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インフォームドコンセントの問題点

インフォームドコンセントの問題点

医療の「説明と同意」がうまく機能しない理由

医療の現場では、検査や治療を始める前に、医師などの医療者が内容・目的・利益と不利益(リスク)・代替案などを説明し、患者さんが理解したうえで同意する手続きが行われます。これが「インフォームドコンセント(informed consent)」です。

インフォームドコンセントは、患者さんの自己決定(自分の体や人生に関わる選択を自分で行うこと)を支える仕組みとして重要です。しかし現実には、「説明は受けたはずなのに、よくわからないままサインした」「断りづらかった」「後から聞いていない話が出てきた気がする」など、うまく機能していないと感じる場面も少なくありません。

この記事では、インフォームドコンセントが抱えがちな“問題点”を、できるだけ具体的に、現場で起きやすい形に落とし込んで整理します。あわせて、問題が起きにくくなる工夫や改善策も紹介します。


インフォームドコンセントの基本:何を「説明」し、何に「同意」するのか

インフォームドコンセントの核は、単なる「同意書への署名」ではありません。一般に、次のような内容が含まれることが期待されます。

  • 目的:なぜその検査・治療を行うのか
  • 内容:何をどのように行うのか(手順・期間・入院の有無など)
  • 期待できる利益:改善の見込み、得られる可能性のある効果
  • リスク・副作用:起こり得る不利益や合併症、頻度、重症度
  • 代替案:他の選択肢(別の治療法、経過観察など)
  • 行わない場合:何もしない選択をした場合の見通し
  • 費用・負担:費用、通院回数、生活への影響
  • 不確実性:医学的に確実でない点、予測の限界

これらを踏まえたうえで、患者さんが「理解し」「自由意思で」「選択する」ことが理想です。


インフォームドコンセントの問題点(全体像)

インフォームドコンセントの問題点は、大きく分けると次の4つの層に整理できます。

  1. 情報の問題:そもそも理解しにくい、量が多い、伝え方が難しい
  2. 関係性の問題:医療者と患者さんの力関係、断りづらさ
  3. 環境の問題:時間、場所、緊急性、同席者、体調など
  4. 制度・運用の問題:書類中心の形式化、記録の不足、標準化の難しさ

以下では、それぞれを細かく分解して説明します。


問題点1:説明が「難しすぎる」—専門用語・確率・不確実性

医療は専門領域であり、説明にはどうしても専門用語が混ざります。また、病気や治療には不確実性があり、確率で語られることも多いです。

  • 🧠 専門用語が多い:疾患名、手術名、薬剤名、合併症など
  • 🎲 確率の理解が難しい:「1%」「稀」「可能性は低い」などの受け取り方は人によって異なります
  • 🌫️ 不確実性が残る:「やってみないとわからない」「個人差がある」は重要ですが、不安も増えます

結果として、患者さん側は「わかったつもり」になって署名してしまうことが起きます。

典型例

  • 「説明は丁寧だったが、単語が難しく頭に入らなかった」
  • 「リスクの説明を聞いても、結局どれくらい怖いのか実感が湧かなかった」

問題点2:情報量が多すぎる—“理解”より“消化”になる

説明は、丁寧にしようとすればするほど長くなります。特に手術や麻酔、抗がん剤などでは、起こり得る副作用や合併症が多岐にわたります。

  • 📄 説明資料が分厚い:読むだけで疲れる
  • ⏱️ 説明時間が長い:集中力が切れやすい
  • 🧩 重要度の整理が難しい:どこが最重要なのかが見えにくい

これは「情報を提供しているのに、理解が進まない」という逆説を生みます。

典型例

  • 「大事な話がどこにあったのかわからない」
  • 「説明の最後には頭が真っ白で、早く終わらせたくなった」

問題点3:体調・心理状態が理解を阻む—痛み、不安、疲労、ショック

インフォームドコンセントは、患者さんが“落ち着いて判断できる状態”で行われることが望ましいですが、現実にはそうならないこともあります。

  • 😣 痛みや吐き気がある
  • 😵 睡眠不足や疲労が強い
  • 😰 強い不安がある
  • 😳 病名告知直後のショックで理解が追いつかない

理解は、知識だけでなくコンディションに左右されます。つまり、同じ説明でも、受けるタイミングで理解度が大きく変わります。


問題点4:「断りづらい」—自由意思が揺らぐ力関係

医療者と患者さんには、知識・権限・場の主導権という点で非対称性があります。患者さんが「先生に逆らえない」「嫌われたくない」と感じると、同意が“自由意思”でなくなり得ます。

  • 🙇 権威勾配:白衣・専門知識・医療機関という場が生む心理的圧
  • 😶 空気の圧力:待合や診察室の流れの中で断りにくい
  • 🧱 選択肢が提示されない:代替案が十分に説明されず、実質的に一択になる

典型例

  • 「本当は迷っていたが、『これが一番です』と言われて断れなかった」
  • 「質問したかったが、忙しそうで言い出せなかった」

問題点5:説明が“形式化”する—サインがゴールになる

現場では、同意書の取得が「手続き」として強く求められることがあります。すると、インフォームドコンセントが“コミュニケーション”ではなく“書類処理”になってしまいます。

  • ✍️ 署名が目的化:理解より「サインをもらう」ことが先に立つ
  • 📌 テンプレ説明:個別事情に合わせた説明が薄くなる
  • 🧾 同意書が“免責”のように扱われる:本来は免責ではないのに、誤解が生まれる

これは、医療者側のリスク管理(説明した証拠を残す)という事情とも結びつきますが、患者さん側には「結局、書類のためだったのか」と感じさせます。


問題点6:理解度の確認が難しい—「わかりました」は当てにならない

理解したかどうかを確認するのは想像以上に難しいです。患者さんが遠慮して「はい、わかりました」と言うこともあります。

  • 🗣️ 相手に合わせる反応:会話を円滑にするための相槌
  • 😅 わからないと言いにくい:恥ずかしい、迷惑をかけたくない
  • 🧠 理解したつもり:言葉としてはわかっても、意味が腹落ちしていない

結果として、同意は得られたのに、実際には理解が浅いという事態が起こります。


問題点7:リスクの伝え方が難しい—「稀でも重大」問題

リスク説明では、頻度(どれくらい起きるか)と重大性(起きたらどれくらい重いか)が重要です。しかし、その両方をバランスよく伝えるのは簡単ではありません。

  • ⚠️ 頻度が低いが重大:極めて稀でも命に関わる合併症
  • 📉 頻度が高いが軽い:よくある軽い副作用
  • 🧭 比較対象がない:1%が高いのか低いのか、患者さんには判断しにくい

「稀」と言われた後に起きると、患者さんは「聞いていなかった」と感じやすく、医療者は「説明した」と感じやすいという認識のズレが起きがちです。


問題点8:代替案の説明が不足しやすい—実質的な選択肢がない

インフォームドコンセントでは代替案の提示が重要です。しかし、現場では次のような理由で十分に提示されにくいことがあります。

  • 🏥 施設の提供範囲:その医療機関でできる治療が限られる
  • 👨‍⚕️ 専門分野の偏り:医師の専門や経験により説明が片寄る
  • 時間制約:代替案まで丁寧に話す余裕がない

結果として、患者さんは「他に選択肢があること自体を知らない」まま同意してしまうことがあります。


問題点9:家族同意・代理同意の難しさ—本人の意思が埋もれる

高齢者医療、認知機能の低下、未成年、意識障害などの場合、家族や代理人が関わる場面が増えます。そのとき、本人の意思が見えにくくなる問題が生じます。

  • 👪 家族の意向が強く出る:本人は言い出せない
  • 🧩 本人の理解力の評価が難しい:どこまで説明し、どこまで本人決定とするか
  • 📣 同席者が多い:場の空気が本人にプレッシャーを与える

本人中心の医療を目指すほど、家族の支援と本人の意思尊重のバランスが難しくなります。


問題点10:緊急時には理想形が崩れる—時間がない同意

救急医療や急変時には、十分な説明の時間を確保しづらいことがあります。

  • 🚑 救命優先:説明より迅速な処置が必要
  • 🕒 意思決定の猶予がない:選択肢を並べる時間がない
  • 🧠 本人が判断できない:意識障害、せん妄、強い疼痛など

緊急時には「同意を取る」「説明を尽くす」ことが現実的に限界を持つため、後日の説明(事後説明)や記録の丁寧さが重要になります。


問題点11:文化・コミュニケーションの違い—“察して”が混ざる

インフォームドコンセントは、対話と明確な選択を前提にしますが、実際には文化的なコミュニケーション様式が影響します。

  • 🤝 遠慮や同調:はっきり「No」と言いにくい
  • 🗺️ 背景知識の違い:医療リテラシー、教育、言語、価値観
  • 🧑‍🧑‍🧒 地域性・家庭の慣習:本人より家族が決めることが当然と感じる場合

また、外国籍の患者さん、聴覚障害のある方、読み書きが苦手な方など、多様な背景に対応する必要があるのに、体制が十分でないこともあります。


問題点12:デジタル化で新しい課題も増える—オンライン同意・電子署名

近年は、タブレットでの同意取得やオンライン説明、電子署名なども増えています。便利になる一方で、新しい課題も生まれます。

  • 📱 画面だと読み飛ばしやすい
  • 🔐 本人確認の難しさ:誰が署名したのか
  • 🧾 ログは残るが理解は保証されない
  • 🌐 オンライン説明の限界:表情や迷いが拾いにくい

「手続きとしては整うが、対話が薄まる」危険性があるため、運用の工夫が必要です。


問題点13:研究(臨床研究・治験)の同意はさらに複雑

治療(臨床)と研究(治験・臨床研究)は目的が異なります。

  • 🧪 研究は“個人の利益”が主目的でない場合がある
  • 🎯 ランダム化・プラセボ:治療のように見えて研究設計が入る
  • 📊 データ利用・二次利用:情報管理・匿名化の理解が必要

研究の同意は、説明項目が多くなりやすく、理解の負担がさらに大きくなりがちです。


インフォームドコンセントの問題が起きやすい「場面別」整理

ここまでの問題点を、場面別に並べると、起きやすさがイメージしやすくなります。

手術前

  • ⏳ 説明項目が多い
  • ⚠️ 重大リスクの説明が難しい
  • 😰 不安で理解が落ちる

薬(特に抗がん剤・精神科薬)の開始

  • 📆 長期の副作用や生活影響が多い
  • 🔁 途中で治療方針が変わりやすい
  • 🧠 継続的な同意(再同意)が必要

検査(造影剤、内視鏡など)

  • 🧾 「検査だから軽い」と油断しやすい
  • ⚠️ 稀だが重大な合併症がある

救急・急変

  • 🚑 時間がない
  • 🧠 本人判断ができないことがある
  • 👪 家族対応で混乱しやすい

改善策:インフォームドコンセントを「機能」させる工夫

ここからは、問題点を減らすための代表的な改善策を紹介します。

改善策1:説明の“翻訳”を徹底する(やさしい日本語・比喩・図)

  • 📝 専門用語は言い換える(難しい言葉を1つ使ったら必ず説明)
  • 📌 数字は比較を入れる(例:100人中何人)
  • 🗂️ 重要ポイントを先に示す(結論→理由→詳細)
  • 🖼️ 図・イラスト・写真でイメージを補う

改善策2:「理解の確認」を仕組みにする(Teach-back)

医療者が「わかりましたか?」と聞くだけでは不十分なことがあります。

  • 🔁 患者さんの言葉で要点を言い直してもらう(Teach-back)
  • ✅ 「一番心配な点は何ですか?」と具体的に聞く
  • 🧠 誤解があればその場で修正する

改善策3:同意を“一回きり”にしない(継続的同意)

治療は途中で状況が変わることがあります。

  • 📅 方針変更時に再説明する
  • 🧾 重要事項が変わったら再同意を取る
  • 🧩 「今の時点での選択」を更新する意識を共有する

改善策4:時間と場所を整える(説明の環境設計)

  • 🪑 落ち着いた場所で説明する
  • ⏰ 重要な説明は、可能なら別枠の時間を確保する
  • 👥 同席者の有無を本人に確認する
  • 💤 体調が悪いときは無理にまとめない

改善策5:質問しやすさを作る(心理的安全性)

  • 💬 「何度でも聞いて大丈夫です」と明言する
  • 📋 質問リストを渡す(よくある質問を先回り)
  • 🧑‍⚕️ 看護師・薬剤師など多職種が補足する

改善策6:同意書を“対話の記録”に近づける

  • 🧾 テンプレだけでなく、個別説明内容(要点)を記載する
  • 🗣️ どんな質問があり、どう回答したかをメモする
  • 🧷 説明資料を持ち帰れる形にする

患者側でできる工夫(現実的なコツ)

インフォームドコンセントは医療者側の責任が大きい一方で、患者側が“損をしにくくする”行動もあります。

  • 🗒️ 質問を事前にメモする(診察室では忘れやすい)
  • 👂 録音の可否を確認する(許可が得られる場合もあります)
  • 🕰️ 即決しない(可能なら一度持ち帰る)
  • 🧑‍🤝‍🧑 信頼できる同席者を連れていく(本人の希望が前提)
  • 🔍 重要なのはどれかを確認する(「一番重要なリスクは?」など)

よくある誤解:インフォームドコンセントは「免責」ではない

同意書に署名したからといって、医療者がどんな結果でも責任を問われない、という意味にはなりません。

  • ✅ 同意書は「説明と同意の経緯」を示す資料の一つです
  • ✅ しかし、説明が不十分だったり、理解が成立していなかったりすれば問題になります
  • ✅ 医療の結果には不確実性がありますが、説明義務や安全配慮義務が消えるわけではありません

Q&A:インフォームドコンセントの問題点をめぐる疑問

Q1. 「説明を受けたけれど、よくわからないまま同意してしまった」場合は?

A. 可能であれば、早めに“再説明”を求めることが現実的な第一歩になります。治療前・検査前であれば、追加の説明を受けたうえで判断し直すことができます。

Q2. 断ると治療してもらえなくなるのでは?

A. 正当な理由なく医療を拒むことは通常ありません。ただし、医療機関が提供できる治療の範囲には限界があるため、断った場合に代替案(紹介など)を相談することが重要です。

Q3. 家族が先に同意して話が進んでしまうことがあるのはなぜ?

A. 本人の状態(判断能力、緊急性)によって家族の関与が増えることがあります。ただし、本人の意思が確認できる場合は、本人の意思が中心になるのが基本です。

Q4. 「稀な合併症」まで全部説明する必要があるの?

A. 一般論として、頻度が低くても重大な結果になり得るリスクは重要になります。何をどこまで説明するかは難しい論点であり、だからこそ説明の工夫(重要リスクの強調、資料の整理)が求められます。

Q5. 電子署名やタブレット同意は危険?

A. 便利ですが、理解を保証しない点は紙と同じです。対話を補う設計(動画説明+質疑、理解確認など)がないと、形式化しやすい側面があります。


まとめ:インフォームドコンセントの問題点は「理解・自由意思・環境・運用」に集中する

インフォームドコンセントは、医療を受けるうえでとても重要な考え方です。一方で現実には、

  • 📌 説明が難しい/量が多い
  • 📌 体調や心理で理解が落ちる
  • 📌 断りづらさで自由意思が揺らぐ
  • 📌 同意書中心で形式化しやすい

といった問題点が重なり、「説明と同意」が理想形から外れてしまうことがあります。

改善には、説明の工夫だけでなく、理解確認の仕組み、環境整備、継続的同意、多職種連携など、複数の要素が必要です。インフォームドコンセントは“サインを取る”作業ではなく、“納得して選ぶ”ための対話だという点が、いちばん大切な出発点になります。


用語ミニ解説

  • インフォームドコンセント:説明を受け、理解し、同意する手続き・考え方
  • 自己決定:本人が自分の価値観に基づいて選ぶこと
  • 権威勾配:知識や立場の差で、弱い側が意見を言いにくくなる状況
  • Teach-back:理解確認の方法。患者さんの言葉で説明内容を言い直してもらう

 

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