日本の元首相・鳩山由紀夫(はとやま ゆきお)ほど、中国との関わりをめぐって賛否両論を呼ぶ政治家も珍しい存在です。「友愛」を掲げ、首相在任中から東アジア共同体構想を打ち出した鳩山氏は、退任後もたびたび中国を訪問し、講演や対談を通じて日中関係について発言を続けてきました。
本記事では、**「鳩山由紀夫 中国」**というテーマで、
といったポイントを整理しながら、鳩山由紀夫という政治家と中国との関係を振り返ります。
まずはごく簡単に、鳩山氏のプロフィールを整理しておきます。
鳩山氏の政治思想を一言で表すと、本人がよく用いたキーワードでもある**「友愛」**です。対立よりも対話、軍事力よりも相互理解を重視し、東アジアの国々と共に枠組みを作ることを目指した点が、中国への姿勢にも色濃く反映されています。
鳩山政権の外交理念を語るうえで外せないのが、「東アジア共同体」構想です。これは、
という、かなり野心的なビジョンでした。
当時の演説や論文では、
といった考えが繰り返し語られていました。中国に対しても、「脅威」としてだけではなく、地域のパートナーとして位置づける発想が前面に出ていました。
一方で、鳩山政権は米軍普天間基地の移設問題をめぐり迷走し、日米関係がぎくしゃくしたことで、
「アメリカ離れ・中国寄りではないか」
という批判も国内で高まりました。
鳩山氏自身は、
と説明していましたが、現実の政治運営では日米関係の摩擦ばかりが目立ち、「対米距離を取って中国を重視する首相」というイメージが広がったのも事実です。
首相在任中、鳩山氏は胡錦濤国家主席や温家宝首相と首脳会談を重ね、経済協力や環境問題、北朝鮮問題などを話し合いました。また、当時副主席だった習近平氏が来日した際には歓迎行事で高く評価する発言を行い、後に中国の最高指導者となる人物との関係構築にも力を入れていました。
2010年に首相を退いた後も、鳩山氏は政界から完全に引退したわけではなく、シンクタンクや財団を通じて「民間外交」を続けてきました。中でも注目されたのが、何度にもわたる中国訪問です。
などを通じて、日中関係や東アジアの安全保障、歴史認識の在り方などについて発言を繰り返してきました。
特に大きな話題となったのが、2013年1月の南京大虐殺記念館訪問です。鳩山氏は、中国・南京にある記念館で犠牲者を追悼し、
など、事実上の「謝罪」と受け取れる行動を取りました。この姿勢は中国側からは高く評価され、メディアも好意的に報じましたが、日本国内では賛否が大きく分かれました。
賛成する立場からは、
という評価がある一方、批判的な立場からは、
といった反発の声もあがりました。この「南京での謝罪」は、いまもなお「鳩山由紀夫 中国」を語る際の象徴的な出来事として語られています。
退任後も鳩山氏は、中国のテレビ番組やシンポジウム、国際会議などによく招かれ、
などを繰り返してきました。
中国メディアは、鳩山氏を
といったトーンで紹介することが多く、中国側からの評価は総じて高いと言えます。
日中国交正常化や平和友好条約の節目の年には、鳩山氏が中国を訪問したり、オンライン会議でメッセージを寄せたりする場面も見られます。そこでは決まって、
といった、対立を避けて共存を模索するメッセージが強調されています。
日本国内で鳩山氏を評価する人々は、おおむね次のような点を評価しています。
こうした立場から見ると、鳩山氏の中国訪問や南京での行動は、
国家のメンツよりも、人間としての良心や「友愛」を優先した行動
と映ります。
一方で、批判的な見方も根強く存在します。特に保守・ナショナリスト的な立場からは、
といった指摘がなされ、「親中派」「中国寄りの政治家」とラベリングされることも少なくありません。
インターネット上で「鳩山由紀夫 中国」と検索すると、
が入り混じっていることに気づきます。
この対立は、
という、日本社会全体の価値観の分断を映し出しているとも言えます。鳩山氏の存在は、その分断線の真上に立たされている象徴的な存在だと捉えることもできるでしょう。
鳩山政権の運営には、多くの問題や課題があったことも否定できません。普天間基地問題をはじめ、政権運営の混乱が日米関係を悪化させたことは、結果として日本の外交力を弱めたという批判も根強くあります。
しかし、そのことと、
という問いを同一視してしまうと、議論が「鳩山=良い/悪い」という単純な二元論に陥ってしまいます。
鳩山由紀夫という政治家が中国との関係で投げかけた問いは、
といったものです。
その答えは人によって大きく異なりますし、鳩山氏のやり方に賛同できない人も多いでしょう。ただ、これらの問いは、
日中関係が緊張と協調を行き来する「不安定な時代」に、なお考え続けるべきテーマ
でもあります。
最後に、「鳩山由紀夫 中国」というテーマをどう受け止めるかは、
によって、大きく変わってきます。
鳩山氏の行動を全面的に肯定する必要も、逆に一切認めない必要もありません。重要なのは、感情的なレッテル貼りではなく、
ことではないでしょうか。
鳩山由紀夫という一人の政治家を通じて、中国との向き合い方や、アジアの中での日本の立ち位置について、あらためて考えてみるきっかけになれば幸いです。