2026年7月28日、熊本県で最大震度7を観測した地震の後、嘉島町のイオンモール熊本で大規模な爆発が発生しました。
イオンの発表によると、地震は午後4時27分ごろに発生しました。館内では避難誘導が行われ、午後5時ごろまでに客と従業員の屋外避難を確認したとされています。
しかし、その約50分後の午後5時50分ごろ、施設内で爆発が発生しました。8月2日時点で、死者7人、負傷者26人が確認されています。
亡くなった7人はいずれも専門店の従業員で、いったん屋外へ避難した後、館内へ戻ったとみられています。
この事故では、「爆発を防げなかった責任」と「従業員の再入館を防げなかった責任」という、性質の異なる二つの問題があります。
現時点では爆発原因が確定していないため、特定の会社だけに責任があると断定することはできません。施設運営会社、テナント会社、設計・施工会社、ガス供給事業者、設備工事会社などの役割を分けて検証する必要があります。

| 関係者 | 主に検証される問題 |
|---|---|
| イオン・イオンモール | 施設の安全管理、避難誘導、再入館の防止、テナントへの情報伝達 |
| テナント会社 | 従業員に出した指示、安全教育、安全配慮義務 |
| 竹中工務店などの設計・施工関係者 | 新築時の設計・施工と、事故原因となった設備との関係 |
| ガス供給事業者 | ガス供給設備、遮断装置、点検、異常発生時の対応 |
| 設備・改修工事会社 | 配管の施工、補修、改修、耐震対策に問題がなかったか |
| 保守点検会社 | 経年劣化や異常を事前に発見できなかったか |
一つの会社だけに責任が集中するとは限りません。複数の関係者に異なる問題が確認されれば、それぞれが責任を負う可能性があります。

今回の事故では、二つの因果関係を区別することが重要です。
地震によってガス配管などが損傷し、漏れたガスに何らかの火源が引火した可能性が指摘されています。
屋外に設置されていたLPガスのタンクは残っており、経済産業省は、ガス漏れによる爆発だった場合には配管などに問題が起きた可能性があるとの見方を示しています。
ただし、LPガスが爆発原因だったことや、具体的にどの配管からガスが漏れたのかは、まだ正式に確定していません。
亡くなった従業員は、地震直後には屋外へ避難できていたとみられています。
その後、なぜ館内へ戻ったのか、会社から業務上の指示があったのか、施設側が再入館を止めていたのかが、もう一つの重要な問題です。
仮に爆発そのものを予測できなかったとしても、安全確認が終わっていない建物への再入館を防ぐことができたかどうかは、別に検証されなければなりません。
イオンモール熊本を運営する側には、客や従業員が安全に施設を利用できるよう、建物や設備を適切に維持管理する責任があります。
爆発原因の調査によって、施設側が管理するガス配管、遮断設備、警報設備、換気設備などに問題が見つかれば、イオンモール側の責任が問われる可能性があります。
イオンは、午後5時ごろまでに客と従業員の屋外避難を確認したと発表しています。
また、避難した後は安全が確認されるまで館内へ戻らないことになっていたと説明しています。
それにもかかわらず、複数のテナント従業員が館内へ戻っていました。
そのため、次の点が検証対象になります。
マニュアルに再入館禁止と書かれていたとしても、それだけで施設側の対応が十分だったとは限りません。
天井や外壁の落下などが確認されていたのであれば、出入り口を物理的に閉鎖し、館内へ戻る人を止める措置が必要だった可能性があります。
大地震が事故のきっかけであったとしても、それだけで施設側の責任がなくなるわけではありません。
大規模商業施設では、地震による配管の損傷、ガス漏れ、火災、天井の落下などを想定した安全設備と避難計画が求められます。
責任の有無は、設備が法令や技術基準を満たしていたか、必要な点検が行われていたか、安全装置が正常に作動したかなどによって判断されます。
雑貨店「ハビタ」では、従業員2人が死亡しました。
ハビタ側は、避難していた従業員に対し、館内へ入れるのであれば売上金を金庫へ入れてほしいという趣旨の連絡をしたことを認めています。
会社側が業務に関係する目的で従業員を危険な建物へ戻したのであれば、使用者としての安全配慮義務が大きな問題になります。
労働契約法第5条は、使用者に対し、労働者が生命や身体の安全を確保しながら働けるよう必要な配慮をすることを求めています。
売上金、商品、書類などの会社財産よりも、従業員の生命を優先しなければならないことは明らかです。
会社側の連絡を受けたことが再入館の直接的な理由となり、その再入館と死亡との因果関係が認められれば、ハビタ側が民事上の損害賠償責任を負う可能性があります。
一方で、ハビタ側に問題が認められたとしても、爆発を発生させた設備上の責任や、施設の再入館管理に関する責任まで、すべてハビタだけが負うわけではありません。
指示を出した担当者の判断だけでなく、会社として災害時のルールを定めていたか、従業員へ安全教育を行っていたかも重要です。
売上金の保管方法や緊急時の連絡体制が会社全体として不十分だった場合には、組織としての危機管理が問われます。
オンワードホールディングスの店舗では、従業員3人が死亡しました。
同社の発表によると、3人は地震後に屋外へ避難していましたが、その後、貴重品を取りに店舗へ戻ったとみられています。
3人から「店舗に戻ることができたが、何かすることはあるか」という連絡を受けた担当者は、速やかに外へ出るよう指示したとされています。
現在公表されている情報では、オンワード側が3人に再入館を指示した事実は確認されていません。
そのため、会社側から売上金の保管を求めたことを認めているハビタとは、事情を分けて考える必要があります。
ただし、オンワード側も、安全確保に関する指導が結果として徹底できなかったと説明しています。従業員が貴重品を取りに戻らないよう、緊急時のルールが十分に周知されていたかは検証されることになります。
イオンモール熊本は、2005年の新築時に竹中工務店が設計・施工を担当した建物です。
そのため、「設計・施工した竹中工務店についても調査すべきではないか」という声が出ること自体は不自然ではありません。
ただし、設計・施工を担当したという事実だけで、今回の爆発について直ちに竹中工務店の責任が認められるわけではありません。
今後の調査で、事故原因となったガス配管や関連設備に、完成当初から設計上または施工上の欠陥があったことが判明した場合には、設計・施工関係者の責任が問題になる可能性があります。
例えば、次のような問題です。
ただし、こうした問題が実際にあったという調査結果は、現時点では公表されていません。
建物は2005年の完成から約21年が経過しています。
その間には、2016年の熊本地震による被害や、その後の復旧、建て替え、増床、テナントの入れ替えに伴う設備工事などが行われています。
事故原因となった設備が新築当時のままなのか、その後に補修・交換・移設されたのかによって、責任を負う可能性のある会社は変わります。
新築後に別の会社が配管を改修していた場合には、改修工事会社や設備会社の責任が中心になる可能性があります。
また、完成当初には問題がなく、経年劣化や点検不足によって危険な状態になったのであれば、施設管理者や保守点検会社の責任がより大きくなることも考えられます。
竹中工務店を含む施工関係者の責任を判断するには、次の資料を確認する必要があります。
現時点では、竹中工務店の設計ミスや施工不良が爆発原因だったとの公式発表はありません。
したがって、竹中工務店の責任を断定することも、最初から調査対象から外すことも、どちらも適切ではありません。
イオンモール熊本では、飲食店の調理などにLPガスが使用されていました。
経済産業省によると、屋外に設置されていたLPガスのタンクは破損せずに残っていました。
仮にLPガスの漏えいが爆発原因だった場合、タンクから建物内へガスを送る配管、接続部、バルブなどに異常が起きた可能性があります。
今後は、次の設備や管理状況が調べられると考えられます。
配管の施工不良、点検不足、安全装置の故障などが見つかれば、ガス供給事業者、設備工事会社、保守点検会社などの責任が問われる可能性があります。
反対に、設備が必要な基準を満たし、点検にも問題がなく、通常は想定できない地震動によって損傷したと認定されれば、責任が限定されることもあります。
大規模商業施設では、建物の完成後も、テナントの入れ替え、厨房設備の変更、配管の移設、増床、改装などが繰り返し行われます。
そのため、事故原因となった設備が新築時に施工されたものとは限りません。
爆発が発生した区域について、いつ、どの会社が、どのような工事を行ったのかを確認する必要があります。
元請け会社、設備会社、専門工事会社、テナント指定業者など、複数の会社が関係している可能性もあります。
重要なのは、会社の知名度や建物全体の施工実績だけで判断するのではなく、事故原因となった設備を実際に誰が設計、施工、改修、点検していたのかを特定することです。
「避難後に自分で館内へ戻ったのだから、本人にも責任があるのではないか」という見方もあります。
しかし、従業員は、上司や会社から業務に関係する依頼を受けた場合、簡単には拒否できない立場にあります。
また、出入り口が開いていたり、ほかの従業員が出入りしていたりすれば、安全確認が済んだと誤解した可能性もあります。
再入館したという結果だけを見て、亡くなった従業員本人に責任を負わせるのは適切ではありません。
会社の指示、施設側の出入り口管理、館内放送、警備員の配置、災害時の教育などを総合的に確認する必要があります。
事故原因や再入館の経緯が明らかになれば、遺族や負傷者が関係会社に損害賠償を求める可能性があります。
施設や設備に通常備えるべき安全性が欠けていた場合には、施設の占有者や所有者の責任が問題になります。
設計・施工上の過失が原因だった場合には、設計会社、施工会社、設備工事会社などの不法行為責任が問題になる可能性があります。
従業員が会社の指示によって危険な場所へ戻った場合には、勤務先企業の安全配慮義務違反が問題になります。
複数の会社の行為が事故につながったと認定されれば、複数の関係者が損害賠償責任を負うことも考えられます。
業務上必要な注意を怠り、その結果として人を死亡させたことが立証されれば、業務上過失致死傷の問題になる可能性があります。
ただし、死亡事故が発生したという結果だけで刑事責任が成立するわけではありません。
刑事責任を問うには、少なくとも次の点を明らかにする必要があります。
施設管理者、テナントの責任者、ガス設備関係者、施工関係者のうち、誰にどのような注意義務があったのかが個別に判断されます。
責任の所在を判断するためには、次の事実を確認する必要があります。
2026年8月5日時点では、爆発原因の調査が続いており、最終的な責任の所在は決まっていません。
現段階では、責任問題を次のように整理するのが妥当です。
「すべてイオンの責任」「すべてテナントの責任」「竹中工務店が建てたから施工会社の責任」と、現段階で一つに決めつけることはできません。
爆発を起こした原因と、従業員が館内へ戻った原因は別々に検証し、そのうえで各関係者の責任を判断する必要があります。
最終的な法的責任は、警察、消防、経済産業省などによる原因調査や、関係者間の協議、今後の裁判などを通じて明らかになると考えられます。