日米通算200勝投手・一覧表
対象と定義:本稿の「日米通算」は NPB(日本プロ野球)+MLB(メジャーリーグ) におけるレギュラーシーズン公式戦の「勝利(W)」合計。
ポストシーズン、オープン戦、二軍・マイナー、独立リーグ、国際大会は含みません。数字は2025年9月20日(JST)時点の到達状況に基づきます。現役は試合で変動します。
1. 日米通算200勝投手(一覧表)
日米通算200勝投手の一覧表は以下です。
2025年9月20日更新
順位 |
投手 |
日米通算勝利 |
内訳(MLB/NPB) |
備考 |
1 |
ダルビッシュ有 |
206(更新中) |
113/93 |
2024年に200勝到達。2025年も上積み継続。最多記録の更新幅を広げつつある。 |
2 |
黒田博樹 |
203 |
79/124 |
先発勝利のみで200到達という稀有なケース。役割の一貫性と耐久性の象徴。 |
3 |
野茂英雄 |
201 |
123/78 |
日本人初のMLB新人王。日本人で最初に200勝(2005年)。先駆者としての文化的インパクトも大。 |
※到達順:野茂 → 黒田 → ダルビッシュ。数値は媒体により±1の表示差が出る場合があります。
日米通算200勝投手は現在わずか3名ということになります。現在、田中将大選手が日米通算200勝に王手をかけています。
2. 達成タイムライン(年表)
- 2005年:野茂英雄 — 日本人で初の「日米通算200勝」。MLBでの白星比率が高く、挑戦の時代を切り開いた到達。
- 2016年:黒田博樹 — 先発ローテを粘り強く守り抜き、救援勝利なしでの200越えを実現。
- 2024年:ダルビッシュ有 — 球種の再設計とコンディショニングで長期稼働を確立し到達。2025年も最多記録を更新中。
補足:達成“年”の表記は節目の理解を助けるための年表です。具体の試合日・対戦相手などの詳細は各到達記事・公式ボックススコアをご参照ください。
3. 各投手のハイライトと特徴(詳説)

野茂英雄(201勝|MLB123/NPB78)
- 先駆者の価値:トルネード投法とフォーシーム/フォークの縦変化で、メジャーリーグ123勝という日本人最多級の数字を樹立。
- “海を渡る”ことの意味:NPB→MLB移行の難易度が高かった時代に成功し、以降の世代の選択肢を広げた功績は数字以上。
- 印象的な白星:二度のノーヒッターなど、記録に残るだけでなく記憶に残る勝利が多い。
黒田博樹(203勝|MLB79/NPB124)
- ゲームメイク力:ゴロを量産して被弾を抑え、長いイニングを淡々と消化。守備との噛み合わせが良い投球で“試合を壊さない”。
- 特筆点:先発勝利のみで200。救援勝利を含めず到達した厳格さは、役割と耐久の両方の証明。
- 日米の橋渡し:MLB帰還後もNPBで存在感を保ち、有終の節目に到達。
ダルビッシュ有(206勝・更新中|MLB113/NPB93)
- 再発明の名手:ボールの軌道と回転効率、球種の微細な変化量を最適化する**“球種マネジメント”**で年齢とともに進化。
- 現代的到達:分業化の時代、厳しい球数・登板間隔の制約下でもゲーム設計と準備で勝ち星を積む。
- 今後の焦点:健康管理とローテ維持が叶えば、最多記録の差をさらに拡大できる見込み。
4. 200勝に迫る/上位の有力投手(200未満でも要注目)
**「200勝投手以外も知りたい」**というニーズに応えて、代表的な上位例を整理(到達値は概数、現役は変動)。
目安順位 |
投手 |
日米通算勝利 |
内訳(MLB/NPB) |
メモ |
4 |
田中将大 |
199(王手) |
78/121 |
200勝まであと1。2025年の最注目トピック。 |
5 |
石井一久 |
182 |
39/143 |
NPB中心に堅実に積み上げた左腕。 |
6T |
松坂大輔 |
170 |
56/114 |
2008年のMLB18勝がハイライト。ピークの支配力が鮮烈。 |
6T |
岩隈久志 |
170 |
63/107 |
MLBノーヒッター(2015)。制球と球質の安定感。 |
8T |
前田健太 |
165 |
68/97 |
コマンドと球種配分の妙。健康と役割が上積みの鍵。 |
8T |
和田毅 |
165 |
5/160 |
NPBの大黒柱。年齢を重ねてもゲームメイク力が光る。 |
10 |
上原浩治 |
134 |
22/112 |
クローザー経験を含む多彩な役割で白星を積上げ。 |
👀 参考トピック
- 150勝圏に近づくNPB主軸(例:菅野智之など)。MLBでの登板実績が薄いと合算200は難しいため、NPBでの長寿命×MLBチャレンジの両立が重要に。
- MLB専業に近い日本人先発の絶対数は少なく、結果として**“200勝クラブ”は希少**なまま推移しています。
5. データで見る“200勝”の難しさ(時代背景と戦術)
- 分業化の徹底:近年の先発は100球前後・6回前後で交代が標準化。完投・完封は希少化し、単年の勝ち星が伸びにくい。
- 援護点と外部要因:勝利は援護点(RS)、救援の質、守備効率に左右され、同じ投球内容でもチーム環境で勝ち星が上下します。
- リーグ間ギャップ:NPBとMLBではボール/マウンド/打者傾向/移動距離/日程が異なり、双方で適応し続けるには技術×健康×運の総合力が要る。
- キャリアの“再設計”:球速ピーク後は球種配合・コマンド・間合いで勝負するフェーズへ。ダルビッシュのように配球の再設計で寿命を延ばすアプローチが現代的。
ポイント:200勝は“単年の爆発力”ではなく、10年以上の長期にわたる安定的な品質の証明。QS(6回自責3以内)の積み重ねが勝ち星の土台になります。
6. 集計ルールQ&A(よくある疑問)
Q1. ポストシーズンの勝利は合算?
A. いいえ。 本稿はレギュラーシーズンのみ。
Q2. 先発の“勝ち”の条件は?
A. 原則5回以上を投げ、降板時に自軍がリードし、その後同点・逆転されないこと。
Q3. 救援の“勝ち”は?
A. 登板中に自軍が勝ち越し、そのままリードを維持した場合にその投手へ。極端に不出来な短い登板は公式記録員裁定で付け替えられる場合があります。
Q4. 二軍やマイナー、独立リーグは?
A. 対象外。 NPBとMLBの一軍公式戦のみ。
Q5. 数字がサイトで微妙に違うのは?
A. 更新タイミング差、サスペンデッドの扱い、速報値の丸め、公式発表の記載差などが原因です。
7. 補章A:指標ミニ解説(W/QS/WARほか)
- W(勝利):勝利投手に付く記録。先発は5回以上。救援は登板中に勝ち越しが起き、そのままリードを保持。
- L(敗戦):投手が責任を負う逆転を許した場合に記録。
- QS(クオリティ・スタート):先発で6回以上・自責3以内。勝利に結び付きやすいが、救援や援護次第で必ずしも勝ち星にはならない。
- ERA/FIP:投手の失点予防能力(ERA)と、守備の影響を排して三振・四球・本塁打に焦点を当てた独立指標(FIP)。
- WAR:選手の総合的な勝利貢献度(算出法は提供元により異なる)。通算Wとあわせて読むと**“勝ちをどう積んだか”**の理解が深まる。
8.トリビアコーナー
ダルビッシュ有
- 奪三振の記録: ダルビッシュは、日米通算で3000奪三振以上を記録しています。これは、日本プロ野球で挙げた奪三振数と、MLBで挙げた奪三振数の合計です。日米でこれだけの三振を奪っている投手は他にいません。この事実は、彼の投球の質の高さと、長いキャリアを通じて打者を圧倒し続けていることを示しています。
黒田博樹
- 所属球団の「勝利」: 黒田が日米で所属した広島東洋カープとロサンゼルス・ドジャースは、いずれもリーグ優勝から長らく遠ざかっていました。しかし、彼が所属していた時期に、チームはワールドシリーズ優勝へ向けて躍進しました。彼の存在は、勝利数以上に、チームに安定と勝利への意識をもたらした証とも言えます。
野茂英雄
- 200勝達成時の年齢: 野茂は、日本人として最も早く200勝に到達しましたが、その年齢は36歳でした。これは、メジャーリーグでのキャリアを早期に始めたことが大きく影響しています。一方、黒田は41歳、ダルビッシュは37歳で達成しており、野茂の記録は「挑戦の時代のスピード感」を象徴しています。
その他
- 「引退後」の功績: 野茂英雄と石井一久は、引退後に**東北楽天ゴールデンイーグルスのGM(ゼネラルマネージャー)**に就任しました。これは、単に勝利数を積み重ねただけでなく、野球界の運営面でも重要な役割を担っていることを示しており、彼らの野球に対する深い理解と影響力を物語っています。
- 「世代」の比較: 200勝クラブの3人は、それぞれ異なる世代の投手を象徴しています。
- 野茂英雄:MLBの扉を開いた**「先駆者」**世代。
- 黒田博樹:MLBでの成功を経て、NPBに復帰し、野球に対する**「武士道」**とも言える精神でキャリアを終えた世代。
- ダルビッシュ有:MLBで最新のデータ分析やトレーニングを取り入れ、自己を**「再発明」し続ける「現代的」**な世代。