古田英範(ふるた・ひでのり)氏は、長年にわたり富士通でキャリアを重ねた企業経営者です。1982年に富士通へ入社し、システムエンジニアとしての現場経験を出発点に、産業向けシステム、グローバルデリバリー、デジタルサービス、CTO、COOなどの要職を歴任しました。
富士通の中でも、技術・サービス・グローバル事業の各領域に深く関わってきた人物であり、2024年には取締役会長に就任しています。一方、2026年6月には取締役を辞任したことも発表され、企業統治や役員の行動責任という観点からも注目される存在となりました。
この記事では、古田英範氏のプロフィール、富士通での経歴、担当してきた役割、そして2026年の辞任までを時系列でわかりやすく整理します。
| 氏名 | 古田 英範(ふるた ひでのり) |
|---|---|
| 生年月日 | 1958年12月13日 |
| 学歴 | 明治大学工学部工業化学科卒業 |
| 主な所属 | 富士通株式会社 |
| 主な役職 | 代表取締役副社長、CTO、CIO、COO、CDPO、取締役会長など |
古田氏は、理工系のバックグラウンドを持つ経営者です。大学では工業化学を学び、卒業後は富士通に入社しました。最初から経営企画や管理部門にいた人物ではなく、システムエンジニアとしてキャリアを始めた点が大きな特徴です。
古田英範氏は1982年4月、富士通株式会社に入社しました。入社当初はシステムエンジニアとして、企業向けのシステム構築に関わりました。
特に、大手石油・化学分野の顧客を中心に、大規模なシステムインテグレーション案件を担当したとされています。システムインテグレーションとは、企業の業務に合わせて、ソフトウェア、ハードウェア、ネットワークなどを組み合わせ、実際に使える業務システムとして構築する仕事です。
つまり古田氏は、単に技術を知っているだけでなく、顧客企業の業務や課題を理解しながら、システムを形にしていく現場経験を積んできた人物といえます。
2009年5月、古田氏は富士通の産業システム事業本部長に就任しました。産業システム分野は、製造業、流通業、素材産業など、企業活動の根幹を支えるシステムを扱う重要な領域です。
富士通は日本を代表するITサービス企業であり、企業や官公庁向けのシステム構築に強みを持ってきました。その中で産業システム事業を率いたことは、古田氏が大規模顧客向けのシステム開発・運用に精通した幹部として評価されていたことを示しています。
この時期までに古田氏は、現場のSEから事業責任者へと役割を広げていきました。技術者としての経験を土台に、事業全体を見る立場へ移っていった時期といえるでしょう。
2012年4月、古田氏は富士通の執行役員に就任しました。執行役員とは、会社の方針に基づいて、担当部門の事業運営を実行する経営幹部です。
この段階で古田氏は、単なる部門責任者ではなく、富士通全体の経営方針に関わる立場へ進みました。システムインテグレーション、産業向けソリューション、サービス提供体制など、富士通の中核事業を担う幹部としての役割がより明確になっていきます。
2014年4月、古田氏は執行役員常務となり、グローバルデリバリー部門長に就任しました。この役職は、富士通のサービスを国内だけでなく海外にも安定して提供するための重要なポジションです。
グローバルデリバリーとは、世界各地の拠点や人材を活用し、ITサービスやシステム開発を国境を越えて提供する仕組みを指します。多国籍企業のシステム、海外拠点を持つ日本企業のIT基盤、グローバルな運用サポートなどに深く関係する分野です。
古田氏はこの時期、英国の富士通サービス関連拠点にも関わり、グローバルなソリューション提供やサービス品質の標準化に取り組みました。国内中心のシステム構築から、世界規模のサービス提供へと視野を広げた時期だったといえます。
2018年4月、古田氏は執行役員専務となり、デジタルサービス部門長に就任しました。
この時期の富士通は、従来型のシステム構築だけでなく、クラウド、データ活用、AI、IoT、業務改革などを含むデジタルトランスフォーメーションへの対応を強めていました。古田氏がデジタルサービス部門を担当したことは、富士通の事業が「システムを作る会社」から「企業の変革を支援するサービス企業」へ移っていく流れと重なります。
デジタルサービス部門長としての役割は、顧客の業務をITで支えるだけでなく、デジタル技術を使って新しい価値を生み出すことでした。富士通にとっても、古田氏にとっても、経営上の重要な転換点だったといえるでしょう。
2019年1月、古田氏はテクノロジーソリューション部門長となり、CTOおよびCIOを兼務しました。
CTOはChief Technology Officerの略で、日本語では最高技術責任者と訳されます。企業の技術戦略を担う役職です。一方、CIOはChief Information Officerの略で、情報システムやIT活用を統括する役職です。
古田氏がCTOとCIOを兼ねたことは、富士通の技術戦略と社内外のIT活用を一体的に進める役割を担ったことを意味します。富士通のような巨大IT企業では、技術の方向性、サービス開発、社内システム改革、顧客向けソリューションの整合性を取ることが非常に重要です。
また、この時期には株式会社富士通研究所の代表取締役社長や取締役会長も務め、研究開発部門との関係も深めています。
2019年6月、古田氏は富士通の代表取締役副社長に就任しました。代表取締役は、会社を代表する権限を持つ取締役です。副社長として、富士通の経営中枢に入ったことになります。
古田氏の経歴を見ると、SEとしての現場経験、産業向けシステム、グローバルサービス、デジタルサービス、技術戦略という流れを経て、代表取締役副社長に就任しています。この流れは、富士通の事業そのものが、ハードウェア中心からサービス・ソリューション中心へ変化していく過程とも重なります。
2021年4月、古田氏はCOOに就任しました。COOはChief Operating Officerの略で、日本語では最高執行責任者と訳されます。CEOが会社全体の経営方針を示す役割であるのに対し、COOはその方針を実際の事業運営に落とし込み、組織を動かしていく役割を担います。
富士通のような大企業では、国内外に多くの部門、子会社、サービス拠点があります。その中でCOOを務めるということは、事業全体の実行力、組織運営、サービス品質、収益性などに関わる極めて重い役割です。
古田氏は2021年10月からCDPOも務めました。CDPOはChief Data & Process Officerの略で、データや業務プロセスの改革を担う役職です。これは、富士通自身の変革にも深く関係するポジションといえます。
2024年4月、古田氏は富士通の取締役会長に就任しました。これまでの代表取締役副社長、COOとしての執行側の立場から、会長として経営を監督・支援する立場へ移ったことになります。
会長という役職は、会社によって意味合いが異なりますが、富士通における古田氏の場合、長年の事業経験やグローバル事業への知見を生かし、経営全体を支える役割が期待されていたと考えられます。
また、2026年1月には、APECビジネス諮問委員会、いわゆるABACの日本委員にも指名されました。ABACは、APEC参加国・地域の首脳に対して、ビジネス界の立場から政策提言を行う枠組みです。古田氏が日本の経済界・IT業界を代表する立場の一人として扱われていたことがわかります。
2026年6月16日、富士通は古田英範氏が同日付で取締役を辞任したことを発表しました。もともと同年6月29日に予定されていた定時株主総会で取締役として重任される予定でしたが、富士通は同氏を取締役候補から外すことも発表しています。
富士通の発表では、株主総会の招集通知公表後に古田氏の不適切な行動を確認し、本人から取締役辞任と取締役候補辞退の申し出があったとされています。また、報道では、その行動は女性に関連するものだったとされています。
ただし、会社側は詳細な内容を公表していません。そのため、原因や具体的な経緯について憶測で断定することは避けるべきです。経歴を振り返る際にも、確認されている事実と、確認されていない情報を分けて扱う必要があります。
| 年 | 主な経歴 |
|---|---|
| 1958年 | 12月13日生まれ |
| 1982年 | 明治大学工学部工業化学科卒業、富士通に入社 |
| 2009年 | 産業システム事業本部長 |
| 2012年 | 執行役員に就任 |
| 2014年 | 執行役員常務、グローバルデリバリー部門長 |
| 2018年 | 執行役員専務、デジタルサービス部門長 |
| 2019年 | CTO・CIO、テクノロジーソリューション部門長 |
| 2019年6月 | 代表取締役副社長に就任 |
| 2020年 | グローバルソリューション部門長 |
| 2021年 | COOに就任 |
| 2021年10月 | CDPOに就任 |
| 2024年4月 | 富士通取締役会長に就任 |
| 2026年1月 | ABAC日本委員に指名 |
| 2026年6月 | 富士通取締役を辞任 |
古田英範氏の経歴を一言で表すなら、「現場のシステムエンジニアから富士通の経営中枢まで上り詰めた技術系経営者」といえます。
入社当初はSEとして大規模システムに関わり、その後、産業向けシステム、グローバルデリバリー、デジタルサービス、技術戦略、全社運営へと担当範囲を広げました。富士通が長年強みとしてきたシステムインテグレーションと、近年重視してきたデジタルサービスの両方に関わった点が特徴です。
また、CTO、CIO、COO、CDPOといった役職を歴任していることから、技術、情報システム、業務執行、データ・プロセス改革の各分野を横断していたこともわかります。これは、単一分野の専門家というより、技術と事業運営をつなぐタイプの経営者だったことを示しています。
古田英範氏は、1982年に富士通へ入社して以来、約40年以上にわたり同社でキャリアを築いてきた人物です。システムエンジニアとして出発し、産業システム、グローバルデリバリー、デジタルサービス、CTO、COOを経て、2024年には取締役会長に就任しました。
その経歴は、富士通が従来型のシステム構築企業から、グローバルなデジタルサービス企業へ変化していく過程と重なっています。技術、サービス、グローバル事業、組織運営の各領域で重要な役割を担った人物だったといえるでしょう。
一方で、2026年6月には不適切な行動の確認を受け、富士通取締役を辞任しました。この点は経歴上の大きな転機であり、企業経営者には業績や能力だけでなく、高い倫理性と説明責任が求められることを改めて示す出来事でもあります。
古田英範氏の経歴を振り返ることは、富士通という日本を代表するIT企業の変化を理解するうえでも、一つの手がかりになるでしょう。