パキスタン・近親婚が多いのはなぜ

パキスタンで近親婚（いとこ婚）が多い理由｜背景・メリットと課題をわかりやすく

検索で「パキスタン 近親 婚 なぜ」と調べる人が多いのは、ニュースやSNSで「パキスタンは近親婚が多い」といった話題を見かけ、理由や背景をきちんと知りたいと感じるからだと思います。

ただし最初に大事な前提があります。

• 近親婚は「パキスタンだけの文化」ではありません（世界のさまざまな地域・時代に例があります）。
• パキスタン国内でも、地域・民族・都市/農村・学歴・世代などで状況は違います。
• ここで扱うのは、誰かを貶めるためではなく、**社会の仕組みとして“なぜ続いてきたのか”**を理解するための整理です。

そもそも「近親婚」とは？（日本でのイメージとのズレ）

日本語で「近親婚」というと、かなり近い血縁（きょうだい等）まで連想してしまうことがありますが、パキスタンの話題で出てくるのは主に

• いとこ婚（第一いとこ：first cousin）
• それに加えて、二いとこ・親戚同士などの「血縁が近い結婚」

を指すことが多いです。

また、近親婚は恋愛の結果というよりも、**家族が関わる結婚（お見合い・親族調整）**の文脈で語られることが多い点も、日本の感覚とずれやすいポイントです。

ではパキスタンでなぜ近親婚が多いのかを見ていきましょう。

パキスタンではどれくらい多いの？（ざっくり傾向）

研究や調査では、パキスタンの結婚のうち、血縁関係のある相手との結婚（いとこ婚など）が**「半数前後〜およそ3分の2」**とされることが多く、世界的に見ても高い水準として紹介されます。

ただし、これは「全国一律」ではありません。

• 🏙️ 都市部では低下しやすい
• 🌾 農村部や、伝統的な親族ネットワークが強い地域では高くなりやすい
• 🎓 教育水準や経済的自立が進むほど、（平均的には）減りやすい

という傾向がよく報告されます。

結論：なぜ多いのか？（理由は“宗教”だけではなく、生活の仕組みに近い）

「イスラム教だから？」と単純化されがちですが、ポイントはそこだけではありません。

イスラム法（一般論）では、一定の近い血縁は結婚が禁じられていますが、いとこ婚は禁じられていない（＝可能）とされるのが基本です。

つまり宗教は「やってよい/だめ」の枠組みに関わる一方で、

• なぜ“選ばれやすい”のか
• なぜ“続きやすい”のか

は、むしろ社会・経済・家族制度のほうが説明力を持ちます。

ここから、代表的な理由を整理します。

理由①：親族ネットワークが「生活の保険」になってきた

パキスタンでは、家族・親族のつながりが強い地域が多く、親族は「感情的なつながり」だけでなく、

• 🤝 困ったときの相互扶助
• 💼 仕事・商売の協力
• 🧾 トラブル時の仲裁
• 🏠 住居や土地の管理

など、生活インフラの一部として機能してきました。

こうした社会では、結婚は「個人の恋愛」だけでなく、親族同士の協力関係を強化する装置にもなります。

いとこ婚は、

• すでに信頼関係がある
• 相手の家（＝親族）をよく知っている

という意味で、リスクが低い選択になりやすいのです。

理由②：財産（特に土地）を「外に出さない」

農地や家、家業などが重要な地域では、結婚によって財産が分散したり、外部の家族に影響されることを避けたいという動機が生まれます。

• 🧑‍🌾 土地が細かく分かれてしまうのを抑えたい
• 🏡 家や家業の管理を親族内で完結させたい
• 💰 相続・持参金・贈与などの交渉を“内輪”で済ませたい

といった実務的な理由が、いとこ婚を後押しすることがあります。

理由③：「相手の人となり」を事前に把握しやすい（安心材料になる）

結婚は人生の大きなリスクでもあります。

親族婚の場合、

• 👀 子どもの頃から相手を見てきた
• 🧩 価値観や家風が似ている可能性が高い
• 📍 相手の家の評判や状況を把握しやすい

という点が「安心材料」になりやすいです。

これは、婚姻が家同士の結びつきを伴う社会では特に重視されます。

理由④：女性側の負担が軽くなる面がある（※ただし一枚岩ではない）

いとこ婚が女性にとって常に良い、という意味ではありません。

ただ、実際に語られる理由としては、

• 👩‍👧 義実家が“見知らぬ他人”ではないので心理的に安心
• 🧑‍🤝‍🧑 困ったときに実家・親族が介入しやすい
• 🧳 結婚後も実家との距離が近い場合がある

など、「見知らぬ家に入る」リスクを小さくできるという側面が挙げられることがあります。

一方で、親族が強く関わることで、

• 逃げ道が少なくなる
• 周囲の監視が強くなる

と感じるケースもあり得ます。

つまり、現実は家庭・地域・本人の状況により大きく変わります。

理由⑤：結婚相手探しのコストが下がる（紹介・合意形成が早い）

「結婚相手を探す」には時間も費用もかかります。

親族内であれば、

• 📞 紹介のルートが明確
• 🧑‍⚖️ 交渉役がすでにいる
• 🗓️ 段取りが早い

といった“手続きの効率”が生まれます。

家族や親族が結婚の決定に深く関わる社会では、 合意形成の速さは大きな利点になり得ます。

理由⑥：教育・雇用・移動の構造（「外で出会う」機会が限られる）

都市化や教育機会が増えるほど、親族外の出会いは増えやすい一方、

• 学校に行ける年数
• 女性の就労機会
• 移動の自由度

が限られる地域では、自然と「結婚市場」が狭くなり、身近な親族が候補になりやすいことがあります。

これは宗教というより、**社会構造（制度・インフラ・経済）**の影響が大きい部分です。

近親婚の「課題」：遺伝性疾患リスクが上がる

近親婚が注目される最大の理由は、やはり健康面のリスクです。

一般に、血縁が近いほど、夫婦が同じ劣性遺伝子を共有している可能性が上がり、

• 🧬 一部の遺伝性疾患（例：血液疾患など）
• 先天的な疾患

のリスクが統計的に高くなり得ます。

パキスタンでは特に、**サラセミア（thalassemia）**などの遺伝性血液疾患が公衆衛生の重要課題として扱われ、

• キャリア（保因者）検査
• 遺伝カウンセリング
• 啓発活動

といった対策が行われています。

大事なのは「近親婚＝必ず病気」ではないことです。 ただし確率が上がるため、社会全体としては医療負担や家族負担が重くなりやすく、対策が必要になります。

では今後もずっと続く？：若い世代では“変化”も起きている

近年は、

• 🎓 教育の普及
• 📱 情報アクセスの拡大（遺伝リスクの理解）
• 🏙️ 都市化・移住
• 💼 就労による経済的自立

などによって、いとこ婚を避ける方向の変化が見られる、という報告もあります。

とはいえ、伝統的な親族ネットワークの価値（相互扶助、財産管理、安心感）も根強く、

• 地域
• 家族の価値観
• 経済状況

によっては今後も一定程度続くと考えられます。

日本から見ると「なぜ？」となる理由（まとめ）

日本で近親婚が一般的でないため、「なぜそんな選択を？」となりやすいのですが、パキスタンの一部地域では、近親婚が次のような“合理性”を持ちやすい構造がありました。

• ✅ 親族ネットワークが生活の基盤（助け合いの仕組み）
• ✅ 財産や土地を守る・交渉を内側で完結させる
• ✅ 相手の素性が分かり、安心感がある
• ✅ 結婚相手探しのコストが低い
• ✅ 社会構造上、外で出会う機会が限られる場合がある
• ✅ 宗教的に「可能」である（ただし“必須”ではない）

そして同時に、

• ⚠️ 遺伝性疾患リスクが上がり得る
• ⚠️ 家族の圧力・本人の自由の問題（強制結婚の問題は別軸で重要）

という課題もあるため、近年は「続ける理由」と「変えていく理由」がせめぎ合っている、と捉えるほうが現実に近いと思います。

よくある誤解Q&A

Q1. 「イスラム教だから近親婚が多い」？

A. イスラム法は一定の近い血縁を禁じますが、いとこ婚は多くの解釈で禁じられていません。ただ、近親婚が多い理由は宗教だけではなく、親族ネットワークや財産、社会構造などの要素が大きいとされます。

Q2. 「パキスタン人はみんな近親婚」？

A. いいえ。地域・階層・教育・都市/農村・世代で大きく異なります。国全体として割合が高いことと、個々の家庭がどうかは別です。

Q3. 「近親婚＝必ず遺伝病」？

A. 必ずではありません。ただし確率が上がるため、公衆衛生の観点からは検査やカウンセリングが重要になります。

おわりに

「パキスタン 近親 婚 なぜ」という疑問は、文化の違いに驚くところから始まりますが、背景をたどると、

• 生活を支える親族ネットワーク
• 財産・相続
• 安心感とリスク回避

といった、かなり現実的な要素が見えてきます。

同時に、遺伝リスクや本人の選択の自由といった課題もあり、近年は価値観の変化も進んでいます。

理解のポイントは「良い/悪い」で単純に断じるより、社会の仕組みとしてなぜ成立し、何が課題になり、どう変わりつつあるのかを分けて考えることです。