近年、日本語圏のSNSや動画コメント欄、掲示板などで
「中国ではVTuberの顔出しが義務化されたらしい」
「もう中国ではバーチャル配信はできない」
といった情報や断定的な書き込みが目立つようになっています。センセーショナルで分かりやすい内容のため、引用や又聞きの形で急速に広まり、「事実」として受け取られているケースも少なくありません。
本記事では 中国 VTuber 顔出し 義務 化 という噂について、法律・行政規制・配信プラットフォームの運用実態・現地での活動状況をもとに、情報を一つずつ整理し、ファクトチェックを行います。
結論から言えば、2025年時点で「中国でVTuberに顔出しを義務づける法律・行政規制・統一ルールは確認されていません」。この噂は、複数の制度や一部事例、そして中国特有の配信規制が混同された結果生まれた デマである可能性が非常に高い と考えられます。
最初に、本記事の要点を簡潔に整理します。
つまり、「中国=VTuber顔出し義務化」という単純な理解は事実と異なります。
この噂が生まれた背景には、主に3つの要因があります。それぞれを切り分けて見ていくことが重要です。
中国では、インターネット上の秩序維持や未成年保護、犯罪防止を目的として、
の双方に対し、プラットフォーム利用時に
を登録させる 実名認証制度 が広く導入されています。
ただし、これはあくまで 運営側や行政が本人確認を行うための内部手続き です。視聴者や一般ユーザーに対して、
が公開されることはありません。
👉 「身分証を提出する=顔出し配信をする」ではありません。この点が誤解されやすく、噂の出発点になったと考えられます。
中国の配信プラットフォームでは、配信内容に応じて細かくジャンル分けが行われています。
代表的なものとしては、
などがあります。
このうち ライブコマース(商品販売) の分野では、
といった理由から、
実写配信(真人配信) が求められる、あるいは推奨されるケースがあります。
これが拡大解釈され、
「中国では配信者は顔出ししないと活動できない」
「VTuberも対象になった」
といった誤解につながった可能性があります。しかし、これは 特定ジャンルの商業配信に限った話 であり、VTuber全体に当てはまるものではありません。
中国では、未成年者への影響を重く見て、配信業界全体に対する規制が段階的に強化されてきました。
具体的には、
などが挙げられます。
こうした動きを背景に、
という憶測が広がり、
「その流れで顔出しが義務化された」
という 事実とは異なるスト疑的ストーリー が作られ、拡散した可能性があります。
実際の配信状況を見ると、「顔出し義務化」説とは矛盾する事実が確認できます。
中国国内では現在も、
VTuber・Vライバーが 多数活動を継続 しています。
特に、
などの主要プラットフォームでは、
が今も普通に行われています。
仮に「顔出し義務化」が本当に実施されていれば、
が起きていないのは不自然です。この点からも、噂の信憑性は低いと言えます。
ここまでの情報を整理すると、以下のようになります。
| 項目 | 実際の状況 |
|---|---|
| 顔出し義務 | ❌ 存在しない |
| 実名登録 | ⭕ 運営・当局向けにのみ提出 |
| VTuber活動 | ⭕ 現在も可能・継続中 |
| 視聴者への実名公開 | ❌ 一切なし |
| 実写配信の強制 | ❌ なし(ジャンル・商業配信を除く) |
「登録情報の厳格化」と「顔出しの強制」は、全く別の概念であることが分かります。
日本語圏でこの種の情報が広まりやすい理由として、次の点が考えられます。
特に、
「中国らしい厳しい規制だから本当らしい」
という先入観が働き、検証されないまま定説のように扱われてしまった 可能性があります。
今後、中国の配信規制が変更・強化される可能性は否定できません。しかし、
「すでに顔出し義務化されている」
「VTuberは中国では活動できない」
といった断定的な情報には、引き続き注意が必要です。
※本記事は2025年時点で確認可能な公的情報、配信プラットフォームの運用実態、公開されている活動事例をもとに作成しています。