日本の検察史上、初めて女性として検事総長に就任した畝本直美(うねもと・なおみ)氏。
2024年7月9日に検察官のトップである検事総長に就任し、約2年間にわたり検察組織を率いました。
そして2026年8月12日付で検事総長を退任。後任には東京高検検事長を務めていた川原隆司氏が就任しました。
畝本氏は検事総長だけでなく、広島高検検事長、東京高検検事長などでも「女性初」となるポストに就いてきた人物です。
この記事では、畝本直美氏の出身地や学歴、検事を目指したきっかけ、これまでの経歴、そして女性初の検事総長に就任するまでの歩みについて詳しく見ていきます。
| 氏名 | 畝本 直美(うねもと なおみ) |
|---|---|
| 生年月日 | 1962年7月9日 |
| 出身地 | 千葉県 |
| 出身高校 | 千葉県立千葉高等学校 |
| 出身大学 | 中央大学法学部法律学科 |
| 検事任官 | 1988年 |
| 主な役職 | 高知地検検事正、法務省保護局長、最高検公判部長、広島高検検事長、東京高検検事長、検事総長など |
| 検事総長在任期間 | 2024年7月9日~2026年8月12日 |
畝本直美氏は千葉県立千葉高等学校を卒業後、中央大学法学部法律学科に進学しています。
県立千葉高校は千葉県を代表する進学校の一つとして知られています。
大学は法曹界に多くの人材を送り出してきた中央大学法学部を選び、1985年に卒業しました。
興味深いのは、畝本氏が大学入学時から一直線に検事を目指していたわけではないことです。
中央大学のインタビューによると、もともと歴史や文学、社会科学などが好きな文系タイプで、高校生のころには「女性が社会に出て仕事をするなら、何か資格を持っていた方が有利」という考えも持っていたといいます。
法曹を目指す可能性を考え、「法科の中央」として知られていた中央大学を志望しました。
大学1、2年生のころは友人とボウリングをしたり、本を読んだりしながら、「自分は何をしたいのか」を考えていたそうです。
転機となったのが大学3年生の秋でした。
法律を本格的に勉強する面白さを感じ、法曹を目指すことを決意。中央大学の司法試験受験団体として知られる研究室「郁法会」の入室試験に合格し、その後は1日10時間ほど勉強する生活を送ったと語っています。
最初から進路が決まっていたのではなく、大学生活の途中で法律の面白さを見いだし、そこから一気に司法試験へ向かった点は、畝本氏の経歴の中でも興味深いところです。
司法試験合格後、畝本氏は仙台で司法修習を経験しました。
裁判官・検察官・弁護士という法曹三者の中から検察官を選んだ理由について、畝本氏は刑事法や刑事政策には「人の人生が詰まっている」と感じたことを明かしています。
犯罪という結果だけを見るのではなく、なぜその人が犯罪に至ったのかという、生身の人間と向き合う仕事に関心を持ったようです。
司法修習中に出会った検察官たちが人間そのものに強い興味を持ち、事件や被疑者と向き合っている姿にも魅力を感じ、検事を志望しました。
畝本直美氏は1988年、検事に任官しました。
最初の勤務先は東京地方検察庁です。
その後、各地の検察庁で捜査・公判を担当する一方、法務省でも幅広い行政経験を積みました。
本人によると、キャリアのおよそ半分は検察官として捜査や公判に携わり、それ以外にも法務省刑事局、民事局、保護局、人権擁護局、法務大臣秘書官などさまざまな仕事を経験しています。
さらに、司法研修所教官や日本司法支援センター(法テラス)への出向も経験しており、一般的な刑事事件の捜査だけにとどまらない幅広いキャリアが特徴といえます。
キャリアを重ねた畝本氏は、地方検察庁のトップである高知地方検察庁検事正を務めました。
その後、法務省の保護局長に就任。
保護局は、犯罪をした人の更生保護や再犯防止、保護観察などを担当する部門です。
さらに最高検察庁では、
などの主要ポストを歴任しました。
捜査・公判の現場だけでなく、組織管理や法務行政にも携わってきたことが、その後の高検検事長、そして検事総長への昇進につながったとみられます。
畝本氏の経歴で大きな転機となったのが2021年7月です。
広島高等検察庁検事長に就任しました。
高等検察庁のトップである「検事長」に女性が就任するのは、日本の検察史上初めてでした。
つまり畝本氏は、検事総長になる以前から検察組織における女性の最高位更新を続けていたことになります。

2023年1月には東京高等検察庁検事長に就任しました。
東京高検検事長は、一般に検察組織の「ナンバー2」に位置付けられる極めて重要なポストです。
東京高検検事長に女性が就任したのも初めてでした。
広島高検検事長から東京高検検事長へと進んだことで、次期検事総長の有力候補として注目されるようになります。
政府は2024年6月28日の閣議で、当時東京高検検事長だった畝本直美氏を検事総長に起用する人事を決定しました。
そして2024年7月9日、正式に第33代検事総長に就任しました。
女性が検事総長になるのは日本で初めてでした。
検事総長とは全国の検察官を統括する検察組織のトップです。
地方検察庁、高等検察庁、最高検察庁と続く巨大な検察組織の頂点に、初めて女性が就任したことになります。
畝本氏のキャリアを見ると、一度だけではなく複数の重要ポストで「女性初」を記録していることが分かります。
| 年 | 役職 | ポイント |
|---|---|---|
| 2021年 | 広島高検検事長 | 女性初の高検検事長 |
| 2023年 | 東京高検検事長 | 女性初の東京高検検事長 |
| 2024年 | 検事総長 | 女性初の検事総長 |
単に「女性だから登用された」という経歴ではなく、1988年の任官から約36年間にわたり、地方検察庁、最高検、法務省など多様な職場を経験して検察トップまで上り詰めた点が重要です。
検事総長就任後、畝本氏は検察が国民からの信頼を基盤としていることを強調し、公正・誠実な検察権の行使を重視する姿勢を示しました。
一方、「女性初」であることについては、男性であっても女性であっても検事総長に期待される役割は同じだという趣旨の考えを示しています。
女性初という歴史的な就任でありながら、自らを「女性検事総長」と特別視するのではなく、検察組織のトップとして職責を果たす姿勢を前面に出していたことが印象的です。
畝本氏が検事総長を務めた約2年間は、決して平穏な時期ではありませんでした。
検察官による不適切な取り調べや、事件関係者との不適切な関係など、検察組織への信頼に関わる問題が相次いで表面化しました。
2026年2月には全国の検察庁トップが集まる検察長官会同で、検察官には一般の公務員以上に高い倫理観が求められるとの認識を示し、2026年度から全検察官を対象とした倫理研修を実施する方針を明らかにしました。
女性初の検事総長として注目された一方、在任後半は検察組織のガバナンスや信頼回復への対応も大きな課題となりました。
畝本直美氏は2026年8月12日付で検事総長を退任しました。
2024年7月の就任から約2年1か月での退任となります。
後任の検事総長には、東京高検検事長を務めていた川原隆司氏が就任しました。
退任会見では、在任中に検察官の不祥事が相次いだことについて、検察運営の最終責任者として遺憾であり申し訳なく思うとの認識を示しました。
その一方、今後の検察に対しては、良い伝統を守りながらも時代や社会の変化に対応し、国民の期待に応えてほしいという趣旨の言葉を残しています。
畝本直美氏は、1988年に検事となって以来、捜査・公判だけでなく、法務省の行政部門や最高検の主要ポストなど幅広い経験を積んできた検察官です。
2021年には女性初の高検検事長、2023年には女性初の東京高検検事長、そして2024年には女性初の検事総長に就任しました。
特に注目されるのは、大学入学当初からエリート法曹への道を一直線に歩んでいたわけではなく、大学3年生になってから法律の面白さを見いだし、本格的に法曹を志したという経歴です。
その後約40年にわたり法律実務と法務行政に携わり、日本の検察組織で女性として初めてトップまで上り詰めました。
在任中には検察官の不祥事など難しい問題への対応も迫られましたが、2024年7月から2026年8月まで女性初の検事総長を務めたという事実は、日本の検察史・法曹界に残る大きな節目となりました。