夏の甲子園や春のセンバツを見ていると、試合開始の「プレーボール」とともに球場に大きなサイレンが鳴り響きます。
そして9回が終わり、試合終了となった際にも再びサイレンが鳴ります。
高校野球ではあまりにも当たり前の光景ですが、
「そもそも、なぜ野球の試合でサイレンを鳴らすの?」
と疑問に思ったことがある人も多いのではないでしょうか。
結論からいうと、甲子園のサイレンには「試合の開始や終了を球場全体に広く知らせる」という役割があります。
ただし、実は「いつ、なぜサイレンを鳴らす習慣が始まったのか」という正確な起源については、はっきり分かっていません。
甲子園でサイレンを鳴らす基本的な目的は、試合の開始や終了などを広い球場内に一斉に知らせるためです。
現在なら大型ビジョンや場内アナウンス、スマートフォンなどで簡単に試合の進行状況を確認できます。
しかし、高校野球の全国大会が始まったのは1915年。甲子園球場が開場したのも1924年です。
当時は当然ながら現在のような通信手段はありません。
巨大な球場だけでなく、その周辺にいる人たちにまで「試合が始まった」「試合が終わった」という情報を瞬時に伝える方法として、遠くまで響くサイレンは非常に分かりやすい手段だったと考えられています。
甲子園でサイレンを鳴らす習慣が始まった正確な理由については記録が残っていません。
ただ、有力とされているのが、球場に関係する多くの人に試合の進行状況を伝えるためだったという説です。
昔の甲子園では、球場の中にいる観客やスタッフだけが試合に関わっていたわけではありません。
など、多くの人が試合の進行に合わせて動く必要がありました。
そこで球場全体、さらに周囲まで聞こえるサイレンを鳴らせば、試合開始や試合終了を一度に知らせることができます。
特に試合終了後は、大勢の観客が一斉に甲子園駅などへ向かいます。
そのため、鉄道側が観客の移動に備えるための合図としてもサイレンが役立っていたのではないか、という説もあります。
ただし、これはサイレンが導入された理由として正式に確認されているわけではなく、歴史的背景から考えられている説の一つです。

これについては意外なことに、正確な開始時期は分かっていません。
高校野球の歴史は非常に長いものの、サイレンについて詳しく記録した資料はほとんど残っていないためです。
ただし、少なくとも1936年(昭和11年)には甲子園でサイレンが使用されていたことが新聞記事から確認されています。
1936年8月に行われた全国中等学校優勝野球大会の優勝決定戦について、試合開始を告げるサイレンが鳴ったことを伝える当時の新聞記録が残っています。
つまり甲子園のサイレンは、少なくとも90年近く続いている非常に古い伝統ということになります。
長い甲子園の歴史の中には、サイレンが鳴らされなかった時期もありました。
1937年(昭和12年)の第23回全国中等学校優勝野球大会では、試合開始・終了の際にサイレンの代わりに進軍ラッパが使用されたとされています。
この年は7月に盧溝橋事件が発生し、日中戦争へとつながっていった時代です。
その後、戦争の拡大によって全国大会そのものが開催できなくなった時期もありました。
甲子園のサイレンは単なる野球の演出ではなく、日本の近現代史とも重なる長い歴史を持っているのです。
テレビ中継で聞こえてくる甲子園の「ウーーー」という独特の音。
スピーカーから録音された音を流しているようにも聞こえますが、実はそうではありません。
甲子園では実際のモーターサイレンが使用されています。
甲子園で使用されているサイレンを手掛けているのは、兵庫県西宮市にあるサイレンメーカーの阪国電機です。
甲子園球場だけでなく、高校野球の地方大会が開催される全国各地の球場でも同社のサイレンが使用されています。
そのため「高校野球といえばサイレン」という文化は、甲子園だけでなく地方大会にも広がっています。
甲子園のサイレンというとプレーボールとゲームセットの印象が強いですが、実際にはそれ以外のタイミングでも使用されています。
高校野球では主に、
などの際にサイレンが鳴ります。
試合の進行を球場全体に知らせる合図として現在でも使われているわけです。

現在では、試合開始や終了を知らせるだけならサイレンである必要はありません。
大型ビジョンや場内放送があり、観客もスマートフォンで情報を確認できます。
それでもサイレンが残っている大きな理由の一つが、高校野球の伝統として定着していることでしょう。
長年高校野球を見ている人にとって、あのサイレンは単なる合図ではありません。
試合開始時のサイレンを聞けば、
「いよいよ試合が始まる」
という緊張感が生まれます。
一方、試合終了時のサイレンは、勝ったチームにとっては次の試合への始まりである一方、負けたチームにとっては高校野球最後の瞬間になることもあります。
そのため、甲子園のサイレンは高校野球を象徴する「音」の一つになっています。
なお、夏の甲子園では8月15日の正午にもサイレンが鳴ります。
こちらは試合開始・終了を知らせるサイレンとは意味が異なります。
8月15日は終戦の日です。
全国戦没者追悼式に合わせ、甲子園でも正午にサイレンを鳴らし、選手や審判、大会関係者、観客らが黙とうを行います。
試合中の場合でもプレーを中断して黙とうすることがあります。
戦争によって高校野球の大会そのものが中断された歴史を考えると、甲子園のサイレンには「野球を普通にできる平和」という意味を重ねて聞く人も少なくありません。
甲子園で試合開始・終了時にサイレンを鳴らすのは、基本的には試合の開始や終了を球場全体に広く知らせるためです。
ただし、「いつ、なぜサイレンを使い始めたのか」という正確な起源については分かっていません。
通信手段がほとんどなかった時代には、球場内外の選手、スタッフ、応援団、業者、鉄道関係者などに試合の進行を伝えるため、遠くまで響くサイレンが便利だったと考えられています。
少なくとも1936年にはすでに使われていたことが確認されており、現在では実用的な合図という役割だけでなく、甲子園そして高校野球を象徴する伝統的な音になっています。
テレビで何気なく聞いている甲子園のサイレンですが、その背景を知ってから聞くと、少し違って聞こえてくるかもしれません。