トミー・バストウ・経歴
トミー・バストウ(Tommy Bastow)・英国出身俳優・ミュージシャン
イングランド出身の俳優・ミュージシャン、トミー・バストウ(Tommy Bastow, 1991年8月26日生)。10代で英映画・TVに登場して以来、舞台と映像の両輪でキャリアを築き、2024年の海外ドラマ『SHŌGUN 将軍』で国際的評価を高めました。2025年度後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』では“ヘブン(Heaven)”役として主要キャストに抜擢。日本語での演技や取材応答も話題となり、日本の視聴者にも一気に認知が広がっています。
この記事ではトミー・バストウさんの経歴を詳しく解説していきます。
プロフィール
- 氏名:Thomas Derek Bastow(トミー・バストウ)
- 生年月日:1991年8月26日
- 出身:イングランド・サリー州エプソム
- 身長:公称約185cm(報道・インタビュー言及ベース)
- 肩書:俳優/ミュージシャン(ロックバンド FranKo リードボーカル)
- 主な言語:英語、日本語(会話・演技の実績あり)
早年期と教育
トミー・バストウ氏はロンドン近郊で育ち、10代から演技・音楽活動に親しみます。英国のパフォーミング・アーツ名門BRIT Schoolで基礎を固め、のちに**Drama Centre London(現:Central Saint Martins の一部)**で演技を専攻。シェイクスピアやチェーホフといった古典から、現代劇の身体表現まで幅広く学び、舞台と映像の行き来を前提とした“英国式の地力”を養いました。
学校公演で叩き込まれた発声と身体運用は、彼の映像演技にも残る強み。『SHŌGUN』での節度ある所作や、『ばけばけ』での繊細な台詞術はこの訓練に裏打ちされています。
キャリア年表(ダイジェスト)
2007–2008:ティーン期の映像デビュー
- 英国CBBCドラマ『M.I. High』などに出演。
- 2008年の青春映画**『Angus, Thongs and Perfect Snogging』**で“Dave the Laugh”役。チャーミングな等身大のティーン像を体現し、若手注目株に。
2009–2011:映画・英TVで経験値を積む
- 『The Boys Are Back』(2009)で劇映画に継続出演。
- 2010年ホラー**『Exorcismus』**(a.k.a. The Possession of Emma Evans)でダークテイストにも挑戦。
- 英国の長寿連続ドラマ**『EastEnders』(2011)**へゲスト出演し、幅の広さを示す。
2016–2018:国際共同制作への進出
- 『Harley and the Davidsons』(2016)で米系制作の大型ミニシリーズに参加。
- BBCのドラマ**『Man in an Orange Shirt』(2017)、米ABC『The Crossing』(2018)**など、英米合作・米国ネットワークの現場を踏む。
2024:ブレイクポイント『SHŌGUN 将軍』
- 重要キャラクター**マーティン・アルヴィト(Martin Alvito)**を演じ、和の世界観に溶け込む演技で評価。抑制の利いた視線や所作、宗教者としての精神性の表現が印象に残る。
2025:NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
- ヒロイン・松野トキ(高石あかり)と生きる“ヘブン”役。モデルには**ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)**の要素が投影され、言葉と文化の壁を越えて“物語を紡ぐ”人物像を担う。
代表作・出演歴(抜粋)
映画
- 『Angus, Thongs and Perfect Snogging』(2008)— Dave the Laugh
- 『The Boys Are Back』(2009)
- 『Exorcismus』(2010)
テレビ/配信
- 『M.I. High』(CBBC)
- 『EastEnders』(BBC, 2011)
- 『Harley and the Davidsons』(Discovery, 2016)
- 『Man in an Orange Shirt』(BBC, 2017)
- 『The Crossing』(ABC, 2018)
- 『SHŌGUN 将軍』(FX/Disney+, 2024)— Martin Alvito
- 『ばけばけ』(NHK, 2025)— Heaven(“ヘブン”)
舞台
- ロンドンのフリンジ劇場を中心に古典・現代劇双方で経験。台詞劇における呼吸、合唱的な声のブレンド、近接距離での心理劇など、英国舞台らしい訓練歴が強み。
『ばけばけ』の注目ポイント—“ことば”と“まなざし”
- 日本語演技の説得力:長期の日本語学習に支えられ、口先だけでない“身体に根ざした日本語”を提示。母語話者と同じテンポに寄り添えるため、会話シーンの呼吸が自然。
- 異文化間のバランス感覚:西洋の理性と日本の情緒を同居させる佇まいは『SHŌGUN』での経験の延長線。
- カメラ前の静けさ:小さな眉の動き、わずかな視線の落差で意味を立ち上げる“省エネ表現”が朝ドラの15分枠に適合。
- 実在人物の影(ハーン):史実の要素をダイレクトに再現するのではなく、“ヘブン”というフィクションに昇華。伝記では描き切れない余白を、演技のニュアンスで埋めるのが見どころ。
ミュージシャンとしての顔:FranKo のリードボーカル
トミー・バストウは俳優業と並行してロックバンドFranKoのボーカルとして活動。ステージ上での発声・リズム感・身体表現は、映像における呼吸コントロールにも波及しています。
- ライブ経験:大型会場よりもミドル~クラブ規模の熱量を武器に、観客との距離感で物語を伝えるタイプ。
- 音楽性:UKギターロックにエレクトロの光沢をまぶした、メロディ重視の直球。
- 演技との相互作用:歌詞の“行間”を読む習慣が、台本解釈の精度を高める好循環に。
日本とのつながりと“橋渡し”の自覚
- 日本語学習歴:10年以上。作品外でも日本語で発信する姿勢が認められる。
- ホームステイ経験:学生期に千葉・東京エリアを中心に短期滞在の経験があり、日本の都市生活に親和性。
- 日本作品への関心:黒澤明、成瀬巳喜男、三船敏郎など古典映画への言及が多く、単なる“日本好き”にとどまらない映画文脈への目配り。
- 朝ドラ視聴歴:出演以前から『ちむどんどん』『ブギウギ』などの朝ドラをチェックしており、作品文法を理解した上で現場に入っているのが強み。
演技の特徴と評価軸(観賞ガイド)
- ミクロな表情操作:眉間や口角のわずかな変化を活かし、カメラ至近距離で意味を立ち上げる。
- 声の倍音と間:英国式の発声訓練に由来する“抜ける倍音”と、台詞間の沈黙(ポーズ)の扱いが巧い。
- 身体の直線と曲線:宗教者や知識人の“垂直”を感じさせる立ち姿と、親密な場面の“曲線(しなり)”の切替。
- 言語横断:英語/日本語の切替時でもキャラクターの核(価値観・痛み・ユーモア)がブレない。
例:『SHŌGUN』では宗教と政治の狭間に立つ人物の“揺れ”を、声量を上げずに示す。『ばけばけ』では、異文化婚の機微を繊細な視線の往復で描く。
よくある質問(FAQ)
Q. 朝ドラの“ヘブン”は小泉八雲そのもの?
A. 直接の実名登場ではなく、ハーン由来のモチーフを含むフィクションとして設計。史実のエピソードが匂わされつつ、ドラマ独自の人物弧(アーク)が付与されています。
Q. 英語の発音にクセはある?
A. RP(容認発音)に寄せつつ、必要に応じて地域差・時代感を調整。『ばけばけ』では日本語台詞の語尾コントロールが評価点。
Q. 音楽活動は今も継続?
A. 俳優業の合間にセッション参加や楽曲制作を継続。舞台・映像のスケジュール次第でライブに登場するスタイルです。
『ばけばけ』が彼に“ハマる”理由
- 国際共同制作級の現場順応力(英米制作での経験)
- 語学×身体の二刀流(発声・動き・言語の統合)
- “見る/見られる”の緊張感(カメラ至近での省エネ芝居)
- 文化翻訳のセンス(史実とフィクションをつなぐ)
この4点が“ヘブン”像と美しく重なり、物語の芯で光る存在感を生んでいます。
これからの注目トピック
- 『ばけばけ』中盤以降の人物弧:創作の成功と夫婦の機微、そして“異郷で根を張る覚悟”の描写。
- 日本映画・舞台への越境:朝ドラ経由で日本映画や配信ドラマ、さらには新国立劇場や民間プロデュース舞台への出演の可能性。
- 音楽の再起動:作品テーマと呼応する楽曲コラボや、日英アーティストとの共演など。
まとめ
トミー・バストウは、英国式の確かな基礎と国際現場での柔軟性、そして日本語での表現力を兼ね備えた稀有な俳優です。『SHŌGUN 将軍』での精緻な所作、『ばけばけ』での言葉とまなざしの交歓。俳優とミュージシャンの“二つの呼吸”を使い分けながら、異文化をつなぐ橋としてのキャリアは、今まさに伸び盛り。朝ドラを入口に、次の飛躍に期待が高まります。
付録:略歴クイックリファレンス
- 1991年 サリー州エプソム生まれ
- 2007–08年 『M.I. High』ほかで映像デビュー/『Angus, Thongs and Perfect Snogging』出演
- 2010年前後 『Exorcismus』などでジャンル映画に挑戦
- 2016–18年 『Harley and the Davidsons』『Man in an Orange Shirt』『The Crossing』
- 2024年 『SHŌGUN 将軍』マーティン・アルヴィト役
- 2025年 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』“ヘブン”役