トロント・ブルージェイズ(Toronto Blue Jays)は、カナダ唯一のMLB球団として国内外から注目を集めています。チームの強化費、球場リノベーション、放送・配信戦略、ファン体験の質は、しばしば“誰がオーナーか”に直結します。本稿では、**現在のブルージェイズのオーナー企業=ロジャース・コミュニケーションズ(Rogers Communications Inc.)**を中心に、所有権の歴史、事業シナジー、投資、将来展望までを一気通貫で解説します。
ロジャースはトロント本拠の大手通信・メディア企業。携帯通信、ブロードバンド、ケーブルTV、そしてスポーツ・エンタメ(Sportsnet 等)まで幅広く展開します。ブルージェイズのオーナー企業として、**コンテンツ(球団)×プラットフォーム(放送・配信)**の相乗効果を追求しているのが最大の特徴です。

| 期間 | 所有主体 | 持株比率の目安 | メモ |
|---|---|---|---|
| 1976–1991 | Labatt Breweries(ラバット醸造)ほか(CIBC等を含む共同) | 主要株主 | 創設期。カナダ発の球団ビジネスとして出発 |
| 1991–1995 | John Labatt Limited(ラバット)+CIBC | ラバットが優勢 | 90年代初頭にかけて再編 |
| 1995–2000 | Interbrew S.A.(インターブルー)+CIBC | Interbrew が筆頭 | ラバット買収に伴い球団が多国籍資本傘下へ |
| 2000–2004 | Rogers(80%)+Interbrew(20%) | Rogers が筆頭 | 2000年にロジャースが80%取得、移行期 |
| 2004–現在 | Rogers Communications Inc. | 100% | 残余20%を買い取り、単独所有体制に移行 |
補足:現在、運営主体はRogers Blue Jays Baseball Partnership。財務の詳細は非公開が基本です。

ロジャースは、ロジャース・センターの段階的リノベーション(概ね約C$300M規模)を推進。外野デッキの刷新、100レベル座席の再設計、クラブハウス整備、フィールド周辺のプレミアム席・ソーシャルスペースの新設など、“試合+滞在体験”の質を底上げしています。これはメディアと会場体験の相乗効果(放送映え/現地満足度向上→視聴・来場の循環)を狙う企業オーナーならではの投資と言えます。

ロジャース傘下のSportsnetは、カナダ国内におけるブルージェイズ放送の中核。レギュラーシーズン全試合規模での中継や、ポストシーズンの自社制作枠の拡大など、**“自社資産のフル活用”**を進めてきました。地上波・ケーブル・デジタル配信(ストリーミング)を横断した編成により、コンテンツ価値と加入者価値を最大化しています。
ブルージェイズは**“企業オーナー制×メディア一体運営”**の好例であり、北米スポーツの中でも相対的に珍しいポジショニングを占めています。
Q1. ブルージェイズは今もロジャースの所有ですか?
A. はい。2004年以降はロジャースが100%単独所有です。
Q2. 球団の放映権はどこが持っていますか?
A. カナダ国内ではロジャース傘下のSportsnetが主力。国内MLBコンテンツの大半を担い、デジタル配信も統合運用しています。
Q3. 球場投資は継続されますか?
A. 複数年の改修計画が進行・実施されており、外野・内野席の刷新、選手施設の改善、プレミアムエリアの整備などが段階的に進められています。
Q4. 企業所有のデメリットは?
A. 親会社の経営環境に左右される可能性や、地域との“顔の見える関係”づくりで工夫が要る点は留意事項です。
スポーツ視聴は、ケーブルから直配信(DTC)へ舵を切っています。ロジャースは通信インフラ×メディア×スポーツ資産を束ね、「コンテンツの自社調達→自社流通→顧客獲得・維持」の垂直モデルを深化させています。ブルージェイズは、この戦略のフラッグシップとして、放送・配信・球場体験・スポンサーシップの“4点連鎖”を加速させると見込まれます。