Japan Luggage Express
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日本のレアアース輸入先

日本のレアアース輸入先

日本のレアアースの輸入元はどこか(2025年版)

レアアース(希土類)は、日本の自動車・家電・産業機械・防衛関連を支える“縁の下の力持ち”の資源です。モーター用磁石、排ガス触媒、LED・ディスプレイ用の蛍光体など、多くの製品で少量でも欠かせない材料として利用されています。その一方で、日本はレアアースをほぼすべて輸入に頼っており、日本のレアアースの輸入先、どの国からどのような形で入ってきているのかを把握することは、企業にとっても政策にとっても非常に重要です。

2025年現在、日本は2010年のいわゆる「レアアースショック」後に調達先の多角化を進めてきましたが、それでも中国依存が依然として大きいという現実があります。特に重希土類(ジスプロシウムDy、テルビウムTbなど)については、実質的に中国からの供給に依存しているという指摘が、エネルギー・金属関連の最新資料でも繰り返されています。

以下では、日本のレアアース輸入の全体像と主要な輸入先、そして近年の地政学リスク(ミャンマー情勢や中国の輸出管理強化など)がどのように影響しているのかを整理してみます。


1. 日本のレアアース輸入の基本構造

日本のレアアースの輸入は、次のような特徴があります。

  1. 中国が依然として最大の供給源であり、特に分離・精製済みの酸化物や磁石原料は中国企業からの輸入が多い。
  2. 一方で、豪州(オーストラリア)、ベトナム、インド、米国など“非中国”ルートを官民で育ててきた。日本の資源戦略を担うJOGMECや双日・住商などの商社が関与した案件が多い。
  3. 「輸入先」といっても、原鉱をそのまま買っているケースと、すでに中国などで精製された中間品を買っているケースが混在している。統計上は中国からの輸入になっていても、元鉱石の産地がミャンマー・アフリカ・中南米という場合もある。
  4. 2024〜25年にかけては、中国が輸出規制・技術移転規制を段階的に強化しており、これが日本企業の調達計画に新たな不確実性をもたらしている。

2. 最大の輸入先:やはり中国

2-1. なぜ中国が強いのか

中国は世界のレアアース産出量の約7割、分離・精製についてはさらに高いシェアを握っており、「採るところ」だけでなく「精製して材料にするところ」まで一貫して自国内でできることが強みです。2025年の時点でも、中国の輸出管理の動きは世界市場を一気に引き締める力を持っています。

日本側から見ると、以下の理由で中国からの輸入が続いています。

  • 価格競争力が高い(他国産はまだコストが高い)
  • 品種が多い(軽希土から重希土まで揃う)
  • 磁石メーカー・自動車部品メーカーがすでに中国仕様の供給網で設計している

特に高温でも磁力が落ちにくいタイプの磁石に必要な重希土類は、実質的に中国以外からの安定供給が難しいというのが現状です。これは中国自身がミャンマーから多くの原料を取り寄せているためで、ミャンマー産が止まると中国の輸出にも効いてくるという“二段構えのリスク”を日本は抱えていることになります。


3. 豪州(オーストラリア)ルート:Lynasと日本の長期協力

中国以外で最も成功しているのが豪州ルートです。西オーストラリア州マウント・ウェルド鉱山を持つLynas社と、日本のJOGMEC・双日が2010年代から協力しており、2023年には重希土類も含めた供給拡大で再度合意がなされています。

この豪州ルートのポイントは次のとおりです。

  • 日本が出資・融資で関与しており、“日本向けに一定量を出す”という政治的・契約的な約束が明確
  • 中国の規制強化とは切り離して調達できる
  • 米・豪・日が2025年に合意した「重要鉱物のサプライチェーン強化」の枠組みにも乗せやすい(日本と米国の2025年10月の協力枠組みもこの流れ)

まだ全量を豪州で賄うほどの規模にはなっていませんが、“中国以外で信頼できるロングタームの供給元”としては最も実績があります。


4. ベトナム・インドなどアジアの新興供給源

日本は2010年代からベトナムとの間でレアアース開発の協力を進めてきました。ベトナムにはレアアースの埋蔵があり、中国への依存を減らしたいという思惑も一致したためです。2020年代半ばになっても、規模としてはまだ中国産に遠く及びませんが、日本としては“育てる”意味で一定量を輸入するというスタンスを続けています。

インドもまた、日本の資源外交の対象になっている国です。埋蔵量はあるものの、分離・精製のインフラや環境規制の面で中国に比べて立ち上がりが遅れており、日本としては将来のオプションを確保する意味合いが強い輸入先といえます。米・豪との協力枠組みの中でもインドはしばしば名前が挙がっています。


5. “間接的にミャンマーに依存している”という問題

2024〜25年にかけて、ミャンマー北部のレアアース採掘地域で武装勢力による封鎖・制圧が相次ぎ、中国への輸出が一時的に大きく落ち込んだという報道がありました。

いまのところ日本はミャンマーから大量に直接輸入しているわけではありません。しかし、日本が中国から買っているレアアースや磁石材料の**“中身”がミャンマー由来であることは珍しくなく、結果として日本もミャンマー情勢の影響を受ける構造**になっています。これは統計からは見えにくいリスクであり、企業がサプライチェーンを細かくトレースする必要があると言われるゆえんです。


6. 日米豪の“非中国サプライチェーン”づくりの動き

2025年10月には、日本と米国がレアアースを含む重要鉱物で協力する新しい枠組みを東京で合意しています。これは、中国が輸出規制を広げていることへの対抗でもあり、豪州・カナダ・東南アジアの鉱山・製錬を日米欧が支援していくという大きな流れの一部です。

この枠組みが本格化すると、以下のような形で日本の輸入先はさらに多様化していきます。

  • 豪州で採掘→マレーシアや豪州国内で精製→日本へ
  • 米国西部で採掘→米国内で精製→日本へ(軍需・半導体向けで優先供給)
  • 東南アジアの新鉱床→日米豪が環境規制に対応した形で開発→日本へ

すぐに中国依存がゼロになるわけではありませんが、“中国以外からも安定的に買える”という実績を積むことが、日本の交渉力を上げる効果を持ちます。


7. 統計で見えにくいポイント

7-1. HSコードと実際の中身のズレ

日本の貿易統計(財務省・税関のe-Stat)でレアアース関連のHSコードを見ると、中国の比率が非常に高いことが分かりますが、そこには中国で混合・分離されたものや、他国産が中国経由で来ているものも含まれるため、純粋に「どこの地下から出た鉱石か」は読み取りにくいという問題があります。

7-2. “日本企業が海外で権益を持っている”ケース

豪州やベトナムの鉱山の一部は、日本の商社やJOGMECが出資しており、統計上は「豪州から輸入」となっていても、実質は日本企業が関与している“自社ルート”です。これは緊急時に日本向けを優先させるための仕組みで、2010年以降の教訓から作られたものです。


8. まとめ:2025年時点の見取り図

  • 日本のレアアース輸入先は量では中国が圧倒的で、特に重希土類はほぼ中国依存のまま。
  • しかし、豪州(Lynas)を中心とする非中国ルートは着実に太くなっており、日本・米国・豪州の協力で今後も拡大が見込まれる。
  • ベトナム・インドなどアジアの新興供給源も“第二・第三の柱”として日本が関与しているが、規模はまだ小さい。
  • ミャンマーの紛争・中国の輸出規制という間接的リスクは2025年も続いており、輸入先の多角化と同時に、リサイクル・代替技術を組み合わせる必要がある。

日本としては、「輸入先を増やす」だけでなく、「日本企業が権益を持つ資源を増やす」「経済安全保障の枠組みに巻き込む」「国内でリサイクルする」「そもそも使用量を減らす」という4つの施策を同時に走らせるのが現実的な道筋です。レアアースは小さな数字で全体の生産が止まる典型的な素材なので、今後もこのテーマは“静かな安全保障問題”として続いていきます。

 

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