「イコールアース図法(Equal Earth projection)」が注目されています。
2026年9月4日、国連総会が、世界の大陸や地域をより正確な面積比で表す地図の利用を促す決議を採択したためです。ニュースでは特に「アフリカが従来の世界地図より大きく見える」と紹介されていますが、日本人として気になるのは、「イコールアース図法にすると日本はどう見えるのか」という点でしょう。
結論からいうと、地図は自由に拡大・縮小できるため、「日本が一律に何%小さく表示される」とはいえません。重要なのは、日本とほかの国・地域との面積比が、実際の地球上の比率どおりに表されることです。
日本はメルカトル図法では、赤道付近の地域より大きく表示されます。一方、日本より高緯度にあるドイツや英国は、日本以上に拡大されます。そのため、メルカトル図法では日本がドイツや英国より小さく見えることがあります。
イコールアース図法では、この緯度による面積の誇張がなくなります。その結果、日本の国土面積が実際にはドイツよりやや大きく、英国のおよそ1.5倍あることも分かりやすくなります。

イコールアース図法は、2018年にボヤン・シャヴリッチ、トム・パターソン、ベルンハルト・ジェニーの3人によって開発された世界地図の投影法です。
「正積図法」と呼ばれる図法の一つで、国や大陸の面積比を正しく保つことが最大の特徴です。見た目は、世界地図として広く使われてきたロビンソン図法を参考に設計されています。
メルカトル図法とイコールアース図法の主な違いをまとめると、次のようになります。
| 比較項目 | メルカトル図法 | イコールアース図法 |
|---|---|---|
| 国や大陸の面積比 | 高緯度ほど大きく誇張される | 実際の面積比が保たれる |
| 形や角度 | 狭い範囲では形や角度を保ちやすい | 場所によって形や角度がゆがむ |
| 航海での利用 | 一定の方位角で進む航路を直線で表せる | そのような航路は一般に直線にならない |
| 主な用途 | 航海図やオンライン地図 | 世界の面積分布を示す地図 |
つまり、どちらか一方が全面的に正しく、もう一方が間違っているわけではありません。面積を比較するならイコールアース図法、方角や狭い範囲の形を重視するならメルカトル図法というように、目的によって適した図法が異なります。

「日本中心の世界地図」とは、日本付近を通る経線を地図の中央に置いた世界地図です。日本の面積を大きくしたり、特別に強調したりするという意味ではありません。
日本は北半球の中緯度にあるため、地図の中央上部に表示されます。太平洋が地図の中央に広がり、アジアやアフリカ、ヨーロッパが左側、南北アメリカが右側に配置されるのが特徴です。
地図の中心を日本付近に移しても、国や大陸の面積比は変わりません。ただし、地図の左右の端となる場所が変わるため、一般的なヨーロッパ中心の世界地図とは世界の並び方が違って見えます。
イコールアース図法を初めて見ると、日本が以前より小さくなったように感じることがあります。
しかし、日本そのものが縮小されたわけではありません。メルカトル図法で生じていた緯度による拡大がなくなり、世界各地との面積比が本来のバランスに戻ったためです。
ここで注意したいのは、「何と比較するか」によって日本の見え方が違うことです。
赤道付近のアフリカや東南アジアと比較すると、日本はメルカトル図法で拡大されていました。そのため、イコールアース図法では日本が相対的に小さくなったように見えます。
一方、ドイツや英国など、日本より北にあるヨーロッパ諸国は、メルカトル図法では日本以上に拡大されていました。イコールアース図法ではその誇張もなくなるため、日本が実際にはドイツよりやや大きく、英国よりかなり大きいことが分かりやすくなります。

日本は北海道、本州、四国、九州に加え、多数の島々から構成されています。国土が南北に細長く分散しているため、世界地図では面積以上に小さく感じられることがあります。
しかし、日本の国土面積は約37.8万平方キロメートルです。ヨーロッパの主な国と比較すると、次のようになります。
| 国 | 面積(概数) | 日本を100とした場合 |
|---|---|---|
| 日本 | 約37.8万km² | 100 |
| ドイツ | 約35.8万km² | 約95 |
| フィンランド | 約33.8万km² | 約89 |
| ポーランド | 約31.3万km² | 約83 |
| イタリア | 約30.1万km² | 約80 |
| 英国 | 約24.4万km² | 約65 |
日本とドイツの差は約2万平方キロメートルで、日本の方が約6%大きくなります。また、日本の面積は英国の約1.5倍、イタリアの約1.25倍です。
これは国土面積の比較であり、領海や排他的経済水域(EEZ)の広さは含みません。
「メルカトル図法ではアフリカが小さく見える」と聞くと、日本も小さく描かれていたと思うかもしれません。しかし、日本を赤道付近の地域と比較した場合は逆です。
通常のメルカトル図法では、赤道から北または南へ離れるほど、同じ実面積の地域でも地図上では大きく表示されます。日本は赤道上ではなく北半球の中緯度にあるため、日本も赤道付近の地域より拡大されています。
球体として計算した場合、メルカトル図法上の局所的な面積拡大率は、おおよそ「1÷cos²(緯度)」で求められます。代表的な地点で比較すると、次のようになります。
| 地点 | 緯度の目安 | 赤道付近と比較した面積拡大率 |
|---|---|---|
| 那覇付近 | 北緯約26度 | 約1.2倍 |
| 東京付近 | 北緯約36度 | 約1.5倍 |
| 札幌付近 | 北緯約43度 | 約1.9倍 |
| ロンドン付近 | 北緯約52度 | 約2.6倍 |
| ベルリン付近 | 北緯約53度 | 約2.8倍 |
この数値は、それぞれの地点付近における理論上の局所的な拡大率です。都市や国の実際の面積が増えるという意味ではありません。
この表からも、メルカトル図法では北海道の方が沖縄より大きく誇張され、英国やドイツ付近では日本以上に拡大が強くなることが分かります。
イコールアース図法をめぐるニュースで、特にアフリカの大きさが注目されるのは、アフリカの大部分が赤道に近いからです。
メルカトル図法では、赤道付近の拡大は比較的小さい一方、ヨーロッパ、北米、ロシア、グリーンランドなどの高緯度地域が大きく引き伸ばされます。
つまり、アフリカだけが特別に縮小されているというより、高緯度地域が大きく拡大されるため、アフリカが相対的に小さく見えるのです。
有名なのが、アフリカとグリーンランドの比較です。
| 地域 | 面積(概数) |
|---|---|
| アフリカ | 約3,037万km² |
| グリーンランド | 約216万km² |
実際には、アフリカはグリーンランドの約14倍の面積があります。ところがメルカトル図法の世界地図では、両者がかなり近い大きさに見えることがあります。
イコールアース図法では面積比が保たれるため、アフリカとグリーンランドの本来の大きさの違いがはっきり表れます。
イコールアース図法について、もう一つ注意したい点があります。
国や大陸の面積比が正しいからといって、日本列島の形、距離、方角まですべて正確になるわけではありません。
地球はほぼ球体ですが、世界地図は平面です。球面を切り開かずに平面へ移すことはできないため、どのような図法でも何らかのゆがみが生じます。
イコールアース図法が優先しているのは面積です。日本を含む中緯度地域では、場所によって形が南北方向にやや伸びて見えることがあります。
したがって、イコールアース図法は世界各国の面積を比較するのには適していますが、日本国内の正確な距離や方角を調べるための地図ではありません。
メルカトル図法は1569年、フランドル出身の地図製作者ゲラルドゥス・メルカトルによって考案されました。
メルカトル図法では、一定の方位角を保って進む航路を地図上の直線として表すことができます。そのため、コンパスを使って進路を決める航海で大きな利点があり、長く航海図に使われてきました。
現在のオンライン地図でも、地図を拡大したり、一定の大きさの画像に分割して表示したりしやすいことから、メルカトル図法を基にした方式が広く利用されています。
したがって、メルカトル図法は「間違った地図」ではありません。問題になるのは、面積比較に適していない地図を使って、国や大陸の大きさを判断することです。
2026年9月4日、国連総会は、世界の大陸や地域をより正確な面積比で表す地図の利用を促す決議を採択しました。
決議はトーゴがアフリカ諸国を代表して主導したもので、164か国が賛成し、米国のみが反対、6か国が棄権しました。
決議では、イコールアース図法が大陸の面積をより正確に表す有力な選択肢であることを確認し、イコールアース図法を含む正積図法の採用、普及、利用を促しています。
ただし、この決議には法的拘束力はありません。メルカトル図法の使用を禁止したわけでも、世界中のあらゆる地図を一律にイコールアース図法へ変更すると決めたわけでもありません。
航海、道路案内、気象、教育、統計など、地図にはさまざまな用途があります。今回の決議は、特に世界の国や大陸の大きさを比較する場面では、面積比を正しく表す地図を活用しようというものです。
イコールアース図法で重要なのは、日本が単純に大きくなるか小さくなるかではなく、世界のほかの国や地域との面積比が正しく表示されることです。
メルカトル図法では、日本も赤道付近より拡大されています。しかし、日本より高緯度にある英国やドイツはさらに強く拡大されるため、日本が実際より小さな国であるかのように感じられることがあります。
イコールアース図法で見ると、日本の面積は約37.8万平方キロメートルで、ドイツよりやや大きく、英国のおよそ1.5倍あるという実際の関係が分かりやすくなります。
一方、イコールアース図法も、形、角度、距離のすべてを正確に表す万能な地図ではありません。面積を比較する地図、航海に使う地図、道路を調べる地図など、それぞれの目的に合った図法を選ぶことが大切です。
国連総会の決議をきっかけに、世界地図の見え方だけでなく、日本が世界の中で実際にどのくらいの大きさなのかを改めて確認すると、これまでとは少し違った世界の姿が見えてくるでしょう。