「SNSが禁止の国」と聞くと、中国や北朝鮮のようにInstagram、X、Facebook、YouTubeなどが国全体で使えない国を思い浮かべる人が多いでしょう。
しかし、現在世界で進んでいるSNS規制は、それだけではありません。
2025年から2026年にかけて、オーストラリアをはじめ、フランス、イギリス、ギリシャ、デンマーク、オーストリア、ノルウェー、スペインなどで、子どもや未成年のSNS利用を禁止・制限する動きが急速に広がっています。
そのため、「SNS禁止国」という言葉には、現在では大きく分けて次の3つの意味があります。
これらは目的も制度もまったく異なります。
この記事では、SNSが禁止・制限されている国を整理するとともに、特に動きが活発になっているヨーロッパの未成年向けSNS規制について、2026年7月時点の状況を分かりやすく解説します。

「SNS禁止国」には厳密な国際的定義があるわけではありません。
実際には、次の4つのタイプを分けて考える必要があります。
Facebook、Instagram、X、YouTube、WhatsAppなど、海外企業が運営する主要サービスへのアクセスを、政府が長期的にブロックしている国です。
中国やイランなどが代表例です。
SNSだけでなく、一般市民による国際インターネットへの接続そのものが非常に限定されている国です。
北朝鮮は、このタイプに近いといえます。
選挙、抗議デモ、暴動、軍事クーデターなどが発生した際に、政府がSNSや通信サービスを一時的に停止するケースです。
普段は利用できても、情勢が悪化すると突然使えなくなることがあります。
近年、民主主義国を中心に急増しているのがこのタイプです。
国民全体のSNS利用を禁止するのではなく、14歳未満、15歳未満、16歳未満など、一定年齢に達していない子どもがSNSアカウントを保有することを制限します。
目的は政治的な情報統制ではなく、主に次のような問題への対策です。
各国の制度は、すでに実施されているものと、政府方針や法案の段階にあるものが混在しています。
| 国・地域 | 主な年齢基準 | 2026年7月時点の状況 |
|---|---|---|
| オーストラリア | 16歳未満 | 2025年12月10日から実施中 |
| インドネシア | 16歳未満 | 2026年3月28日から高リスクサービスを対象に段階的実施 |
| フランス | 15歳未満 | 2026年7月に議会が法案を可決。9月から新規アカウントを制限する予定 |
| ギリシャ | 15歳未満 | 2027年1月1日から実施する方針 |
| イギリス | 16歳未満 | 政府が禁止方針を決定。2027年春の実施を予定 |
| オーストリア | 14歳未満 | 政府法案が意見公募・審査段階 |
| デンマーク | 原則15歳未満 | 主要政党が規制方針で合意し、法制化を準備中 |
| ノルウェー | 15歳前後 | 2026年中に法案を国会へ提出する方針 |
| スペイン | 16歳未満 | 未成年保護法案を国会で審議中 |
| ドイツ | 未定 | 専門家委員会が検討中で、政府方針は未決定 |
| EU | 16歳を推奨 | 欧州議会が共通年齢を提案したが、現時点ではEU共通の禁止法ではない |

オーストラリアでは、2025年12月10日から16歳未満を対象とするSNS年齢制限が実施されています。
制度の中心は、子ども本人を処罰することではありません。
対象となるSNS事業者に対して、16歳未満の利用者がアカウントを作成・保有することを防ぐための合理的な措置を求めています。
対象には、次のようなサービスが含まれています。
一方、WhatsAppなどのメッセージアプリ、教育・健康支援サービス、一部のゲームサービスは、現時点で同じ扱いにはなっていません。
また、ログインせずに公開コンテンツを閲覧する行為まで、すべて禁止されているわけではありません。
したがって、オーストラリアの制度は正確には、16歳未満のインターネット利用禁止ではなく、指定されたSNSでのアカウント保有制限です。

インドネシアでは、2026年3月28日から、子どものデジタルサービス利用に関する新しい規制の段階的な実施が始まりました。
16歳未満の子どもは、高リスクと判断されたデジタルプラットフォームで、原則として自分のアカウントを保有できません。
対象として示されている主なサービスには、次のものがあります。
ただし、インドネシアの制度は、すべてのオンラインサービスを16歳まで禁止するものではありません。
サービスの危険度に応じて扱いを分けており、比較的リスクが低いとされたサービスについては、13歳以上から利用できる場合があります。

フランスでは2026年7月21日、15歳未満のSNS利用を禁止する法案が国民議会と上院で可決されました。
予定どおり実施される場合、2026年9月1日から、15歳未満による新しいSNSアカウントの作成が禁止されます。
すでに15歳未満が保有しているアカウントについても、移行期間を経て、2027年1月までに閉鎖または利用停止の対象となる見込みです。
フランスの制度では、教育、科学、百科事典、オープンソースなどを目的とする一部のサービスは、一般的なSNSと区別されます。
ただし、YouTube、メッセージアプリ、オンラインゲームなどをどこまで対象に含めるのかについては、サービスの機能ごとに判断される可能性があります。
また、フランス国内の法律とEUのデジタルサービス法との関係、年齢確認によるプライバシーへの影響、憲法上の問題なども論点になっています。
そのため、「フランスではすでにすべての15歳未満がSNSを完全に使えなくなった」と説明するのは正確ではありません。
議会では可決されたものの、実際の対象サービスや年齢確認の運用には確認すべき点が残っているというのが、2026年7月時点の状況です。
ギリシャ政府は、2027年1月1日から、15歳未満の子どもによるSNSへのアクセスを禁止する方針を発表しています。
対象として想定されているのは、Facebook、Instagram、TikTokなどの主要SNSです。
ギリシャでは、政府のデジタルIDサービスと連携した年齢確認の仕組みを利用し、プラットフォーム側に年齢制限を守らせる計画です。
単に子どもが生年月日を自己申告する方法ではなく、正確な氏名や生年月日をSNS事業者へ直接渡さずに、一定年齢以上であることだけを証明する仕組みが重視されています。
イギリス政府は2026年6月、16歳未満による一定のSNS利用を禁止する方針を正式に発表しました。
政府は2026年末までに関連規則を整え、2027年春から実施する計画です。
対象として検討されているのは、オーストラリアと同様に、Instagram、TikTok、YouTube、Snapchat、Facebook、Xなどです。
一方、WhatsAppやSignalなど、家族や知人との連絡を主な目的とするメッセージサービスは、禁止対象に含めない方針が示されています。
さらにイギリスでは、16歳と17歳についても、次のような機能を初期設定で制限する予定です。
イギリスの動きは、単なる年齢制限だけでなく、依存を促す機能そのものを年齢に応じて制限する政策として注目されます。
オーストリア政府は、14歳未満の子どもによる一定のSNS利用を禁止する方針を示しています。
2026年7月には法案が意見公募・審査手続きに送られましたが、現時点では施行済みの法律ではありません。
年齢基準を14歳としているのは、オーストリアにおける契約能力や、個人データの取り扱いに同意できる年齢との整合性を考慮したものです。
したがって、オーストリアについては「14歳未満のSNSがすでに禁止された」と断定せず、政府が法制化を進めている段階と説明するのが適切です。
デンマークでは、15歳未満の子どもが原則としてSNSプロフィールを作成できないようにする方針について、政府と複数の政党が合意しています。
2026年7月時点では、具体的な法律や実施方法の整備が進められている段階です。
デンマークは、SNSの年齢制限だけでなく、学校でのスマートフォン利用制限や、年齢を証明するデジタルアプリの整備も進めています。
ノルウェー政府は、2026年中にSNS年齢制限法案を国会へ提出する方針です。
ノルウェー案では、単純に誕生日を迎えた瞬間から利用可能にするのではなく、16歳になる年の1月1日から利用を認める方式が示されています。
そのため、多くの子どもは15歳の段階で、同じ学年の児童・生徒と一斉に利用可能になります。
プラットフォーム側に年齢確認の責任を負わせることも計画されていますが、2026年7月時点ではまだ法案成立前です。
スペインでは、未成年者のデジタル環境を保護するための組織法案が国会で審議されています。
主な内容の一つが、子どもが自分だけの判断でSNS利用に同意できる年齢を、14歳から16歳へ引き上げることです。
年齢確認の義務強化に加え、次のような対策も法案に含まれています。
ただし、この法案は2026年7月時点でも議会手続きの途中です。
そのため、スペインを「16歳未満のSNSがすでに禁止されている国」と紹介するのは正確ではありません。
ドイツでも、14歳未満または16歳未満のSNS利用を制限すべきだという意見が出ています。
しかし、2026年4月時点でドイツ政府は、具体的な禁止年齢や制度について結論を出していません。
政府が設置した専門家委員会が、子どもと若者のデジタル環境について調査し、2026年中に勧告をまとめる予定です。
したがってドイツは、現時点では「禁止国」ではなく、規制の是非を検討している国に分類されます。
EUでは、加盟国すべてに適用されるSNS禁止年齢が、すでに法律として決まっているわけではありません。
一方、欧州議会は2025年11月、SNS、動画共有サービス、AI会話サービスなどについて、EU共通のデジタル最低年齢を16歳とするよう求める決議を採択しました。
提案では、13歳から15歳については保護者の同意がある場合に利用を認め、13歳未満は利用させないという考え方が示されています。
ただし、これは欧州議会の政策提案であり、ただちに加盟国の国民を拘束するEU法ではありません。
EUの現在の中心的な制度は、デジタルサービス法、通称DSAです。
DSAでは、未成年が利用できるオンラインサービスに対して、子どもの安全、プライバシー、心身の健康を守るための措置を求めています。
具体的には、次のような対応が重視されています。
欧州委員会は2026年4月、利用者が氏名や正確な生年月日を明かさずに、「18歳以上」「16歳以上」などの条件を満たしていることだけを証明できる年齢確認技術の導入を加盟国に求めました。
EUでは今後、国ごとの禁止法と、EU共通の年齢確認・プラットフォーム規制が並行して進む可能性があります。
未成年のSNS禁止で最大の問題となるのが、利用者の年齢をどのように確認するかです。
候補となっている方法には、次のようなものがあります。
単に身分証明書の画像をSNS会社へ送る方式では、個人情報流出の危険があります。
そのためEUでは、本人の氏名や生年月日をSNS事業者に知らせず、必要な年齢条件を満たしていることだけを証明する方法が重視されています。
ヨーロッパの規制を理解するうえで注意したいのが、個人情報の利用に同意できる年齢と、SNSの利用を禁止する年齢は、必ずしも同じではないことです。
EUの一般データ保護規則では、子どもが保護者の同意なしにオンラインサービスの個人情報処理へ同意できる基準を、加盟国が13歳から16歳の範囲で定められます。
しかし、これは自動的に「その年齢未満はSNS利用が犯罪になる」という意味ではありません。
は、それぞれ異なる制度です。
ニュースを見る際は、どの年齢基準について報じているのかを確認する必要があります。

中国は、海外SNSへの規制が特に強い国として知られています。
Facebook、Instagram、X、YouTube、WhatsAppなど、多くの海外サービスは通常のインターネット接続では利用しにくい状態です。
その背景にあるのが、グレート・ファイアウォールと呼ばれる大規模なネット検閲・遮断体制です。
中国には、次のような巨大な国内サービスがあります。
したがって中国は、「SNSが存在しない国」ではありません。
正確には、海外SNSを広く制限し、政府の管理が及びやすい国内サービスを中心としたデジタル空間を形成している国です。

イランでも、Facebook、X、YouTubeなど、多くの海外サービスが長期間にわたって制限されてきました。
イランの特徴は、平常時にも一定の規制が存在し、抗議運動や政治的緊張が高まると、SNSや通信全体への制限がさらに強化されることです。
これは未成年保護を目的とする欧州の規制とは異なり、政治、宗教、治安、体制維持と深く関係しています。

北朝鮮では、一般市民が自由に国際インターネットへ接続できる環境自体が極めて限定されています。
そのため、北朝鮮については「特定のSNSが禁止されている」というより、自由な国際インターネット利用そのものが厳しく制限されていると説明するほうが実態に近いでしょう。

ミャンマーでは、政変や社会的混乱の際に、FacebookなどのSNSやインターネット通信が制限されてきました。
このタイプの国では、普段は利用できるサービスが、政治情勢によって突然使えなくなる可能性があります。
SNSが遮断されると、娯楽だけでなく、次のような活動にも影響します。

各国政府が特に問題視しているのは、SNS上の投稿内容だけではありません。
長時間利用を促すサービスの設計そのものも規制対象になりつつあります。
画面を動かし続ける限り、新しい投稿が次々に表示される仕組みです。
利用者が自分で終了地点を決めにくく、長時間の利用につながると批判されています。
一つの動画が終わると、操作しなくても次の動画が始まる機能です。
短時間だけ見るつもりでも、閲覧を続けやすくなります。
過去の閲覧履歴、検索、反応、視聴時間などを分析し、利用者が反応しやすい投稿を表示します。
有益な情報を見つけやすい反面、刺激の強い内容や偏った情報を繰り返し表示する危険も指摘されています。
「いいね」、コメント、連続利用記録、通知などが、利用者に繰り返しアプリを開かせる仕組みとして働くことがあります。
未成年向け規制では、こうした機能を禁止または初期状態で無効にする案も増えています。
規制を支持する側は、主に次のような効果を期待しています。
また、子ども本人や保護者だけに責任を負わせず、サービスを設計・運営するプラットフォーム側にも責任を持たせる点が重要とされています。
一方で、年齢による一律禁止には批判もあります。
子どもだけを排除するためには、結果的に成人を含む多数の利用者についても年齢を確認しなければならない場合があります。
身分証明書、顔画像、銀行情報などを利用すれば、大規模な情報漏えいが起きた際の被害も大きくなります。
子どもが生年月日を偽ったり、保護者のアカウントを利用したり、VPNで接続地域を変更したりする可能性があります。
禁止制度を作っても、技術的に完全な実施は難しいという指摘があります。
SNSは危険な側面だけでなく、同じ悩みや関心を持つ人と出会う場所、学習や創作活動を発表する場所、支援情報を得る場所にもなっています。
家庭や学校で孤立している子どもにとって、オンライン上のつながりが重要な場合もあります。
一定年齢まで完全に使わせず、年齢に達した途端に自由に利用させるだけでは、安全な使い方を学べない可能性があります。
そのため、規制と同時に、情報リテラシー教育、保護者向け支援、年齢に適したサービス設計を進める必要があります。
日本はSNS禁止国ではありません。
X、Instagram、TikTok、YouTube、Facebookなどの主要サービスは、広く利用できます。
また、2026年7月時点では、オーストラリアやフランスのように、一定年齢未満のSNSアカウント保有を全国一律で禁止する法律もありません。
ただし、日本でも次のような問題への対策は強化されています。
ヨーロッパやオーストラリアで年齢確認制度が定着した場合、日本でも将来的に、SNSの最低年齢、保護者同意、プラットフォームによる年齢確認などが議論される可能性があります。
SNSやインターネットの規制が強い国へ行く場合、日本で普段使っているサービスがそのまま利用できるとは限りません。
渡航前には、次の点を確認しておくと安心です。
規制内容は、政治情勢や法律改正によって短期間で変わることがあります。
今後、民主主義国で主流になりそうなのは、中国型の全面的な情報遮断ではありません。
次のような未成年保護型の規制が中心になると考えられます。
つまり、今後のSNS規制は、単に「使える・使えない」という二択ではなく、年齢に応じて利用できる機能やサービスを変える方向へ進む可能性が高いでしょう。
「SNSが禁止の国」と一口にいっても、内容は大きく異なります。
中国、イラン、北朝鮮などでは、政治・情報統制と結びついた強い規制が行われています。
一方、オーストラリア、インドネシア、フランス、イギリス、ギリシャなどで進んでいるのは、主に子どもの安全を目的とした年齢制限です。
2026年7月時点の重要なポイントは、次のとおりです。
SNS規制に関するニュースを見る際は、単に「禁止された」という見出しだけで判断せず、対象年齢、対象サービス、施行日、法律が成立済みか、保護者同意が認められるかを確認することが大切です。