甲子園で行われる高校野球を見ていると、球審や塁審はプロの審判員なのか、それともボランティアなのか気になる人もいるでしょう。大観衆が見守る一発勝負で判定を任されるだけに、専門職として給料を受け取っているようにも見えます。
結論から言うと、甲子園の審判員は基本的に「ボランティアとして活動するアマチュアの審判委員」です。プロ野球の審判員のように、審判を本業として給与を得ているわけではありません。
ただし、ここで注意したいのは、ボランティアだからといって交通費や宿泊費、食事代などもすべて自己負担とは限らないことです。大会や所属する都道府県高野連によって、必要経費や少額の手当が支給される場合があります。そのため、実態に最も近い表現は「営利目的の仕事ではなく、原則として無報酬に近いボランティア活動」といえるでしょう。
春の選抜高校野球大会や夏の全国高校野球選手権大会で審判を務めるのは、日本高等学校野球連盟や都道府県高等学校野球連盟で活動してきた審判委員です。
多くの審判委員は、会社員、公務員、教員、自営業者などとして普段は別の仕事を持っています。休日を利用したり、勤務先の理解を得て休暇を取ったりしながら、地方大会や甲子園の試合、講習会などに参加しています。
つまり、甲子園で審判をすることによって生活しているのではありません。長年にわたって技術を磨き、高校野球を支えたいという思いから活動している人たちです。
「ボランティア」と聞くと、金銭を一切受け取らず、会場までの交通費も本人が負担しているように思えるかもしれません。しかし、実費の支給と労働の対価としての報酬は分けて考える必要があります。
高校野球の審判員には、プロの審判員のような給与はありません。一方で、大会や地域によっては、次のような費用が支給または手配されることがあります。
こうした費用が出たとしても、一般的な意味での給料や、専門技術に見合った十分な報酬とは性格が異なります。交通費や宿泊費は、活動によって本人に大きな持ち出しが生じないようにするための必要経費です。
なお、手当や経費の扱いは大会、年度、所属する連盟などによって異なります。全国一律の金額として公表されているわけではないため、「甲子園の審判員は1試合で必ず○円を受け取る」と断定する情報には注意が必要です。
| 項目 | 甲子園・高校野球の審判員 | プロ野球の審判員 |
|---|---|---|
| 位置付け | アマチュア野球を支える審判委員 | プロ野球の審判を職業とする専門職 |
| 給与 | 原則として給与はない | 給与や出場に関する手当がある |
| 交通費など | 大会や連盟の規定により支給・手配される場合がある | 所属組織の規定に基づいて扱われる |
| 本業 | 別の仕事を持つ人が多い | 審判が本業 |
| 甲子園に立つまで | 都道府県高野連などで経験を積み、推薦や委嘱を受ける | 採用後に育成・審査を経て公式戦を担当する |
甲子園の審判員はボランティアですが、判定に求められる正確さや責任が軽いわけではありません。全国中継される試合で、瞬時にアウト、セーフ、ストライク、ボールなどを判断しなければならず、極めて高い集中力と技術が必要です。

甲子園の審判員は、一般の大会スタッフのように短期間のボランティア募集へ応募すれば担当できるものではありません。
まず都道府県高野連の審判委員として活動し、講習や練習試合、地方大会などで経験を積むのが一般的です。ルールを覚えるだけでなく、打球や走者に応じた位置取り、他の審判員との連携、発声、ジェスチャー、試合の進行なども身につける必要があります。
日本高野連によると、春夏の甲子園では、主催者が委嘱した審判委員と、都道府県から派遣された審判委員が一緒に試合を担当しています。全国審判講習会には各都道府県高野連から推薦された審判委員が参加し、規則改正の確認や実戦形式の研修を行っています。
地方大会で長く経験を積み、技術、判断力、人柄などを評価された審判委員にとって、甲子園は簡単には届かない大舞台なのです。
高校野球の審判委員には、試合の判定だけでなく、選手がスポーツマンシップに沿って行動できるよう促し、試合を安全かつ円滑に進める役割もあります。
日本高野連は、審判委員について、正確な判定に加えて選手を励まし、適正な行動を促しながら、きびきびとした試合を選手とともにつくる存在だと説明しています。高校生の教育活動として行われる高校野球ならではの役割といえるでしょう。
また、真夏の地方大会や甲子園では、審判員自身にも熱中症や負傷の危険があります。審判活動中のけがや熱中症に備える保険制度も用意されており、安全面への対応も進められています。

大きな責任を負うにもかかわらず、審判員が活動を続ける理由は人によって異なります。元高校球児として競技に恩返しをしたい人、選手の成長を支えたい人、審判技術を追求することに魅力を感じる人など、さまざまです。
一方で、ボランティアを前提とした仕組みには課題もあります。本業との両立が難しいことに加え、休日や休暇を長期間使う必要があり、家族や勤務先の理解も欠かせません。審判員の高齢化や若い担い手の不足は、各地の高校野球で問題になっています。
特に地方大会では、多くの球場で同時に試合が行われるため、甲子園以上に多数の審判員が必要です。全国大会を支える審判員を育てるためにも、地域で活動する人材の確保と育成が重要になります。
2026年夏の第108回全国高校野球選手権大会では、全国大会として初めて女性の審判委員5人が起用されました。8月5日の開幕試合では、森田真紀審判委員がグラウンドに立ち、女性審判員として全国大会で初めてジャッジしました。
日本高野連は女性審判員の育成や全国講習会への参加を進めています。性別にかかわらず、意欲と経験を持つ人が審判を目指せる環境を広げることは、将来の担い手不足を改善するうえでも重要な動きです。
審判員がボランティアだからといって、明らかなミスまで無条件に受け入れなければならないわけではありません。大会側が講習や検証を重ね、判定技術と運営方法を改善していくことは必要です。
しかし、映像を繰り返し確認できる視聴者と違い、審判員は一度しか起きないプレーを、その場で最も適切な位置から瞬時に判定します。個人を特定してSNSで攻撃したり、人格を否定したりする行為は、建設的な批判とはいえません。
高校球児に敬意を払うのと同じように、仕事や家庭と両立しながら大会を支える審判員にも、節度ある姿勢が求められます。
プロ野球の審判員のような給与はありません。基本的にはボランティアとしての活動です。ただし、交通費、宿泊費、食事代、少額の手当などが支給・手配される場合があります。
高校野球経験者は多いものの、元高校球児でなければ絶対になれないというわけではありません。必要なのは、ルールや審判技術を学び、講習と実践を重ねて信頼を得ることです。
別の本業を持つ審判員が多いため、勤務先の休暇制度を利用したり、職場と調整したりして参加します。甲子園に立つには、本人の努力だけでなく、勤務先や家族の理解も必要です。
すぐに甲子園を担当することはできません。都道府県高野連などで審判活動を始め、講習や地方大会で経験を積み、推薦や委嘱を受ける必要があります。
甲子園の審判員は、プロとして給与を受け取る職業審判ではなく、基本的にボランティアで高校野球を支えるアマチュアの審判委員です。
ただし、必要経費や少額の手当が出る場合もあるため、「完全に無収入で、交通費や宿泊費もすべて自腹」と一括りにするのは正確ではありません。給料を目的とする活動ではない一方、試合では高い技術と重い責任を担っています。
甲子園の熱戦は、選手や監督だけで成り立っているわけではありません。本業と両立しながら長年経験を積み、グラウンドで瞬時の判断を重ねる審判員もまた、大会を支える欠かせない存在です。