2026年、国連(国際連合)のトップである次期国連事務総長を決める選考が本格化しています。
現在のアントニオ・グテーレス国連事務総長は、2026年12月31日で2期10年の任期を終える予定です。
後任となる第10代国連事務総長は、2027年1月1日に就任します。
2026年8月21日には、国連安全保障理事会で2回目となる非公式投票「ストローポール(Straw Poll)」が行われました。
その結果、これまで2位だったガイアナのキャロリン・ロドリゲス=バーケット氏が首位に浮上。
一方、第1回投票でトップだったコスタリカのレベカ・グリンスパン氏は2位に後退しました。
では、次期国連事務総長の候補者には誰がいるのでしょうか。

2026年8月21日時点で、選考に参加している候補者は8人です。
| 候補者 | 国・地域 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| キャロリン・ロドリゲス=バーケット | ガイアナ | ガイアナ国連大使、元外相 |
| レベカ・グリンスパン | コスタリカ | UNCTAD事務局長、元副大統領 |
| ラファエル・グロッシ | アルゼンチン | IAEA(国際原子力機関)事務局長 |
| マッキー・サル | セネガル | 元セネガル大統領 |
| オララ・オトゥンヌ | ウガンダ | 元国連事務次長、元ウガンダ国連大使 |
| マリア・フェルナンダ・エスピノサ | エクアドル | 元国連総会議長、元エクアドル外相 |
| ミシェル・バチェレ | チリ | 元チリ大統領、元国連人権高等弁務官 |
| イボンヌ・A・バキ | エクアドル | 外交官、元駐米・駐仏大使など |
2026年8月21日に行われた第2回ストローポールでは、安保理15カ国が各候補について、
「支持(Encourage)」
「不支持(Discourage)」
「意見なし(No Opinion)」
のいずれかを秘密投票で選びました。
非公式に伝えられている結果は次の通りです。
| 順位 | 候補者 | 支持 | 不支持 | 意見なし |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | ロドリゲス=バーケット | 8 | 3 | 4 |
| 2位 | グリンスパン | 7 | 4 | 4 |
| 3位 | グロッシ | 7 | 6 | 2 |
| 4位 | マッキー・サル | 6 | 7 | 2 |
| 5位 | オララ・オトゥンヌ | 5 | 5 | 5 |
| 6位 | マリア・フェルナンダ・エスピノサ | 4 | 3 | 8 |
| 7位 | ミシェル・バチェレ | 2 | 6 | 7 |
| 8位 | イボンヌ・A・バキ | 0 | 8 | 7 |
※ストローポールは非公式・非公開の投票で、国連安保理が正式な結果を公表するものではありません。上記は外交筋や国連専門メディアなどに伝えられた集計結果です。

現在首位に立っているのが、南米ガイアナのキャロリン・ロドリゲス=バーケット氏です。
ロドリゲス=バーケット氏は1973年生まれで、ガイアナの元外相。
2020年からガイアナの国連常駐代表を務めています。
ガイアナでは女性として初めて外相に就任した人物で、先住民族出身者としても政府の要職を歴任してきました。
第1回ストローポールでは、
支持9・不支持2・意見なし4
で2位でした。
第2回では支持票そのものは8票へ1票減ったものの、前回首位だったグリンスパン氏が大きく票を減らしたため、首位に浮上しました。
ただし、正式な推薦に必要とされる9票には、まだ1票足りません。
コスタリカのレベカ・グリンスパン氏は、第1回投票では最も有力な候補とみられていました。
第1回の結果は、
支持10・不支持1・意見なし4
で、唯一10票の支持を獲得していました。
しかし第2回では、
支持7・不支持4・意見なし4
となり、支持が3票減少。
不支持も1票から4票へ増えています。
依然として有力候補ではありますが、最初の投票と比較すると勢いが後退した形です。
グリンスパン氏はコスタリカの元副大統領で、現在は国連貿易開発会議(UNCTAD)事務局長を務めています。
選出されれば、国連史上初の女性事務総長となります。
3位につけているのが、アルゼンチン出身のラファエル・グロッシ氏です。
グロッシ氏は現在、IAEA(国際原子力機関)の事務局長。
イラン核問題やウクライナのザポリージャ原発問題など、世界的な安全保障問題の最前線で外交交渉を行ってきた人物です。
第1回、第2回ともに支持は7票で変わっていません。
ただ、第2回では不支持票が2票から6票へ大きく増えました。
国連事務総長選では、単純に「支持票が多い候補」が勝つわけではないため、この不支持票がどの国から出ているのかが今後の大きなポイントになります。
今回、順位を上げた候補の一人がウガンダのオララ・オトゥンヌ氏です。
第1回では支持2票でしたが、第2回では支持5票まで増加しました。
オトゥンヌ氏は元国連事務次長で、国連事務総長特別代表などを務めた経験を持つ外交官です。
現段階では首位グループとの差がありますが、今後の投票でさらに支持を増やす可能性もあります。
かつて有力候補の一人とみられていたミシェル・バチェレ氏は、今回大きく支持を失いました。
第1回では支持6票でしたが、第2回では支持2票まで減少しています。
バチェレ氏はチリ大統領を2期務めたほか、国連女性機関(UN Women)事務局長、国連人権高等弁務官などを歴任した国際的に知名度の高い政治家です。
もともとチリ、ブラジル、メキシコによって推薦されましたが、2026年3月にチリ政府が推薦を撤回しました。
ただし、ブラジルとメキシコによる支持が残っているため、候補者として選考には残っています。
今回の支持票減少によって、今後候補を継続するかどうかも注目されます。
第1回投票後に新たに加わったのが、エクアドル出身の外交官イボンヌ・A・バキ氏です。
2026年8月17日にトンガから正式に推薦され、8人目の候補となりました。
バキ氏はエクアドル政府の閣僚や、駐米大使、駐仏大使などを歴任した外交官です。
しかし初参加となった第2回ストローポールでは、
支持0・不支持8・意見なし7
という厳しい結果となりました。

支持票だけを比較すると、候補者の勢力図の変化がよく分かります。
| 候補者 | 第1回 7月30日 |
第2回 8月21日 |
変化 |
|---|---|---|---|
| ロドリゲス=バーケット | 9 | 8 | -1 |
| グリンスパン | 10 | 7 | -3 |
| グロッシ | 7 | 7 | ±0 |
| マッキー・サル | 6 | 6 | ±0 |
| オトゥンヌ | 2 | 5 | +3 |
| エスピノサ | 5 | 4 | -1 |
| バチェレ | 6 | 2 | -4 |
| バキ | - | 0 | 新規 |
国連事務総長は、世界各国による単純な多数決で選ばれるわけではありません。
国連憲章第97条では、安全保障理事会の勧告に基づいて国連総会が任命すると定められています。
実質的に最も重要なのが、15カ国で構成される安全保障理事会です。
最終的に候補者が安保理の推薦を受けるためには、原則として15カ国のうち少なくとも9カ国の賛成が必要です。
しかし、それだけではありません。
国連事務総長選で非常に大きな影響力を持つのが、安保理常任理事国である、
アメリカ、中国、ロシア、イギリス、フランス
の5カ国です。
いわゆる「P5」と呼ばれる国々です。
候補者が14カ国から支持されていたとしても、常任理事国の1カ国が拒否権を行使すれば、安保理の正式な推薦を受けることはできません。
つまり次期事務総長になるには、
「9票以上を獲得すること」
だけでなく、
「米中露英仏のいずれからも拒否権を行使されないこと」
が極めて重要になります。
現在行われている初期段階のストローポールでは、常任理事国5カ国も非常任理事国10カ国も同じ投票用紙を使用しています。
そのため、例えばロドリゲス=バーケット氏に投じられた3票の「不支持」の中に、アメリカや中国、ロシアなど常任理事国の票が含まれているのかは分かりません。
ここが現在の順位だけでは「誰が本命なのか」を断定できない最大の理由です。
選考が進むと、常任理事国と非常任理事国で異なる色の投票用紙を使う「色分け投票」が行われるのが通例です。
これによって、ある候補者への不支持票が常任理事国から出たものなのかが分かるようになります。
どの常任理事国が反対したのかまでは分かりませんが、少なくとも「拒否権を持つ国から反対されている候補」であることは判明します。
そのため、今後の色分け投票が事実上の大きな山場となります。
国連では1945年の創設以来、これまで女性の事務総長は一人も誕生していません。
歴代9人の事務総長はすべて男性です。
今回の8候補のうち女性は、
ロドリゲス=バーケット、グリンスパン、エスピノサ、バチェレ、バキ
の5人。
現在1位と2位を女性候補が占めています。
そのため、2026年の選出では史上初の女性国連事務総長が誕生する可能性がこれまでになく高まっています。
国連事務総長には、法律で定められたものではありませんが、地域をある程度持ち回りにする慣例があります。
今回の選考では中南米・カリブ海地域から事務総長を選ぶべきだという考えが強くあります。
実際、現在の上位3候補は、
ガイアナ、コスタリカ、アルゼンチン
と、すべて中南米・カリブ海地域の候補です。
この点でも、現在首位のロドリゲス=バーケット氏やグリンスパン氏、グロッシ氏は比較的有利な位置にいると考えられます。
一方、セネガルのマッキー・サル氏とウガンダのオトゥンヌ氏はアフリカの候補です。
現時点では、正式な決定日は決まっていません。
今後も安保理によるストローポールが複数回行われ、候補者が徐々に絞り込まれるとみられます。
過去の選考の例からみると、2026年9月後半から10月ごろに有力候補が固まってくる可能性があります。
ただし、常任理事国同士の意見が対立し、どの候補にも合意できなければ選考が長期化する可能性もあります。
ロシア側からは、現在の候補で行き詰まった場合、今後さらに新しい候補者が登場する可能性も示唆されています。
最終的に安保理が1人の候補者を国連総会に推薦し、国連総会が任命します。
新しい国連事務総長の任期は2027年1月1日から始まる予定です。
第2回ストローポールだけを見れば、現在最も有力なのはキャロリン・ロドリゲス=バーケット氏です。
しかし、支持8票であり、正式推薦に必要な9票にはまだ達していません。
また、3票ある不支持票の中に常任理事国の票が含まれている可能性もあります。
グリンスパン氏も支持7票を維持しており、依然として有力候補。
グロッシ氏も7票を確保していますが、不支持が6票に増えている点が懸念材料です。
したがって現段階では、
ロドリゲス=バーケット氏が一歩リードし、グリンスパン氏とグロッシ氏が追う展開
と見るのが妥当でしょう。
ただし、国連事務総長選で最も重要なのは単純な支持票の多さではありません。
「常任理事国5カ国すべてが受け入れられる候補者は誰なのか」
という点が、最終的な勝敗を左右します。
今後、常任理事国の投票を識別できる段階に入ると、次期国連事務総長をめぐる本当の勢力図が見えてくることになります。
2026年8月21日に行われた第2回ストローポールでは、ガイアナのキャロリン・ロドリゲス=バーケット氏が支持8票で首位となりました。
続いて、コスタリカのレベカ・グリンスパン氏とアルゼンチンのラファエル・グロッシ氏がそれぞれ7票で追っています。
一方、第1回で10票を獲得していたグリンスパン氏が7票へ後退するなど、わずか3週間で支持状況は大きく変化しました。
現時点ではまだ決着には程遠く、今後は常任理事国5カ国の意向が最大の焦点になります。
2026年秋に向けてストローポールが繰り返される中で、候補者の撤退や新たな候補者の登場によって、現在の順位が大きく変わる可能性もあります。