町おこし・成功例

「何が効いたか」が分かる実例30選＋共通点

「町おこし（地域活性化）」の成功は、観光で一時的に人を集めることだけを意味するものではありません。実際には、特産品のブランド化による安定収益の確保、移住や雇用の創出による人口構造の改善、文化・教育を軸とした地域アイデンティティの再構築、環境施策や循環型の取り組み、空き家や商店街の再生、そして官民連携による持続可能な運営体制づくりなど、複数の要素が重なり合って成果が生まれています。

この記事では、検索ニーズの高い「町おこし 成功 例」というテーマに沿って、日本を中心に具体的な地名・事例を30例以上挙げながら、それぞれがどのような工夫によって成果につながったのかを丁寧に整理します。あわせて後半では、個別事例を超えて共通して見られる「成功する町おこしの型」や、実務的に応用しやすい視点も詳しくまとめます。

町おこし成功例（日本）※分野別に整理して解説

A）観光・目的地化で成功した例

1）大分県・由布市（湯布院）｜“大量集客”に依存しない観光地ブランド

湯布院は温泉地として全国的に知られていますが、その本質的な成功要因は、単なる観光客数の増加を追わず、街並み・景観・静けさ・食・散策体験といった要素を総合的に設計してきた点にあります。行政と民間が協調し、開発規制や景観配慮を行うことで、短期的な利益よりも長期的なブランド価値を優先しました。その結果、「何度も訪れたい温泉地」として定着し、観光収入の安定化にもつながっています。

2）香川県・直島｜現代アートで島全体を“目的地”に変えた事例

直島では、現代アート施設を点として配置するのではなく、島全体を一つの展示空間として捉える発想が採られました。建築、自然、生活空間を含めた体験設計により、訪問者は長時間滞在する傾向が強まり、宿泊・飲食・交通など地域経済全体への波及効果が生まれています。

3）長野県・小布施町｜景観整備と住民主体で“歩きたくなる町”を実現

小布施町は、住民合意を重視した景観ルールづくりと、民間主導の施設運営によって、無理のない観光振興を進めてきました。観光客のためだけの町ではなく、「住民が誇れる町」であることを前提にした点が、持続的な成功につながっています。

4）北海道・美瑛町｜丘の景観と写真文化を観光資源に転換

美瑛町では、農業景観そのものを守りながら活用することで、自然と観光の両立を図ってきました。写真文化の定着により、季節ごとの来訪動機が生まれ、特定時期に集中しがちな観光需要の分散にも寄与しています。

5）北海道・上富良野町／中富良野町｜ラベンダー観光の定着と周辺産業への波及

ラベンダーという視覚的に強い資源を軸に、土産品、飲食、体験型観光へと消費を広げてきました。単なる花畑観光に終わらせず、地域全体で収益を共有する構造を作った点が特徴です。

6）岐阜県・高山市（飛騨高山）｜歴史的町並み×食×工芸の回遊設計

高山市では、町並み保存と観光振興を同時に進めるため、伝統産業や朝市を観光導線に組み込みました。観光客の滞在時間が延びたことで、地域経済への波及効果が大きくなっています。

7）石川県・金沢市｜伝統工芸・食・街歩きを束ねた観光都市モデル

金沢市は、工芸・食・歴史を一体で発信することで、単一資源に依存しない観光都市モデルを確立しました。都市規模での町おこし成功例として、他自治体からの注目も高い事例です。

8）長崎県・五島列島｜自然・信仰・体験を組み合わせた島旅の確立

五島列島では、世界遺産登録をきっかけに、信仰文化と自然体験を組み合わせた観光商品を整備しました。これにより、短期観光だけでなく、再訪や長期滞在を促す流れが生まれています。

9）熊本県・南阿蘇村｜災害復興を“新しい価値づくり”に転換

南阿蘇村は、災害からの復旧を単なる原状回復ではなく、観光と暮らしの再設計と捉えました。復興支援を関係人口の創出につなげた点が、町おこしとしても高く評価されています。

10）沖縄県・竹富町（西表島など）｜自然資源を体験価値へ転換

竹富町では、自然環境を守るためのルール整備と同時に、ガイド付き体験や学習型ツアーを充実させました。保全と観光を対立させず、両立させるモデルとして注目されています。

B）特産品・6次産業化で成功した例

11）高知県・馬路村｜ゆず加工による全国ブランドの確立

馬路村は、ゆずを単なる一次産品として出荷するのではなく、飲料や調味料などの加工品として体系的に商品化しました。さらに、村自らが販路開拓や広報を担い、ストーリー性のあるブランド発信を継続したことが特徴です。その結果、小規模自治体でありながら全国的な知名度を獲得し、安定した収益源を確立しました。

12）北海道・上川町｜自然資源×商品×体験で稼ぎを多層化

上川町では、大雪山系の自然環境という強みを背景に、観光だけに依存しない収益構造づくりを進めてきました。宿泊、飲食、体験プログラム、地域産品を連動させることで、来訪者一人あたりの消費額を高めています。結果として、観光と地域産業が相互に支え合う形が生まれています。

13）宮崎県・綾町｜有機農業と環境イメージのブランド化

綾町は、有機農業を町の中核政策として長年推進し、「自然と共生する町」という明確なイメージを築いてきました。農産物の価値向上だけでなく、暮らしや環境そのものを含めて発信した点が特徴です。これにより、農業振興と移住・観光の双方に効果が波及しました。

14）山形県・鶴岡市｜食文化を軸にした地域価値の再定義

鶴岡市は、在来作物や伝統的な食文化を掘り起こし、観光や教育、研究分野と結びつけて発信してきました。食を切り口に町の歴史や風土を語ることで、他地域との差別化に成功しています。その結果、学びや体験を目的とした来訪者も増加しました。

15）静岡県・焼津市｜水産資源を“売り方”まで含めて強化

焼津市では、豊富な水産資源を単に水揚げ量で評価するのではなく、加工、流通、食体験へと展開してきました。地元での付加価値創出を重視したことで、関連産業の雇用維持にもつながっています。水産業を町全体の経済基盤として再構築した好例です。

C）移住・雇用（仕事づくり）で成功した例

16）徳島県・神山町｜サテライトオフィス誘致による雇用創出

神山町は、IT企業などのサテライトオフィス誘致を進めると同時に、住居や教育、交流の場を整備しました。仕事と暮らしをセットで設計したことで、移住者が地域に根づきやすい環境が生まれました。その結果、人口減少に歯止めをかける動きが見られています。

17）岡山県・西粟倉村｜林業の6次産業化による仕事づくり

西粟倉村では、森林資源を原木のまま出荷するのではなく、加工やブランド化まで行う方針を採りました。これにより、林業関連の新たな事業と雇用が生まれています。若者が働き続けられる産業を地域内につくった点が評価されています。

18）長野県・伊那市｜移住情報の見える化で選ばれる地域へ

伊那市は、移住希望者が抱きやすい不安に着目し、仕事、住まい、子育てなどの情報を丁寧に発信してきました。具体的な生活像を示すことで、比較検討の対象に入りやすくなりました。その結果、移住相談や実際の移住につながっています。

19）島根県・海士町｜人材育成と教育を軸にした島の自立

海士町は、教育改革や外部人材の受け入れを通じて、島の将来を担う人材育成に力を入れてきました。産業振興と教育を切り離さずに進めた点が特徴です。結果として、島の自立性と持続可能性が高まりました。

20）北海道・東川町｜文化・教育による移住促進

東川町は、写真文化や教育環境の充実を通じて、「住む価値」を明確に打ち出しました。観光地ではなく生活の場としての魅力を伝えたことが、移住者増加につながっています。文化施策を人口政策に結びつけた好例です。

D）環境・循環・サステナ施策で成功した例

21）徳島県・上勝町｜ゼロ・ウェイストによる世界的評価

上勝町は、ごみ分別を徹底するゼロ・ウェイスト政策を進め、環境先進地域として知られるようになりました。この取り組みは、住民意識の向上だけでなく、視察や学習目的の来訪者増加にもつながっています。環境施策を町の個性に転換した例です。

22）長野県・飯田市｜環境と産業を結びつけた地域経営

飯田市では、再生可能エネルギーや環境教育を地域産業と結びつけてきました。環境政策を経済成長の阻害要因ではなく、強化要因として捉えた点が特徴です。その結果、持続可能な地域経営が進んでいます。

23）富山県・立山町周辺｜保全と観光価値の両立

立山町周辺では、自然保全を前提とした観光ルールを整備してきました。短期的な集客よりも長期的な価値維持を重視した運営が評価されています。結果として、質の高い観光地としての地位を保っています。

E）文化・教育・クリエイティブで成功した例

24）香川県・小豆島｜文化資源を“物語”として編集

小豆島は、映画や文学の舞台となった経験を活かし、文化資源を物語として発信してきました。自然や食と組み合わせることで、島全体の魅力を立体的に伝えています。その結果、再訪を促す観光モデルが形成されました。

25）新潟県・十日町市｜芸術祭による地域再編集

十日町市では、芸術祭を通じて点在する集落や資源を一つの物語として再構成しました。住民参加型の取り組みが、地域への誇りを高めています。文化を起点とした町おこしの代表例です。

26）愛媛県・内子町｜町並み保存と暮らしの両立

内子町は、歴史的町並みを保存しながら、住民の生活を維持する方針を取りました。観光優先ではなく暮らしを軸にした点が、結果として持続的な魅力につながっています。

27）京都府・南丹市美山町｜茅葺き景観を核とした滞在型価値

美山町では、茅葺き集落という景観資源を守りながら、体験型観光へと発展させてきました。短時間観光ではなく滞在を促す仕組みが整えられています。

F）空き家・商店街・中心市街地の再生で成功した例

28）香川県・丸亀市｜中心市街地の使い方を再設計

丸亀市では、空き店舗や公共空間の活用を進め、中心市街地に人の流れを取り戻しました。行政と民間が連携した取り組みが特徴です。継続的な賑わい創出につながっています。

29）岡山県・倉敷市（美観地区）｜景観×回遊×商業の集積

倉敷市美観地区は、景観資源を基盤に、歩いて回れる観光導線を整備しました。店舗や文化施設が集積することで、滞在時間と消費額が伸びています。

30）全国の古民家活用事例｜空き家を価値の器へ

全国各地で、古民家を宿泊施設や飲食店、工房、学びの場として再生する取り組みが進んでいます。空き家問題の解決と町の魅力向上を同時に実現するモデルとして注目されています。

町おこし成功例（海外）

31）スペイン・ビルバオ｜文化を軸にした都市再生（ビルバオ効果）

ビルバオは、重工業衰退によって失業率が上昇し、都市の将来像が見えなくなっていた中で、文化・デザインを軸とした都市再生に踏み切りました。グッゲンハイム美術館は象徴的存在ですが、成功の本質は単一施設ではなく、交通インフラ整備、河川環境の再生、街並み更新、観光導線設計などを都市全体の戦略として同時進行させた点にあります。その結果、観光客増加だけでなく、雇用創出・都市イメージ刷新・投資誘導まで波及しました。

32）イタリア各地のアルベルゴ・ディフーゾ（分散型ホテル）

アルベルゴ・ディフーゾは、空き家となった古民家を改修し、町全体を一つのホテルとして運営する仕組みです。宿泊客はフロント・客室・食事場所を町中で行き来するため、自然と飲食店や商店、体験プログラムへお金が落ちる構造になります。過疎化が進む山村や歴史地区でも導入可能で、景観保全・雇用創出・観光収益の分散を同時に実現できる点が、世界各地で評価されています。

33）ポルトガル・リスボン周辺の旧市街再生｜空き物件と回遊設計

リスボン旧市街では、老朽化した建物や空き物件を活用し、宿泊・飲食・文化施設へ転用することで地域価値を再生してきました。重要なのは、単なる再開発ではなく、歴史的景観を守りながら歩いて楽しめる回遊動線を設計した点です。これにより観光消費が一部に集中せず、地域全体へ広がる構造が生まれました。

34）ニュージーランドの地方観光｜自然体験を「仕事」に変えたモデル

ニュージーランドの地方では、雄大な自然を背景に、ガイドツアー・教育型体験・エコツーリズムを体系化しています。単に自然があるだけではなく、安全管理、専門ガイド育成、料金設定、地域還元の仕組みまで含めて設計することで、自然資源を安定した雇用と収益へ転換しています。

35）北欧諸国の循環型地域づくり｜環境施策を地域ブランドに昇華

北欧の地方都市や農村では、再生可能エネルギー、資源循環、環境教育を地域経営の中核に据えています。環境施策を単なる規制やコストと捉えるのではなく、「誇れる暮らし」「次世代に残す地域像」として発信することで、移住・教育・観光・産業すべてに好影響を与えています。

成功する町おこしに共通する「型」

1）目的を明確にすること 2）地域資源を編集し、分かりやすく伝えること 3）小さく始め、改善しながら拡大すること 4）担い手と財源を含めた“続く仕組み”を作ること 5）言葉・写真・物語による発信を怠らないこと

まとめ｜町おこし成功例から学べる最大の教訓

町おこしの成功例に共通するのは、「選ばれる理由」を設計し、それを長く続けられる仕組みに落とし込んでいる点です。他地域の事例をそのまま真似るのではなく、自分たちの地域条件に合わせて翻訳・実装することが、現実的で再現性の高い町おこしにつながります。