2015年に採択された「パリ協定」は、気候変動対策に関する国際的な枠組みとして、世界のほぼすべての国が参加している点が大きな特徴です。産業革命以降に進んだ温室効果ガスの大量排出を抑え、地球規模で進行する温暖化を食い止めるための「共通ルール」として位置づけられています。
しかし、採択から年数が経つにつれ、「現状の取り組みでは気温上昇を十分に抑えられないのではないか」「制度として構造的な弱点を抱えているのではないか」といった問題点も、専門家やメディアを中心に多く指摘されるようになってきました。
本記事では、パリ協定そのものを否定するのではなく、なぜ課題が指摘されているのか、どこに限界や弱点があるのかという視点から、代表的なパリ協定の問題点(構造上の課題・運用面の問題)をできるだけ丁寧に整理していきます。
パリ協定の最大の特徴は、各国が自国の事情や発展段階を踏まえて削減目標(NDC:国が決める貢献)を自ら設定するという点にあります。従来のように「一律の削減義務」を課すのではなく、各国の自主性を尊重する形で参加を促す、いわゆるボトムアップ型の仕組みです。
この仕組みは、先進国・途上国を問わず幅広い参加を実現した一方で、**「約束を守らせる強制力が弱い」**という根本的な課題を内包している点も否定できません。

パリ協定で指摘される問題点は、大きく整理すると次の7つに集約できます。
以下では、これらの問題点を一つずつ、背景や理由も含めて詳しく見ていきます。
パリ協定では、各国に対してNDCの提出・更新や排出量データの報告義務は課されています。しかし、 **「設定した目標を達成できなかった場合の罰則」**は原則として設けられていません。
国際条約に厳しい罰則を組み込むと、各国が批准を見送ったり、そもそも交渉がまとまらなくなったりする恐れがあります。そのためパリ協定では、
といった間接的な圧力によって行動変容を促す設計が採用されました。
メリット:多くの国が参加しやすい
デメリット:目標未達でも実質的なペナルティがなく、実効性が弱まりやすい
現在各国が提出しているNDCをすべて合計しても、地球の平均気温上昇を十分に抑えられない可能性が高いと指摘されています。
この結果、「全体としては努力しているが、合計すると足りない」という構造的なギャップが生まれています。
NDCは国際社会に向けた約束ですが、それを実現するのは各国の国内政策です。ここで大きな壁となるのが実施ギャップです。
結果として、「国際的な約束」と「国内の現実」の間にズレが生じやすくなります。
パリ協定では、排出量や対策状況を共通ルールで報告する仕組みが設けられていますが、実務面では多くの課題があります。
透明性は重要ですが、実務負担が大きく国ごとの差が出やすい点が課題です。
排出削減を市場メカニズムで融通し合う仕組みは、資金を効率的に動かせる一方で、問題も指摘されています。
ルールが甘いと、実際には排出が減っていないのに帳簿上だけ減ったように見える事態を招きかねません。
途上国は、排出削減と適応策を進めるために、先進国からの資金や技術支援を強く求めています。
この認識の違いが、交渉の難航や不信感につながることがあります。
パリ協定は長期的な枠組みですが、各国の政治は短期的に変化します。
これらにより、目標が後退したり、実行が遅れたりするリスクが常に存在します。
多くの問題点がある一方で、パリ協定は
という点で、国際社会に大きな影響を与えています。
パリ協定は万能ではありませんが、課題を理解した上で改善を重ねていくことが重要です。問題点を知ることで、なぜ温暖化対策が思うように進まないのか、その背景がより立体的に見えてきます。