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食品消費税ゼロの国

英国人女性ー食事

食品消費税ゼロの国

はじめに

物価高が続く中で、「食品にかかる消費税をなくせないのか」という議論が注目されるようになっています。食料品は、所得に関係なく誰もが毎日購入する生活必需品です。そのため、食品にどの程度の税金がかかるかは、家計への負担に大きく関わります。

日本では、酒類や外食を除く飲食料品に8%の軽減税率が適用されています。一方、海外には、基本的な食品に対して0%の税率を適用している国もあります。

ただし、「食品消費税ゼロ」といっても、国によって制度の呼び方や仕組みは異なります。付加価値税(VAT)のゼロ税率、物品サービス税(GST)の非課税・GST-free、基本的食料品への0%課税など、細かな違いがあります。

本記事では、食品に対して消費税・VAT・GSTが0%またはそれに近い扱いになっている主な国を紹介し、日本との違い、メリット・デメリット、制度を見る際の注意点をわかりやすく整理します。


食品消費税ゼロとは何か

食品消費税ゼロとは、一般的には、消費者が基本的な食料品を買うときに、消費税・付加価値税・GSTなどが上乗せされない制度を指します。

ただし、税制上は次のような違いがあります。

  • ゼロ税率:税率は0%だが、制度上は課税対象として扱われる
  • 非課税:そもそも課税対象から外す扱い
  • GST-free:オーストラリアなどで使われる表現で、一定の食品にGSTをかけない扱い
  • 軽減税率:標準税率より低い税率を適用する制度

消費者から見ると、ゼロ税率やGST-freeは「食品に税金がかからない」と感じられます。しかし、事業者側の仕入税額控除や会計処理では違いが出る場合があります。

そのため、この記事では、消費者にとって基本的な食品の税負担が0%に近い国を中心に取り上げます。


食品に0%税率が適用される主な国

 

イギリス

イギリスは、食品のゼロ税率を採用している代表的な国です。

イギリスでは、多くの基本的な食料品がVATのゼロ税率対象とされています。たとえば、パン、米、野菜、果物、肉、魚、卵、牛乳など、日常生活に必要な食品の多くは0%です。

一方で、すべての食品が0%になるわけではありません。次のようなものは標準税率の対象になりやすいです。

  • 外食・ケータリング
  • アルコール飲料
  • 菓子類
  • ポテトチップスなどのスナック類
  • アイスクリーム
  • 一部の清涼飲料水
  • 温かいテイクアウト食品

つまり、イギリスでは「生きていくために必要な基本食品」は0%に近く、「嗜好品や外食」は課税するという考え方が取られています。

アイルランド

アイルランドでも、一定の食品や飲料にVATのゼロ税率が適用されています。

小売店で販売される基本的な食料品については、ゼロ税率の対象となるものが多くあります。肉、牛乳、野菜、パン、茶、砂糖など、日常的に使われる食品が代表例です。

ただし、アイルランドでも食品ならすべて0%というわけではありません。菓子類、加工度の高い食品、外食、温かい持ち帰り食品などは、別の税率が適用される場合があります。

マルタ

マルタも、食品に0%VATが適用される国の一つです。

マルタでは、人が消費する食品について、0%VAT、または「控除権付き非課税」と呼ばれる扱いが設けられています。これは、消費者にVATを上乗せしないだけでなく、事業者側の仕入税額控除にも関係する制度です。

ただし、マルタでも食品に関するすべての商品が一律に0%になるわけではありません。加工食品、菓子類、飲料、外食に近いサービスなどは、個別に扱いが異なる場合があります。

カナダ

カナダでは、連邦レベルのGST/HSTにおいて、基本的食料品がゼロ税率の対象とされています。

たとえば、家庭で調理して食べるための基本的な食品は、GST/HSTが0%となるのが一般的です。肉、魚、野菜、果物、乳製品、パン、米などは、生活必需品として扱われます。

一方で、次のようなものは課税対象になる場合があります。

  • 菓子類
  • スナック菓子
  • 炭酸飲料や一部の飲料
  • レストランでの食事
  • すぐ食べられる調理済み食品

カナダの制度は、「基本的な食料品」と「嗜好品・外食・調理済み食品」を分けて考える仕組みになっています。

オーストラリア

オーストラリアでは、基本的な食品がGST-freeとして扱われます。

GST-freeとは、消費者がその商品を買うときにGSTが上乗せされないという意味です。生鮮食品、肉、魚、野菜、果物、パン、牛乳など、家庭で調理して食べる基本的な食品はGST-freeの対象になります。

一方で、次のようなものにはGSTがかかる場合があります。

  • レストランやカフェでの食事
  • 調理済み食品
  • 菓子類
  • スナック菓子
  • 一部の飲料
  • サンドイッチなど、すぐ食べられる形で販売される食品

オーストラリアも、生活に必要な基本食品は税負担を軽くし、外食や加工度の高い食品には課税する仕組みを採っています。


食品消費税ゼロの国・比較表

スーパーマーケットで食品を選ぶ人のイメージ

国・地域 基本的な食品への扱い 注意点
イギリス 多くの基本食品がVAT 0% 外食、菓子、スナック、アルコールなどは課税対象になりやすい
アイルランド 一定の食品・飲料がVAT 0% 加工食品や外食などは別税率になる場合がある
マルタ 人が消費する食品に0%VATの扱いがある 食品の種類や提供形態によって扱いが変わる場合がある
カナダ 基本的食料品がGST/HST 0% 菓子、炭酸飲料、外食、調理済み食品などは課税対象になりやすい
オーストラリア 基本食品がGST-free 外食、調理済み食品、菓子類などは課税対象になる場合がある

このように、食品消費税ゼロの国といっても、すべての食品が無条件に0%になるわけではありません。多くの国では、「家庭で調理する基本的な食品」は0%、「外食・嗜好品・加工食品」は課税という線引きが行われています。


食品にも標準税率をかける国もある

食品税率を0%にしている国がある一方で、食品にも原則として標準税率を課す国もあります。

代表的な例がニュージーランドです。ニュージーランドでは、食品を含む多くの商品・サービスにGSTが課されます。食品をゼロ税率にするのではなく、税制をできるだけシンプルにし、必要に応じて給付や社会保障で家計を支える考え方です。

また、OECD諸国の中にも、食品に標準税率を適用している国があります。たとえば、デンマーク、韓国、チリ、エストニア、リトアニアなどは、食品への軽減税率を設けない国として整理されることがあります。

つまり、海外では食品税率ゼロが一般的というわけではありません。食品への税負担を減らす国もあれば、税制の簡素さを優先し、別の方法で低所得層を支える国もあります。


日本の食品消費税との比較

日本では、2019年10月に消費税率が10%へ引き上げられた際、飲食料品には8%の軽減税率が導入されました。

現在の日本の基本的な扱いは、次の通りです。

  • 酒類・外食を除く飲食料品:8%
  • 外食:10%
  • 酒類:10%
  • 通常の商品・サービス:10%

イギリス、カナダ、オーストラリアなどと比べると、日本の食品税率は「ゼロ」ではありません。軽減税率によって標準税率よりは低く抑えられているものの、消費者は食品購入時にも8%の税負担をしています。

2026年6月時点では、日本でも食品にかかる消費税を一時的に大幅に引き下げる案が政治的な論点になっています。ただし、現行制度では、食品への軽減税率は8%です。今後の制度変更については、国会での議論、財源、事業者のレジ対応、社会保障財源との関係などを含めて慎重に見る必要があります。


食品消費税ゼロのメリット

食品価格と家計負担を考えるイメージ

食品消費税をゼロにする制度には、いくつかのメリットがあります。

家計の負担を直接軽くできる

食品は毎日買うものです。そのため、食品税率を下げると、多くの家庭にとって負担軽減を実感しやすくなります。

特に、物価高の時期には、食料品価格の上昇が家計に大きな影響を与えます。食品消費税をゼロにすれば、最低限の生活費を抑える効果が期待できます。

低所得世帯への効果が大きい

所得が低い世帯ほど、収入に占める食費の割合が高くなりやすい傾向があります。そのため、食品にかかる消費税を軽くすることは、低所得世帯の負担を和らげる政策として説明されることがあります。

消費税は、所得の高低に関係なく同じ税率がかかるため、逆進性が問題視されることがあります。食品ゼロ税率は、その逆進性を緩和する一つの方法です。

制度の効果が分かりやすい

給付金や所得税減税と比べて、食品税率の引き下げは消費者にとって分かりやすい政策です。

スーパーや小売店で食品を買うたびに税負担が軽くなるため、生活支援策としての実感が得られやすいという特徴があります。


食品消費税ゼロのデメリット

食品消費税ゼロにはメリットがある一方で、課題もあります。

税収が減る

食品は多くの人が日常的に購入するため、税率をゼロにすると国の税収は大きく減ります。

消費税を社会保障財源として位置づけている国では、食品税率を下げると、年金、医療、介護、子育て支援などの財源をどう確保するかが問題になります。

高所得世帯にも恩恵が及ぶ

食品税率をゼロにすると、低所得世帯だけでなく、高所得世帯も同じように恩恵を受けます。

食費の負担割合という意味では低所得世帯への効果が大きいものの、政策全体として見ると、支援を必要としない層にも減税効果が及ぶことになります。そのため、給付金の方が低所得層に的を絞りやすいという考え方もあります。

食品の線引きが難しい

食品消費税ゼロで特に難しいのが、「どこまでを食品とするか」という線引きです。

たとえば、次のような商品は判断が分かれやすくなります。

  • 菓子類
  • サプリメント
  • 健康食品
  • 調理済み食品
  • テイクアウト食品
  • 飲料
  • 冷凍食品

基本的な食品は0%でも、嗜好品や外食は課税するとなると、制度は複雑になります。事業者側の会計処理やレジ設定も難しくなります。

価格が必ず下がるとは限らない

税率を下げても、その分が完全に店頭価格へ反映されるとは限りません。仕入価格、人件費、物流費、為替、エネルギー価格などが上がっていれば、税率を下げても価格があまり下がらない可能性があります。

そのため、食品消費税ゼロは家計支援策として有効な面がある一方で、実際にどれだけ消費者価格に反映されるかも重要な論点です。


食品消費税ゼロと給付金はどちらがよいのか

食品消費税ゼロとよく比較されるのが、低所得世帯への給付金です。

食品消費税ゼロは、すべての人に広く効果が及び、買い物のたびに負担軽減を感じやすい政策です。一方、給付金は、対象を低所得世帯や子育て世帯などに絞りやすく、限られた財源を必要な人に集中しやすいという特徴があります。

両者には、それぞれ次のような違いがあります。

政策 メリット 課題
食品消費税ゼロ 買い物時に負担軽減を実感しやすい 高所得層にも恩恵が及び、税収減も大きい
給付金 支援対象を絞りやすい 申請や所得判定が必要になり、制度が分かりにくくなる場合がある

どちらが優れているかは、国の財政状況、物価上昇の程度、社会保障制度、行政手続きの効率性によって変わります。


食品消費税ゼロの国から分かること

食品を買い物する家族のイメージ

食品消費税ゼロの国を見ると、共通しているのは「食品を生活必需品として特別に扱う」という考え方です。

イギリス、カナダ、オーストラリアなどでは、家庭で調理する基本的な食品には税負担をかけず、外食や嗜好品には課税する仕組みが見られます。これは、生活に不可欠なものと、選択的な消費を分けて考える制度です。

一方で、ニュージーランドのように、食品にも標準税率を課し、税制全体をシンプルに保つ国もあります。この場合、低所得層への支援は税率ではなく、給付や社会保障で行うという考え方になります。

つまり、食品消費税ゼロは唯一の正解ではありません。国によって、税制の簡素さを重視するのか、生活必需品への配慮を税率に直接反映するのか、政策の考え方が異なります。


まとめ

食品消費税ゼロの国には、イギリス、アイルランド、マルタ、カナダ、オーストラリアなどがあります。これらの国では、基本的な食料品に対して0%税率やGST-freeの扱いが設けられています。

ただし、食品なら何でも0%になるわけではありません。多くの国では、家庭で調理する基本食品は0%、外食、菓子、スナック、アルコール、調理済み食品などは課税対象というように、細かな線引きがあります。

日本では、食品に8%の軽減税率が適用されています。海外のゼロ税率国と比べると、食品購入時にも一定の税負担が残っている点が大きな違いです。

食品消費税ゼロは、家計負担を軽くし、低所得世帯への支援につながる政策です。一方で、税収減、制度の複雑化、高所得層にも恩恵が及ぶことなど、課題もあります。

食品税率をどうするかは、単なる減税論ではなく、生活必需品をどこまで守るのか、社会保障財源をどう確保するのか、支援を必要とする人にどう届けるのかという問題でもあります。海外の事例を見る際には、税率だけでなく、その背景にある制度設計まで含めて理解することが大切です。

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