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相撲部屋の「外国人枠」

相撲部屋の「外国人枠」

日本の国技とされる大相撲では、ハワイ出身の曙や小錦、モンゴル出身の朝青龍や白鵬など、外国出身力士が長くトップで活躍してきました。その一方で、しばしば話題になるのが「相撲部屋の外国人枠」という仕組みです。

各相撲部屋には外国人力士は何人まで?」「帰化すれば日本人扱いになるの?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

この記事では、相撲部屋ごとの外国人枠の仕組みや歴史、導入された背景、そして今後の行方までを、できるだけ分かりやすく整理してご紹介します。


1. まず「相撲部屋」と「新弟子」の基本から

相撲部屋とは?

大相撲の力士は、必ずどこか一つの「相撲部屋」に所属します。相撲部屋は、力士が寝起きし、稽古をし、生活のほぼ全てをともにする“家”のような存在です。親方(師匠)が部屋を運営し、弟子たちを育てます。

  • 力士は原則として部屋を移籍することができない
  • 部屋ごとに稽古スタイルや気風が異なる
  • 新弟子は中学卒業〜20歳前後で入門することが多い

この「相撲部屋」に対して、日本相撲協会が設けているのが「外国人枠」のルールです。


2. 外国人枠の基本ルール

現在、大相撲の世界では、次のようなルールが採用されています。

  • 原則として 1つの相撲部屋につき、外国出身力士は1人まで
  • ここでいう「外国出身」とは、入門時の国籍・出身地 を基準にする
  • その後に日本国籍を取得(帰化)しても、「外国出身力士」の枠から外れない

つまり、

モンゴル出身の力士が部屋に1人いる → その後、彼が日本国籍を取得しても、同じ部屋に新たなモンゴル出身力士をもう1人入門させることはできない

という運用になっています。

ただし、

  • 制度導入前から複数の外国出身力士を抱えていた部屋
  • 部屋の合併などによって結果的に複数の外国出身力士が所属することになったケース

など、“例外的に2人以上の外国出身力士がいる部屋” も存在します。このため、「一部屋一人と聞いたのに、なぜあの部屋には複数いるの?」と不思議に思うファンも少なくありません。


3. 外国人枠はいつから導入された? 歴史を整理

外国人枠のルールは、一度に現在の形になったわけではありません。大きく分けると、次のような変遷があります。

3-1. 1992年:初めての人数制限

それまで、外国出身力士の人数に明確な上限はありませんでした。しかし、ハワイやモンゴルなどから有望な力士が次々と入門し、上位を占めるようになったことから、1992年に初めて制限が設けられます。

  • 各相撲部屋につき 外国人力士は2人まで
  • 協会全体では 合計40人まで という上限

このときは、あくまで「国籍が外国の力士」を対象とした枠でした。

3-2. 2002年:部屋ごと1人へと厳格化

その後も外国出身力士の活躍は続き、「日本人力士がなかなか優勝できない」という声が強まっていきます。こうした状況も背景に、2002年にはルールがさらに厳格化されました。

  • 全体40人枠は廃止
  • 代わりに、各相撲部屋につき外国人力士1人まで に制限

これにより、相撲部屋の師匠(親方)は、

「部屋の外国人枠を誰に使うか」

を非常に慎重に考えざるを得なくなりました。

3-3. 2010年:「外国人」から「外国出身」への変更

さらに2010年には、大きな見直しが行われます。

それまでのルールでは、

  • 外国人力士が日本国籍を取得すると、形式上は「外国人」ではなくなる
  • すると、新たに別の外国人力士を同じ部屋に入門させる“抜け道”が生まれる

という問題が生じていました。そこで、

  • 「外国人力士枠」 → 「外国出身力士枠」へ名称・解釈を変更
  • 帰化した力士も含めて、外国出身者は一部屋1人まで

という形にルールが強化されました。

現在話題になる「帰化しても枠が空かない」という仕組みは、この2010年の見直しによって生まれたものです。


4. なぜ外国人枠が設けられたのか

4-1. 外国出身力士の台頭と“強くなりすぎ問題”

1990年代以降、ハワイ出身力士やモンゴル出身力士を中心に、外国出身力士が次々と幕内上位に進出し、横綱や大関にも昇進しました。

その結果、

  • 本場所の優勝力士が外国出身者ばかりになる
  • 番付上位の多くを外国出身力士が占める

といった状況が続き、

「日本の国技なのに、日本人力士が活躍できていない」

という危機感や不満の声が、協会内外で高まっていきました。

4-2. 「国技」としてのイメージ維持

大相撲は、単なるスポーツを超えて「国技」「伝統文化」としての側面が大きい世界です。そのため、

  • 外国出身力士ばかりが上位を独占する状況は、国技のイメージ上どうなのか
  • 伝統的な所作・礼儀作法・日本語の習得などを考えると、日本人力士をある程度育成したい

といった議論も強くありました。

こうした背景から、協会は外国出身力士の人数制限に踏み切り、現在の「一部屋一人」の外国人枠が生まれたと考えられます。


5. 外国人枠がもたらすメリット・デメリット

外国人枠は、相撲界全体や個々の相撲部屋、そして外国出身力士本人にとって、それぞれ異なる影響を持ちます。

5-1. 協会・相撲界全体にとって

メリット

  • 日本人力士に活躍の場を確保しやすくなる
  • 国技としての「日本らしさ」を打ち出しやすい
  • 外国出身力士が一部屋に集中しすぎることを防げる

デメリット

  • 実力のある外国人材の受け皿が足りなくなる
  • 日本人の入門者が減っている現状では、人材不足を加速させる恐れ
  • 世界的な競技力の向上という観点ではマイナスにもなりうる

5-2. 相撲部屋にとって

各部屋の親方は、

  • 外国人枠を「誰に使うか」
  • 将来横綱・大関を狙えるか
  • 日本人の弟子とのバランスはどうするか

など、長期的な視点で判断する必要があります。

一度、非常に有望な外国出身力士を1人抱えた場合、

その力士が引退するまで、次の外国出身力士を取れない

ということもあり得るため、「長い目で見た部屋作り」が重要になります。

5-3. 外国出身力士本人にとって

外国人枠は、外国出身力士にとっては 「狭き門」 となっています。

  • 枠が限られているため、日本の相撲部屋に入門できる人数が非常に少ない
  • 入門できても、結果を残せなければ廃業・帰国を迫られる厳しい世界
  • 反対に成功すれば、母国に誇れる大スターになれる

モンゴルなど相撲人気の高い国では、

「日本に行き、大相撲で成功する」

ことが今も大きな夢とされており、実際には“順番待ち”のような状態になっているとも言われています。


6. 例外ケースとよくある誤解

外国人枠には、制度上の経緯からいくつかの例外があります。それが、ファンの間で誤解を生む原因にもなっています。

6-1. 制度導入前から複数いた部屋

1992年や2002年のルール改正前から、すでに複数の外国出身力士を抱えていた部屋については、

  • その力士たちはそのまま在籍可
  • ただし、新たに追加で外国出身力士を採用することは不可

といった“経過措置”が取られました。このため、

「今も2人以上の外国出身力士がいる部屋」

が存在しており、それを見たファンが「一部屋一人というルールはウソなの?」と疑問に思う、という状況が生まれます。

6-2. 部屋の合併・継承によるケース

相撲界では、

  • 親方の定年や健康上の理由
  • 部屋の統合・継承

によって、相撲部屋が合併されるケースもあります。このとき、

  • それぞれの部屋にいた外国出身力士が、新しい一つの部屋にまとまる

という事態が起こり、結果として

「一部屋に外国出身力士が2人以上いる」

ように見えることがあります。これも、多くの場合はルールの“抜け道”ではなく、制度上認められた経過措置です。

6-3. 「ハーフ」や海外在住経験者はどう扱われる?

外国人枠の対象になるのは、基本的には

  • 入門時の国籍
  • 出身地(外国生まれかどうか)

などで判断されます。

一方で、

  • 日本国籍を持ち、日本の学校で育った「ハーフ」の力士
  • 両親の片方が外国人でも、日本生まれ・日本国籍であれば

多くの場合は「日本出身力士」として扱われ、外国人枠には含まれません。こうした点も、ニュース記事などを読む際に注意したいポイントです。


7. 入門者減少と外国人枠見直し論

近年、大相撲は

  • 少子化
  • 若年層のスポーツ・進路の多様化

などの影響で、日本人の新弟子が減少していると言われています。一方で、海外には大相撲に憧れる若者が多数おり、外国人枠がなければ、もっと多くの人材を受け入れられる可能性もあります。

このため、

  • 外国人枠を撤廃、または緩和すべきではないか
  • あるいは、別の形で日本人力士育成を支援すべきではないか

といった議論も出ています。

ただし、

  • 外国出身力士が上位を独占する状況になれば、「国技としてのイメージ」が揺らぐ
  • ファンの間でも賛否が分かれやすいテーマ

であるため、協会としても慎重な判断が求められています。


8. まとめ:外国人枠は「国技」と「国際化」の間で揺れる制度

相撲部屋ごとの外国人枠は、

  • 外国出身力士の活躍
  • 日本人力士の減少
  • 大相撲を「国技」としてどう守るか

といった、さまざまな要素が絡み合う中で生まれ、時代とともに形を変えてきました。

ポイントをおさらいすると:

  • 現在は原則として「一つの相撲部屋につき外国出身力士は1人まで」
  • 1992年の導入以降、2002年・2010年と段階的に厳格化されてきた
  • 帰化した力士も外国出身枠に含まれるため、枠は簡単には空かない
  • 制度導入前から複数いた部屋や部屋の合併などにより、例外的なケースも存在する
  • 人材不足や国際化の観点から、今後の見直しが議論される可能性もある

外国人枠は、大相撲が「日本の伝統文化」であると同時に、世界に開かれた競技でもあるという矛盾を、どうバランスさせるかを象徴する制度だと言えるでしょう。

今後も、相撲部屋の外国人枠をめぐる議論は続いていくと思われます。これから大相撲を観るときには、土俵上の取り組みだけでなく、こうした制度の背景にも少し目を向けてみると、より奥深く楽しめるはずです。

 

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