FIFAランキング・仕組み
FIFAランキングの仕組みをやさしく解説
ワールドカップの組み合わせ抽選や、代表戦のニュースで必ず出てくる 「FIFAランキング」。
- 「日本代表がFIFAランキングで○位に浮上」
- 「ポット分けはFIFAランキングを基準に決定」
といった表現をよく目にしますが、
そもそもこのランキングはどうやって計算されているのか?
という仕組みまでは、あまり説明されないことが多いです。
この記事では、最新の方式にもとづく
- FIFAランキングの基本的な役割
- 男子ランキングの計算方法(SUM方式)
- 試合の重要度によるポイントの違い
- 女子ランキングとの違い
- ランキングを見るときの注意点
を、できるだけ分かりやすく整理して解説します。
1. FIFAランキングとは?何のためにある?
1-1. 対象は「A代表」の公式戦成績
FIFAランキングは、各国の男子・女子のA代表チーム(フル代表)の成績をもとにした世界ランキングです。
- 対象になるのは、FIFAが「国際Aマッチ」と認定した試合
- たとえばワールドカップ予選、アジアカップ予選、本大会、親善試合など
ユース代表(U-20やU-17)、B代表、フットサル代表などの成績は含まれません。
1-2. ランキングは何に使われる?
FIFAランキングは単なる「話題づくり」ではなく、 大会運営上も重要な役割を持っています。
- ワールドカップ本大会の組み合わせ抽選のシード分け
- 大陸別選手権の抽選
- 一部大陸連盟の予選の組み合わせ決定
などで、このランキングが参照されます。
ランキングが高いほど、シードポットの上位に入りやすく、 グループ分けで強豪と同組になりにくい、といったメリットがあります。
2. 男子FIFAランキングの計算方式「SUM」とは?
男子ランキングは、2018年に方式が大きく見直され、 現在はEloレーティング方式をベースにした「SUM」方式が採用されています。
基本の式は次のとおりです。
P = Pbefore + I * (W – We)
それぞれの意味は、ざっくり言うと次のとおりです。
- Pbefore:その試合の前にチームが持っていたポイント
- P:試合後の新しいポイント
- I:試合の重要度(大きいほど重い試合)
- W:実際の試合結果(勝ち・引き分け・負けを数値化)
- We:ランキング差から計算される「期待される結果」
つまり、
- 格上を倒せば「期待値以上」の勝利となり、大きくポイントを稼げる
- 格下に敗けると「期待値以下」の結果なので、大きくポイントを失う
という、直感的に分かりやすい仕組みになっています。
3. 試合の重要度を表す「I」の値
同じ勝利でも、
では、価値が違うはずです。
そこでFIFAは、試合の種類ごとに重要度係数 Iを設定しています。
主な値は次のとおりです(男子)。
- I = 5:インターナショナルマッチウィンドウ外の親善試合
- I = 10:インターナショナルマッチウィンドウ内の親善試合
- I = 15:ネーションズリーグのグループリーグ
- I = 25:ネーションズリーグのプレーオフ・決勝、各大陸選手権・W杯予選
- I = 35:大陸選手権本大会のグループ~準々決勝まで
- I = 40:大陸選手権本大会の準々決勝以降、コンフェデレーションズカップ
- I = 50:ワールドカップ本大会のグループ~準々決勝まで
- I = 60:ワールドカップ本大会の準々決勝以降
数字が大きくなるほど、その試合の結果によるポイントの増減が大きくなります。
たとえば、同じ格上相手でも
- 親善試合での勝利 → 少しだけポイントが増える
- ワールドカップ本大会での勝利 → 大きくポイントが増える
という違いが生まれるわけです。
4. 「W」と「We」:実際の結果と期待された結果
4-1. 実際の試合結果「W」
Wは、試合の結果そのものを数値で表したものです。
- 勝利:W = 1.0
- 引き分け:W = 0.5
- 敗戦:W = 0
さらに、PK戦で決着した試合については、少し特別な扱いになります。
- PK戦までもつれたうえで勝利:W = 0.75
- PK戦で敗戦:W = 0.5
90分+延長で決着した場合は、通常どおり「勝ち = 1.0 / 負け = 0」として扱われます。
4-2. 期待された結果「We」
Weは、試合前のランキングポイントの差から計算される、
「この組み合わせなら、平均してこれくらいの結果になるはず」
という期待値です。
- 格上チーム:Weが高くなる(勝つことが期待されている)
- 格下チーム:Weが低くなる(負けても仕方ないとみなされる)
このWeと実際の結果Wの差「W – We」が、
- プラスなら期待以上 → ポイントが増える
- マイナスなら期待以下 → ポイントが減る
という形で、ポイント増減の大きさを決めます。
5. 実際の計算イメージ
数式だけだと分かりにくいので、イメージしやすいように例を挙げます。
- チームA:試合前ポイント 1300
- チームB:試合前ポイント 1500
- 試合の種類:大陸選手権予選(I = 25)
ここで、格下のチームAが勝利したとします(W = 1)。
ランキング差が大きいため、
- チームA(格下)のWe(期待値)はかなり低め
- チームB(格上)のWeは高め
になります。
結果として、
- チームAは「期待値を大きく上回る勝利」 → かなり多くポイントを獲得
- チームBは「期待値を大きく下回る敗戦」 → その分ポイントを失う
このように、
同じ1勝でも、「誰に勝ったか」「どの大会で勝ったか」でポイントが大きく変わる
のが、現在のFIFAランキングの特徴です。
6. ノックアウトラウンドでの特別ルール
ワールドカップや大陸選手権の決勝トーナメントでは、 せっかくベスト16やベスト8まで進んだチームが、 強豪に負けただけで大きくポイントを減らしてしまうのは不公平、という指摘がありました。
そこで現在の方式では、
- 本大会のノックアウトラウンドで負けた場合
- その試合で計算した結果がマイナスになるとき
には、
ポイントを減らさず、試合前のポイントをそのまま維持する
という保護ルールが設けられています。
これにより、
- 強豪との対戦に挑んだチームが、
- 負けたことでランキングを大きく落としてしまう
といった不利益が軽減されています。
7. ランキングの更新タイミングと公開
男子FIFAランキングは、
- 国際Aマッチが集中する期間(インターナショナルマッチウィーク)のあと
- あるいは大陸選手権やワールドカップ本大会のあと
などに、年に数回まとめて更新されるのが一般的です。
FIFAの公式サイトでは、
が一覧で公開されており、 各国協会やメディアもこれを基準に「何位に浮上・後退」といった報道を行います。
8. 女子FIFAランキングは少し違う
女子代表についても、FIFAは「女子FIFAランキング」を別に発表しています。
こちらもEloレーティングをベースにしていますが、 男子とは細かなルールが異なります。
- 基本式は「レーティング = 以前のレーティング + K*(実際の結果 – 期待された結果)」
- K(係数)に、試合の重要度が反映される
- ホームアドバンテージ(ホームであることの有利さ)も数式に組み込まれている
女子ランキングも、
などの抽選やシード分けに利用されており、 女子サッカーの普及と競争力の把握に重要な役割を果たしています。
9. FIFAランキングを見るときの注意点
FIFAランキングは便利な指標ですが、
「ランキング=絶対的な強さ」
とは限りません。見方にはいくつか注意点があります。
9-1. あくまで「過去の成績」に基づく数字
ランキングは、あくまで過去数年の試合結果をもとにしたものです。
- 監督や主力選手が大きく入れ替わったチーム
- 若い世代が一気に台頭してきたチーム
などは、実力の変化がランキングに反映されるまで時間差が生じます。
9-2. 試合数やマッチメイクの影響
- 親善試合を多く組むチーム
- 強豪との対戦を多く行うチーム
は、勝てば大きくポイントを伸ばせる一方で、負ければ減点も大きくなります。
逆に、試合数が少ないチームは、 ランキングがなかなか動かないという特徴もあります。
9-3. 大陸間の比較は完全ではない
現在の方式では、旧来の「大陸ごとの係数」は廃止されましたが、 そもそも大陸ごとに対戦の相手が偏るため、
- 欧州や南米の強豪同士が潰し合っている
- 他大陸では強豪と当たる機会が少ない
といった事情もあり、
ランキングだけで大陸間の実力を完全に比較することは難しい
という点も押さえておく必要があります。
10. まとめ:FIFAランキングは「試合結果を積み上げたレーティング」
最後にポイントを整理します。
- FIFAランキングは、各国A代表の試合結果にもとづく世界ランキング
- 現在の男子ランキングは、Elo方式を取り入れたSUM方式で計算
- 基本式は「P = Pbefore + I*(W – We)」
- I:試合の重要度(親善試合~W杯本大会まで段階的)
- W:実際の結果(勝利・引き分け・敗戦/PK戦は特別扱い)
- We:ランキング差から求める期待値
- 強豪を重要な大会で下すほど、大きくポイントが増える仕組み
- 女子ランキングもElo方式だが、細かなパラメータは男子と異なる
FIFAランキングは、ワールドカップや各大陸選手権の 「シード分け」に直結する重要な指標です。