ワールドシリーズ優勝賞金
予備知識:
- 🏆 MLBの「優勝賞金」は、正確には**選手分配金(Players’ Pool/Share)**のこと。球団オーナーの収入とは別です。
- 💵 プール原資はポストシーズンの入場券収入の一定割合から形成され、ワールドシリーズ優勝チームはその36%、準優勝は24%を受け取ります。
- 👥 金額は“1人あたり固定”ではなく、チーム内で投票して決める「フルシェア/パーシャルシェア(按分)」の配り方次第で、個々の受取額が増減します。
- 📈 直近実績:2024年ドジャースのフルシェアは約47.7万ドル。2023年レンジャーズは約50.6万ドル。2022年アストロズは約51.6万ドル(過去最高水準)でした。
- 🔮 2025年も観客動員(入場収入)と配分数で額が決まる見通し。シリーズが長引くほど(最小試合数を超えると)追加の入場収入は選手プールに入らない点がポイントです(後述)。
1. 「優勝賞金」の正体は?—球団の売上と選手分配金は別物
一般に「ワールドシリーズの優勝賞金」と言われるものは、主に選手に配られる分配金(Players’ Share)を指します。これはポストシーズンの観客収入の一部を原資に作られるプールで、選手・監督・一部スタッフに配分されます。ここでいう“賞金”は選手への分配金であり、球団(オーナー側)の収入—放映権料やスポンサー収入、ポストシーズンの残りの入場収入など—とは切り分けて考えます。球団は球団で別途に収益を得ており、選手分配金はCBA(労使協約)で定められた仕組みに基づいて選手側へ渡るものです。
2. 仕組み:ポストシーズン入場収入がプールを作る
- 🎟️ 原資比率の考え方
ポストシーズンの確定消化試合(ワイルドカードシリーズの最初の2試合、ディビジョンシリーズの最初の3試合、リーグ優勝決定シリーズの最初の4試合、ワールドシリーズの最初の4試合)における入場券収入の一定割合が選手プールになります。
- 🧾 オーナー側取り分と選手プール
一般に**コミッショナー事務局が入場収入の一部(約15%)**を手数料として取り、残りから上記割合がプレーヤーズ・プールに回ります。残りは球団側の取り分です。
- 🗳️ 配分方法はチームの投票で決定
各ポストシーズン進出チームのクラブハウスで、フルシェア(1口)・パーシャルシェア(按分)・現金ボーナスの配り方を選手が投票で決めます。登録枠にいた選手だけでなく、シーズン中に貢献した控え選手や裏方スタッフへ「部分配分」や現金賞与を出すかどうかもチーム裁量です。
「最小試合数」ルールに注意:たとえばワールドシリーズが第5戦で決着しても、原資に算入されるのは第1〜第4戦までの入場収入。第5〜7戦の入場収入は原則プール外(=選手分配金には上乗せされない)です。そのためシリーズが長引けば“1人あたり額”が必ず増えるわけではありません。むしろ、配分口数(フル&パーシャル)が増えると1口あたりは薄まることがあります。
3. 分配率(目安)
- 🏆 ワールドシリーズ優勝チーム:プレーヤーズ・プールの36%
- 🥈 ワールドシリーズ準優勝チーム:24%
- ⚾ リーグ優勝決定シリーズ敗退(2チーム):合計24%を山分け
- 🔻 ディビジョンシリーズ敗退(4チーム):合計13%を山分け
- 🎯 ワイルドカードシリーズ敗退(4チーム):合計3%を山分け
(※各年のCBA/運用告知に基づく一般的な配分枠。実際の金額はその年の入場収入と発行シェア数で変動)
4. 直近の実額(参考)
金額はフルシェア1口あたりの目安。ドル表示。チームの配分方針(フル/パーシャルの口数)で上下します。
| 年 |
優勝チーム(フルシェア額) |
準優勝チーム(フルシェア額) |
参考:総プレーヤーズ・プール |
| 2024 |
ロサンゼルス・ドジャース 約$477,441 |
ニューヨーク・ヤンキース 約$354,573 |
約$129.1M(史上最高) |
| 2023 |
テキサス・レンジャーズ 約$506,263 |
アリゾナ・ダイヤモンドバックス 約$313,634 |
約$107.8M |
| 2022 |
ヒューストン・アストロズ 約$516,347 |
フィラデルフィア・フィリーズ 約$296,255 |
約$107.5M など |
2024年ドジャースの配分内訳(計算イメージ)
- ドジャースの優勝チーム取り分(プールの36%)は約$46.47M。
- チームはフルシェア79口+パーシャル計17.49口+現金ボーナス$405,000で配分。
- よって分配対象の口数は約96.49口、フル1口あたり約$477,441。
同じ「優勝」でも、配る口数が多いほど1口あたりは低くなります。2023年レンジャーズのフルシェアが約50.6万ドルで、2024年ドジャース(約47.7万ドル)より高かったのは、レンジャーズの発行口数が相対的に少なかったためです。
4.1 円換算の早見表(参考・為替感応度)
円換算は概算です。実際の受取額は支給時の為替レート・口数・税務取扱いで変動します。
フルシェア額の円換算(概算)
- 換算レート例:$1=¥150(ほかに¥140/¥160/¥170でも感度を表示)
| 年・チーム |
フルシェア(USD) |
¥140 |
¥150 |
¥160 |
¥170 |
| 2024 ドジャース |
$477,441 |
¥66,841,740 |
¥71,616,150 |
¥76,390,560 |
¥81,164,970 |
| 2023 レンジャーズ |
$506,263 |
¥70,876,820 |
¥75,939,450 |
¥81,002,080 |
¥86,064,710 |
| 2022 アストロズ |
$516,347 |
¥72,288,580 |
¥77,452,050 |
¥82,615,520 |
¥87,778,990 |
目安の“億円”表示($1=¥150)
2024年ドジャース:約0.72億円/1口
2023年レンジャーズ:約0.76億円/1口
2022年アストロズ:約0.77億円/1口
参考:総プレーヤーズ・プールの円換算($1=¥150)
- 2024年 全体プール 約$129.1M → 約¥19,365,000,000(約193.65億円)
- 2023年 全体プール 約$107.8M → 約¥16,170,000,000(約161.70億円)
- 2022年 全体プール 約$107.5M → 約¥16,125,000,000(約161.25億円)
5. 球団(オーナー側)の収入は別勘定 球団(オーナー側)の収入は別勘定
選手分配金の外側で、球団にはポストシーズンの残り入場収入(“最小試合数”を超える分を含む)、全体の放映権・スポンサー収入の取り分などが入ります。したがって「優勝したらクラブが何億ドルも貰う」という単純な“賞金”構造ではありません。選手側はプールの分配金、球団側は事業収入—財務の源泉が異なる点を理解しておくと、ニュースの金額の意味合いがクリアになります。
6. よくある疑問Q&A
Q1. 優勝すると“固定でいくら”貰えるの?
A. 固定額ではありません。年ごとの入場収入(原資)と、チームが決めるシェアの口数で変わります。フルシェアを受け取る人が多いほど、1人あたりは減ります。
Q2. レギュラーじゃなくても貰える?
A. 可能です。フロントスタッフやシーズン途中で戦力になった若手にパーシャルシェアや現金ボーナスを与えるかは、チームの投票で決定されます。
Q3. シリーズが7戦までもつれれば増える?
A. 原資に算入されるのは各ラウンドの“最小試合数”分の入場収入まで。第5戦以降(WSならGame5〜7)の入場収入は原則プールに入りません。したがって必ずしも増えません。
Q4. 為替レートはどう扱う?
A. 分配金は米ドル建てで決定・支給されます。日本円換算額は受け取り時の為替レートで変動します。円安の年は円ベースの受取額が膨らむ点に注意します。
Q5. 税金は?
A. 米国内源泉・居住国側の課税などが関係します。個々の居住地や条約、源泉税額、年収で取り扱いが変わるため、専門家(税理士・会計士)に確認するのが安全です。
7. 2025年の見通しとチェックポイント
- 📊 観客動員とチケット価格がそのままプールの大きさに直結。フルキャパに近い大入り・高額席が多いほど合計プールは大きくなります。
- 🧮 チームのシェア配分方針(フル/パーシャル/現金賞与の比率)で1口あたり額は上下。優勝チームでも口数を厚く出せば、フル1口は相対的に薄くなります。
- 🕰️ 公式発表の時期:ポストシーズン終了後(例年11月下旬ごろ)にMLBが各チームのシェア額・口数を公表。記事更新時点(2025年10月28日)では2025年分は未確定で、シリーズ終了後の公式発表で最終額が判明します。
8. 受取額の“体感”を計算してみる(簡易シミュレーター)
フルシェア単価(例:47.7万ドル)と、あなたの想定するフル・パーシャル合計口数を入れれば、1人あたりや総配分の目安を試算できます。
- 例:フル1口=$477,441、合計口数=100口 ⇒ 総配分=約**$47,744,100**
- 例:フル1口=$480,000、合計口数=95口 ⇒ 総配分=約**$45,600,000**
実務では「総プール額」が先に決まり、(総プール額−現金賞与)÷総口数=フル1口額で算出されます。ここでは概念の理解を優先して逆算例を示しています。
9. まとめ(要点チェック)
- ✅ MLBの“優勝賞金”= **選手分配金(Players’ Share)**で、オーナー収益とは別枠。
- ✅ 原資はポストシーズン入場収入の一定割合(各ラウンドの最小試合数までが対象)。
- ✅ 優勝チーム36%/準優勝24%。ただしチームが決める口数で1人あたり額が変動。
- ✅ 直近実績:2024年ドジャース約$477,441、2023年レンジャーズ約$506,263、2022年アストロズ約$516,347。
- ✅ 最新年の正式額は、シリーズ終了後にMLBが公表。円換算・税務は個別事情に依存。
補足:用語ミニ解説
- Players’ Pool / Players’ Share(選手分配金):ポストシーズンの入場収入の一部を原資に、選手・監督らへ配分される“ボーナス”枠。
- Full Share / Partial Share:フルシェアは1口、パーシャルは口数の按分。チーム投票で誰にどの程度配るか決める。
- Minimum Number of Games(最小試合数):各ラウンドで原資に算入する試合数の上限。WSは第1〜第4戦まで。
本稿は制度の仕組みと直近公表データをもとに整理しています。年ごとの正式額はワールドシリーズ終了後にMLBが告知するため、確定値が出次第の更新をおすすめします。