「国民主権(こくみんしゅけん)」—この言葉は、日本国憲法の三大原則の一つであり、私たちの国のあり方を定める最も重要なルールです。しかし、「政治の話」「難しい言葉」として、どこか遠い存在に感じる人もいるかもしれません。
実は、国民主権とは、「この国の政治の最終的な決定権は、国民一人ひとりが持っている」というシンプルな宣言であり、私たちの日常のあらゆる瞬間に息づいています。この記事では、国民主権がどのように私たちの身近な生活を形作っているのかを、具体的な例とともに詳しく掘り下げていきます。
国民主権とは、国を治める最高の権力(主権)が、特定の支配者や階級ではなく、すべて国民に帰属するという原則です。戦前の日本では天皇が主権者でしたが、戦後の日本国憲法では「主権が国民に存する」と明確に定められました。
日本は、国民が直接すべての政治を行う直接民主制ではなく、選挙で選ばれた代表者(国会議員など)を通して政治を行う**間接民主制(議会制民主主義)**を採用しています。これは、国民が「私たちの意思を託します」と代表者に権力を委ねている状態です。
国民主権が最も力強く、直接的に発揮されるのが選挙です。
私たちが投票で選んだ国会議員は、国民の代表として、国会という「国権の最高機関」を構成します。
これはさらに生活に密着した例です。あなたが住む街のリーダーや議員を選ぶ行為は、地域の主人公としての権利行使です。
選挙で投票するという行為は、ただの義務ではなく、「この国の政治のあり方は、この私が決める」という主権者としての権利の行使なのです。
選挙以外にも、国民主権の考え方は様々な形で私たちの生活を守り、反映させています。
私たちが政府の政策や社会の出来事に対して、自由に批判したり、賛成したり、議論したりできるのは、国民主権の土台である**基本的人権(特に表現の自由)**が保障されているからです。
これらの活動は、**「国民が政治を監視し、チェックする」という重要な役割を果たしています。国民の大きな反対の声によって、政策が撤回されたり、修正されたりすることは、「国民の意思が政治を動かしている」**ことの明確な証拠です。
国会が作った法律や、内閣が行った行政処分が憲法に違反していないかを**裁判所(司法)**が判断します。これは、国民の権利を守るための重要なチェック機能です。
さらに、最高裁判所の裁判官がふさわしい人物かどうかを国民が直接審査する「国民審査」も、国民主権の直接的な発現です。国民が、司法の最高責任者に対して「信任・不信任」の判断を下すという、非常に強い権限を持っています。
国民主権は、「誰か偉い人が決めたことに従う」という考え方とは真逆の、「すべての権力は私たち国民から生まれている」という理念です。
選挙権を行使しないこと、政治に無関心でいることは、主人公としての役割を放棄していることと同じです。あなたの暮らしをより良くするためのルール作りは、あなた自身の参加によってしか実現しません。
「国民主権」は、憲法の条文にある硬い言葉ではなく、あなたの参加によって初めて命を吹き込まれる、生きた力なのです。