「起債許可団体(きさいきょかだんたい)」という言葉が注目されています。
特に2026年8月18日、兵庫県が実質公債費比率の上昇によって起債許可団体へ移行することが明らかになったことで、「起債許可団体とは何なのか」「全国にはどの自治体があるのか」と気になった人も多いのではないでしょうか。
起債許可団体とは簡単にいえば、借金返済の負担が一定以上に重くなり、地方債を発行する際に国や都道府県の許可が必要となった地方公共団体です。
ただし、起債許可団体になったからといって、すぐに「財政破綻する」「行政サービスが止まる」という意味ではありません。
この記事では、最新の起債許可団体一覧とともに、実質公債費比率18%という基準、起債許可団体になると何が変わるのか、兵庫県がなぜ対象となったのかについて分かりやすく解説します。

まず、直近で全国の数値を比較できる令和6年度(2024年度)決算では、実質公債費比率が18%以上となっている地方公共団体は次の3団体です。
| 区分 | 地方公共団体 | 実質公債費比率 |
|---|---|---|
| 都道府県 | 北海道 | 20.0% |
| 都道府県 | 新潟県 | 18.6% |
| 市 | 北海道夕張市 | 68.1% |
令和6年度決算では、北海道、新潟県、夕張市の3団体が実質公債費比率18%以上となっています。
政令指定都市および町村には該当団体はありません。
さらに2026年8月18日、新たに注目されたのが兵庫県です。
兵庫県が公表した令和7年度(2025年度)決算に関する財政指標では、実質公債費比率が19.2%となり、起債許可団体の基準となる18%を上回りました。
| 地方公共団体 | 対象決算 | 実質公債費比率 | 状況 |
|---|---|---|---|
| 兵庫県 | 令和7年度(2025年度) | 19.2% | 起債許可団体へ移行 |
兵庫県が起債許可団体となるのは14年ぶりです。
ここで注意したいのは、北海道・新潟県・夕張市の数字は「令和6年度決算」、兵庫県の19.2%はその翌年度となる「令和7年度決算」の数字であることです。
そのため、現段階では単純に「全国の起債許可団体は4団体で確定」とするよりも、令和6年度決算で全国3団体が確認され、その後の令和7年度決算で兵庫県の新規移行が判明したと理解するのが正確です。

「起債」はきさいと読みます。
地方自治体が道路、学校、公共施設、上下水道などの整備を行う際、必要なお金をすべてその年度の税収だけで賄うとは限りません。
そこで自治体が発行するのが地方債です。
簡単にいえば、地方自治体が長期的に返済することを前提として資金を借りる仕組みであり、「起債する」とは地方債によって資金を調達することを意味します。
例えば、数十年間利用する学校や道路を建設する場合、建設した年の住民だけが全額を負担するのではなく、将来その施設を利用する世代にも返済という形で負担してもらうという考え方があります。
現在の地方債制度では、地方自治体が地方債を発行する場合、通常は国などとの「協議」を基本とする仕組みになっています。
ところが、借金返済の負担が大きくなった自治体については、さらに厳しいチェックが必要になります。
そこで一定の基準を超えた自治体について、地方債発行を許可制にする仕組みが設けられています。
その代表的な基準が実質公債費比率18%です。
起債許可団体を理解するうえで最も重要な指標が「実質公債費比率」です。
実質公債費比率とは、自治体の標準的な収入に対して、借金の元金・利息などの実質的な返済負担がどの程度あるかを示した指標です。
一般会計の地方債返済だけではなく、公営企業などに関係する実質的な公債費負担も考慮されます。
また、単年度だけで判断するのではなく、基本的に過去3年間の平均によって算出されます。
| 実質公債費比率 | 財政上の位置付け |
|---|---|
| 18%未満 | 原則として起債許可団体には該当しない |
| 18%以上 | 起債許可団体 |
| 25%以上 | 早期健全化基準 |
| 35%以上 | 財政再生基準 |
つまり、18%・25%・35%という3つの数字が重要な目安になります。
では、実際に起債許可団体になると自治体にはどのような影響があるのでしょうか。
最大の変化は、地方債の発行に許可が必要になることです。
都道府県や指定都市の場合は総務大臣、市町村の場合は原則として都道府県知事の許可を受ける仕組みとなります。
自治体が新たな事業のために地方債を発行しようとしても、財政状況を踏まえたチェックを受けることになります。
実質公債費比率が18%以上となった自治体では、借金返済の負担を改善するための公債費負担適正化計画を策定し、計画的に財政状況の改善を進めていくことになります。
新たな地方債の発行を抑えたり、将来の返済額を管理したりしながら、実質公債費比率を18%未満へ下げていくことが重要になります。
起債許可団体になると、新たな借金を増やすことに対して慎重な財政運営が求められます。
そのため、道路、公共施設、再開発、庁舎、学校など大規模な投資事業について、事業の優先順位や規模がこれまで以上に厳しく検討される可能性があります。
起債許可団体になったからといって、自動的に住民税が上がるわけではありません。
また、公共サービスが直ちに停止したり、自治体が倒産したりするものでもありません。
ただし、中長期的には財政改善が必要になるため、自治体によっては事業の見直し、公共施設の統廃合、投資事業の縮小、補助事業の見直しなどが検討される可能性があります。
その意味では、住民にまったく関係がない指標というわけではありません。
「起債許可団体」という名称を見ると、かなり危険な状態のように感じるかもしれません。
しかし、起債許可団体と財政再生団体は別物です。
実質公債費比率18%を超えると起債許可団体になりますが、早期健全化基準は25%、さらに財政再生基準は35%です。
18%を少し上回った自治体が直ちに財政破綻するわけではなく、むしろ財政状況がさらに悪化する前に国などが関与を強め、借金返済負担の改善を図るための制度と考えた方が分かりやすいでしょう。
一覧を見ると特に目を引くのが、北海道夕張市の68.1%という数字です。
北海道の20.0%、新潟県の18.6%と比べても極めて高くなっています。
夕張市は過去に深刻な財政危機に陥り、現在も財政再生計画のもとで財政再建を進めています。
そのため、単に「実質公債費比率が18%を超えた自治体」という意味では同じ一覧に入りますが、北海道や新潟県、兵庫県とは財政状況の深刻度が大きく異なります。

2026年に大きな注目を集めているのが兵庫県です。
兵庫県では、阪神・淡路大震災後の財政負担を含め、長年にわたり県債の管理が重要な課題となってきました。
さらに、県債管理基金の積立状況や実質公債費比率の算定方法の見直し、金利環境の変化などが重なり、令和7年度決算における実質公債費比率が19.2%となりました。
18%の基準を超えたことで、県債を発行する際に国の許可が必要となる起債許可団体へ移行することになりました。
ただし19.2%は、早期健全化基準となる25%には達していません。
今後は、公債費負担をどのように抑え、18%未満へ改善させるかが兵庫県財政の重要な課題となります。
実質公債費比率が上昇する原因は一つではありません。
人口減少などによって財政規模が小さくなる一方、過去に発行した地方債の返済が続けば、比率が上昇する場合もあります。
起債許可団体からの脱却には、基本的に実質公債費比率を18%未満へ改善していく必要があります。
そのため自治体では、主に次のような財政改善策が考えられます。
実際には、一度18%を超えたからといって永久に起債許可団体になるわけではありません。
財政改善によって基準を下回り、許可対象から外れた自治体も過去にはあります。
いいえ。地方債の発行そのものが全面的に禁止されるわけではありません。
ただし、それまで以上に厳格な手続きを経て許可を受ける必要があります。
起債許可団体になっただけで財政破綻したことにはなりません。
実質公債費比率18%は、財政悪化を早い段階で是正するための重要な警戒ラインと考えると分かりやすいでしょう。
18%以上になると地方債発行が許可制になる一方、25%は地方公共団体財政健全化法における早期健全化基準です。
25%を超えると財政健全化に向けた対応はさらに厳しくなります。
実質公債費比率35%は財政再生基準です。
18%の起債許可団体とはかなり意味が異なり、より深刻な財政状況を示します。
起債許可団体とは、地方自治体の借金返済負担を示す実質公債費比率が原則18%以上となり、地方債を発行する際に国や都道府県の許可が必要となった地方公共団体です。
令和6年度決算で確認されている主な対象団体は次の3団体です。
そして2026年8月18日には、令和7年度決算で実質公債費比率が19.2%となった兵庫県についても、起債許可団体への移行が明らかになりました。
起債許可団体は「財政破綻した自治体」という意味ではありません。
一方で、自治体の借金返済負担が軽くないことを示す重要な指標であり、今後の公共事業や財政運営を見るうえでも注目すべき数字です。
特に兵庫県については、今後、実質公債費比率を18%未満へ引き下げられるのか、財政健全化に向けた取り組みが注目されることになりそうです。