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カラーハンティング

カラーハンティング

身近な色を見つけて楽しむ色彩観察の世界

「カラーハンティング」とは、身の回りにある色を探し、観察し、記録していく活動のことです。英語の「Color Hunting」をそのまま訳すと「色を狩る」「色を探しに行く」という意味になります。

ただし、カラーハンティングは単に「きれいな色を見つける遊び」だけではありません。空、植物、建物、街角、食べ物、服、古い看板、夕焼け、水たまり、石、錆びた鉄など、普段は見過ごしている色に意識を向けることで、色の持つ意味や雰囲気、場所の個性を発見する方法です。

日本では、デザイナーの藤原大氏が「カラーハンティング」というデザイン手法を提唱し、2013年には東京の21_21 DESIGN SIGHTで「カラーハンティング展 色からはじめるデザイン」が開催されました。この展覧会では、自然界や都市に存在する現実の色を、その場で水彩絵の具を調合して紙片に写し取る手法が紹介されています。

この記事では、カラーハンティングの意味、やり方、楽しみ方、教育やデザインへの活用例まで、わかりやすく紹介します。

カラーハンティングとは何か

カラーハンティングとは、簡単に言えば「色を探しに行くこと」です。

たとえば、散歩中に見つけた桜の淡いピンク、雨上がりのアスファルトの黒、古い木の扉の茶色、夕方の空のオレンジ色、コンビニの看板の赤や青などを観察し、その色を写真に撮ったり、メモしたり、絵の具や色鉛筆で再現したりします。

重要なのは、色を「ただの見た目」としてではなく、場所や時間、季節、素材、記憶と結びついたものとして見ることです。

同じ「青」でも、夏の空の青、冬の海の青、駅の案内板の青、古いジーンズの青では印象がまったく違います。カラーハンティングでは、その違いを楽しみながら色を集めていきます。

カラーハンティングの魅力

カラーハンティングの魅力は、特別な道具や専門知識がなくても始められるところにあります。スマートフォンのカメラがあれば、すぐに身近な色を記録できます。

普段歩いている道でも、「今日は赤いものを探してみよう」「昭和っぽい色を探してみよう」「雨の日だけに見える色を探してみよう」とテーマを決めるだけで、見慣れた風景がまったく違って見えてきます。

色を意識すると、街の見方が変わります。看板の色、壁の色、電車の色、植木鉢の色、店先ののれんの色など、日常の中には非常に多くの色が隠れています。

カラーハンティングは、観察力を高める活動であり、同時に感性を育てる活動でもあります。

カラーハンティングの基本的なやり方

カラーハンティングのやり方に厳密な決まりはありません。自由に楽しめる活動ですが、基本的には次のような流れで行います。

1. テーマを決める

まず、どのような色を探すのかテーマを決めます。

たとえば、次のようなテーマがあります。

  • 春らしい色
  • 雨の日の色
  • 駅で見つけた色
  • 商店街の色
  • 自然の中の緑
  • 古い建物の色
  • 食べ物の色
  • 夕方だけに見える色
  • 平成レトロを感じる色
  • 外国の街並みを思わせる色

テーマを決めると、ただ写真を撮るだけではなく、目的を持って色を探すことができます。

2. 実際に歩いて色を探す

次に、街や公園、学校、商業施設、家の中などを歩きながら色を探します。

このとき大切なのは、目立つ色だけでなく、控えめな色にも注目することです。派手な赤や黄色だけでなく、くすんだ緑、少し灰色がかった青、日焼けした木材の茶色、影の中の紫がかった黒などにも面白さがあります。

カラーハンティングでは、「きれいな色」だけが価値のある色ではありません。古びた色、汚れた色、褪せた色、偶然できた色にも、その場所ならではの魅力があります。

3. 写真やメモで記録する

見つけた色は、スマートフォンやカメラで写真に撮ります。

そのとき、色だけをアップで撮る方法もありますし、その色が存在している風景全体を撮る方法もあります。どちらも意味があります。

たとえば、古い看板の赤だけをアップで撮ると「色そのもの」が記録できます。一方で、看板全体や周囲の街並みも一緒に撮ると、その色がどのような場所にあるのかがわかります。

さらに、メモを残しておくと後で役立ちます。

  • どこで見つけた色か
  • 何時ごろに見た色か
  • 晴れの日か雨の日か
  • どんな印象を受けたか
  • 何を連想したか

このような情報を残しておくと、色が単なるデータではなく、記憶や物語を持ったものになります。

4. 色を並べて比べる

集めた色は、あとで並べて見比べます。

写真を印刷してもよいですし、スマートフォンやパソコン上で一覧にしてもよいでしょう。色を並べると、同じ街でも意外と似た色が多いことに気づいたり、季節によって色の印象が変わることに気づいたりします。

たとえば、昔ながらの商店街では、赤、黄色、緑などのはっきりした色が多いかもしれません。一方で、新しい商業施設では、白、黒、グレー、ベージュなどの落ち着いた色が多いかもしれません。

色を並べることで、その場所の雰囲気や時代性が見えてきます。

カラーハンティングで見つけやすい色の例

カラーハンティングを始めるときは、まず身近な場所から色を探すのがおすすめです。

自然の中の色

自然の中には、非常に多くの色があります。

木の葉の緑といっても、若葉の明るい黄緑、夏の濃い緑、秋に近づいたくすんだ緑では印象が違います。花の色も、赤、ピンク、紫、白、黄色などさまざまです。

また、空の色も時間によって大きく変化します。朝の薄い青、昼の強い青、夕焼けのオレンジ、日没後の紫がかった青など、同じ空でも一日の中で何度も色が変わります。

自然の色は、人工的に作られた色とは違い、光や季節、天気によって表情を変えるのが特徴です。

街の中の色

街には、人工的な色がたくさんあります。

信号機、道路標識、電車、バス、コンビニの看板、店ののれん、自動販売機、ポスター、マンホール、工事現場のコーンなど、街の中には目的を持って使われている色が多くあります。

たとえば、赤は注意や禁止、情熱、目立たせる効果を持つ色として使われることが多いです。青は信頼感や清潔感、案内表示などに使われやすい色です。黄色は注意を促す色として、工事現場や踏切などでよく見られます。

街の色を観察すると、色が単なる装飾ではなく、人に情報を伝える役割を持っていることがわかります。

古いものの色

古い建物、看板、家具、道具には、新品にはない色があります。

塗装がはがれた木の扉、日焼けしたポスター、錆びた鉄、古いタイル、昔の喫茶店の椅子、昭和風の看板などには、時間が作った色があります。

こうした色は、完全に均一ではありません。色が薄くなっていたり、部分的に変色していたり、汚れや傷が混ざっていたりします。

しかし、その不均一さこそが魅力です。古いものの色には、時間の流れや人の記憶が含まれています。

食べ物の色

食べ物もカラーハンティングに向いています。

トマトの赤、レモンの黄色、抹茶の緑、焼きたてのパンの茶色、カレーの黄色、ブルーベリーの紫、いちごジャムの赤など、食べ物の色は食欲や季節感と深く関係しています。

同じ赤でも、トマトの赤、いちごの赤、唐辛子の赤、マグロの赤では印象が違います。

食べ物の色を集めると、色と味、香り、記憶がつながっていることに気づきます。

カラーハンティングとデザイン

カラーハンティングは、デザインの世界でも活用できます。

一般的に、商品やポスター、服、インテリアなどの色を決めるときには、カラーチャートや色見本を使うことがあります。しかし、カラーハンティングでは、現実の風景や自然の中から色を採取し、その色をデザインの出発点にします。

21_21 DESIGN SIGHTの「カラーハンティング展」では、色からデザインを始めるという考え方が紹介され、研究者、企業、教育機関などとの協働による成果も発表されました。

たとえば、ある地域の風景から集めた色を使って、観光ポスターや地域ブランドのロゴを作ることができます。海辺の町なら、海の青、砂浜のベージュ、漁船の白、夕日のオレンジなどが地域らしい色になるかもしれません。

また、昔ながらの商店街の色を集めて、レトロな雰囲気のパンフレットを作ることもできます。

このように、カラーハンティングは「どの色を使うか」だけでなく、「なぜその色を使うのか」を考えるきっかけになります。

カラーハンティングと教育

カラーハンティングは、学校教育やワークショップにも向いています。

美術の授業では、色彩感覚を養う活動として使えます。理科では、植物や鉱物、空の色などを観察する活動と結びつけることができます。社会科では、地域の街並みや文化を調べる活動にもつながります。

たとえば、「学校の中にある色を集める」という活動をすると、教室の机、黒板、廊下、体育館、校庭、掲示物など、普段見慣れている場所にも多くの色があることに気づきます。

また、「地域の色を集める」という活動では、商店街、神社、公園、駅、住宅街などを歩きながら、その土地らしい色を探すことができます。

カラーハンティングは、観察、記録、比較、発表という学習の流れを自然に作ることができるため、探究学習にも向いています。

カラーハンティングを自由研究にする方法

カラーハンティングは、自由研究のテーマとしても取り組みやすい活動です。

たとえば、次のようなテーマが考えられます。

  • 近所で見つけた赤い色の研究
  • 季節によって変わる公園の色
  • 駅の中で使われている色の意味
  • 商店街の看板の色を調べる
  • 昔の建物と新しい建物の色の違い
  • 食べ物の色と食欲の関係
  • 雨の日に見える色の変化

自由研究としてまとめる場合は、写真を撮るだけでなく、表やグラフにするとわかりやすくなります。

たとえば、見つけた色を「赤系」「青系」「緑系」「黄色系」「茶色系」「白・黒・グレー系」に分類します。そのうえで、どの色が多かったのか、どの場所にどの色が多かったのかをまとめます。

最後に、「なぜその色が多かったのか」を考察すると、研究らしい内容になります。

たとえば、駅には青や緑が多い、工事現場には黄色やオレンジが多い、自然公園には緑や茶色が多い、といった傾向が見えてくるかもしれません。

カラーハンティングをするときの道具

カラーハンティングに必要な道具は、目的によって変わります。

気軽に行うなら、スマートフォンだけでも十分です。写真を撮り、メモアプリに場所や印象を記録すれば、簡単に色の記録ができます。

少し本格的に行うなら、次のような道具があると便利です。

  • スマートフォンまたはカメラ
  • ノート
  • 色鉛筆
  • 水彩絵の具
  • 小さな紙片
  • カラーチャート
  • クリアファイル

水彩絵の具を使う場合は、目の前の色に近づくように自分で色を混ぜてみます。この作業をすると、色がどのような要素で成り立っているのかを体感できます。

たとえば、木の葉の色を再現しようとすると、単純な緑ではなく、黄色、青、茶色、灰色などが少しずつ混ざっていることに気づくことがあります。

カラーハンティングのコツ

色の名前にこだわりすぎない

カラーハンティングでは、色の名前にこだわりすぎないことも大切です。

「赤」「青」「緑」といった基本的な色名だけでは、実際の色の微妙な違いを表しきれません。

たとえば、同じ茶色でも、「焼きたてのパンの茶色」「古い木の柱の茶色」「雨に濡れた土の茶色」「コーヒーのような茶色」では印象が違います。

色を名前で分類するだけでなく、自分なりの言葉で表現すると、カラーハンティングはより面白くなります。

光の違いに注目する

色は光によって大きく変わります。

同じ壁でも、朝の光で見る色、昼の強い光で見る色、夕方の光で見る色、夜の照明で見る色は違います。

また、晴れの日と曇りの日でも色の印象は変わります。晴れの日は色が明るくはっきり見えやすく、曇りの日は色がやわらかく落ち着いて見えることがあります。

カラーハンティングでは、色そのものだけでなく、「どのような光の中で見た色なのか」も大切です。

偶然の色を大切にする

カラーハンティングでは、偶然見つけた色も大切です。

水たまりに映った空の色、ガラスに反射した夕焼け、影の中に見える青み、雨で濡れた道路の光沢など、偶然によって生まれる色があります。

こうした色は、同じ場所に行っても二度と同じようには見られないことがあります。

その瞬間だけの色を見つけることも、カラーハンティングの大きな楽しみです。

カラーハンティングと写真

カラーハンティングは、写真との相性がとても良い活動です。

写真を撮るときは、構図よりも「色が伝わるかどうか」を意識するとよいでしょう。被写体全体を撮るだけでなく、色の部分を切り取るように撮ると、抽象的で面白い写真になります。

たとえば、錆びた金属の一部、壁の塗装がはがれた部分、花びらのアップ、果物の断面、古いタイルの模様などを撮ると、色や質感が強く伝わります。

また、集めた写真を色ごとに並べると、自分だけのカラーパレットを作ることができます。

カラーハンティングと地域の魅力

カラーハンティングは、地域の魅力を発見する方法としても使えます。

観光地を紹介するとき、多くの場合は有名な建物や名物料理、歴史的な場所が注目されます。しかし、色に注目すると、別の角度から地域を見ることができます。

たとえば、港町なら海の青、船の白、倉庫のグレー、夕日の赤、魚市場の活気ある色が印象に残るかもしれません。

古い城下町なら、瓦屋根の黒、土壁のベージュ、木造建築の茶色、石畳の灰色、のれんの藍色などが地域らしさを作っているかもしれません。

このように、カラーハンティングを通じて、その土地ならではの色を見つけることができます。

カラーハンティングとブランディング

企業や地域のブランディングにも、カラーハンティングの考え方は役立ちます。

ブランドカラーを決めるとき、単に流行の色や目立つ色を選ぶのではなく、商品や地域、歴史、素材に関係する色を探すことで、説得力のある色を選ぶことができます。

たとえば、ある地域の特産品をPRする場合、その土地の土の色、山の色、海の色、伝統工芸の色、祭りの衣装の色などを調べると、地域に根ざしたカラーパレットを作ることができます。

色に物語があると、ブランドの印象も強くなります。

「なぜこの色なのか」を説明できる色は、人の記憶に残りやすくなります。

カラーハンティングとファッション

ファッションにおいても、カラーハンティングは役立ちます。

街や自然の中で見つけた色の組み合わせを、服のコーディネートに応用することができます。

たとえば、秋の公園で見つけた落ち葉の茶色、木の幹のグレー、空の薄い青を組み合わせると、落ち着いた秋らしい配色になります。

海辺で見つけた砂浜のベージュ、海の青、白い雲の色を取り入れれば、さわやかな夏のコーディネートになります。

自然の中にある配色は、意外と調和が取れていることが多いです。カラーハンティングをすると、自分では思いつかなかった色の組み合わせを発見できます。

カラーハンティングとインテリア

インテリアにもカラーハンティングの考え方を取り入れることができます。

部屋の色を決めるとき、雑誌やカタログだけを見るのではなく、自分が落ち着くと感じる場所の色を集めてみるとよいでしょう。

たとえば、カフェで落ち着くと感じるなら、壁の色、木のテーブルの色、照明の色、カップの色などを観察します。自然の中で落ち着くなら、木、土、石、葉、空の色を参考にできます。

自分が心地よいと感じる色を集めることで、部屋づくりにも活かせます。

カラーハンティングを楽しむテーマ例

カラーハンティングは、テーマを変えることで何度でも楽しめます。

季節の色を集める

春は桜のピンク、若葉の黄緑、菜の花の黄色など、明るくやわらかな色が多く見られます。

夏は空の青、海の青、強い日差しの白、祭りの赤、かき氷の鮮やかな色などが印象的です。

秋は落ち葉の茶色、紅葉の赤や黄色、夕焼けのオレンジなど、深みのある色が増えます。

冬は雪の白、曇り空のグレー、イルミネーションの光、コートの黒や紺など、静かな色が目立ちます。

時間帯の色を集める

朝、昼、夕方、夜では、同じ場所でも色が違って見えます。

朝はやわらかい光で色が淡く見え、昼は明るくはっきり見えます。夕方はオレンジや赤みが強くなり、夜は照明によって人工的な色が目立ちます。

同じ場所を時間を変えて撮影すると、色の変化がよくわかります。

素材の色を集める

木、金属、布、紙、石、ガラス、プラスチックなど、素材ごとに色の見え方は違います。

同じ白でも、紙の白、陶器の白、プラスチックの白、布の白では質感が異なります。

素材に注目すると、色と質感の関係を学ぶことができます。

カラーハンティングの注意点

カラーハンティングを行うときは、周囲への配慮も大切です。

写真を撮る場合、他人の顔や個人情報が写り込まないように注意しましょう。店舗や施設の中で撮影する場合は、撮影してよい場所かどうかを確認する必要があります。

また、道路や駅などで撮影に夢中になると危険な場合があります。歩きながらスマートフォンを見続けたり、車道に近づきすぎたりしないようにしましょう。

自然の中で色を探す場合も、植物を勝手に採取したり、立ち入り禁止の場所に入ったりしないことが大切です。

カラーハンティングは日常を変える視点

カラーハンティングの面白さは、特別な場所に行かなくても始められることです。

家の中、通学路、通勤路、近所の公園、駅前、スーパー、商店街など、どこにでも色はあります。

普段は「ただの風景」として見ている場所も、色に注目すると違って見えます。古い壁の色に時間の流れを感じたり、夕方の空の色に季節の変化を感じたり、店の看板の色にその地域の個性を感じたりします。

カラーハンティングは、日常の中にある小さな発見を増やしてくれる活動です。

まとめ:カラーハンティングは色から世界を見る方法

カラーハンティングとは、身の回りにある色を探し、観察し、記録する活動です。

自然の色、街の色、古いものの色、食べ物の色、季節の色、時間帯によって変わる色など、私たちの周りには無数の色があります。

カラーハンティングをすると、色が単なる見た目ではなく、場所、時間、記憶、文化、素材、デザインと深く関係していることに気づきます。

また、教育、自由研究、デザイン、ファッション、インテリア、地域ブランディングなど、さまざまな分野に応用することもできます。

何気ない道を歩いているときでも、「今日はどんな色があるだろう」と意識するだけで、日常の風景は少し違って見えてきます。

カラーハンティングは、色を通して世界を見直す、とても身近で創造的な方法です。

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