Japan Luggage Express
Japan Luggage Express Ltd.

ワールドシリーズで3勝した投手

ワールドシリーズで3勝した投手

過去にワールドシリーズで3勝したピッチャーはいたのか?

2025年のワールドシリーズでロサンゼルス・ドジャースの山本由伸が3勝を挙げ、MVPに選出されました。現代のポストシーズンはローテーションが細分化され、救援の役割も専門化しているため、1シリーズで先発投手が3つも白星を積み上げるのは極めてまれです。では、過去のワールドシリーズで3勝した投手はいたのか。本記事では、このポイントに焦点を当てて整理します。

1. そもそもなぜ「3勝」が特別なのか

MLBのワールドシリーズは最大7試合で行われます。通常は先発投手が4人前後でローテーションを組み、エースでも2試合が基本、よほどの接戦になっても3試合目は中3日やリリーフ待機になることが多いです。したがって、

  • シリーズで3度も勝利投手になれる=それだけ登板間隔を詰めている
  • チームがその投手にシリーズの命運を預けている
  • 接戦で再登板するだけでなく、きっちり勝ち切っている

という3つの条件が重ならないと実現しません。現代野球ではとくに難しい記録です。

2. 初期ワールドシリーズにいた「3勝投手」

実はワールドシリーズのごく初期、まだ投手分業が徹底していなかった時代には、1シリーズで3勝した投手が何人かいます。代表的なのは次のような投手です。

  • ベーブ・アダムス(パイレーツ/1909年):デトロイト・タイガースとのシリーズで3勝を挙げ、パイレーツの優勝に大きく貢献しました。まだ先発間隔が短く、同じ投手が何度も投げる時代だったため、3勝が可能でした。
  • スタン・コベレスキ(インディアンス/1920年):1920年のワールドシリーズでブルックリン・ロビンス(のちのドジャース)を相手に3勝。コベレスキも短い間隔で投げることを厭わないタイプで、当時の「エースに投げさせる」文化を象徴する存在です。

この時代は試合間隔が詰まっていても「勝てる投手をまた使う」のが普通で、チームもロースターの厚みより**“エース偏重”**に頼っていました。そのため「3勝」は現実的な選択だったのです。

3. 有名な「3勝」その1:1957年 ルー・バーデット(ブレーブス)

1950年代に入ると、投手分業は進みつつも「どうしてもここで勝ちたい」シリーズではエースを酷使する場面が残っていました。典型例が**1957年のルー・バーデット(ミルウォーキー・ブレーブス)**です。

  • ニューヨーク・ヤンキースを相手に3勝をマーク
  • シリーズMVPを獲得
  • しかも完投勝利を何度も記録し、“アイスウォーター・イン・ヒズ・ベインズ”(血の代わりに氷水が流れているような冷静さ)と評されました

バーデットの3勝は、現代でも必ずと言っていいほど引用される「WSでの3勝」の代表例です。ヤンキースのような王朝チームを相手に3つ勝つというのは、当時でもかなりの驚きでした。

4. 有名な「3勝」その2:1968年 ミッキー・ロリッチ(タイガース)

次に語られるのが1968年のミッキー・ロリッチ(デトロイト・タイガース)です。タイガースは名右腕ボブ・ギブソン擁するカージナルスを相手に苦戦しましたが、ロリッチがシリーズで3勝し、最後は第7戦で完投勝利してチームを世界一に導きました。

  • 第2戦・第5戦・第7戦で勝利
  • 特に第7戦は敵地での完投勝利
  • シリーズMVPを獲得

ロリッチの3勝は「近代的な投手起用でも、状況次第では3勝があり得る」ということを示した、非常に象徴的な例です。1960年代後半はまだ先発にイニングを多く投げさせる時代で、ローテーションも比較的タイトに回していました。

5. 有名な「3勝」その3:2001年 ランディ・ジョンソン(ダイヤモンドバックス)

21世紀に入ると、ワールドシリーズで3勝する投手はほとんど見られなくなります。理由は明確で、

  • リリーフ陣が厚くなった
  • 中4日ローテが定着した
  • 投手の肩肘の保護が重視されるようになった

からです。そんな中で2001年の**ランディ・ジョンソン(アリゾナ・ダイヤモンドバックス)**は別格でした。ヤンキースとの激闘となったこのシリーズで、ジョンソンは

  • 先発2勝+第7戦でのリリーフ勝利=合計3勝
  • 同僚のカート・シリングとともに共同MVP

という偉業を達成します。第7戦では抑えのキム・ビョンヒョンが続けて打たれる中、ジョンソンが中1日で登板して勝利投手になるという、まさに「エースが最後まで取りに行く」姿が全米の話題になりました。

6. そして2025年:山本由伸の3勝がなぜ特別なのか

ここで2025年の**山本由伸(ドジャース)**に戻ります。山本はブルージェイズとのシリーズで

  • 第2戦で完投勝利(9回4安打1失点、8奪三振)
  • 3勝目は第7戦でのリリーフ勝利
  • 防御率1.02の圧巻の数字

という内容で、WS MVPを獲得しました。記事でも指摘されているように、「WSで3勝してMVP」までいったのは2001年のランディ・ジョンソン以来24年ぶりであり、しかも今回は連覇がかかるという最高難度のシリーズでの達成でした。さらに山本は、延長18回まで続いた第3戦で「19回から投げる準備」をしていたことも報じられており、勝ち星以外の献身性も評価の対象になっています。

つまり山本の3勝は、

  1. 現代の細分化された投手起用の中で達成したこと
  2. 2年連続優勝という大舞台でやってのけたこと
  3. 完投勝利+先発での崖っぷち勝利+最終戦でのリリーフ勝利という“全部乗せ”だったこと

という3点で、過去の3勝投手と並べてもトップクラスの価値があります。

7. まとめ:3勝投手は「時代を説明する存在」

ワールドシリーズで3勝した投手を並べてみると、時代ごとの野球の姿が見えてきます。

  • 1900~1920年代:エース偏重の時代 → 3勝は比較的出やすかった
  • 1950~1960年代:まだ先発のイニングが長く、酷使も許された → バーデット、ロリッチのような“シリーズの英雄”が出た
  • 2000年代以降:綿密な投手運用で3勝はほぼ絶滅 → それでもランディ・ジョンソンのようなスーパーエースだけが例外をつくった
  • 2025年:分業が極まった時代に、山本由伸が“例外をもう一度起こした”

したがって「ワールドシリーズで3勝した投手はいたのか?」という問いに対しては、

「はい、歴史的に何人かいる。ただし時代が進むほど難しくなっており、21世紀ではごく一部のエースだけが到達できた領域である」

と答えるのが適切です。2025年の山本の3勝は、そのごく限られた系譜の最新の1ページとして語られることになるでしょう。

 

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *