「負の相関」とは、2つの数値のうち、一方が大きくなるほど、もう一方が小さくなる傾向がある関係を指します。たとえば、一般に外気温が高くなるほど暖房の使用量は減ります。この場合、外気温と暖房使用量には負の相関があると考えられます。
負の相関は、統計学やデータ分析だけでなく、経済、医療、教育、スポーツ、日常生活など、さまざまな場面で見られます。ただし、負の相関があるからといって、一方がもう一方の原因であるとは限りません。
この記事では、負の相関の意味を身近な例とともにわかりやすく説明し、「因果関係」との違いやデータを見る際の注意点についても解説します。
負の相関とは、2つの変数が反対方向に動く傾向のことです。
このような関係がデータ全体に見られる場合、「AとBには負の相関がある」と表現します。「逆相関」と呼ばれることもあります。
たとえば、一定の距離を移動する場合、移動速度が速くなるほど所要時間は短くなります。速度が上がる一方で時間が減るため、両者は反対方向に変化します。

負の相関が見られる代表的な例をまとめると、次のようになります。
| 一方の数値 | もう一方の数値 | 考えられる関係 |
|---|---|---|
| 外気温 | 暖房の使用量 | 気温が高いほど暖房使用量が減る傾向 |
| 商品の価格 | 需要量 | ほかの条件が同じなら、価格が高いほど需要量が減る傾向 |
| 移動速度 | 一定距離の所要時間 | 速度が速いほど所要時間が短くなる |
| 標高 | 気圧 | 標高が高いほど気圧が低くなる |
| 欠席日数 | 授業の理解度や成績 | 欠席が多いほど成績が低くなる傾向が生じることがある |
| 運動習慣 | 安静時心拍数 | 持久力が高い人ほど安静時心拍数が低い傾向が見られることがある |
ただし、上の例がいつでも、どの集団でも負の相関になるとは限りません。対象者、期間、測定方法、季節、地域などによって結果が変わることがあります。

冬季には、外気温が低いほど暖房を長時間使う家庭が多くなります。反対に、外気温が上がると暖房の使用量は減る傾向があります。そのため、外気温と暖房使用量には負の相関が見られます。
ただし、冷房まで含めた年間の電力使用量を調べると、関係は単純な一直線にならない場合があります。気温が非常に高い日には冷房の使用量が増えるからです。どの期間と用途を対象にするかが重要です。
移動距離が一定であれば、速度が速くなるほど所要時間は短くなります。たとえば、同じ60キロメートルを移動する場合、時速30キロメートルなら2時間、時速60キロメートルなら1時間かかります。
この例では速度が上がると時間が減ります。ただし、速度と時間の関係は直線ではなく、「時間=距離÷速度」という曲線的な関係です。反対方向に動く関係であっても、必ずしも相関係数がマイナス1になるわけではありません。
一般に、標高が高くなるほど大気圧は低下します。山頂で菓子袋が膨らんだり、耳に違和感を覚えたりすることがあるのは、周囲の気圧が低くなるためです。標高と気圧は、負の相関を説明する際によく使われる例の一つです。

経済学の「需要の法則」では、ほかの条件が同じであれば、商品の価格が上がるほど需要量は減り、価格が下がるほど需要量は増えると考えます。そのため、価格と需要量には負の関係があります。
もっとも、ブランド品のように価格の高さ自体が魅力になる商品や、将来の値上がりを予想して購入が増える商品もあります。また、所得、流行、競合商品の価格なども需要を左右します。現実の市場では、価格だけが需要量を決めるわけではありません。
広告予算が一定の場合、顧客1人を獲得するための費用が高くなるほど、獲得できる顧客数は少なくなります。この場合、顧客獲得単価と顧客獲得数には負の関係が生じます。
ただし、広告の質や成約率が改善すれば、単価が高くても利益が増える場合があります。1組の数値だけを見るのではなく、売上や利益なども合わせて判断する必要があります。
一般に、市場金利が上昇すると既に発行されている債券の価格は下がり、市場金利が低下すると債券価格は上がります。また、債券価格と利回りも反対方向に動きます。
ただし、実際の債券価格は残存期間、信用リスク、償還条件などの影響も受けます。「金利が上がれば、あらゆる債券が同じ割合で値下がりする」という意味ではありません。

ある学校のデータを調べたとき、欠席日数が多い生徒ほど成績が低い傾向が見られることがあります。この場合、欠席日数と成績には負の相関があります。
しかし、欠席だけが成績低下の原因とは限りません。病気、家庭環境、学習意欲など、第三の要因が欠席日数と成績の両方に影響している可能性もあります。
同じ作業を繰り返し練習すると、練習時間が増えるほどミスの回数が減ることがあります。このデータでは、練習時間とミスの回数に負の相関が見られます。
ただし、疲労がたまるほど長時間練習した場合は、かえってミスが増える可能性があります。負の相関が見られる範囲と、関係が変化する範囲を分けて考えることが大切です。
持久的な運動を続けている人では、心臓が1回の拍動で送り出す血液量が多くなり、安静時心拍数が低くなる傾向があります。そのため、一定の集団では持久力と安静時心拍数に負の相関が見られることがあります。
ただし、心拍数は年齢、服薬、体調、ストレスなどにも左右されます。個人の健康状態を相関だけで判断することはできません。
2つの数値の組み合わせを散布図にすると、負の相関があるデータは、全体として左上から右下へ下がるように分布します。
散布図は、相関係数だけではわからない外れ値や曲線的な関係を確認するうえでも役立ちます。
2つの変数の直線的な関係の強さは、一般に「相関係数」で表します。代表的な相関係数は、マイナス1からプラス1までの値を取ります。
| 相関係数 | 関係の意味 |
|---|---|
| 1に近い | 強い正の相関 |
| 0に近い | 直線的な相関が弱い、またはほとんどない |
| マイナス1に近い | 強い負の相関 |
たとえば、相関係数が「-0.8」であれば比較的強い負の相関、「-0.2」であれば弱い負の相関と解釈されることがあります。ただし、「どこから強いと呼ぶか」という絶対的な基準はありません。研究分野やデータの性質によって評価は異なります。
一方が増えた分だけ、もう一方が必ず一定の割合で減る場合、相関係数は「-1」になります。これを完全な負の相関といいます。
たとえば、合計が100と決められている2つの項目を考えます。
このように「B=100-A」という関係が常に成り立つなら、Aが1増えるたびにBが1減るため、完全な負の相関になります。
現実のデータには測定誤差や別の要因が含まれるため、相関係数が正確に-1になるケースはそれほど多くありません。
負の相関と正の相関の違いは、2つの変数が動く方向にあります。
| 種類 | 変化の方向 | 例 |
|---|---|---|
| 正の相関 | 一方が増えると、もう一方も増える傾向 | 身長と体重など |
| 負の相関 | 一方が増えると、もう一方は減る傾向 | 外気温と暖房使用量など |
| 無相関 | 一定の直線的な傾向が見られない | 靴のサイズとテストの点数など |
なお、「相関係数が0に近い」ことは、2つの変数がまったく無関係であることを必ずしも意味しません。U字型などの曲線的な関係があっても、直線的な相関係数は0に近くなる場合があります。
データを見るときに最も重要なのが、「相関関係は因果関係を意味しない」という点です。
負の相関が確認できるのは、2つの数値が反対方向に動く傾向があるということだけです。それだけでは、AがBを減らしたのか、BがAを減らしたのか、あるいは別の要因Cが両方に影響したのかは判断できません。
たとえば、ある地域で気温が上がるほど暖房器具の売上が減っていたとしても、単純に「気温が売上を下げた」と結論づける前に、季節、広告、在庫、価格などの影響も確認する必要があります。
極端に大きい値や小さい値が少数含まれていると、それだけで相関係数が大きく変わることがあります。相関係数を見るだけでなく、散布図でデータの分布を確認することが重要です。
年齢、地域、所得などの範囲を狭く限定すると、本来存在する相関が弱く見える場合があります。反対に、性質の異なる集団をまとめることで、見かけ上の相関が生じることもあります。
2つの変数の両方に影響する別の要因を「交絡因子」といいます。負の相関を因果関係として解釈する前に、第三の要因が存在しないかを検討する必要があります。
一般的な相関係数は、主に直線的な関係を示します。2つの変数に明確な曲線関係があっても、相関係数だけでは正しく捉えられない場合があります。
一方の数値が増えるほど、もう一方の数値が減る傾向です。グラフでは、点の集まりが全体として右下がりになります。
2つの数値が反対方向に動く傾向がはっきりしているという意味です。相関係数では、値がマイナス1に近いほど強い負の相関を表します。
いいえ。相関係数がマイナスでも、因果関係があるとは限りません。偶然、第三の要因、調査対象の選び方などによって負の相関が現れる可能性があります。
同じではありません。反比例は「y=a÷x」のように数式で厳密に定められた関係です。一方、負の相関は、一方が増えるほどもう一方が減る傾向を統計的に表したものです。反比例する2つの量には負の関係がありますが、一般的な直線相関係数が必ず-1になるわけではありません。
負の相関とは、一方の数値が増えると、もう一方の数値が減る傾向を指します。外気温と暖房使用量、一定距離における速度と所要時間、標高と気圧などが、わかりやすい例です。
相関係数がマイナス1に近いほど、直線的な負の相関が強いと判断できます。ただし、負の相関があるだけでは因果関係を証明できません。データを正しく読み解くには、散布図、外れ値、対象範囲、第三の要因、曲線的な関係なども合わせて確認することが大切です。