補 |
レベカ・グリンスパン氏は1955年、コスタリカの首都サンホセで生まれました。
経済学を専門とし、政治、開発政策、国際金融、貧困問題、国際協力などの分野で長年にわたり活動してきた人物です。
コスタリカ国内の政治家としてキャリアを積んだ後、国連をはじめとする国際機関へ活動の場を移しています。
国内政治と国際外交の双方で豊富な経験を持っていることが大きな特徴です。
グリンスパン氏は、コスタリカを代表する国立大学であるコスタリカ大学(University of Costa Rica)で経済学を学びました。
その後、イギリスへ留学しています。

グリンスパン氏はイギリスのサセックス大学(University of Sussex)に進学し、経済学の修士号を取得しました。
サセックス大学は、イングランド南部ブライトン近郊にある大学で、開発学や国際関係、経済学などの分野でも知られています。
グリンスパン氏は、その後のキャリアを通じて、
などの問題に取り組んできました。
経済学者としての専門知識が、その後の政治家・国際機関幹部としての活動の基礎になっています。
政治の世界に入る以前には、コスタリカ大学の経済科学研究所などで研究や教育にも携わりました。
経済学者として政策研究に関わった経験を持ち、その後、政府の経済政策や社会政策を担当する立場へと進んでいきます。
学者から政治家、さらに国際機関のトップへと活動の場を広げてきた人物です。
グリンスパン氏はコスタリカ政府で、
などの要職を歴任しました。
財務副大臣時代には、財政政策、予算、公共支出、マクロ経済政策などを担当しました。
国際通貨基金(IMF)などとの交渉にも関わり、国内経済政策だけでなく国際金融機関との交渉経験も積んでいます。

グリンスパン氏の国内政治家としての代表的な経歴が、コスタリカ副大統領です。
1994年から1998年まで、ホセ・マリア・フィゲーレス政権で副大統領を務めました。
当時は経済政策や社会政策、住宅政策などに深く関わり、特に貧困削減や社会格差への対応を重視しました。
女性世帯主への支援など、社会的に弱い立場にある人々を対象とした政策にも取り組んでいます。
こうした経験は、その後グリンスパン氏が国連で人間開発や貧困削減を担当する際にも生かされることになります。
国内政治での活動を経たグリンスパン氏は、2001年から本格的に国連機関で活動するようになります。
2001年から2006年まで、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)のメキシコ地域本部で責任者を務めました。
ECLACは、中南米・カリブ海地域の経済・社会開発を研究し、各国政府に政策提言を行う国連機関です。
グリンスパン氏は、
などの問題に取り組みました。
2006年には、国連開発計画(UNDP)の中南米・カリブ地域局長に就任しました。
UNDPは、貧困削減、民主的統治、危機対応、持続可能な開発などを世界各国で支援する国連機関です。
グリンスパン氏は2006年から2010年まで中南米・カリブ地域のUNDP活動を統括しました。
コスタリカ政府とECLACで培った経験を生かし、地域全体の開発政策を担当する立場となりました。

2010年、グリンスパン氏はさらに昇進し、国連事務次長兼UNDP副総裁に就任しました。
UNDP副総裁は、UNDP組織全体の運営を担う最高幹部の一人です。
2010年から2014年まで同職を務め、世界各国の開発政策、貧困削減、環境問題、男女平等などの課題に取り組みました。
また、2010年に発生したハイチ大地震後の復興では、国連事務総長を代表してハイチ暫定復興委員会にも参加しています。
大規模災害後の復興という難しい国際調整を経験したことも、グリンスパン氏の重要な経歴の一つです。
2014年には、イベロアメリカ事務総長に就任しました。
イベロアメリカとは、スペインやポルトガルと、中南米のスペイン語・ポルトガル語圏諸国を中心とする国際協力の枠組みです。
グリンスパン氏は2014年から2021年まで事務総長を務め、各国首脳が参加するイベロアメリカ首脳会議などを取り仕切りました。
このポストでも初の女性事務総長となっています。
各国の大統領や首相と直接協議する立場を長年経験したことは、国連事務総長候補としての強みの一つとなっています。
2021年6月、アントニオ・グテーレス国連事務総長はグリンスパン氏を国連貿易開発会議(UNCTAD)事務局長に任命しました。
同年9月に正式に就任しました。
UNCTADが1964年に設立されて以来、女性が事務局長を務めるのは初めてでした。
また、中米出身者としても初めてのUNCTADトップとなりました。
UNCTADは、特に開発途上国の立場から、
などを扱う国連機関です。
UNCTAD事務局長としてグリンスパン氏の知名度を大きく高めたのが、ロシアによるウクライナ侵攻後に発生した世界的な食料危機への対応です。
2022年、国連とトルコの仲介によって黒海穀物イニシアティブが成立しました。
これは、ウクライナの黒海沿岸の港から穀物などを安全に輸出できるようにする枠組みでした。
グリンスパン氏は国連側の重要な交渉担当者として、ロシア産の食料や肥料の輸出をめぐる交渉などに携わりました。
世界的な食料価格高騰を抑えるため、ロシア、ウクライナ、トルコ、国連など複数の当事者を相手に調整を行った経験は、国際外交における大きな実績とされています。
コスタリカ政府は2026年3月、グリンスパン氏を次期国連事務総長候補として正式に推薦しました。
現在のアントニオ・グテーレス事務総長は、2026年12月31日で2期10年の任期を終える予定です。
後任となる第10代国連事務総長は2027年1月1日に就任する予定です。
グリンスパン氏は、長年の国連勤務経験と政府での政治経験の双方を持つ候補として注目されています。
2026年7月30日、国連安全保障理事会で次期事務総長候補に対する第1回の非公式投票「ストローポール」が行われました。
安保理15カ国が各候補について、
のいずれかを選びます。
グリンスパン氏は、
支持10票・不支持1票・意見なし4票
を獲得しました。
候補者の中で最多の支持を獲得し、第1回投票では首位となりました。
2026年8月21日に行われた第2回ストローポールでは状況が変化しました。
グリンスパン氏は、
支持7票・不支持4票・意見なし4票
となりました。
一方、ガイアナのキャロリン・ロドリゲス=バーケット氏が支持8票を獲得したため、グリンスパン氏は2位へ後退しました。
| 投票 | 支持 | 不支持 | 意見なし | 順位 |
|---|---|---|---|---|
| 第1回 2026年7月30日 |
10票 | 1票 | 4票 | 1位 |
| 第2回 2026年8月21日 |
7票 | 4票 | 4票 | 2位 |
第1回から第2回にかけて、支持は10票から7票へ3票減少し、不支持は1票から4票へ3票増加しました。
第1回では10票あった支持が、第2回では7票まで減っています。
さらに不支持票は1票から4票へ増えました。
ただし、ストローポールは秘密投票であり、どの国が支持から不支持に転じたのかは公表されていません。
そのため、第2回で支持が減った具体的な理由を外部から断定することはできません。
また、現在の段階では、アメリカ、中国、ロシア、イギリス、フランスという安保理常任理事国5カ国の投票と、非常任理事国の投票を区別することができません。
グリンスパン氏に入った4票の不支持の中に、拒否権を持つ常任理事国の票が含まれているのかどうかが、今後の大きな焦点となります。
第2回投票で支持を失ったとはいえ、グリンスパン氏が選挙戦から脱落したわけではありません。
支持7票は依然として上位グループに位置する数字です。
さらにグリンスパン氏には、
があります。
政府、国連、国際機関という複数の分野でトップレベルの経験を持つことは、大きな強みです。

国際連合が1945年に設立されて以来、事務総長はすべて男性が務めてきました。
そのため2026年の選考では、史上初の女性国連事務総長が誕生するのかも大きな注目点となっています。
現在の候補者には複数の女性がいますが、グリンスパン氏はその中でも、
を併せ持つ候補です。
もし選出されれば、国連史上初の女性事務総長となります。
国連事務総長の選出には、法律で定められた地域持ち回り制度はありません。
しかし歴史的には、地域バランスが重要な要素として考慮されてきました。
2026年の選考では、中南米・カリブ海地域から事務総長を選出する可能性が注目されています。
グリンスパン氏はコスタリカ出身です。
また、第2回ストローポールの上位には、
と、中南米・カリブ海地域の候補が並んでいます。
国連事務総長は単純な得票数だけでは決まりません。
最終的に安全保障理事会から推薦を受けるには、15カ国のうち少なくとも9カ国の賛成が必要です。
さらに、
という常任理事国5カ国のいずれからも拒否権を行使されないことが必要です。
グリンスパン氏は第1回投票では不支持がわずか1票でしたが、第2回では4票に増えています。
この4票の中に常任理事国からの反対票が含まれているのかどうかが、今後の選考を左右する可能性があります。
| 年・期間 | 主な経歴 |
|---|---|
| 1955年 | コスタリカ・サンホセに生まれる |
| 大学時代 | コスタリカ大学で経済学を学ぶ |
| その後 | 英国サセックス大学で経済学修士号を取得 |
| コスタリカ政府時代 | 財務副大臣、住宅相、経済・社会問題調整相などを歴任 |
| 1994~1998年 | コスタリカ副大統領 |
| 2001~2006年 | 国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)メキシコ地域本部の責任者 |
| 2006~2010年 | UNDP中南米・カリブ地域局長 |
| 2010~2014年 | 国連事務次長級・UNDP副総裁 |
| 2014~2021年 | イベロアメリカ事務総長 |
| 2021年 | UNCTAD事務局長に就任 |
| 2022年 | 黒海穀物イニシアティブなど、ウクライナ戦争に伴う食料・貿易問題の国際交渉に関与 |
| 2026年3月 | コスタリカ政府が次期国連事務総長候補として正式推薦 |
| 2026年7月30日 | 第1回ストローポールで支持10票を獲得し首位 |
| 2026年8月21日 | 第2回ストローポールで支持7票を獲得し2位 |
レベカ・グリンスパン氏は、1955年にコスタリカのサンホセで生まれた経済学者です。
コスタリカ大学と英国サセックス大学で経済学を学び、政府では財務副大臣や住宅相などを経て、1994年から1998年までコスタリカ副大統領を務めました。
その後は活動の場を国際社会へ移し、
などで要職を歴任しました。
2021年にはUNCTAD史上初の女性事務局長となっています。
2026年3月には次期国連事務総長候補として正式に推薦され、第1回ストローポールでは支持10票を獲得して首位。
8月21日の第2回投票では支持7票となり、キャロリン・ロドリゲス=バーケット氏に首位を譲りましたが、依然として有力候補の一人です。
今後最大のポイントとなるのは、アメリカ、中国、ロシア、イギリス、フランスという安保理常任理事国5カ国の支持を得られるかどうかです。
コスタリカ副大統領から国連幹部、そして国際機関トップへと歩んできたグリンスパン氏が、国連史上初の女性事務総長となるのか、今後の選考に注目が集まります。