レアアースとレアメタルの違い
「レアアース」と「レアメタル」は、ニュース、経済記事、さらには国際政治や安全保障の文脈でも頻繁に登場する言葉です。そのため、同じような意味だと誤解されがちですが、実際には定義も使われ方も異なります。
一見するとどちらも「珍しい金属」という印象を受けますが、
- 学術的に比較的はっきり定義されているもの
- 政策や産業の必要性に応じて柔軟に使われる言葉
という違いがあり、ここを理解しておかないと記事やニュースの内容を正確に読み取れなくなります。
この記事では、
- レアアースとレアメタルの基本的な定義の違い
- それぞれに含まれる具体的な元素の例
- どの分野で、どのように使われているのか
- なぜ両者が経済・安全保障の観点で重要視されるのか
といった点を、できるだけ体系的かつ混乱が起きないように解説します。
違いを一言で整理すると
最初に要点だけを押さえておきましょう。
- レアアース:元素の「グループ名」。主に希土類元素と呼ばれる17元素を指す
- レアメタル:産業・政策上重要とされる「希少な金属資源」の総称。範囲は非常に広い
つまり、
- レアアースは「あらかじめ決まったメンバーがいる化学的グループ」
- レアメタルは「時代や目的によって対象が変わる実務的な概念」
という違いがあります。
この違いを押さえておくと、ニュースで使われる表現の意味が格段に理解しやすくなります。
レアアースとは(希土類元素)
✅ レアアースの定義
一般にレアアースとは、**希土類元素(Rare Earth Elements)**のことを指します。
希土類元素は、次の元素群で構成されます。
- **ランタノイド(ランタン〜ルテチウム)**の15元素
- スカンジウム(Sc)
- イットリウム(Y)
合計で17元素が、国際的にも「レアアース」として扱われています。ここは科学的にも比較的明確な定義が存在します。
✅ なぜ「レア」と呼ばれるのか(誤解されやすい点)
「レアアース」という名前から、地球上にほとんど存在しない元素だと思われがちですが、これは必ずしも正確ではありません。
実際には、
- 地殻中には比較的広く存在している
- ただし、濃い鉱床としてまとまって存在しにくい
- 元素同士の化学的性質が非常に似ている
といった特徴があります。
このため、採掘そのものよりも、その後の分離・精製工程が極めて難しいという問題があります。結果として供給が不安定になりやすく、実務的な意味で「レア」と扱われているのです。
レアメタルとは(希少金属の総称)

✅ レアメタルの定義
一方のレアメタルは、レアアースのように「この元素」と明確に決まっているわけではありません。
一般には、
- 産業的に重要である
- 特定の国・地域に生産が偏っている
- 代替材料が見つかりにくい
- 採掘・精製・供給に課題がある
といった条件を満たす金属をまとめて指す言葉です。
そのため、各国政府や国際機関が作成する「重要鉱物(クリティカル・ミネラル)」のリストでは、 時代背景や政策目的によって対象となる金属が変わることも珍しくありません。
具体例で理解する:レアアースとレアメタルの関係
ここは特に混乱しやすいポイントです。
- レアアースは、レアメタルの一部としてまとめて語られることが多い
- しかし、すべてのレアメタルがレアアースというわけではない
例えば、次のような金属は「レアメタル」と呼ばれます。
- リチウム(Li)
- コバルト(Co)
- ニッケル(Ni)
- タングステン(W)
- モリブデン(Mo)
- バナジウム(V)
- ガリウム(Ga)
- インジウム(In)
- タンタル(Ta)
- ニオブ(Nb)
- 白金(Pt) など
これらは産業上きわめて重要ですが、希土類元素ではないためレアアースには含まれません。
それぞれの代表的な用途
レアアースの用途(高機能材料の中核)
レアアースは、製品を「より高性能にする」ための素材として活躍します。
- 🧲 ネオジム(Nd):強力磁石(EVモーター、発電機、HDDなど)
- 🧲 ジスプロシウム(Dy):磁石の耐熱性向上(電気自動車、風力発電)
- 💡 ユウロピウム(Eu)/テルビウム(Tb):蛍光体(テレビ、スマートフォン、LED照明)
- 🧪 セリウム(Ce):ガラス研磨剤、触媒、排ガス浄化
- 🔋 ランタン(La):ニッケル水素電池、光学材料
レアアースは「なくても動くが、あると性能が飛躍的に向上する」材料だと言えます。
レアメタルの用途(現代産業を支える基盤素材)
レアメタルは、現代社会の基盤を支える幅広い分野で使われています。
- 🔋 リチウム/コバルト/ニッケル:リチウムイオン電池(EV、ノートPC、スマートフォン)
- 🧪 白金/パラジウム:自動車排ガス触媒、化学プラント
- 🛫 タングステン/モリブデン:耐熱・高強度材料(工具、航空宇宙、発電設備)
- 📱 インジウム:透明電極(ITO、ディスプレイ、タッチパネル)
- 🖥️ ガリウム:化合物半導体(GaN、GaAs、次世代通信)
- 🧷 タンタル:電子部品用コンデンサー
「資源としてのレア」には2つの意味がある
① 物理的に存在量が少ない
地殻中の存在量そのものが少なく、採掘できる量が限られている金属もあります。
② 実務的に供給が難しい
存在量が比較的多くても、
- 生産国が限られる
- 精製技術が特定国に集中
- 環境負荷やコストが高い
といった理由で「実質的にレア」になるケースもあります。
レアアースは特に②の性格が強く、採掘以上にサプライチェーンの管理が重要とされます。
レアアースはなぜ分離・精製が難しいのか
レアアースは化学的性質が非常に似通っているため、鉱石から取り出した後も、
- 溶媒抽出を何十回も繰り返す
- 高度な設備と薬品管理が必要
- 熟練した技術ノウハウが求められる
といった工程が必要になります。
この「精製の難しさ」が、供給の偏りや価格変動を引き起こす大きな要因です。
レアメタルが「政策ワード」になりやすい理由
レアメタルは、次のような国家的課題と密接に結びついています。
- 🧭 エネルギー転換やデジタル化を支える
- 🌏 特定国への依存が地政学リスクになる
- 🔁 リサイクル(都市鉱山)の重要性が高い
- 📦 輸出規制や資源外交の影響を受けやすい
そのため「レアメタル」という言葉は、 科学用語というより経済安全保障の実務用語として使われる場面が増えています。
よくある勘違いの整理
- ❌ レアアース=レアメタル
- ✅ レアアースはレアメタルに含めて扱われることはあるが、同義ではない
- ❌ レアアースは地球上にほとんど存在しない
- ❌ レアメタルには固定のリストがある
まとめ
- ✅ レアアースは希土類元素17元素を指す明確なグループ
- ✅ レアメタルは産業・政策上重要な金属資源の総称
- ✅ レアアースは高機能化、レアメタルは基盤産業を支える
- ✅ 「希少性」には存在量と供給難易度の2つの意味がある