山本由伸の通訳は？

ドジャースでの体制と水原一平氏の事件後の対応

山本由伸選手の通訳体制とMLBにおける背景

2023年オフ、ロサンゼルス・ドジャースが山本由伸投手と12年という長期契約を結んだことは、日米の野球界に大きな衝撃を与えました。その背景には、山本選手の圧倒的な実力だけでなく、異文化の中で安定して活躍するための周囲のサポート体制も含まれています。

山本選手には、球団が専属で雇用した経験豊富な日本人通訳が付き添っており、球団関係者とのやりとりはもちろん、記者会見、チームミーティング、戦術確認などあらゆる場面で通訳が重要な役割を果たしています。さらに、生活面におけるサポート（病院・買い物・銀行など）も、通訳の役割の一環として認識されています。

MLBにおいては、言葉だけでなく文化の違いやニュアンス、チーム内での微妙な空気を汲み取ることも通訳の重要な役目であり、単なる「翻訳者」以上の存在です。山本選手のように米球界初挑戦となる選手にとって、信頼できる通訳は不可欠な存在です。

水原一平氏の不正とその波紋：信頼の崩壊と球界への衝撃

2024年3月、衝撃のニュースが世界を駆け巡りました。大谷翔平選手の長年の通訳であり、公私にわたるサポート役でもあった水原一平氏が、選手の口座から約1,600万ドル（約24億円）を不正に送金し、違法なスポーツ賭博の支払いに充てていたというのです。

水原氏は長年、大谷選手の「影のパートナー」とも称されるほど信頼を寄せられていましたが、その信頼を裏切る行為により、即日で球団から解雇され、司法当局により銀行詐欺と納税関連の罪で起訴されました。起訴状によると、水原氏は約2年以上にわたって不正行為を繰り返していたことが明らかにされました。

2025年2月、ロサンゼルスの連邦裁判所で水原氏に対して禁錮57か月（約4年9か月）の実刑判決と、1,700万ドルの損害賠償命令が下されました。水原氏は2025年5月12日までに収監される予定となっています。

この事件は単なる不正事件にとどまらず、通訳という職種への信頼性、選手との関係性、球団側のガバナンスの在り方など、MLBの構造全体を問い直す契機となりました。

大谷翔平選手の新通訳と通訳の再定義

水原氏の解雇後、大谷翔平選手には新たな通訳としてウィル・アイアトン氏が就任しました。彼はかつて前田健太選手の通訳を務めた実績を持ち、MLB内でも信頼性の高い人材とされています。

ウィル氏は日本語・英語のバイリンガルであるだけでなく、球団の編成部門やメディア対応にも明るく、より「総合的なパーソナルマネージャー」としての役割を果たしています。水原氏のように一個人に過度な業務が集中するリスクを避けるため、現在では業務の細分化と分担が図られているといわれています。

ドジャースとMLB全体における通訳体制の改革

今回の事件を受け、ドジャースを含む複数のMLB球団では、通訳やサポートスタッフの採用・管理に関して体制の見直しが進められました。具体的には：

• 📌 金銭管理や契約関係を通訳が担当しないよう制限
• 📌 生活支援と業務通訳を別々のスタッフが分担
• 📌 バックグラウンドチェックの強化
• 📌 チーム内での通訳業務記録の明文化

また、MLBコミッショナー事務局は通訳職へのガイドライン強化を進めており、研修制度の導入、選手本人への情報提供の徹底など、制度改革が進行中です。

通訳制度の未来：信頼と責任の職

通訳は単に言語を訳すだけでなく、選手の感情や意図を正確に伝える責任ある職種であり、場合によっては選手のキャリアやメディアとの関係にも大きく影響を及ぼします。通訳が発する一言が、記者の見出しやファンの印象を左右することも少なくありません。

今後は、通訳という存在がより専門的な教育や倫理規範に基づき、選手と球団をつなぐ架け橋として、信頼される職業として確立されていくことが求められます。

このように、ドジャースでは日本人選手それぞれに専属の通訳が配置されており、山本由伸選手も例外ではありません。水原一平氏の事件を契機として、MLBの通訳体制はより厳格かつ組織的なものへと進化を遂げようとしています。

なお、MLBでは外国人選手の円滑なコミュニケーションを支援するため、2013年からマウンドへの通訳同伴も認められており、試合中においても戦術や意図の正確な共有ができるよう配慮されています。これにより、異文化環境でも高いパフォーマンスを発揮することが可能となります。