LinkedInは、転職活動、採用、営業、人脈形成、専門情報の発信などに利用されているビジネス向けSNSです。実名や職歴を公開することで、企業や採用担当者から信頼を得やすく、新しい仕事や取引につながる可能性があります。
一方で、LinkedInには、一般的なSNSとは異なる危険性があります。勤務先、役職、学歴、担当業務、取引先との関係など、仕事に関する情報が一つのプロフィールへ集まりやすいためです。
悪意のある人物にとって、こうした情報は、偽求人、なりすまし、標的型フィッシング、投資詐欺、企業へのサイバー攻撃などに利用できる材料になります。
LinkedInそのものを必要以上に恐れる必要はありません。しかし、実名で仕事上の信用を示すサービスだからこそ、公開する情報と相手の確認方法を慎重に考える必要があります。

LinkedInの大きな特徴は、オンライン上のプロフィールが実際の仕事や所属組織と直接結び付いていることです。
一般的なプロフィールには、次のような情報が掲載されます。
これらは、採用担当者や取引先に自分の経験を伝えるうえでは有益です。しかし、第三者が組み合わせると、本人の年齢、社内での立場、決裁権限、行動範囲、人間関係などを推測できることがあります。
LinkedInでは、転職、採用、営業、業務委託など、金銭や契約を伴うやり取りが自然に行われます。そのため、知らない相手から仕事の提案が届いても、一般的なSNSより警戒心を持ちにくいという問題があります。

LinkedInのプロフィールは、仕事上の経歴を分かりやすく伝えるためのものです。しかし、情報を詳しく掲載しすぎると、個人を調査するための資料としても利用されてしまいます。
一つ一つは問題のない情報に見えても、複数の情報を組み合わせることで、本人確認に使われる質問の答えや、標的型詐欺に必要な背景情報が推測される場合があります。
プロフィールには、仕事を得るために必要な情報だけを掲載し、連絡先や社内情報まで公開しすぎないことが大切です。
LinkedInで特に注意したいのが、採用担当者や人材紹介会社を装った詐欺です。
詐欺グループは、有名企業の名称、ロゴ、採用情報、実在する社員の氏名などを利用し、本物に見えるプロフィールや求人情報を作ることがあります。
求人への応募や採用手続きのために、応募者が先にお金を払わなければならない場合は、特に注意が必要です。正規の採用担当者が、仕事を与える条件として個人へ送金を要求することは通常ありません。

LinkedInでは、プロフィール、企業ページ、求人などに認証に関する表示が付く場合があります。これは、本人の身元、勤務先、企業ページ、求人投稿者などについて、一定の情報が確認されていることを示すものです。
認証表示は、相手を確認するための有力な手がかりになります。ただし、認証バッジがあるだけで、提示された取引条件や外部サイト、添付ファイルまで完全に安全であることが保証されるわけではありません。
反対に、認証バッジがないプロフィールが、直ちに偽物であるとも限りません。次の情報を組み合わせて確認することが重要です。
LinkedInでは、公開されている氏名、顔写真、肩書、職歴などをコピーし、実在する人物になりすますことが可能です。
なりすましの目的には、次のようなものがあります。
すでにつながっている人物から突然不自然な依頼が届いた場合も、本人のアカウントが乗っ取られている可能性があります。
送金、機密情報、パスワード、認証コードなどを求められた場合は、LinkedIn上のメッセージだけで判断せず、電話や社内メールなど別の連絡手段で本人に確認してください。
LinkedInアカウントには、仕事上の経歴だけでなく、同僚、顧客、取引先、採用担当者などとのつながりが蓄積されています。
そのため、アカウントが乗っ取られると、単なるSNSの不正利用では済まない場合があります。
アカウントを守るうえで、二段階認証は重要な対策です。
二段階認証を有効にすると、パスワードに加えて、認証アプリやSMSなどを使った追加確認が必要になります。パスワードが第三者に知られても、それだけではログインされにくくなります。
可能であれば、SMSよりも認証アプリを利用します。さらに、次の対策も行います。
LinkedInの通知、採用連絡、業務提案などを装い、偽のログインページへ誘導するフィッシングもあります。
代表的な文面には、次のようなものがあります。
メッセージ内のリンクを開いた先で、LinkedInのIDやパスワードを求められた場合は注意してください。
ログイン状態や警告を確認する際は、メッセージのリンクからではなく、ブラウザや公式アプリからLinkedInを直接開く方が安全です。
また、採用課題、ポートフォリオ、契約書、会社案内などを装ったファイルに、マルウェアが含まれている可能性もあります。知らない相手から送られた圧縮ファイル、実行ファイル、マクロ付き文書などは安易に開かないことが大切です。
LinkedInでは、投稿内容と実名、勤務先、役職が結び付いて表示されます。そのため、発言が個人の意見としてだけでなく、勤務先の見解であるかのように受け取られる場合があります。
削除した投稿でも、スクリーンショットや転載によって残る可能性があります。公開前に、顧客、同僚、採用担当者、将来の取引先が見ても問題がない内容かを確認する必要があります。

LinkedIn上で転職への関心を示したり、求人関連の活動を行ったりすると、その内容や行動によっては、同僚や勤務先の関係者に転職活動を推測される可能性があります。
プロフィールの大幅な変更、転職に関する投稿、採用担当者との公開上のやり取りなどには注意が必要です。
転職活動を行う場合は、プロフィール変更をネットワークへ通知する設定や、公開範囲、求人への関心を示す設定を確認します。ただし、設定によって表示を限定しても、あらゆる状況で完全に秘密が守られると考えるべきではありません。
LinkedInの危険性は、個人だけの問題ではありません。社員のプロフィールや投稿を組み合わせると、企業の組織構造や業務内容を推測できる場合があります。
攻撃者は、こうした情報を利用して、実在する上司、経営者、取引先、IT担当者などを装います。
例えば、経理担当者に経営者を装った送金依頼を送り、情報システム担当者には使用中のサービスを装った偽のセキュリティ通知を送るといった攻撃が考えられます。
すべての社員にLinkedInの利用を禁止するのではなく、業務上の利点を残しながら、公開してよい情報と確認手順を明確にすることが現実的です。

LinkedInのプロフィールは、LinkedInへログインしている会員だけでなく、設定によっては検索エンジンやLinkedIn外の連携サービスなどにも一部が表示される場合があります。
設定画面では、公開プロフィールに表示する項目や、LinkedIn外でのプロフィール表示などを調整できます。
設定を変更しても、検索エンジン上の古い情報がすぐに消えるとは限りません。また、一度公開された情報は、第三者によって保存や転載が行われている可能性があります。
プロフィールは、情報をすべて隠すのではなく、目的に必要な範囲へ絞ることが重要です。
公開する連絡先が必要な場合は、普段の個人用メールとは分けた仕事用アドレスを用意する方法もあります。
見覚えのない投稿、メッセージ、プロフィール変更、ログイン通知などを確認した場合は、速やかに対応します。
LinkedInでは、乗っ取り後に送信されたメッセージ、招待、投稿、コメントなどについて、一定の範囲で修正や削除を依頼できる場合があります。
怪しい求人やアカウントを見つけた場合は、メッセージを削除する前に、相手のプロフィール、求人内容、送金先、会話、メールアドレスなどの証拠を保存します。
そのうえで、LinkedIn上から求人、プロフィール、メッセージを報告し、相手をブロックします。
すでにお金を支払った場合は、銀行、クレジットカード会社、送金サービスなどへ直ちに連絡します。身分証や銀行情報を送った場合は、不正利用がないか確認し、必要に応じて警察や消費生活センターへ相談してください。
適切に利用すれば、転職、採用、営業、情報収集などに役立つサービスです。危険性があるから直ちに退会する必要はありません。
公開する情報を絞り、二段階認証を設定し、求人や連絡相手を確認することで、多くのリスクを下げられます。
本名や顔写真は、本人確認や仕事上の信用を得るうえで役立ちます。一方で、なりすましに使われる可能性もあります。
顔写真を掲載する場合は、身分証明書や社員証、自宅、家族、車のナンバーなど、ほかの個人情報が写り込んでいない画像を使用します。
知らない相手からの連絡が、すべて詐欺とは限りません。ただし、勤務先、職歴、企業ドメインのメール、公式求人、認証情報などを確認してから対応する必要があります。
採用や取引が進んだ後に、別の連絡手段を利用すること自体は珍しくありません。しかし、最初の連絡直後にWhatsAppやTelegramなどへ急いで移動させようとする相手には注意が必要です。
外部へ移動する前に、相手の身元と勤務先を確認してください。
正式な採用手続きでは、本人確認書類が必要になる場合があります。しかし、面接前や採用が決まる前に、パスポート、運転免許証、マイナンバー、銀行口座などを求められた場合は慎重に判断してください。
提出する場合も、企業の公式採用システムであることを確認し、通常のメッセージや不明な外部フォームへ安易に送らないことが大切です。
認証バッジは、相手や企業を確認する手がかりになりますが、すべてのやり取りの安全を保証するものではありません。
認証表示だけに頼らず、公式サイト、企業ドメインのメール、求人内容、支払い要求の有無なども確認してください。
LinkedInの危険性は、実名、職歴、勤務先、人脈など、仕事上の信用につながる情報が一つの場所へ集まりやすいことから生じます。
特に注意したいのは、次のような問題です。
LinkedInを安全に利用するためには、二段階認証を設定し、パスワードを使い回さず、プロフィールの公開範囲を定期的に確認することが基本です。
求人や業務の提案を受けた際は、相手のプロフィールだけで判断せず、企業公式サイト、公式メールアドレス、代表電話など、複数の経路で確認します。
LinkedInは、仕事上の機会を広げられる便利なサービスです。その一方で、信用されやすい場所であること自体が詐欺に利用される可能性があります。情報を必要以上に公開せず、相手を確認してから行動することが、安全に活用するための最も重要な対策です。