ベネズエラの軍事力
※本記事は、2025年11月末時点で公的機関の注意喚起、主要メディア報道、公開データベース、軍事分析記事など“公開情報”をもとに整理したまとめです。軍事分野は 秘匿性が高く、保有数や稼働率は推計にブレが出やすいため、断定できない点は「推計」「報道」等の表現で扱います。
ベネズエラ軍は「規模」よりも“内側の統治”と“沿岸防衛・対空防衛”が焦点
ベネズエラの軍事力は、いわゆる大国のような外征能力(遠距離の侵攻・占領)を持つタイプではありません。 その一方で、
- 🛡️ 首都圏と北部沿岸(人口・施設が集中)を守る
- 🚫 相手の航空戦力を近づけにくくする(対空防衛)
- 🏙️ 国内治安・政権防衛(国家警備・民兵・親政府武装グループとの関係)
この3つが“実態としての重心”です。最近は米国が「麻薬対策」を名目に圧力を強め、航空安全(危険空域化)にまで波及している点が、軍事の話題を一気に現実化させています。
1. 組織:FANB(ボリバル国軍)の5つの柱
ベネズエラの軍は FANB(Fuerza Armada Nacional Bolivariana) と総称され、公開情報上、主に次の構成で語られます。
- 🪖 陸軍(Ejército)
- ⚓ 海軍(Armada)(海兵・沿岸警備機能を含む)
- ✈️ 空軍/軍用航空(Aviación Militar)
- 👮 国家警備隊(Guardia Nacional)(治安・国境・国内統制の比重が大きい)
- 👥 ボリバル民兵(Milicia)(大規模動員を標榜。数は「公式発表」「推計」に差が出やすい)
さらに、作戦統合を担う司令部(戦略作戦司令部など)があり、政治・治安・軍事の結節点として重要視されます。
2. 兵力:数字は出るが「稼働率・練度」が本当の論点
公開情報では、正規軍の人数(現役・予備)に加え、民兵を含めた“動員可能規模”が語られます。
人員を見るときの注意点
- ✅ 正規軍(陸海空+国家警備隊):おおむね「10万人規模」と語られることが多い
- ⚠️ 民兵(ミリシア):政府が「数百万人規模」を主張することがあるが、
- それが「登録者数」なのか
- 「訓練済みで即応できる人数」なのか
- 「武器・装備が行き渡っているのか」 が外部から検証しにくい
現場の実力を左右する要素(ここが大事)
- 🎯 訓練頻度(飛行時間・射撃訓練・統合演習)
- 🔧 整備・補給(部品、燃料、弾薬、工場能力)
- 💰 待遇・士気(給与、離職・脱走、腐敗)
- 🧠 指揮統制(通信、電子戦、情報)
ここは報道でも「装備はあるが、維持が難しい」「整備不足で稼働率が不明」といった指摘が中心です。
3. 空軍(航空戦力):Su-30 が“看板”、F-16は“象徴”
ベネズエラの航空戦力は、政治的メッセージとしても頻繁に登場します。
主力と言われる機体(公開報道ベースの例)
- ✈️ Su-30(ロシア製):ベネズエラ空軍の象徴的主力(保有数は「20機前後」と報道されることがある)
- ✈️ F-16(米国製の旧型):稼働数は限定的とされ、保有・稼働状況が注目されがち
何が強み?
- ✅ 対艦攻撃や長距離飛行など「理論上の能力」は高い
- ✅ カリブ海側の北部沿岸で“示威飛行”が政治的に効きやすい
何が弱み?
- ⚠️ 整備・部品・電子機器の更新が難しい(制裁や経済事情の影響を受ける)
- ⚠️ 実戦で重要な「継戦能力(出撃を何日/何週間維持できるか)」が読みにくい
4. 対空防衛(SAM/レーダー):ベネズエラ軍事力の“真ん中”
もし対外衝突が想定されるなら、ベネズエラの核心は 戦闘機よりも防空(地対空ミサイル) だ、という見方は根強いです。
典型的に語られる層(概念図)
- 🛰️ レーダー・指揮統制(探知して、味方の火器に渡す)
- 🧱 長射程SAM(例:S-300系とされる装備):要地防空・対処範囲が広い
- 🧨 中射程SAM(例:Buk系):首都圏・基地周辺の防空網を厚くする
- 🔫 短射程/近接防空(例:Pantsir系などと報道されることがある):ドローンや低空目標対策
なぜ防空が注目される?
- ✈️ 相手が空爆主体なら、最初に叩くべきは防空網
- 🧩 逆に防空が残れば、相手は安全に作戦をしづらい
- 🏙️ 首都と北岸に人口・施設が集中しているため、防空の政治的意味が大きい
※ただし、防空は「保有」より 運用(訓練・統合・弾薬・レーダーの健全性) が重要で、ここも外部検証が難しい分野です。
5. 陸軍(地上戦力):装備は多国籍、しかし維持が難しい
ベネズエラ陸軍は、フランス系・ロシア系など多様な装備が混在すると言われます。
公開情報でたびたび挙がるカテゴリー
- 🛡️ 戦車(例:T-72系、AMX-30系)
- 🚙 歩兵戦闘車・装甲兵員輸送車(例:BMP-3系、BTR系など)
- 💥 ロケット砲・榴弾砲(例:多連装ロケット、牽引砲/自走砲)
- 🎯 対戦車ミサイル、携帯SAMなど
地上戦の“方向性”は2本立てになりやすい
- 🧱 要地防衛(首都、油田・港湾、基地)
- 🕳️ 非対称戦(ゲリラ的抵抗、破壊工作、都市の混乱)
報道では、仮に米軍などの高性能軍と衝突した場合、正面決戦よりも「長期抵抗」「妨害」「都市の混乱」を軸にする計画が言及されることがあります。
6. 海軍:大艦隊ではなく“沿岸・取り締まり”が中心
ベネズエラ海軍は、カリブ海側の沿岸・排他的経済水域(EEZ)監視、密輸・麻薬・違法漁業対策など“海上治安”の比重が大きいとされます。
公開情報に出やすい要素(例)
- ⚓ 歴史のあるフリゲート(ルポ級系とされる艦)
- 🛥️ 哨戒艦(スペイン設計のOPVが知られる)
- 🐟 取り締まり船艇、上陸用舟艇
- 🐋 潜水艦(Type 209系が語られるが稼働状況は不透明になりやすい)
海軍の課題
- 🔧 整備・部品・造修の継続
- 🛰️ 監視(ISR)・情報共有
- 🚢 大型艦の稼働率
結論として、広域の制海権を握るタイプではなく、
- ✅ 沿岸接近の抑止
- ✅ 近距離での偶発衝突リスク
- ✅ 小型船艇やミサイル等を用いた“非対称” が論点になりやすい、という見方が多いです。
7. 「軍事力」を理解するための3つのキーワード
① 質より量(ただし“量”も検証が難しい)
民兵を含む「動員可能規模」が政治的に重視されがちです。
② 内部統治(治安)と軍の一体化
国家警備隊、情報部門、親政府武装グループ(コレクティーボ等)が話題になるのは、
- 🏙️ デモ抑圧や政権防衛
- 🧩 “国家”と“党派”の境目 が軍事力の一部として働くからです。
③ 防空+沿岸
陸上侵攻より、
- ✈️ まず航空戦
- 🚢 次に海上封鎖・沿岸 という局面で「見せ場」が来やすい構造です。
8. では「米国と衝突したら」どうなる?(一般論として)
ここはセンシティブな領域なので、特定の攻撃手順を解説するのではなく、公開報道で語られている“方向性”に限定して整理します。
- 🇺🇸 米側が優位になりやすい点:
- 🛰️ 情報・偵察・監視(ISR)
- ✈️ 長距離打撃・精密攻撃能力
- 🔄 兵站(補給)と継戦能力
- 🇻🇪 ベネズエラ側が重視しやすい点:
- 🚫 防空(SAM)で相手の自由度を下げる
- 🏙️ 都市・沿岸の“要地防衛”
- 🕳️ 長期抵抗(ゲリラ的行動、破壊工作)
そして何より、実戦では 軍同士の優劣だけでなく「政治・世論・同盟・経済・人道」 が結果を決めてしまうため、軍事力だけで未来を断定することはできません。
9. よくある質問(Q&A)
Q1. ベネズエラは「南米で強い軍」なの?
A. 一言で言うより、
- ✅ 防空や一部の航空装備は“目立つ”
- ⚠️ ただし稼働率・整備・訓練が不透明
- ✅ 国内治安・政権防衛としての“軍の重さ”は大きい という整理が現実的です。
Q2. 国防費はどのくらい?
A. 国際比較の統計としては、近年ベネズエラは 経済データの信頼性の問題で推計が難しいとされ、国際機関の資料でも「算出できない」趣旨の記述が見られます。したがって、単年度の金額を断定するより、装備の維持・訓練頻度といった“運用面”から実力を読む方が確実です。
Q3. 民兵が何百万人もいるなら最強では?
A. 人数のインパクトは大きいですが、軍事力は
- 🎒 装備(武器・通信・医療・補給)
- 🧑🏫 訓練
- 🧠 指揮系統 が揃って初めて“戦力”として機能します。数字だけで強弱は決められません。
10. まとめ:ベネズエラの軍事力は「表の装備」より“運用の現実”を読む
ベネズエラの軍事力を理解するコツは、次の順番で見ることです。
- ① 🧭 何を守る軍なのか(首都・沿岸・政権)
- ② 🛡️ 防空(SAM)と航空の関係
- ③ 🔧 稼働率(整備・補給)と練度
- ④ 🏙️ 内部統治(国家警備・民兵・武装グループ)
- ⑤ 🌎 米国の圧力・国際関係の変化
最近は「空域リスク(危険空域化)」のニュースが出たことで、軍事が“机上の話”ではなく、航空・物流・旅行に影響し得る問題として前に出てきています