「食品ロス」と聞くと、コンビニやスーパーで売れ残ったお弁当、家庭で食べきれずに捨てられる料理、冷蔵庫の奥で忘れられた野菜などを思い浮かべる人が多いかもしれません。
もちろん、食べ物を捨てること自体が「もったいない」ことです。しかし、食品ロスの問題点はそれだけではありません。食べ物を作るためには、水、土地、肥料、飼料、燃料、電気、人手、輸送、冷蔵・冷凍設備など、たくさんの資源が使われています。
つまり、食品を捨てるということは、食べ物そのものを無駄にするだけでなく、その食べ物を作るために使われた資源やエネルギーまで無駄にすることになります。
さらに、捨てられた食品はごみとして回収・運搬・焼却・処分されます。その過程でも費用やエネルギーがかかり、環境への負担も生まれます。食品ロスは、家庭の冷蔵庫の中だけの話ではなく、環境問題、経済問題、食料安全保障、社会の仕組みの問題とも深く関係しているのです。
食品ロスとは、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品のことです。
たとえば、次のようなものが食品ロスにあたります。
ここで大切なのは、食品ロスは「家庭の食べ残し」だけではないという点です。農業・漁業・畜産などの生産段階、食品工場での加工段階、倉庫やトラックによる流通段階、スーパーやコンビニなどの販売段階、飲食店、そして家庭まで、食べ物が人の口に入るまでのあらゆる場所で発生します。

日本の食品ロス量は、令和5年度、つまり2023年度の推計で約464万トンとされています。その内訳は、家庭から出る家庭系食品ロスが約233万トン、食品関連事業者から出る事業系食品ロスが約231万トンです。1人当たりにすると、年間約37kgの食品ロスが発生している計算になります。これは、毎日お茶碗約1杯分に近い量の食べ物を捨てているようなイメージです。農林水産省の資料では、事業系食品ロスの内訳として、食品製造業108万トン、食品卸売業9万トン、食品小売業48万トン、外食産業66万トンとされています。
この数字を見ると、食品ロスは「家庭だけが悪い」「コンビニだけが悪い」といった単純な問題ではないことが分かります。家庭からも、事業者からも、ほぼ同じくらいの量が発生しています。つまり、食品ロスを減らすには、家庭の行動だけでなく、企業、流通、販売、外食、行政、社会全体の仕組みを見直す必要があります。
食品ロスを考えるとき、英語では「Food loss」と「Food waste」という言葉が使い分けられることがあります。
Food lossは、生産・収穫・加工・流通など、消費者の手元に届く前の段階で発生するロスを指すことが多いです。たとえば、収穫後に傷んでしまった果物、輸送中に破損した商品、規格外として出荷されなかった野菜などがこれにあたります。
Food wasteは、スーパー、飲食店、家庭など、消費に近い場所で発生する廃棄を指すことが多いです。売れ残り、食べ残し、買いすぎ、作りすぎ、期限切れによる廃棄などです。
日本語では、これらをまとめて「食品ロス」と呼ぶことが多いですが、どの段階で起きているのかを分けて考えると、原因や対策が見えやすくなります。

食品ロスは、食べ物が作られてから食卓に届くまでのさまざまな段階で発生します。食べ物の流れを大きく分けると、次のようになります。
このすべての段階で食品ロスは起こります。たとえば、畑では形が悪いだけで出荷されない野菜があります。工場では、味や品質に問題がなくても、包装の印字ミスで出荷できない商品があります。スーパーでは、賞味期限が近い商品が売れ残ることがあります。飲食店では、客数の予測が外れて仕込みすぎた食材が余ることがあります。家庭では、買いすぎた食材や作りすぎた料理が捨てられることがあります。
食品ロスの最も分かりやすい問題点は、食べられるはずの食べ物が捨てられてしまうことです。
野菜、果物、米、パン、肉、魚、牛乳、卵、弁当、惣菜、菓子、飲料など、食品は多くの人の手を通って作られます。農家が育て、漁師が獲り、工場で加工され、運送会社が運び、店で販売され、家庭で調理されます。
それにもかかわらず、食べられる状態のまま捨てられると、そのすべての努力が無駄になってしまいます。
特に、米や野菜の価格が上がったり、輸入食品の価格が上昇したりしている時期には、食品を捨てることへの違和感はさらに大きくなります。家計が苦しい人、食費を節約している家庭、十分な食事を取れない人がいる一方で、まだ食べられる食品が大量に廃棄されているという状況は、社会全体で考えるべき問題です。
食品ロスは、食べ物だけを捨てているわけではありません。その食べ物を作るために使われた資源も、同時に無駄になります。
たとえば、野菜を育てるには水、土地、肥料、農機具、燃料、人手が必要です。肉を生産するには、家畜を育てるための飼料、水、施設、電気、輸送が必要です。冷凍食品や加工食品を作るには、工場の機械、包装資材、電力、冷蔵・冷凍設備が必要です。
食品が捨てられると、これらの資源もすべて「結果的に無駄だった」ということになります。
これが、食品ロスが単なる食べ残しの問題ではなく、資源の問題でもある理由です。食べ物を捨てることは、水を捨て、燃料を捨て、電気を捨て、労働を捨てることにもつながります。
食品ロスは環境問題とも深く関係しています。
食品を作る段階では、農業機械や工場、輸送、冷蔵・冷凍設備などでエネルギーが使われます。食品が捨てられた後も、回収、運搬、焼却、埋め立てなどにエネルギーが必要です。また、食品廃棄物が分解される過程で温室効果ガスが発生する場合もあります。
国際的にも、食品ロスと食品廃棄は大きな環境負荷として扱われています。UNFCCCは、食品ロスと食品廃棄が世界の年間温室効果ガス排出量の8〜10%を占めると説明しており、世界の農地の約3分の1が、結果的に失われたり廃棄されたりする食品のために使われているとも指摘しています。FAOの資料でも、世界で人間の消費用に生産された食料のおよそ3分の1、約13億トンが失われたり廃棄されたりしているとされています。
食品ロスは、見た目には「冷蔵庫の中の問題」「店の売れ残りの問題」に見えるかもしれません。しかし実際には、気候変動、資源消費、土地利用、生物多様性にも関係する、かなり大きな環境問題です。
食品を捨てると、それを処理するための費用が発生します。
家庭から出た生ごみは自治体が回収し、焼却施設などで処理します。店舗や工場から出る食品廃棄物も、事業者が費用をかけて処理します。飲食店では、仕込みすぎた食材や食べ残しが多いほど、ごみ処理費用が増えます。
つまり、食品ロスは「捨てて終わり」ではありません。捨てるにもお金がかかります。
家庭の場合、ごみ処理費用は税金や自治体の予算と関係します。企業の場合、廃棄コストは経営を圧迫します。食品ロスが多い社会では、食べ物を作るためにもお金を使い、捨てるためにもお金を使うという、非常に非効率な状態が生まれます。
食品ロスは、家庭の家計にも直接関係します。
たとえば、特売だからといって野菜を大量に買っても、使い切れずに捨ててしまえば節約にはなりません。大容量の商品を買っても、食べきれずに期限切れになれば、かえって損になります。冷蔵庫の奥にある食品を忘れて同じものを買ってしまうことも、家計の無駄につながります。
食品ロスは、毎回は小さな金額に見えるかもしれません。しかし、毎週のように野菜、パン、肉、惣菜、調味料などを少しずつ捨てていると、年間ではかなりの金額になります。
食品ロスを減らすことは、環境に良いだけでなく、家計を守ることにもつながります。特に物価が上がっている時期には、「安く買う」だけでなく「買ったものを使い切る」ことが重要になります。
食品ロスは、食料安全保障とも関係します。
食料安全保障とは、必要な食べ物を安定して手に入れられる状態のことです。日本は多くの食品や飼料、肥料、エネルギーを海外に依存しています。天候不順、戦争、物流の混乱、円安、燃料価格の高騰などが起きると、食料価格や供給に影響が出やすくなります。
その一方で、まだ食べられる食品が大量に捨てられているとしたら、それは大きな矛盾です。
もちろん、食品ロスを完全にゼロにすれば食料問題がすべて解決するわけではありません。食品には衛生管理や安全性の問題があり、災害時の備えや供給の余裕も必要です。しかし、「捨てることが前提」になった仕組みが続くと、食料を大切に使う社会にはなりにくくなります。
食品ロスを減らすことは、限られた食料をより有効に使うという意味でも重要です。
食品ロスが当たり前になると、食べ物の価値が軽く見られやすくなります。
「少し余ったら捨てればいい」「新しいものを買えばいい」「期限が近いから捨てよう」という感覚が広がると、食べ物を作る人の努力や、食材が食卓に届くまでの過程が見えにくくなります。
食べ物は、店に並んだ瞬間に突然生まれるものではありません。種をまき、育て、収穫し、加工し、運び、販売する人たちがいます。魚や肉、乳製品、卵なども、多くの手間と時間をかけて生産されています。
食品ロスの問題は、食べ物をどのように扱う社会でありたいのかという、価値観の問題でもあります。
世界には、十分な食べ物を手に入れられない人々がいます。その一方で、世界では大量の食品が失われ、廃棄されています。
ただし、ここで注意が必要です。日本で捨てられる弁当や家庭の食べ残しを、そのまま飢餓に苦しむ地域へ送れば解決する、という単純な話ではありません。食品を届けるには、輸送、保存、衛生、費用、政治状況、紛争、貧困、現地の流通など、さまざまな問題があります。
それでも、食べられる食品を大量に捨てる社会のあり方は、食料の分配や公平性を考えるきっかけになります。
食品ロスを減らすことは、世界の飢餓を直接すぐに解決する方法ではありません。しかし、食料を大切に扱い、余剰を必要な人に届ける仕組みを整え、無駄な生産や廃棄を減らしていくことは、より公平な社会を考えるうえで重要です。
生産段階では、農作物や水産物、畜産物が消費者に届く前に失われることがあります。
たとえば、野菜や果物は、味に問題がなくても、形が曲がっている、大きすぎる、小さすぎる、表面に傷があるという理由で出荷されないことがあります。いわゆる規格外品です。
また、天候不順で収穫時期がずれたり、急に豊作になって市場価格が下がったりすると、収穫しても採算が合わず、そのまま畑に残される場合もあります。人手不足で収穫しきれないこともあります。
漁業でも、サイズが合わない魚や、需要が少ない魚が十分に活用されないことがあります。畜産でも、部位によって需要に差があり、人気のない部位が余ることがあります。
このように、生産段階の食品ロスは、単に「食べ残し」とは違い、規格、価格、人手、需要、流通の仕組みと深く関係しています。

食品工場では、原材料を加工して商品にします。その過程でも食品ロスは発生します。
たとえば、製造量の見込みが外れて作りすぎた場合、余った商品が廃棄されることがあります。パッケージの印字ミス、ラベルの貼り間違い、箱のへこみなどで、中身に問題がなくても出荷できなくなることもあります。
流通段階では、輸送中の破損、温度管理の失敗、納品期限に間に合わないことなどが食品ロスにつながります。特に冷蔵・冷凍食品は、温度管理が崩れると品質や安全性に影響が出るため、廃棄せざるを得ない場合があります。
また、日本の食品流通では、賞味期限までの期間を区切って納品や販売の目安にする商慣習が問題になることがあります。いわゆる「3分の1ルール」と呼ばれる考え方です。
3分の1ルールとは、食品の製造日から賞味期限までの期間を大きく3つに分け、最初の3分の1までに小売店へ納品し、次の3分の1までに販売し、残りの3分の1を消費者が食べる期間として残す、という考え方です。
たとえば、賞味期限が6か月の商品であれば、製造から2か月以内に小売店へ納品し、4か月以内に販売し、残り2か月を消費者が食べる期間として残す、というイメージです。
このルールは、消費者に十分な期限を残した商品を届けるという意味では、品質管理のための考え方でもあります。しかし一方で、まだ十分に食べられる商品でも、納品期限を過ぎると小売店に納めにくくなり、結果として返品や廃棄につながることがあります。
近年は、食品ロス削減のために、このような過剰な商慣習を見直す動きもあります。

スーパーやコンビニでは、売れ残りによる食品ロスが発生します。
特に弁当、惣菜、パン、サンドイッチ、ケーキ、生鮮食品などは、販売できる時間が短いため、売れ残ると廃棄になりやすい食品です。
販売店では、棚が空になることを避けたいという事情があります。棚に商品が少ないと、店が寂しく見えたり、客が「欲しいものがない」と感じたりするためです。そのため、ある程度多めに発注し、閉店近くまで商品を並べておくことがあります。
しかし、これは売れ残りのリスクを高めます。
また、消費者が奥から新しい日付の商品を選ぶ行動も、食品ロスにつながります。手前にある期限の近い商品が売れ残ると、店は値引きして売るか、最終的に廃棄することになります。
食品ロスを減らすには、店側の発注や値引きの工夫だけでなく、消費者側が「すぐ食べるなら手前の商品を選ぶ」という意識を持つことも大切です。
飲食店でも食品ロスは多く発生します。
外食産業では、来店客数を正確に予測することが難しいため、ある程度余裕を持って仕込みをします。雨の日、イベント、連休、気温、近隣施設の混雑などによって客数は変わります。予想より客が少なければ、仕込んだ食材が余ります。
宴会やホテルのビュッフェでは、料理を多めに用意することがあります。料理が少なく見えると満足度が下がるため、見た目の豊かさを保つ必要があるからです。しかし、その結果として食べ残しや余剰が出やすくなります。
また、予約の無断キャンセルも大きな問題です。飲食店は予約人数に合わせて食材を仕入れ、仕込みをします。直前キャンセルや無断キャンセルがあると、用意した食材が無駄になり、店に大きな損害が出ます。

家庭の食品ロスは、日常の小さな行動の積み重ねで発生します。
代表的なのは、買いすぎ、作りすぎ、保存ミス、食べ残し、期限切れです。
たとえば、特売で買った野菜を使い切れずに傷ませることがあります。冷蔵庫の奥に入れた食品を忘れて、気づいたときには期限が切れていることもあります。家族の予定が変わって夕食が余ったり、健康のために買った食材が使い慣れずに残ったりすることもあります。
一人暮らしや高齢者世帯では、1袋の量が多すぎて使い切れないことがあります。反対に、家族が多い家庭では、念のため多めに作った料理が余ることもあります。
家庭の食品ロスは、一つひとつは小さく見えます。しかし、全国の家庭で同じようなことが起きると、大きな量になります。
食品ロスを減らすうえで重要なのが、賞味期限と消費期限の違いです。
賞味期限は、おいしく食べられる期限の目安です。スナック菓子、缶詰、カップ麺、調味料、レトルト食品など、比較的傷みにくい食品に表示されることが多いです。賞味期限を過ぎたからといって、すぐに食べられなくなるわけではありません。
消費期限は、安全に食べられる期限です。弁当、惣菜、生菓子、生肉、生魚など、傷みやすい食品に表示されることが多いです。消費期限を過ぎた食品は、安全面に注意が必要です。
この違いを知らないと、まだ食べられる食品を早く捨ててしまうことがあります。
ただし、賞味期限が過ぎた食品を食べる場合でも、保存状態、におい、見た目、味などを確認することが大切です。特に開封後の食品は、表示された期限に関係なく早めに使い切る必要があります。
食品ロスは、SDGsとも関係があります。
特に関係が深いのは、目標2「飢餓をゼロに」、目標12「つくる責任 つかう責任」、目標13「気候変動に具体的な対策を」です。
食品ロスを減らすことは、食料を無駄にしないこと、資源を有効に使うこと、廃棄物を減らすこと、温室効果ガスの排出を減らすことにつながります。
ただし、SDGsという言葉だけを使えばよいわけではありません。大切なのは、実際に食べ物を無駄にしない仕組みを作ることです。家庭、学校、企業、自治体がそれぞれの立場で取り組む必要があります。
家庭でできる食品ロス対策は、難しいことばかりではありません。
まず大切なのは、買い物前に冷蔵庫を確認することです。すでに家にあるものを把握しておけば、同じ食品を重複して買うことを防げます。
次に、期限の近い食品を見える場所に置くことです。冷蔵庫の奥に入れると忘れやすくなるため、「早く食べるものゾーン」を作ると効果的です。
また、買い物では「安いから買う」だけでなく、「本当に使い切れるか」を考えることが大切です。大容量の商品は単価が安く見えますが、使い切れなければ損になります。
料理では、作りすぎを防ぐことも重要です。家族の予定を確認し、食べる人数に合わせて量を調整します。余った料理は、翌日の弁当、スープ、カレー、炒め物、チャーハンなどに活用できます。
冷凍保存も有効です。ご飯、肉、魚、パン、きのこ、ねぎ、油揚げなどは、使いやすい量に分けて冷凍しておくと、食品ロスを減らしやすくなります。
外食では、食べ切れる量を注文することが基本です。
ご飯を少なめにする、小盛りを選ぶ、シェアできる料理は人数に合わせて注文するなど、少しの工夫で食べ残しを減らせます。
宴会では、最初から大量に注文しすぎないことも大切です。人数や食べる量を見ながら追加注文する方が、残りにくくなります。
予約を変更する場合は、できるだけ早く店に連絡することも重要です。飲食店は予約人数に合わせて食材を準備しているため、直前キャンセルや無断キャンセルは食品ロスだけでなく、店の経営にも大きな負担になります。
持ち帰りについては、店のルールに従う必要があります。衛生面の問題があるため、すべての店で対応できるわけではありません。持ち帰る場合も、早めに食べることが大切です。

企業や店舗では、発注や在庫管理の精度を高めることが重要です。
天気、曜日、イベント、地域の人の流れ、過去の販売データなどを活用すれば、需要予測を改善できます。最近では、AIを使って発注量を調整する取り組みも広がっています。
また、賞味期限が近い商品を値引きする、少量パックを増やす、規格外品を販売する、余った食材を別の商品に加工する、といった工夫も有効です。
フードバンクや子ども食堂などと連携し、まだ食べられる食品を必要な人に届ける仕組みもあります。ただし、食品の寄付には衛生管理、責任の所在、保管、配送などの課題があるため、きちんとしたルール作りが必要です。
企業にとって食品ロス削減は、環境対策であると同時に、廃棄コストの削減や企業イメージの向上にもつながります。
自治体や社会全体でも、食品ロス削減のためにできることがあります。
たとえば、賞味期限と消費期限の違いを広める啓発活動、学校での食育、食品ロス削減月間のキャンペーン、フードドライブの実施などです。
フードドライブとは、家庭で余っている未開封の食品を集め、必要としている団体や家庭に届ける活動です。缶詰、レトルト食品、乾麺、米、調味料など、保存しやすい食品が対象になることが多いです。
また、どうしても発生する生ごみについては、堆肥化やバイオガス化など、資源として活用する方法もあります。食品ロスを減らすことが第一ですが、発生してしまった食品廃棄物をどのように再利用するかも大切です。
食品ロスを減らすというと、「食べたくないものまで無理に食べる」「店の商品を少なくする」「生活を不便にする」といったイメージを持つ人もいるかもしれません。
しかし、食品ロス対策の中心は我慢ではありません。
大切なのは、無駄が出にくい仕組みに変えることです。
こうした工夫によって、生活の満足度を下げずに食品ロスを減らすことができます。
食品ロスを完全にゼロにすることは簡単ではありません。
食品には衛生や安全の問題があります。傷んだ食品を無理に食べれば、食中毒などの危険があります。災害時や急な需要増加に備えて、ある程度の在庫を持つことも必要です。飲食店や小売店でも、客数や売れ行きを完全に予測することはできません。
そのため、食品ロス対策では「すべての廃棄を悪」と考えるのではなく、必要な安全管理と、減らせる無駄を分けて考えることが大切です。
安全のために必要な余裕は残しながら、捨てることが前提になっている過剰な仕組みを見直す。これが現実的な食品ロス対策です。
食品ロスは、食べ物そのものを無駄にするだけでなく、水、土地、燃料、電気、人手などの資源も無駄にします。さらに、ごみ処理費用や環境負荷、温室効果ガスの排出、食料安全保障の問題にもつながるため、社会全体の課題とされています。
日本語では、食品ロスとフードロスはほぼ同じ意味で使われることが多いです。ただし英語では、Food lossは生産・流通段階のロス、Food wasteは販売・外食・家庭など消費に近い段階での廃棄を指すことがあります。
賞味期限は「おいしく食べられる期限」の目安です。過ぎたからといって、すぐに食べられなくなるわけではありません。ただし、保存状態、開封の有無、におい、見た目などを確認する必要があります。一方、消費期限は安全に食べられる期限なので、より注意が必要です。
まずは冷蔵庫の中を見える化することです。期限の近い食品を手前に置き、買い物前に在庫を確認するだけでも、重複購入や期限切れを減らしやすくなります。
売れ残り、期限切れ、欠品を避けるための多めの発注、消費者が新しい日付の商品を選びがちなことなどが原因です。店側の発注精度の向上や値引き販売、消費者の買い方の変化が対策になります。
短期的には発注や販売方法の見直しが必要になりますが、長期的には廃棄コストの削減、在庫管理の改善、企業イメージの向上につながる可能性があります。食品ロス削減は、企業にとっても経営改善の一部になり得ます。
食品ロスの問題点は、単に「食べ物を捨てるのはもったいない」というだけではありません。
食品ロスが発生すると、食べ物そのものだけでなく、その食べ物を作るために使われた水、土地、肥料、燃料、電気、人手、輸送、包装、冷蔵・冷凍設備なども無駄になります。さらに、ごみ処理費用がかかり、温室効果ガスの排出や環境負荷にもつながります。
また、食品ロスは家計の無駄、企業の廃棄コスト、食料安全保障、食べ物の価値観、世界の食料問題とも関係しています。
食品ロスは、家庭だけの問題ではありません。生産、加工、流通、販売、外食、家庭のすべての段階で起きています。そのため、誰か一人だけが努力すれば解決する問題ではなく、社会全体で仕組みを見直していく必要があります。
ただし、家庭でできることもたくさんあります。買いすぎない、冷蔵庫を確認する、期限の近い食品から使う、作りすぎない、余った食材を活用する、食べ切れる量を選ぶ。こうした小さな工夫の積み重ねが、食品ロスの削減につながります。
食品ロス対策は、我慢ではありません。食べ物を大切にしながら、無駄の少ない暮らしや社会の仕組みを作っていくことです。