楯状火山とは、粘り気の少ない溶岩が広い範囲に流れ広がってできる、なだらかな形の火山のことです。一般的には「盾状火山」と書かれることが多く、英語では shield volcano と呼ばれます。
「楯」も「盾」も、防具の「たて」を意味する漢字ですが、地学分野では「盾状火山」という表記の方がよく使われます。この記事では、検索されやすさと読みやすさを考え、主に「盾状火山」と表記しながら、テーマである「楯状火山」と同じ意味として説明していきます。
盾状火山の代表例として最も有名なのは、ハワイ島のマウナロアやキラウエアです。どちらも巨大な火山ですが、富士山のように急な円すい形ではなく、ゆるやかに広がる大きな山体を持っています。これは、流動性の高い玄武岩質の溶岩が、遠くまで薄く広がって流れるためです。
日本では、ハワイのような巨大な盾状火山は多くありませんが、伊豆大島の三原山周辺、八丈島、鳥海山の古い火山体、阿蘇火山の一部など、盾状火山的な性質を持つ火山や、なだらかな溶岩地形を持つ火山があります。
この記事では、盾状火山の特徴、成層火山との違い、日本と世界の代表的な例、噴火の特徴、学習上のポイントまで詳しく解説します。
楯状火山、つまり盾状火山とは、低く広くなだらかな形をした火山です。
名前の由来は、地面に置いた盾のように、ゆるやかに盛り上がった形をしていることにあります。富士山のように高く鋭い円すい形になるのではなく、山全体が広いすそ野を持ち、なだらかに広がって見えるのが特徴です。
盾状火山の主な特徴は、次の通りです。
盾状火山は、火山灰や軽石が積み重なって急な山になるというより、何度も流れ出した溶岩が薄く広く重なってできる火山です。
そのため、見た目は「山」というより「大きく広がった高原」や「なだらかな巨大な丘」のように見える場合もあります。

盾状火山がなだらかな形になる最大の理由は、溶岩の粘り気が少ないことです。
火山の形は、マグマの性質によって大きく変わります。マグマには、さらさらしたものもあれば、粘り気の強いものもあります。盾状火山で多いのは、玄武岩質のマグマです。
玄武岩質マグマは比較的さらさらしており、地表に出ると遠くまで流れやすい性質があります。溶岩が火口の近くに厚く積もるのではなく、広い範囲へ薄く流れていくため、山全体がゆるやかに広がります。
一方、成層火山では、より粘り気のあるマグマや火山灰、軽石などが火口周辺に積み重なりやすいため、急な斜面を持つ円すい形の山になりやすいです。
つまり、盾状火山と成層火山の形の違いは、単なる見た目の違いではありません。地下から上がってくるマグマの性質、噴火の仕方、溶岩の流れ方の違いが、山の形に表れているのです。

盾状火山を理解するには、成層火山との違いを見るとわかりやすくなります。
成層火山は、溶岩、火山灰、軽石、火山弾などが何度も積み重なってできる火山です。富士山、浅間山、桜島、御嶽山、ヴェスヴィオ火山、マヨン山などが代表例です。
一方、盾状火山は、粘り気の少ない溶岩が何度も流れ出し、広く薄く重なってできる火山です。ハワイのマウナロアやキラウエアが代表例です。
| 比較項目 | 盾状火山 | 成層火山 |
|---|---|---|
| 山の形 | 低く広くなだらか | 高く急な円すい形になりやすい |
| 主なマグマ | 玄武岩質が多い | 安山岩質などが多い |
| 溶岩の性質 | 粘り気が少なく流れやすい | 比較的粘り気が強い |
| 噴火の特徴 | 溶岩流が中心になりやすい | 爆発的噴火も起こりやすい |
| 代表例 | マウナロア、キラウエア | 富士山、浅間山、ヴェスヴィオ火山 |
| 災害の特徴 | 溶岩流による被害が大きい | 火砕流、噴石、降灰、泥流などが多様 |
ただし、この分類は単純に分けられるものではありません。実際の火山には、盾状火山的な部分と成層火山的な部分をあわせ持つものもあります。また、火山の成長段階によって形が変わる場合もあります。
そのため、「この火山は完全に盾状火山」「この火山は完全に成層火山」と機械的に分けるより、どのような溶岩を出し、どのような地形をつくっているかを見ることが大切です。

マウナロアは、ハワイ島にある世界最大級の盾状火山です。ハワイ語で「長い山」という意味を持つ名前の通り、非常に大きく、広い山体を持っています。
マウナロアの標高は約4,169メートルですが、海底からの高さを考えると、実際には非常に巨大な火山です。海面上に見えている部分だけでなく、海底から大きく盛り上がっているため、地球上でも最大級の火山体として知られています。
マウナロアの特徴は、富士山のように鋭くそびえる山ではなく、非常になだらかな斜面を持つことです。山麓が広く、遠くから見ると巨大な台地のようにも見えます。
この形は、玄武岩質の溶岩が何度も流れ出し、広い範囲に薄く重なってできたものです。マウナロアの溶岩は流動性が高く、噴火すると長い距離を流れることがあります。
マウナロアは、盾状火山の代表例として地学の教科書にもよく登場します。盾状火山の「なだらかで広い」という特徴を理解するうえで、最もわかりやすい火山の一つです。

キラウエアは、ハワイ島にある非常に活動的な盾状火山です。マウナロアと同じく、玄武岩質の溶岩を流す火山として知られています。

キラウエアは、世界でも特に観測や研究が進んでいる火山の一つです。噴火によって溶岩流が発生し、住宅地や道路に影響を与えたこともあります。

キラウエアの噴火では、赤く熱い溶岩が地表を流れる様子がよく知られています。溶岩が海に流れ込むと、大きな水蒸気が上がり、新しい陸地をつくることもあります。
盾状火山の噴火は、成層火山の大爆発とは異なり、比較的静かに溶岩が流れ出すイメージがあります。ただし、安全という意味ではありません。溶岩流は建物、道路、森林、農地を焼きながら進み、地域社会に大きな被害を与えることがあります。
キラウエアは、盾状火山の噴火がどのように地形をつくり、同時に人々の生活に影響を与えるのかを学ぶうえで重要な例です。

マウナケアは、ハワイ島にある火山で、標高は約4,207メートルです。ハワイ島の最高峰であり、天文台が多く設置されている山としても知られています。
マウナケアは現在、マウナロアやキラウエアほど活動的ではありませんが、火山として形成された山です。火山の成長段階としては、盾状火山として成長した後、活動が衰えていった火山と考えられます。
マウナケアの山頂付近には、火山活動の痕跡である小さな火砕丘も見られます。これは、火山が長い時間の中で一つの形に固定されるのではなく、成長段階や噴火様式の変化によって地形が変わることを示しています。
マウナケアは、盾状火山が単に「今も溶岩を流している火山」だけではなく、長い火山活動の歴史を持つ巨大な山体として理解できる例です。
また、マウナケアは文化的にも重要な山です。ハワイ先住民にとって神聖な場所とされる一方で、天文学の観測拠点としても国際的に知られています。火山地形、文化、科学が交差する場所だといえます。

ハレアカラは、ハワイのマウイ島にある大きな火山です。名前はハワイ語で「太陽の家」を意味するとされ、山頂から見る日の出の美しさで有名です。
ハレアカラも、ハワイの盾状火山の代表例の一つです。マウナロアやキラウエアと同じく、玄武岩質の溶岩によって大きな山体が形成されました。
ハレアカラの山頂付近には、巨大な火口のように見える地形があります。厳密には、単純な爆発火口ではなく、浸食や噴火活動が複雑に関係してできた地形と考えられます。
ハレアカラは観光地としても人気が高く、山頂付近では独特の植生や火山地形を見ることができます。なだらかな山体と荒々しい火山地形が組み合わさっている点が魅力です。
ハレアカラは、盾状火山が長い時間をかけて成長し、浸食や新しい噴火によって複雑な地形を持つようになることを示す例です。

ハワイ諸島は、太平洋プレートがホットスポットの上を移動することで形成された火山列島です。ハワイ島のマウナロアやキラウエアは比較的新しい火山ですが、カウアイ島やニイハウ島はより古い火山島です。
これらの島々も、もともとは盾状火山として成長しました。しかし、長い時間が経つにつれて噴火活動が弱まり、雨や川、波による浸食が進みました。
その結果、現在のカウアイ島では、深い谷や険しい崖、美しい海岸地形が発達しています。盾状火山として生まれた島が、長い時間をかけて浸食され、複雑な景観を持つようになったのです。
この例からわかるのは、盾状火山は形成された直後の姿だけでなく、その後の浸食や地形変化も含めて理解する必要があるということです。

スキャルドブレイダーは、アイスランドにある盾状火山です。アイスランド語の地名で、日本語表記には揺れがありますが、地学の文脈では盾状火山の典型例として紹介されることがあります。
アイスランドは、大西洋中央海嶺とホットスポットが重なる特別な場所にあります。そのため、玄武岩質の溶岩を伴う火山活動が非常に活発です。
スキャルドブレイダーは、ゆるやかな斜面を持つ盾状火山で、溶岩が広く流れ広がってできた地形をよく示しています。ハワイの火山ほど巨大ではありませんが、盾状火山の基本的な形を観察しやすい例です。
アイスランドの火山活動は、割れ目噴火、溶岩台地、盾状火山など、玄武岩質の火山地形を学ぶうえで非常に重要です。

エルタ・アレ火山は、エチオピア北東部のアファール低地にある火山です。盾状火山として知られ、長期間存在する溶岩湖で有名です。
アファール低地は、アフリカ大陸が引き裂かれつつある場所で、地殻が薄くなり、火山活動が起こりやすい地域です。エルタ・アレ火山は、そのような大地の裂け目に関係した火山活動を示す重要な例です。
エルタ・アレの溶岩湖では、赤く熱い溶岩が火口内にたまり、表面が割れたり動いたりする様子が見られます。これは、地球内部のマグマ活動を直接感じさせる現象です。
盾状火山というとハワイのイメージが強いですが、エチオピアにも代表的な盾状火山があります。エルタ・アレは、プレートが広がる場所にできる火山活動を理解するうえで重要です。

ガラパゴス諸島は、エクアドルの西方、太平洋上にある火山島の集まりです。ダーウィンの進化論と関係する場所として有名ですが、地形的には多くの島が火山活動によって形成されています。
ガラパゴス諸島の火山には、盾状火山としての性質を持つものが多くあります。代表的なものには、イサベラ島のシエラ・ネグラ火山、フェルナンディナ島の火山などがあります。
これらの火山は、ハワイと同じようにホットスポットに関係していると考えられています。玄武岩質の溶岩が流れ、広い火山島を形成しました。
ガラパゴス諸島の火山は、火山活動が島の形成だけでなく、生物の進化や分布にも深く関わっていることを示しています。新しい溶岩地形には、時間をかけて植物が入り込み、やがて動物たちの生息地になっていきます。
盾状火山は、地形をつくるだけでなく、生態系の土台をつくる存在でもあります。

ニイラゴンゴ火山は、コンゴ民主共和国にある火山です。一般に成層火山として紹介されることもありますが、非常に流動性の高い溶岩や溶岩湖で知られ、盾状火山的な特徴も語られる火山です。
この火山では、溶岩が非常に速く流れることがあり、過去には都市部に大きな被害を与えました。特にゴマ市周辺では、溶岩流による災害が深刻な問題となっています。
ニイラゴンゴは、火山の分類が単純ではないことを示す例です。見た目や構造、噴出物、噴火様式によって、どの分類に重点を置くかが変わる場合があります。
盾状火山の記事でニイラゴンゴを扱う場合は、「典型的な盾状火山」というより、「流動性の高い溶岩や溶岩湖を持つ火山として関連して理解できる例」として紹介するのが正確です。

盾状火山の例として、地球以外の天体も紹介できます。特に有名なのが、火星にあるオリンポス山です。
オリンポス山は、太陽系最大級の火山として知られています。非常に巨大で、地球上の火山とは比べものにならない規模を持っています。
オリンポス山は、なだらかな斜面を持つ巨大な盾状火山です。火星では、地球のようなプレート運動が活発ではなかったため、同じ場所で長期間にわたって火山活動が続き、巨大な火山が形成されたと考えられています。
地球の盾状火山を学んだあとにオリンポス山を見ると、盾状火山という形が地球だけに限られたものではないことがわかります。
オリンポス山は、火山地形を惑星科学の視点から理解するうえでも重要な例です。
日本では、ハワイのマウナロアのような典型的で巨大な盾状火山はあまり多くありません。日本列島の火山は、プレートの沈み込みに関係する成層火山が多いためです。
ただし、日本にも盾状火山的な性質を持つ火山や、玄武岩質の溶岩が広がってできたなだらかな火山地形はあります。ここでは、代表的に紹介されることのある火山や、盾状火山の理解に役立つ日本の火山を取り上げます。

伊豆大島は、東京都に属する伊豆諸島の火山島です。中央部には三原山があり、活火山として知られています。
伊豆大島は、玄武岩質の溶岩を噴出する火山であり、比較的流動性の高い溶岩によって形成された地形が見られます。そのため、日本で盾状火山的な性質を学ぶうえで重要な火山の一つです。
三原山の噴火では、溶岩流が発生することがあります。1986年の噴火では、割れ目噴火や溶岩流が発生し、全島避難が行われました。
伊豆大島の火山地形を見ると、富士山のような急な円すい形の山とは違い、溶岩が広がってつくった地形が島全体に関係していることがわかります。
伊豆大島は、観光地としても人気があり、火口、溶岩地形、火山砂漠、地層大切断面など、火山の成り立ちを学べる場所が多くあります。

八丈島は、東京都の伊豆諸島に属する火山島です。島には八丈富士と三原山があります。
八丈富士は、美しい円すい形をしているため、見た目には成層火山的に見える部分もあります。しかし、伊豆諸島の火山は玄武岩質の溶岩を伴うものが多く、盾状火山的な性質を理解するうえでも重要です。
八丈島では、溶岩が流れてできた地形、火山灰やスコリアが積もった地形など、さまざまな火山地形を見ることができます。
日本の火山を分類する場合、ハワイの盾状火山のように単純に説明できないことがあります。八丈島のような火山島は、玄武岩質の活動、火砕丘、溶岩地形などが組み合わさった複雑な火山として理解するのがよいでしょう。

三宅島は、東京都の伊豆諸島にある火山島です。活火山であり、過去に何度も噴火を繰り返してきました。
三宅島の火山活動は、玄武岩質のマグマと関係が深く、溶岩流やスコリア丘などの地形が見られます。島全体が火山活動によって形成されており、盾状火山的な広がりを持つ地形も理解しやすい場所です。
2000年の噴火では、山頂部が大きく陥没し、大量の火山ガスが放出されました。このため、島民の長期避難が行われました。
三宅島は、盾状火山の典型例というより、玄武岩質の火山島として、流動性の高い溶岩と火山ガス、陥没地形などを学ぶうえで重要な例です。
日本の火山は、成層火山、火砕丘、溶岩流、カルデラ、火山島などが複雑に組み合わさっていることが多いため、三宅島のような例を通して、単純な分類だけでは見えない火山の多様性を理解できます。

阿蘇火山は、熊本県にある巨大な火山です。阿蘇といえば、世界有数の大きさを持つカルデラで知られています。
阿蘇火山そのものを単純に盾状火山と呼ぶのは正確ではありません。阿蘇は巨大カルデラ火山であり、中央火口丘群を持つ複雑な火山です。
しかし、阿蘇周辺には広く流れた溶岩や火山噴出物によってできた地形があり、なだらかな火山地形や広い火山性台地を見ることができます。そのため、盾状火山と同じように「溶岩が広がって地形をつくる」という視点から学ぶことができます。
阿蘇では、草原、火口、火山灰地形、溶岩地形、カルデラ内の集落など、火山と人間生活の関係が非常にわかりやすく見られます。
阿蘇火山は、盾状火山の典型例ではありませんが、広域にわたる火山地形を理解するうえで重要な日本の火山です。

鳥海山は、山形県と秋田県にまたがる火山です。一般には成層火山として紹介されることが多い山ですが、その火山体の形成史を見ると、古い時代には広がりのある火山体をつくった段階もあります。
火山は、長い時間の中で活動の仕方を変えることがあります。初期には比較的広くなだらかな火山体をつくり、その後に山頂部や火口周辺で成層火山的な成長をする場合もあります。
鳥海山は「出羽富士」と呼ばれる美しい山で、成層火山としての印象が強いですが、火山の成長史を考えると、単純に一つの分類だけで説明するのは難しい面があります。
このような例は、火山分類を学ぶうえで重要です。盾状火山、成層火山、溶岩ドーム、火砕丘などは、教科書上では分けて説明されますが、実際の火山では複数の性質が重なっていることがあります。

月山は、山形県にある火山です。一般的には成層火山や複成火山として扱われることがありますが、なだらかな山容や広い火山地形を持つため、盾状火山的な地形を考えるうえでも参考になります。
月山は、出羽三山の一つとして信仰の対象になってきた山です。山岳信仰、自然、火山地形が結びついた日本の代表的な山の一つです。
月山のような山を見ると、火山の形は必ずしも富士山のような円すい形だけではないことがわかります。なだらかに広がる火山地形も、火山活動によって形成された重要な地形です。
ただし、月山を典型的な盾状火山として紹介する場合には注意が必要です。ハワイのマウナロアのような明確な盾状火山とは異なり、日本の火山地形の多様性を示す例として扱うのが適切です。
盾状火山の噴火では、溶岩流が大きな役割を果たします。
玄武岩質の溶岩は粘り気が少なく、地表に出ると比較的流れやすい性質があります。そのため、火口からあふれ出した溶岩が斜面を下り、広い範囲に広がります。
ハワイのキラウエアでは、溶岩が住宅地や道路に流れ込み、建物を焼失させる被害が発生したことがあります。溶岩流は、火砕流のように一瞬で襲ってくるとは限りませんが、進路上にあるものを破壊しながら進みます。
盾状火山では、山頂火口だけでなく、山腹の割れ目から溶岩が噴き出すことがあります。これを割れ目噴火といいます。
割れ目噴火では、地面にできた長い割れ目から溶岩が噴き出し、複数の場所から同時に溶岩が流れることがあります。アイスランドやハワイでは、このような噴火がよく見られます。
割れ目噴火は、噴火地点が一つの火口に限られないため、被害範囲の予測が難しくなることがあります。
盾状火山は、成層火山に比べると爆発的噴火が少ないと説明されることが多いです。しかし、爆発的噴火がまったく起こらないわけではありません。
地下水とマグマが接触した場合、水蒸気爆発やマグマ水蒸気爆発が起こることがあります。また、火山ガスの量や噴火条件によっては、火山灰を伴う噴火が発生することもあります。
したがって、「盾状火山はおとなしい火山」と単純に考えるのは危険です。噴火の仕方は成層火山とは異なりますが、溶岩流、火山ガス、地割れ、降灰などのリスクがあります。

盾状火山で最も目立つ災害の一つが溶岩流です。
溶岩流は、進む速度が比較的遅い場合もありますが、非常に高温であり、進路上の建物、道路、電柱、森林、農地などを焼き尽くします。
一度溶岩に覆われた土地は、すぐには元の状態に戻りません。道路やライフラインが寸断され、地域の生活に長期的な影響を与えることがあります。
盾状火山では、火山ガスも重要な問題です。
ハワイの火山では、二酸化硫黄などの火山ガスが放出され、空気中で反応して「vog」と呼ばれる火山性スモッグを発生させることがあります。これは、呼吸器への影響や農作物への影響をもたらすことがあります。
日本でも、三宅島の2000年噴火後には大量の火山ガスが放出され、島民の避難生活が長期化しました。火山ガスは目に見えにくい危険であり、火山災害を考えるうえで非常に重要です。
盾状火山の噴火では、新しい溶岩が流れて土地を覆い、地形を変化させます。
海に溶岩が流れ込むと、新しい陸地が形成されることがあります。一方で、既存の集落や道路が溶岩に覆われることもあります。
火山は破壊するだけでなく、新しい地形をつくります。盾状火山は、そのことを非常にはっきり示す火山です。

盾状火山は、主に玄武岩質のマグマが出やすい場所にできます。
代表的なのは、次のような場所です。
ホットスポットとは、プレート境界とは別に、地球内部から熱いマントル物質が上がってくる場所と考えられています。ハワイ諸島は、ホットスポットによって形成された火山列島の代表例です。
太平洋プレートがホットスポットの上を移動することで、次々と火山島が形成されました。現在活動が活発なのはハワイ島周辺で、古い島ほど北西側に位置します。
アイスランドのように、プレートが左右に広がる場所でも玄武岩質のマグマが上がりやすく、盾状火山や溶岩台地が形成されます。
アイスランドは、大西洋中央海嶺が地上に現れている特別な地域です。そのため、割れ目噴火や広大な溶岩地形が見られます。
東アフリカの大地溝帯のように、大陸が引き裂かれつつある場所でも火山活動が起こります。エチオピアのエルタ・アレ火山は、そのような環境にある火山です。
山の形がなだらかだからといって、必ず盾状火山とは限りません。
長い時間の浸食によって山が丸くなった場合もありますし、複数の火山活動が重なって複雑な地形になっている場合もあります。また、火山灰が広く積もって台地状になっている場合もあります。
盾状火山かどうかを考えるには、山の形だけでなく、溶岩の種類、噴火の様式、地質、火山の成長史を見る必要があります。
日本では、富士山、浅間山、桜島、御嶽山のような成層火山がよく知られています。これは、日本列島がプレートの沈み込み帯に位置しているためです。
沈み込み帯では、安山岩質のマグマが関係する火山活動が多く、成層火山が発達しやすい傾向があります。
そのため、日本で盾状火山の例を探す場合、ハワイのマウナロアのような典型例ではなく、伊豆大島や三宅島のような玄武岩質火山、あるいは盾状火山的な性質を持つ火山地形として理解する方が適切です。
火山は、教科書では「成層火山」「盾状火山」「溶岩ドーム」「カルデラ」などに分類されます。しかし実際には、複数の性質をあわせ持つ火山が多くあります。
たとえば、ある火山は初期に盾状火山のような広い山体をつくり、その後に成層火山的な噴火を繰り返すことがあります。また、山頂に溶岩ドームを形成したり、山腹に火砕丘をつくったりすることもあります。
火山分類は、自然を理解するための便利な整理方法ですが、実際の火山はもっと複雑です。
| 火山名 | 国・地域 | 特徴 |
| マウナロア | アメリカ・ハワイ | 世界最大級の盾状火山。非常に広い山体を持つ |
| キラウエア | アメリカ・ハワイ | 活動が活発で、溶岩流で知られる火山 |
| マウナケア | アメリカ・ハワイ | ハワイ島最高峰。古い盾状火山として形成 |
| ハレアカラ | アメリカ・ハワイ | マウイ島を代表する盾状火山 |
| スキャルドブレイダー | アイスランド | 典型的な盾状火山として知られる |
| エルタ・アレ | エチオピア | 溶岩湖で有名な盾状火山 |
| シエラ・ネグラ | ガラパゴス諸島 | ガラパゴスの代表的な盾状火山の一つ |
| フェルナンディナ島の火山 | ガラパゴス諸島 | 活動的な火山島を形成する盾状火山 |
| オリンポス山 | 火星 | 太陽系最大級の盾状火山 |
| 火山・地域 | 所在地 | 特徴 |
| 伊豆大島 | 東京都 | 玄武岩質の溶岩を伴う火山島。盾状火山的な地形を学びやすい |
| 三宅島 | 東京都 | 玄武岩質火山。溶岩流や火山ガスで知られる |
| 八丈島 | 東京都 | 伊豆諸島の火山島。玄武岩質の火山活動を持つ |
| 阿蘇火山の一部地形 | 熊本県 | 典型的な盾状火山ではないが、広い火山地形を理解する例 |
| 鳥海山の古い火山体 | 山形県・秋田県 | 成層火山として知られるが、成長史の中に広がりある火山体を持つ |
| 月山 | 山形県 | なだらかな火山地形を持ち、火山分類の多様性を考える例 |
盾状火山は、人間生活にも深く関わっています。
ハワイでは、火山によって島が形成され、溶岩によって新しい土地が生まれてきました。火山地形は観光資源となり、国立公園として保護されている場所もあります。
一方で、噴火による溶岩流は住宅地や道路を破壊することがあります。火山ガスは健康や農業に影響を与えることがあります。火山の近くに暮らす人々は、火山の恵みと危険の両方を受けながら生活しているのです。
日本でも、伊豆大島や三宅島のような火山島では、火山活動が島の地形、観光、暮らし、防災に深く関係しています。火山は単なる自然現象ではなく、地域の歴史や生活を形づくる存在です。
盾状火山を学ぶことは、地球の内部活動を理解することにつながります。
なぜハワイには巨大な火山島が並んでいるのか。なぜアイスランドでは溶岩が広く流れるのか。なぜ火星には地球を超える巨大火山があるのか。こうした疑問を考えると、プレート運動、ホットスポット、マグマの性質、惑星の地質活動まで視野が広がります。
また、盾状火山を学ぶことで、火山の危険性についても理解が深まります。
成層火山のような爆発的噴火だけが火山災害ではありません。盾状火山では、溶岩流、火山ガス、地割れ、地形変化などが大きな問題になります。
火山の種類によって災害の起こり方が違うため、それぞれの火山の特徴を知ることが、防災にも役立ちます。
楯状火山、または盾状火山とは、粘り気の少ない玄武岩質の溶岩が広く流れ、低くなだらかな山体をつくる火山です。地面に置いた盾のような形に見えることから、この名前が付けられました。
世界の代表的な盾状火山には、ハワイのマウナロア、キラウエア、マウナケア、ハレアカラ、アイスランドのスキャルドブレイダー、エチオピアのエルタ・アレ、ガラパゴス諸島の火山などがあります。地球以外では、火星のオリンポス山も巨大な盾状火山として知られています。
日本では、ハワイのような典型的で巨大な盾状火山は多くありません。しかし、伊豆大島、三宅島、八丈島などの玄武岩質火山や、阿蘇火山・鳥海山・月山などの一部地形を通して、盾状火山的な性質や、なだらかな火山地形を学ぶことができます。
盾状火山は、成層火山に比べて爆発的噴火が少ないとされることが多いですが、危険が小さいという意味ではありません。溶岩流、火山ガス、割れ目噴火、地形変化などによって、地域社会に大きな影響を与えることがあります。
火山の形は、マグマの性質や噴火の仕方を反映しています。盾状火山の例を学ぶことで、地球内部の活動、プレート運動、ホットスポット、火山災害、島の形成、生態系の成り立ちまで、幅広いテーマを理解することができます。