2025年6月12日午後、インド西部アーメダバードで発生したエア・インディア機の墜落事故。乗員・乗客242人のうち241人が死亡し、地上の食堂にいた学生も巻き込まれた惨劇に、世界中が衝撃を受けました。
この未曾有の航空事故をめぐり、SNSや一部メディアでは「テロの可能性があるのでは?」という声も上がっています。果たしてその可能性はあるのでしょうか? 現在までに判明している事実と、流布する憶測を整理します。
墜落機は、ボーイング787型のエア・インディア機。現地の航空当局と専門家チームは、現在以下の要素を中心に調査を進めています。
さらに、「ブラックボックス(フライトレコーダー)」の回収が完了し、今後解析が進められます。現時点では爆発音や火炎など、テロを示唆する物理的証拠は確認されていません。また、墜落直前の機内通信も異常を示すような発言は確認されていないとされています。
X(旧Twitter)や海外の掲示板では、
「パキスタン国籍の乗客が自爆テロを起こしたのではないか」
という書き込みが見られました。
しかし、インド当局・エア・インディアともに、そのような情報を公式には一切発表していません。乗客名簿や監視カメラ、金属探知機などの空港セキュリティ記録にも、不審な点は報告されていません。
加えて、仮に機内で爆発が起きていた場合、残骸や生存者の証言に明確な痕跡が残るはずですが、そうした証拠は現時点では見つかっていません。
インドの与党・シヴ・セーナ党のサンジャイ・ラウト議員は、
「敵対国によるサイバー攻撃、または破壊工作の可能性も否定できない」
と語り、可能性として“国家による干渉”を示唆。
さらに、著名なヨガ指導者で政治的影響力も持つババ・ラムデヴ氏も、
「この事故の背後には外国の影がある」
とコメントし、疑念を深める声も広がりました。
ただし、いずれの発言も証拠を伴ったものではなく、現段階では“憶測”の域を出ていません。こうした発言がかえって不安を煽っているという指摘もあります。
1985年には、カナダ発のエア・インディア182便が上空で爆破され、329人が死亡。事件はシク教過激派によるテロとして国際的に大問題となりました。
しかし、今回のアーメダバードの墜落では、
という点で、過去のテロ事件とは大きく異なります。
また、1985年の事件では犯行声明とともに政治的背景がありましたが、今回の事故ではいかなるグループも関与を主張していない点も重要です。
こうした噂が広まる背景には、
などが関係しています。
特に、事故の原因がまだ特定されていない段階では、陰謀論的な仮説が受け入れられやすい傾向にあります。
実際、テロ説を発信したアカウントの一部は過去にも類似の陰謀論を流布しており、情報の出所にも注意が必要です。
現段階では、エア・インディア機の墜落についてテロ攻撃や破壊工作を示す証拠は一切出ていません。
もちろん、今後の調査で新たな事実が明らかになる可能性もありますが、現時点で“テロ”と断定するのは危険な飛躍です。
航空事故の原因究明には時間がかかることが多く、冷静な対応と透明な情報開示が求められます。
インターネット上ではショッキングな情報が瞬時に拡散されますが、公式な調査と証拠に基づく情報こそ、最も信頼に足るものです。
テロという言葉に踊らされず、事実に即した理解を心がけましょう。
不安や怒りは理解できますが、それらの感情が誤った判断や無責任な拡散に結びつかないよう、今こそ慎重さが問われています。