近年のMLBやWBCの中継で耳にすることが増えた「ピッチコム(PitchCom)」。
前回の記事では仕組みや使い方を紹介しましたが、野球好きの多くが一番気になるのはやはりこのポイントではないでしょうか。
「ピッチコムって、いったいいくらするの?」
ニュースを見ていると、メジャーのピッチャーや捕手が当たり前のように使っていますが、
といった疑問がわいてきます。
本記事では、公開されている情報や公式サイトの価格をもとに、ピッチコムの値段の「目安」を整理しつつ、プロチームとアマチュアチーム、それぞれの導入コストのイメージをていねいに解説します。
※金額は記事執筆時点の情報と為替レートをもとにした目安です。実際の契約条件やレートによって変動します。
まず押さえておきたいのは、ピッチコムが一般的な家電のように「1台いくらで購入」というスタイルではなく、
年間契約(サブスクリプション/リース)方式 が基本になっている点です。
公式サイトを確認すると、
といった形で、チーム向けに「セット+年間料金」で提供されています。料金はドル建てで提示されており、たとえば一部のパートナー向けプランでは、
といった金額が公表されています。
1ドル=約150円でざっくり計算すると、
というイメージです。
もちろん、これは一例であり、
によって金額は変わる可能性がありますが、**「1セットで数十万円クラス」**という大まかなレンジ感は見えてきます。
次に気になるのが、MLB球団クラスになると「どのくらいの規模・金額」になるのか、という点です。
残念ながら、MLBとピッチコム社との具体的な契約金額は公表されていません。ただし、いくつかの報道やリーグのメモから、ある程度の水準は推測できます。
MLBが各球団に通知したメモの中には、
・送信機や受信機を紛失した場合、1台につき5,000ドルを球団に請求する
という趣旨の記載があります。
5,000ドルというと、1ドル=150円換算で約75万円です。これはあくまで「紛失時のペナルティ価格」ではありますが、
ということがわかります。
MLB球団は、
をそろえる必要があります。仮に、
を用意しているとすれば、紛失ペナルティ価格ベースで考えても、フルセットでは数百万円以上の価値があると見ておくのが自然でしょう。
実際にはリーグ向けの契約や一括導入によるディスカウントも考えられるため、球団が支払っている正確な金額は外部からはわかりません。しかし、
「個人で気軽に買える価格帯ではなく、完全にプロ球団向けの設備投資レベル」
というイメージを持っておくと現実に近いと考えられます。
では、日本の高校野球・大学野球・社会人・クラブチームなどがピッチコムを導入したい場合、どのぐらいのコストを覚悟する必要があるのでしょうか。
前述した通り、ピッチコムは公式サイトでアマチュア向けのプランも用意しており、
といった価格帯が公表されています。
1ドル=150円で試算すると、
です。例えば、
といった運用であれば4ピースのキット、
といった形で幅広く使うなら8ピース、といったイメージになります。
日本語の解説記事やブログでは、
「メジャーで使われているピッチコムは一式でおよそ70万円前後」
といった記述が見られることがあります。これは、
などを加味した「ざっくりした目安」と考えるのがよいでしょう。
いずれにしても、
高校や大学の1チームが気軽に“お試し”で導入するには、かなりハードルの高い金額
であることは間違いありません。
ピッチコムは、
といった「チーム」や「団体」を想定した製品です。公式サイトのフォームも、
チーム名や団体名を記入して問い合わせる形式
になっており、一般的な通販サイトのように「カートに入れて個人購入」というスタイルではありません。
そのため、
といったニーズには、あまりフィットしていないのが実情です。
2025年時点では、
といった形はまだ一般的ではなく、導入には一定のハードルがあります。
そのため、日本国内で本格的にピッチコムを使いたい場合は、
といったルートが現実的です。
「便利なのは分かるけれど、年数十万円〜百万円単位はさすがに厳しい」というチームも多いはずです。
そうした場合の選択肢として、
といった方法が考えられます。
実際、Apple Watchを使ってピッチコム風の仕組みを実現するアプリを開発している事例もあり、その紹介の中で「本家ピッチコムは一式で数十万円と高額なので、より安価な選択肢として…」という位置づけがされています。
もちろん、公式のピッチコムと比べると、
といった面で差はありますが、予算が限られたチームにとっては現実的な代替案になり得ます。
最後に、この記事で紹介した内容を整理しておきます。
ピッチコムは、単に「ちょっとした便利グッズ」というレベルではなく、
チーム全体の戦略やテンポ、そしてサイン盗み対策まで含めて変えていく“野球のインフラ”
ともいえる存在です。
その分、値段もプロ仕様ですが、今後普及が進むことで、より安価で手に取りやすいプランが登場してくる可能性もあります。これからの数年で、国内外の野球界がどのようにピッチコムを取り入れていくのか、価格の動きと合わせて注目していきたいところです。