最近、SNSやYouTubeで
といった内容が拡散しています。拡散元とみられるYouTube動画のタイトルにも、同種の強い断定が使われています。
しかし、こうした“派手な断定”ほど、まず一次情報と大手報道を確認する必要があります。
もし日本政府が外国国債を7兆円規模で売却したなら、
が必ず報じるレベルの重大ニュースです。
ところが、財務省の外貨準備の公式公表には「中国国債7兆円売却」に関する記述は存在しません。外貨準備総額は公表されますが、国別・銘柄別の売買を政府が突然SNSでだけ発表することはありません。
また、ReutersやBloombergなど主要通信社にも、日本政府が中国国債を大規模に売却したという報道は見当たりません(見つかるのはYouTubeやSNS投稿、個人ブログ中心)。
→ つまり、一次情報・大手報道の裏付けがゼロです。
7兆円は、ざっくり 約450~500億ドル規模(為替により変動)です。これは「試験的に少し保有している」レベルではなく、国家の運用方針を左右する巨大ポジションです。
一方で日本の公式外貨準備は約1.27兆ドル規模。その中身は伝統的に
が中心であり、中国国債の大規模保有・大規模売却があれば国際金融市場のニュースになるはずです。
報道が無い時点で、7兆円という数字は誇張・作話に近いと考えるのが自然です。
今回のデマには、次のような「事実の断片を誤ってつなげた」可能性が高いです。
GPIFは近年、中国株や中国債券をベンチマークから外す動きを進めています。ただしこれは
によるもので、「日本政府が中国国債を7兆円売った」こととは別物です。
指数から外した=即座に全部売る、という意味でもありません。(運用は段階的・技術的に行われます。)
SNSや個人ブログで「中国国債の購入停止」なる話が出ていますが、これも大手報道・公式発表で確認できません。
さらに、
は全く別の話です。
“購入停止の噂”を、YouTube側が勝手に**「7兆円売却」にジャンプさせた**可能性が高いです。
YouTubeでは、
など、セットで語られることが多いですが、これも信頼できる統計・国際報道で確認できません。
もし人民元が「60%急落」していれば、為替市場史に残る事件であり、主要メディアが速報レベルで報じます。現実にそうした報道はありません。
以上を踏まえると、
✅ 「日本政府が中国国債を7兆円売却した」という事実は確認できない
✅ 裏付けはYouTube/SNSのみで、一次情報・大手報道がゼロ
✅ GPIFの指数変更など“別の事実”を混同して誇張した可能性が高い
よって、現段階では
「デマ、または極めて悪質なミスリード」
と判断するのが妥当です。
ここは少し丁寧に。
日本の当局や公的機関が、中国国債に投資する“枠組み”や“可能性”が議論された歴史はあります。たとえば2011年前後の日中金融協力の文脈で、日本側が中国国債に投資し得ることは政策文書でも触れられています。
ただし、
は公式には細かく公表されません。
だからこそ、「7兆円売った」と断定する側に証拠責任があるわけですが、その証拠が出ていない、という状況です。
SNS発の“外交・金融の大事件”は、次でふるいにかけるとかなり防げます。
今回の噂は、全部アウト寄りです。
「日本政府が中国国債を7兆円売却した」という話は、
という三重苦で、信頼できるファクトに到達しません。
現時点ではデマと考えて距離を取るべき情報です。