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越境台風・過去

越境台風・過去の例

ハリケーンが台風になった過去の例

2026年10月5日、太平洋を西へ進んでいたハリケーン「ノロ(NOLO)」が国際日付変更線付近の東経180度を越え、日本の気象庁が監視する北西太平洋の海域に入りました。

これによってノロは「台風28号(ノロ)」となりました。いわゆる「越境台風」です。

ハリケーンが台風になるというと、途中で気象現象そのものが別のものに変化したようにも聞こえます。しかし、実際にはハリケーンと台風は基本的に同じ種類の熱帯低気圧です。

存在する海域によって「ハリケーン」「台風」などと呼び方や監視する気象機関が変わるため、強い熱帯低気圧が太平洋を西へ進んで日付変更線を越えると、それまでハリケーンなどとして扱われていたものが、日本では「台風」として扱われることがあります。

こうしたケースは珍しいものの、過去にも何度か越境台風が発生し他例があります。

ハリケーンと台風は何が違う?

まず理解しておきたいのが、ハリケーンと台風はまったく別の気象現象ではないということです。

どちらも暖かい海上で発達する「熱帯低気圧」です。主に発生・存在している海域によって名称が異なります。

  • 北西太平洋・南シナ海:台風(Typhoon)
  • 北大西洋・北東太平洋・中部北太平洋:ハリケーン(Hurricane)
  • インド洋や南太平洋など:サイクロン(Cyclone)など

つまり、ハリケーンそのものが物理的に別の種類の嵐へ変身するわけではありません。

太平洋を西へ進んで東経180度の境界を越えることで、監視を担当する地域が変わり、日本の気象庁が扱う北西太平洋の「台風」として分類されるのです。

過去にハリケーンから台風になった代表的な例

日付変更線を越えて北西太平洋へ入った熱帯低気圧は過去にも存在します。代表的な例を見てみましょう。

年 名称 北西太平洋での扱い 特徴
1957年 デラ(Della) 台風12号 ハリケーンとして日付変更線を越えた初期の代表例
1994年 ジョン(John) 台風20号 日付変更線を越えた後、再び東へ戻る非常に珍しい進路
2006年 イオケ(Ioke) 台風12号 カテゴリー5級の非常に強い勢力で日付変更線を越えた
2014年 ジェヌヴィーヴ(Genevieve) 台風13号 日付変更線付近で急発達し、猛烈な勢力となった
2015年 キロ(Kilo) 台風17号 中部太平洋から西進して北西太平洋へ
2018年 ヘクター(Hector) 台風17号 一時カテゴリー4のハリケーンまで発達した長寿命の熱帯低気圧
2023年 ドーラ(Dora) 台風8号 東部・中部・西部の北太平洋を横断した非常に珍しいケース
2026年 ノロ(Nolo) 台風28号 ドーラ以来3年ぶりの越境台風

1957年 ハリケーン「デラ」→台風12号

古い代表例の一つが、1957年のデラ(Della)です。

デラは中部北太平洋でハリケーンとして発達し、西へ進みました。そして9月9日ごろに国際日付変更線を越え、北西太平洋に入ったことで台風として扱われるようになりました。

日本の台風記録では1957年台風12号「DELLA」として残されています。

デラはその後も北西太平洋を進んだ後、進路を北東方向へ変え、再び日付変更線を越えています。

現在のように気象衛星による連続観測が行われていなかった時代にも、太平洋をまたいで移動する熱帯低気圧が存在していたことを示す興味深い例です。

1994年 ハリケーン「ジョン」→台風20号

越境台風の歴史の中でも特に有名なのが、1994年のジョン(John)です。

ジョンは東部太平洋で発生し、西へ西へと進みました。ハワイの南側を通過した後も勢力を維持し、8月28日に国際日付変更線を越えて北西太平洋へ入りました。

日本の記録では台風20号(JOHN)です。

非常に珍しいのは、その後の進路です。

ジョンは北西太平洋へ入った後、進路を変えて再び日付変更線を東向きに越えました。つまり「ハリケーン→台風→ハリケーン」というように、地域による呼び方が再び変わったことになります。

ジョンは約1か月にわたって存在した非常に長寿命の熱帯低気圧としても知られています。

2006年 ハリケーン「イオケ」→台風12号

2006年のイオケ(Ioke)も、非常に印象的な越境台風です。

イオケは中部太平洋で急速に発達し、米国のサファ・シンプソン・ハリケーン・スケールでカテゴリー5に達しました。

その後も非常に強い勢力を維持したまま西へ進み、8月27日に国際日付変更線を越えました。

北西太平洋へ入ったイオケは台風12号として扱われ、日本の気象庁の解析では、その後中心気圧920hPa、最大風速105ノットという猛烈な勢力に達しています。

ウェーク島付近を通過した後、日本の南鳥島にも接近しました。

「強いハリケーンがほぼその勢力を保ったまま台風になる」という越境台風の典型的な例の一つです。

2014年 ハリケーン「ジェヌヴィーヴ」→台風13号

2014年8月にはジェヌヴィーヴ(Genevieve)が日付変更線を越えています。

ジェヌヴィーヴは東部太平洋で発生しましたが、一度弱まった後に中部太平洋で再び発達。8月6日にハリケーンとなり、その後急速に勢力を強めました。

そして非常に強い勢力で日付変更線を越え、2014年台風13号となりました。

気象庁の解析では北西太平洋に入った後、中心気圧が915hPaにまで低下し、「猛烈な」勢力に発達しています。

太平洋の中央部で急激に発達した熱帯低気圧が、その勢力を維持したまま北西太平洋へ入った代表的なケースです。

2015年 ハリケーン「キロ」→台風17号

翌2015年にも越境台風が発生しました。

キロ(Kilo)はハワイ付近の中部太平洋で発達し、ハリケーンとなりました。

その後西へ進み、9月初めに日付変更線を越えて台風17号となりました。

気象庁の記録では、北西太平洋へ入る直前には最大風速90ノット、中心気圧945hPaの強い勢力でした。

キロはその後もしばらく北西太平洋を移動し、日本の東海上を北上。最終的には北海道の東で温帯低気圧へ変わりました。

2018年 ヘクター→台風17号

2018年のヘクター(Hector)も有名な例です。

ヘクターは東部太平洋で発生し、一時はカテゴリー4の非常に強いハリケーンまで発達しました。

その後ハワイ南方を西へ進みましたが、日付変更線へ近づくにつれて勢力を弱め、境界を越えた時点では米国側の分類ではトロピカルストームとなっていました。

それでも北西太平洋に入った時点で台風の基準を満たしていたため、日本では台風17号(ヘクター)として扱われました。

この例からも、「越境台風」は必ずしも日付変更線を越える瞬間まで米国の分類で「ハリケーン」でなければならないわけではないことが分かります。

2023年 ハリケーン「ドーラ」→台風8号

今回のノロ以前で最も新しい越境台風が、2023年のドーラ(Dora)でした。

ドーラは2023年7月末にメキシコの南西沖で発生し、その後、東部太平洋から中部太平洋へ進みました。

さらに西へ移動を続け、8月に国際日付変更線を越えて北西太平洋に入り、台風8号(ドーラ)となりました。

ドーラが特に珍しかったのは、東部太平洋・中部太平洋・北西太平洋という北太平洋の3つの熱帯低気圧監視海域を横断したことです。

このような経路をハリケーン級の勢力を維持しながらたどった例としては、1994年のジョンと並ぶ非常に珍しいケースでした。

2026年 ハリケーン「ノロ」→台風28号

そして2026年10月5日、ハリケーン「ノロ(NOLO)」が国際日付変更線を越え、台風28号となりました。

越境台風が発生するのは2023年の台風8号ドーラ以来、3年ぶりです。

10月5日午前9時の時点で、台風28号は非常に強い勢力で、中心気圧960hPa、中心付近の最大風速45m/s、最大瞬間風速65m/sと解析されました。

ノロはもともとメキシコ沖の東部太平洋で発生した熱帯低気圧を起源とし、長い距離を西へ移動。ハワイ付近を経て中部太平洋を進み、最終的に日付変更線を越えました。

まさに太平洋を横断する長距離の熱帯低気圧となっています。

なぜ名前は「ノロ」のままなのか?

ここで疑問に思う人もいるでしょう。

通常、日本付近で発生する台風には、台風委員会が用意したアジア名が順番につけられます。それなら、なぜ台風28号には新しい名前が与えられず「ノロ」のままなのでしょうか。

これは、すでに別の監視海域で名称を与えられている熱帯低気圧が北西太平洋へ移動してきた場合、原則としてそれまでの名称を引き継ぐためです。

そのため、過去の例でも、ドーラは「ドーラ」、ヘクターは「ヘクター」、キロは「キロ」のままでした。

今回も「ノロ」という名前がそのまま使われています。

日付変更線を越えるとなぜ担当が変わる?

世界の熱帯低気圧は、一つの国の気象機関だけがすべて監視しているわけではありません。

世界気象機関(WMO)の枠組みのもと、世界の海域はいくつかの監視区域に分けられています。

日本の気象庁が担当するのは、主として東経100度から180度までの北西太平洋と南シナ海です。

一方、180度より東側の中部太平洋では米国の中部太平洋ハリケーンセンターなどが監視を担当しています。

このため西へ進んで180度の境界を越えると、監視の主体が米国側から日本の気象庁側へ引き継がれることになります。

越境台風はなぜ珍しい?

ハリケーンそのものは毎年のように東部・中部太平洋で発生します。しかし、その多くが日付変更線を越えて北西太平洋まで到達するわけではありません。

理由の一つは距離の長さです。

東部太平洋で発生した熱帯低気圧が北西太平洋まで到達するには、数千キロという長い距離を移動する必要があります。

その途中で海面水温が低い海域に入ったり、上空の強い風によって構造が崩れたり、進路を北へ変えて温帯低気圧になったりすることもあります。

また、太平洋高気圧などの配置が長期間にわたって西進に適した状態にならなければなりません。

したがって、強い勢力を保ったまま日付変更線まで到達するには、複数の気象条件がそろう必要があります。

「越境台風」は日本に来やすいのか?

越境台風になったからといって、そのまま日本列島へ向かうとは限りません。

日付変更線は日本から非常に遠く、そこから日本付近までには数千キロの距離があります。

実際、ドーラ、ヘクター、イオケなど過去の越境台風の多くは、日本列島へ直接上陸していません。

途中で勢力が弱まったり、北へ進んだ後に東へ進路を変えたりするケースもあります。

一方で、小笠原諸島や南鳥島など日本の離島周辺では、高波や強風などの影響を受ける可能性があります。

そのため、「越境したから日本に来る」「遠くにいるから絶対に影響しない」と決めつけず、その後の進路予報を確認することが重要です。

まとめ

「ハリケーンが台風になった」というニュースは珍しく聞こえますが、ハリケーンと台風は本質的には同じ熱帯低気圧です。

太平洋を西へ進んだ熱帯低気圧が日付変更線付近の東経180度を越え、日本の気象庁が担当する北西太平洋へ入ることで、呼び方や監視機関が変わります。

過去には1957年のデラ、1994年のジョン、2006年のイオケ、2014年のジェヌヴィーヴ、2015年のキロ、2018年のヘクター、2023年のドーラなどが日付変更線を越えて北西太平洋へ入りました。

そして2026年10月5日、ハリケーン「ノロ」が台風28号となり、2023年のドーラ以来3年ぶりの越境台風となりました。

数千キロにわたって太平洋を移動し、複数の気象機関の監視区域をまたぐ越境台風は、熱帯低気圧のスケールの大きさを実感させる非常に興味深い気象現象といえるでしょう。

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