台湾は中国?台湾はどこの国?
台湾は中国 の一部?-「一言で答えにくい」理由をほどく
「台湾は中国なのか」「台湾はどこの国なのか」という問いは、地理・歴史・国際法・外交実務が絡み合うため、“はい/いいえ”の二択でスパッと決められないのが現実です。結論を先に言うなら、
- 中国(中華人民共和国=PRC)は「台湾は中国の一部」と主張しています。
- 台湾(中華民国=ROC)側は、自らの統治の下で国家として機能している(主権を有する)と主張しています。
- 多くの国は、PRCを「中国の唯一の合法政府」として承認しつつ、台湾とは“非公式(実務)関係”を維持しています。
この三つが同時に成立しているため、ネット上の断言(「台湾は中国だ」「台湾は独立国だ」)は、どこかの立場だけを切り取っている場合が多いです。本記事では、読者が混乱しやすいポイントを、なるべく丁寧に整理します。
1. まず押さえるべき用語:
✅ 「中国」は1つではない(PRC と ROC)
日常会話でいう「中国」は、通常 中華人民共和国(People’s Republic of China / PRC) を指します。北京を首都とし、国連安全保障理事会の常任理事国でもあります。
一方で「台湾」は、正式国号を 中華民国(Republic of China / ROC) として運用してきた政府が、現在実効支配している地域です(台湾本島に加え、澎湖・金門・馬祖など)。
つまり、
- PRC=北京政府(一般に“中国”と呼ばれる)
- ROC=台北の政府(一般に“台湾”と呼ばれる) という二つの政府が、歴史的経緯から「中国」をめぐる争点を抱えたまま並存してきました。
2. 歴史の超要点:なぜ分かれたのか

ここは長く語れますが、理解に必要な“最短の骨格”だけを並べます。
- 1949年:中国内戦の結果、北京でPRCが成立。ROC政府は台湾へ移転。
- 以後、PRCは「自分たちが中国全体を代表する唯一政府」と主張。
- ROCも長く「自分たちが中国の正統政府」と主張してきましたが、国際環境の変化で立場は複雑化。
この「1949年以降、統治が分断された状態」が、現在の問題の原点です。
3. 国連は台湾をどう扱っているのか(誤解が多い)
✅ 1971年の国連総会決議2758:
国連では1971年に、「中国の代表権」をPRCに移し、当時“蒋介石政権の代表”とされた側を国連から排除する決議(いわゆる決議2758)が採択されました。
ここで重要なのは、
- 決議は「国連における中国の代表」を誰にするかを扱った
- 台湾の帰属や主権を“直接”確定する条文ではない という理解が国際的にも争点になっている点です。
近年は、PRCが決議2758を「台湾は中国の一部であり、PRCが台湾を代表する根拠」と位置づけるのに対し、台湾側や一部の国・地域は「決議は台湾を名指ししておらず、台湾の地位を決めたものではない」と反論する構図が目立っています。
4. 「台湾は国なのか?」を判断する2つの見方

(A) 実態(機能)としての国家
国家を考えるとき、国際法の教科書ではよく「国家の要素」として、
- 領域
- 国民
- 政府
- 他国と関係を結ぶ能力 などが挙げられます。
台湾は、
- 自分たちの行政・司法・軍・税制・通貨・選挙制度を持ち
- パスポートを発給し
- 経済・貿易・人的交流も巨大 といった意味で、**実態として“国家のように機能している”**のは確かです。
(B) 承認(外交関係)としての国家
ただし国際社会で「国」として扱われるには、他国からの外交承認や、国連加盟のような制度上の地位が大きく関わります。
台湾(ROC)と正式に外交関係を持つ国は少数で、多くの国はPRCとの関係のために、台湾とは大使館ではなく「代表処・交流協会」などの形で実務関係を築いています。
このため、
- 実態=国家に近い
- 制度・承認=限定的 という“ねじれ”が、台湾問題の難しさです。
5. では「台湾は中国ですか?」――よくある3つの意味に分解
同じ質問でも、実は言っていることが違う場合があります。
① 文化・民族・言語の意味で「中国」なのか?
台湾は漢字文化圏で、中国語(主に繁体字)を使う場面も多く、華人文化も色濃い地域です。 ただし、台湾には先住民族の文化もあり、社会の自己認識も一様ではありません。
② 政治体制(統治)としてPRCの支配下なのか?
これは明確で、台湾は現在PRC(北京政府)に統治されていません。 台湾の行政は台北の政府が担い、独自の法制度で動いています。
③ 国際法・外交の公式立場として「中国の一部」なのか?
ここが最も割れる部分です。
- PRCは「台湾は中国の一部」と主張
- 台湾側は「台湾は主権国家であり、PRCは代表できない」と主張
- 多くの国はPRCを中国の政府として承認しつつ、台湾とは非公式に実務関係
このため、“外交文書上の言い回し”としては、各国が非常に慎重な表現を選びます。
6. 台湾を「どこの国」と呼ぶのが実務上いちばん近い?
✅ 旅行・ビジネスの感覚では
多くの場面で台湾は、
- 入国審査があり
- 通貨(新台湾ドル)があり
- 法律・税制・行政手続きが独立している ため、実務上は“別の地域(別の法域)”として扱われます。
✅ ただし外交上は
一部の国を除き、
- 「台湾共和国」などと公式に呼ぶことは少なく
- 「台湾」「中華台北(Chinese Taipei)」「台湾地区」といった多様な呼称が使われます。
スポーツの国際大会で「Chinese Taipei」という表記が多いのは、政治的衝突を避けて参加を可能にするための折衷案として歴史的に形成されてきたものです。
7. 2025年時点での「外交関係」:台湾を正式承認している国
台湾の外交部(外務省に相当)公表の一覧(更新日付き)では、台湾と外交関係を持つ国・地域が示されています。
代表例(地域別)は次の通りです。
- 太平洋:マーシャル諸島、パラオ、ツバル
- アフリカ:エスワティニ
- 欧州:ローマ教皇庁(バチカン)
- 中南米:ベリーズ、グアテマラ、ハイチ、パラグアイ、セントクリストファー・ネービス、セントルシア、セントビンセント・グレナディーン
このように、正式な大使館関係を維持する国は限定的である一方、台湾は多くの国・地域と非公式に幅広い協力関係を持っています。
8. 日本は台湾をどう見ているのか(日本の政府見解の枠組み)
日本政府の立場は概ね次の二層構造です。
- 1972年の日中共同声明(共同コミュニケ)を基礎として、PRCを「中国の唯一の合法政府」と位置づける。
- その上で、台湾とは**国交ではなく“非政府間の実務関係(working relationship)”**として関係を維持・発展させる。
同時に、日本政府は台湾を「重要なパートナー」「大切な友人」と表現し、人的交流・経済関係の強さも述べています。
このように、
- **外交上の形式(国交)**と
- 実務・価値観・交流 を分けて運用しているのが実態です。
9. アメリカなどはどういう立場か(One China “policy”の意味)
台湾をめぐっては「ワン・チャイナ(One China)」という言葉が頻出しますが、
- 中国(PRC)の言う“ワン・チャイナ原則(principle)”
- 米国などが言う“ワン・チャイナ政策(policy)”
は同じ意味で使われていない点が重要です。
たとえば米国は、
- 公式にはPRCと国交を持ちつつ
- 台湾との実質関係を維持するための国内法(台湾関係法)などに基づいて
- 非公式の形で台湾との関係を運用しています。
多くの国が、PRCとの国交と台湾との実務関係を“両立”させるため、表現と制度を複雑に設計しているのです。
10. よくあるQ&A
Q1. 「台湾=中国」って言っていいのですか?
文脈次第です。
- 文化圏としての「中国」と言うなら、そう感じる人もいます。
- しかし「PRCの一部」という意味で断言すると、政治的主張になります。
Q2. 台湾は独立国ですか?
台湾は実態として国家機能を持ちますが、国連加盟や各国の外交承認が限定的で、国際政治上は「地位が争われている存在」です。
Q3. 台湾に行くのは海外旅行ですか?
入国審査、通貨、法律、行政が別なので、実務上は海外旅行として扱う感覚が一般的です。
Q4. 台湾のパスポートは通用しますか?
多くの国・地域で台湾のパスポートは渡航文書として受け入れられています(ただし国や状況により取扱いは異なります)。
まとめ:一言で決めず「何を聞いているのか」を分ける
「台湾は中国ですか?」という問いは、
- 文化の話なのか
- 統治の話なのか
- 国際法・外交の話なのか
で答えが変わります。
現実の国際社会では、
- PRCの主張
- 台湾の主張
- 各国の“ワン・チャイナ”運用 が併存し、表現も制度も複雑になっています。
したがって、議論の出発点としては、
- 「中国」はPRCとROCの歴史的分断が背景
- 台湾はPRCに統治されていない
- ただし外交承認は限定的で、多くの国は非公式関係
この三点を押さえると、情報の真偽や、断言口調の投稿に振り回されにくくなります。