SNSや動画サイトでは、「日本でも外国人が警察官になれるようになった」「東京都や大阪府などが警察官採用の国籍条項を撤廃した」といった情報が拡散しています。
外国籍の警察官が日本人を取り締まるようになるのではないかと、不安を訴える投稿も見られます。
しかし、結論から言うと、2026年7月現在、日本で都道府県警察の警察官になるには、原則として日本国籍が必要です。
東京都、大阪府、神奈川県、愛知県、京都府などで警察官の国籍要件が撤廃されたという情報は事実ではありません。
一方、日本で生まれた外国出身者や、外国にルーツを持つ人であっても、すでに日本国籍を取得している場合は「外国籍」ではありません。年齢や学歴、身体基準など、ほかの採用条件を満たせば警察官採用試験を受けることができます。
この記事では、外国人が日本の警察官になれるのか、SNSで広がった国籍条項撤廃の噂はどこが誤っているのか、帰化した人や永住者の場合はどうなるのかを整理します。
外国籍のまま、都道府県警察が採用する警察官になることは、現在の採用制度ではできません。
警察官採用試験の案内には、受験できない人として「日本の国籍を有しない人」または「日本国籍を有しない人」と明記されています。
これは、外国出身者や外国にルーツを持つ人を一律に排除するという意味ではありません。判断基準となるのは、人種や出身国ではなく、採用試験を受ける時点で日本国籍を持っているかどうかです。
| 現在の立場 | 警察官採用試験 |
|---|---|
| 外国籍の人 | 原則として受験できない |
| 永住者 | 外国籍のままなら受験できない |
| 特別永住者 | 外国籍のままなら受験できない |
| 日本人の配偶者などの在留資格を持つ人 | 外国籍のままなら受験できない |
| 帰化して日本国籍を取得した人 | ほかの条件を満たせば受験できる |
| 外国にルーツがある日本国籍者 | ほかの条件を満たせば受験できる |
「永住権があること」と「日本国籍を持っていること」は同じではありません。
日本に長期間住み、永住者や特別永住者の資格を持っていても、国籍が外国のままであれば、警察官採用試験の国籍要件を満たしません。

2026年6月頃からSNSでは、次の5都府県が警察官採用の国籍条件を撤廃したという趣旨の投稿が拡散しました。
投稿には、「2020年代以降、外国人を警察官として採用できるようにした都道府県がある」といった説明が添えられていました。
しかし、5都府県の最新の警察官採用案内を確認すると、いずれも日本国籍を持たない人は受験できないと記載されています。
日本ファクトチェックセンターも、この投稿について警察庁や各警察の採用情報を確認し、国籍要件を撤廃した事実はないと判定しています。問題の投稿は1万2000件以上リポストされ、表示回数は110万回を超えていました。
東京都の警察組織は警視庁です。
警視庁の2026年度警察官採用情報には、受験できない人として、最初に次の条件が掲載されています。
「日本の国籍を有しない人」
したがって、東京都が警察官採用の国籍条件を撤廃したという事実はありません。
警視庁では、警察官だけでなく、事務や建築、機械、電気、心理などを担当する警察行政職員Ⅰ類についても、「日本国籍を有する人」が受験資格とされています。
大阪府警の2026年度警察官採用概要にも、欠格事項として次の記載があります。
「日本国籍を有しない人」
外国籍の人は、大阪府警察官の採用選考を受けることができません。国籍条件が撤廃されたという情報は誤りです。
大阪府警が募集するサイバー犯罪捜査官や財務捜査官などの専門職警察官についても、日本国籍を有しない人は受験できないとされています。
神奈川県警の2026年度警察官採用試験では、受験できない人として「日本国籍を有しない人」が明記されています。
神奈川県警が県外で行う共同試験についても、同様に日本国籍が条件です。
したがって、神奈川県が外国籍の警察官を採用できるように制度を変更したという事実は確認できません。
愛知県警の2026年度警察官採用試験案内にも、受験できない人として、次の条件が記載されています。
「日本の国籍を有しない人」
2026年度の第1回試験だけでなく、7月に公表された第2回試験の受験案内にも、同じ国籍要件があります。
愛知県警では、中国語、スペイン語、ポルトガル語、タガログ語、ベトナム語などの能力を生かせる語学区分も設けられています。
しかし、外国語が話せる人を採用することと、外国籍の人を警察官として採用することは別です。語学区分の受験者にも日本国籍が求められています。
京都府警の2026年度第2回警察官採用試験案内には、受験できない人として次の記載があります。
「日本の国籍を有しない方」
この試験案内は2026年7月1日付で公表されたものであり、現在も日本国籍要件が存在していることが確認できます。
2026年度第1回採用試験にも同じ条件が記載されているため、京都府が警察官の国籍条項を撤廃したという情報は誤りです。
警察官は、一般の会社員や、すべての自治体職員とは異なる権限を持っています。
警察官の主な職務には、次のようなものがあります。
これらは、人の権利や自由に直接影響を及ぼす「公権力の行使」に当たります。
政府は、公権力の行使や、公の意思形成に関わる公務員には日本国籍が必要になるという考え方を示しています。
政府答弁では、公権力の行使について、人の権利や義務を直接変動させたり、その範囲を決めたりする行為などを指すと説明されています。
最高裁判所も2005年の判決で、住民の権利義務や法的地位に大きな影響を及ぼす「公権力行使等地方公務員」については、原則として日本国籍を持つ人が就任することが想定されているとの判断を示しました。
警察官は、まさに公権力を直接行使する代表的な職種です。そのため、各都道府県警察の採用試験で日本国籍が求められています。
一部の地方自治体では、一般行政職や技術職、専門職などの採用試験から国籍条件を外している場合があります。
ただし、外国籍の職員が採用された場合でも、すべての職務に就けるとは限りません。
公権力を行使する職務や、自治体の重要な意思決定に関わる管理職などについては、外国籍職員の配置や昇任を制限している自治体があります。
一般の自治体職員における国籍条件の見直しが、「警察官の国籍条項も撤廃された」という誤った情報に置き換わった可能性があります。
警察組織で働く人が、全員警察官というわけではありません。
警察には、警察官のほかに次のような仕事があります。
こうした人々は広い意味で「警察職員」と呼ばれる場合がありますが、犯罪捜査や逮捕などを行う警察官とは異なります。
もっとも、警察行政職員についても、日本国籍を採用条件としている警察は少なくありません。例えば、警視庁の警察行政職員Ⅰ類は日本国籍を受験条件としています。
職種や採用形態によって条件が異なるため、「警察関連の仕事に外国人が関わっている」という情報だけで、「外国籍の警察官が採用された」と判断することはできません。
訪日外国人や日本に住む外国人が増える中、警察は外国語での対応を強化しています。
交番などでは、翻訳機器、外国語を併記した書類、電話通訳などが利用されています。
外国語に堪能な人や通訳者が警察業務を支援する場面があっても、その人が外国籍の警察官であるとは限りません。
また、外国語が話せる日本国籍者を、語学能力のある警察官として採用する制度もあります。
外国出身者であっても、帰化によって日本国籍を取得した後であれば、国籍要件を満たします。
帰化とは、日本国籍を持たない人の希望に対し、法務大臣が許可することで日本国籍を与える制度です。帰化は官報に告示された日から効力を生じます。
帰化して日本国籍を取得した人は、法律上は日本国民です。
そのため、警察官採用試験で定められた次のような条件を満たせば受験できます。
警察官採用試験の国籍条件は、「生まれた時から日本人であったこと」や「両親が日本人であること」ではありません。
試験を受ける時点で日本国籍を持っているかどうかが基準です。
外国にルーツがあることを理由に、警察官になれないわけではありません。
例えば、次のような人でも、日本国籍を持ち、ほかの採用条件を満たしていれば、警察官採用試験を受けることができます。
「外国人のような名前である」「見た目が日本人らしくない」「外国語を話している」といった理由で、その人を外国籍だと判断することはできません。
国籍と、出身地、民族、名前、外見は別の問題です。
永住者の在留資格を持っているだけでは、警察官にはなれません。
永住者は、日本での在留期間に制限がなく、幅広い仕事に就くことができます。しかし、永住者という在留資格を取得しても、自動的に日本国籍を取得するわけではありません。
国籍が外国のままであれば、警察官採用試験の「日本国籍」という条件を満たさないため、受験できません。
特別永住者についても同じです。
日本国籍を取得するには、永住許可とは別に、法務局を通じて帰化許可を申請する必要があります。
日本人と結婚しただけでは、日本国籍を取得したことにはなりません。
日本人の配偶者として日本に在留していても、国籍が外国のままであれば警察官採用試験を受けることはできません。
日本では、外国人が日本人と結婚したことだけを理由に、自動的に日本国籍が与えられる制度にはなっていません。
警察官を目指す場合は、帰化によって日本国籍を取得し、その後に採用試験の条件を満たす必要があります。
外国人が警察官になれないことと、警察の通訳や外国語対応に関わることは別です。
外国人が関係する事件や事故では、通訳人や翻訳サービスが必要になります。警察は電話通訳や翻訳機器などを利用し、日本語を十分に理解できない外国人への対応を行っています。
外部の通訳者や民間サービスが警察活動を支援する場合もありますが、通訳者は警察官ではありません。
通訳者が被疑者を逮捕したり、捜索したり、交通違反を取り締まったりする権限を持つわけではありません。
警察官の国籍条件は、世界共通ではありません。
国や地域によっては、永住権や一定の在留資格があれば、外国籍のまま警察官採用試験を受けられる制度もあります。
一方、日本では、都道府県警察の警察官は地方公務員であり、公権力を直接行使する職種であることから、日本国籍が求められています。
海外の制度を紹介する動画や記事を見て、「日本でも外国籍の警察官が採用されている」と誤解しないよう注意が必要です。

SNSで外国人警察官に関する投稿を見た場合は、次の点を確認する必要があります。
特に、「外国出身」「外国人のような名前」「外国語を話す」という情報だけでは、国籍を判断できません。
帰化した人を「外国籍の警察官」と表現するのも正確ではありません。帰化によって日本国籍を取得した時点で、日本の法律上は日本国民です。
2026年7月現在、日本で外国籍のまま都道府県警察の警察官になることはできません。
SNSで拡散した「東京都、大阪府、神奈川県、愛知県、京都府が警察官採用の国籍条項を撤廃した」という情報は誤りです。
5都府県の最新の採用案内には、いずれも日本国籍を持たない人は受験できないと記載されています。
ただし、外国出身者や外国にルーツを持つ人であっても、帰化などによって日本国籍を取得していれば、ほかの採用条件を満たすことで警察官採用試験を受けられます。
整理すると、次のようになります。
「外国人が警察官になれるようになった」という投稿を見た場合は、拡散された画像や動画だけを信用せず、警察庁や各都道府県警察が公表している最新の採用案内を確認することが大切です。