メジャーリーグのロサンゼルス・ドジャース戦を見ていると、敵地のスタジアムから「Beat LA! Beat LA!」という大きな声が聞こえてくることがあります。
日本語にすると、「ロサンゼルスを倒せ!」「LAに勝て!」という意味です。
MLBの試合、とくにドジャース戦で聞こえる場合、この「LA」は多くの場合、ロサンゼルス・ドジャースを指しています。つまり「Beat LA」は、ドジャースの相手チームを応援するファンが、ドジャースを倒してほしいという気持ちを込めて叫ぶチャントです。

ただし、「Beat LA」はもともと野球から生まれた言葉ではありません。起源をたどると、アメリカのプロバスケットボール、NBAの歴史に行き着きます。
現在では、ドジャースだけでなく、ロサンゼルス・レイカーズ、ロサンゼルス・ラムズ、ロサンゼルス・クリッパーズなど、ロサンゼルスを本拠地とするチームに対して使われることがあります。その中でも、日本の野球ファンにとっては、やはりドジャース戦で耳にする機会が多いフレーズといえるでしょう。

「Beat LA」は、英語としてはとてもシンプルな表現です。
Beat = 倒す、打ち負かす、勝つ
LA = Los Angeles、ロサンゼルス
つまり直訳すれば、「ロサンゼルスを倒せ」となります。
ただし、実際のスポーツ観戦の場では、単なる命令文というよりも、観客が一体となって相手チームに圧力をかけるための応援フレーズです。
日本語で近い雰囲気を出すなら、
「LAに勝て!」
「ドジャースを倒せ!」
「ロサンゼルスに負けるな!」
といった感じになります。
このフレーズは、ドジャースファンが自分たちで叫ぶものではありません。基本的には、ドジャースの相手チームのファン、またはロサンゼルスのチームを倒してほしいと考える第三者のファンが使う言葉です。
そのため、「Beat LA」は応援であると同時に、少し挑発的な意味合いも持っています。
「Beat LA」というフレーズの有名な起源は、MLBではなくNBAにあります。
特に知られているのが、1982年5月23日に行われたNBA東地区決勝、ボストン・セルティックス対フィラデルフィア・76ersの第7戦です。
この試合で、セルティックスは76ersに敗れました。普通なら、敗れたチームのファンはがっかりして静まり返るところです。しかし、ボストンのファンは、76ersに対してある言葉を叫び始めました。
それが、
Beat LA! Beat LA!
でした。
このときの「LA」は、ロサンゼルス・レイカーズを指していました。
つまり、セルティックスファンは、自分たちを破った76ersに対して、次のNBAファイナルで宿敵レイカーズを倒してほしいという意味で「Beat LA」と叫んだのです。
ここが、このフレーズの面白いところです。
「Beat LA」は、単に自分のチームを応援するために生まれた言葉ではありません。むしろ、自分たちが敗れた後でも、宿敵ロサンゼルスだけは倒してほしいという強烈なライバル意識から広まった言葉でした。

アメリカのスポーツにおいて、ロサンゼルスは特別な存在です。
ロサンゼルスは、映画、音楽、エンターテインメント、セレブ文化の中心地として知られています。スポーツの世界でも、レイカーズやドジャースのように、全国的な人気と強さを持つチームがあります。
そのため、他地域のファンから見ると、LAのチームは単なる対戦相手ではありません。
こうした要素が重なることで、ロサンゼルスのチームは、他チームのファンにとって「倒したい相手」になりやすいのです。
「Beat LA」は、そうした感情を短く、強く、リズムよく表した言葉といえます。

MLBで「Beat LA」がよく聞かれるのは、ロサンゼルス・ドジャースが強豪球団だからです。
ドジャースは、長い歴史を持つ名門球団であり、近年も毎年のようにポストシーズン進出を狙うチームです。資金力があり、スター選手を獲得し、選手層も厚い。そのため、相手チームのファンから強く意識されます。
ドジャースがライバル視されやすい理由には、次のようなものがあります。
このようなチームは、応援される一方で、他チームのファンから「なんとか倒してほしい」と思われる存在にもなります。
そのため、ドジャースが敵地でリードしていたり、逆に相手チームがドジャースを追い詰めていたりすると、球場全体から「Beat LA」の声が湧き上がることがあります。

MLBにおける「Beat LA」を語るうえで欠かせないのが、サンフランシスコ・ジャイアンツとドジャースのライバル関係です。
この2球団の因縁は非常に古く、もともとはニューヨーク時代にさかのぼります。ドジャースはブルックリン、ジャイアンツはニューヨークを本拠地としていました。その後、両球団は西海岸へ移転し、ドジャースはロサンゼルス、ジャイアンツはサンフランシスコを本拠地とするようになりました。
つまり、両チームのライバル関係は、
ニューヨーク時代の因縁
西海岸移転後の都市対抗意識
カリフォルニア州内の地域ライバル関係
という複数の要素が重なっているのです。
そのため、ジャイアンツファンにとって「Beat LA」は、単なる応援フレーズではありません。ロサンゼルスに対する対抗心、サンフランシスコのプライド、長年のライバル意識を表す合言葉のような存在です。
ドジャース対ジャイアンツの試合で「Beat LA」が大きく響くのは、この歴史的な背景があるためです。

近年では、サンフランシスコ・ジャイアンツだけでなく、サンディエゴ・パドレスやアリゾナ・ダイヤモンドバックスのファンも、ドジャース戦で「Beat LA」と叫ぶことがあります。
特にパドレスは、同じナショナルリーグ西地区に所属するドジャースのライバルとして存在感を高めています。ドジャースとパドレスの試合は、近年ますます注目度が高くなっており、ポストシーズンで対戦すれば大きな話題になります。
ドジャースが強い時代が続けば続くほど、同じ地区のチームにとっては「打倒ドジャース」が大きなテーマになります。
その気持ちを最も分かりやすく表す言葉が、
Beat LA!
なのです。
大谷翔平がドジャースに加入したことで、ドジャースは日本でもさらに大きな注目を集めるようになりました。
さらに、ドジャースにはムーキー・ベッツ、フレディ・フリーマン、ウィル・スミス、山本由伸など、多くのスター選手がいます。これだけの選手がそろうと、ドジャースはまさに「勝って当然」と見られるチームになります。
強いチームは尊敬されます。しかし同時に、相手ファンからは「負けてほしい」「倒してほしい」と思われる存在にもなります。
これは、スポーツの世界では珍しいことではありません。
日本でいえば、かつての読売ジャイアンツが「強くて人気があるからこそ、他球団ファンから強く意識される存在」だったことに近い部分があります。アメリカでは、その感情が「Beat LA」という短い言葉に集約されていると考えると分かりやすいでしょう。
「Beat LA」は、たしかに挑発的なフレーズです。
しかし、単純な悪口とは少し違います。
相手を侮辱する言葉というよりも、スポーツ観戦の中で使われる対抗心の表現です。相手が強いからこそ、倒したい。相手が注目されているからこそ、勝ったときに盛り上がる。その気持ちが「Beat LA」という言葉に込められています。
もちろん、ドジャースファンにとっては面白くない場面もあるでしょう。しかし見方を変えれば、「Beat LA」と叫ばれることは、それだけドジャースが強く、全国的に意識されている証拠でもあります。
弱いチームや注目されていないチームに対して、わざわざ球場全体が一体となって「倒せ」と叫ぶことはあまりありません。
つまり、「Beat LA」は、皮肉にもドジャースの存在感の大きさを示している言葉でもあるのです。

アメリカのスポーツでは、強豪チームが一種の「ヒール」のように見られることがあります。
ここでいうヒールとは、本当に悪い存在という意味ではありません。プロレスでいう悪役のように、観客が「倒されるところを見たい」と感じる存在という意味です。
ドジャースは、まさにそのような立場に置かれやすい球団です。
こうした条件がそろうと、他チームのファンからは「またドジャースか」「なんとか負けてほしい」という感情が生まれやすくなります。
ただし、これはドジャースが嫌われているだけという単純な話ではありません。むしろ、ドジャースが強豪として認められているからこそ生まれる感情です。
「Beat LA」は、反発であると同時に、ドジャースの存在感を認めている言葉でもあるのです。
「Beat Los Angeles」ではなく「Beat LA」と言うのは、短くて叫びやすいからです。
スタジアムのチャントは、意味だけでなくリズムがとても重要です。
Beat LA!
Beat LA!
このように、2語で短く、リズムよく繰り返せるため、数万人の観客が一体となって叫ぶのに向いています。
「Los Angeles」は音が長く、スタジアムで連呼するには少し重くなります。その点、「LA」は短く、力強く、誰でもすぐに声を合わせやすい言葉です。
このシンプルさも、「Beat LA」が長く使われ続けている理由のひとつです。
ドジャース戦を英語実況で見ていると、「Beat LA」に関連して、次のような表現が聞こえることがあります。

こうした表現を知っておくと、英語中継を見たときに、球場の空気感がより分かりやすくなります。
単に試合の展開だけでなく、観客がどのような気持ちで試合を見ているのかも感じ取れるようになります。
日本のプロ野球にも、もちろんライバル球団への対抗心を示す応援はあります。
たとえば、伝統の一戦、同一リーグの優勝争い、地域対決などでは、相手チームへの強い意識が応援に表れることがあります。
ただし、「Beat LA」の特徴は、単に特定の球団名ではなく、都市名そのものがチャントになっている点です。
「LA」という言葉には、ドジャースだけでなく、ロサンゼルスという都市全体のイメージが含まれています。
こうしたイメージが重なっているため、「Beat LA」は単なる球団への応援ではなく、ロサンゼルスという都市に対する対抗心の表現にもなっています。
このあたりは、アメリカのスポーツ文化らしい部分といえるでしょう。
「Beat LA」と叫ばれると、ドジャースファンにとってはあまり気分がよくないかもしれません。
しかし、この言葉がこれほど広く使われるのは、ドジャースがそれだけ注目される球団だからです。
強くなければ、ここまで意識されません。スター選手がいなければ、ここまで話題になりません。ポストシーズンで何度も顔を出すチームでなければ、ここまで「倒したい相手」として見られることもありません。

つまり、「Beat LA」はドジャースへの反発であると同時に、ドジャースの強さと人気を証明する言葉でもあります。
相手ファンから大声で「倒せ」と叫ばれるチームは、それだけ特別な存在なのです。
「Beat LA」とは、直訳すれば「ロサンゼルスを倒せ」という意味です。
MLBのドジャース戦で聞こえる場合は、多くの場合「ドジャースを倒せ」「LAに勝て」という意味で使われます。
ただし、この言葉の起源は野球ではなくNBAにあります。1982年、ボストン・セルティックスのファンが、自分たちを破ったフィラデルフィア・76ersに対して、次の相手であるロサンゼルス・レイカーズを倒してほしいという意味で叫んだのが有名な始まりです。
その後、「Beat LA」はNBAだけでなく、MLBや他のスポーツにも広がりました。現在では、ロサンゼルスの強豪チームに対する対抗心を表す、アメリカスポーツを象徴するチャントのひとつになっています。
ドジャース戦でこの声が響くのは、ドジャースが強く、人気があり、他チームのファンから強く意識されているからです。
「Beat LA」は、単なる挑発ではありません。
それは、ロサンゼルスという都市、そしてドジャースという強豪球団の存在感を示す言葉でもあります。次にドジャース戦を観戦するとき、敵地のスタンドから「Beat LA!」の声が聞こえてきたら、そこにはアメリカのスポーツ文化、ライバル意識、そして強豪チームへの複雑な感情が込められていると考えると、試合の見え方が少し変わるかもしれません。