メジャーリーグの中継を見ていて、選手達が普段と違うユニフォームやキャップを着用していたり、試合中や試合前にセレモニーがあったりと、「メジャーリーグでは今日は何の日?」と思うことってありますよね。
メジャーリーグベースボール(MLB)では、年間を通じてさまざまな記念日や特別イベントが設けられています。これらの記念日は、歴史的な選手や社会的なテーマを称える機会として重要な意味を持ち、試合と共にファンや社会とのつながりを深める大切な時間でもあります。記念日ごとにテーマカラーや特別ユニフォーム、チャリティー活動もあり、野球の枠を超えてアメリカ社会全体と結びついている点も特徴です。加えて、最近では国際的な関心の高まりとともに、各イベントに込められた意義もグローバルな文脈で再評価されるようになっています。
📅 毎毎年4月15日
1947年4月15日、ジャッキー・ロビンソンがMLB史上初のアフリカ系アメリカ人選手としてブルックリン・ドジャースでデビュー。この日を記念し、MLB全選手が背番号「42」を着用し、ロビンソンの人種差別撤廃への勇気ある一歩を称えます。2004年に正式導入されて以来、毎年盛大なイベントが開催されており、球場では当時の映像やロビンソンの家族のスピーチなども紹介されます。野球だけでなくアメリカの社会正義運動を象徴する存在として、若い世代への教育的意味も大きくなっています。
📅 毎年6月2日(6月1日)
「鉄人」の異名を持つルー・ゲーリッグは、2130試合連続出場という記録を打ち立てた名選手ですが、ALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病に倒れました。彼の名を冠したこの記念日は、ALSの認知拡大と研究支援を目的として2021年に導入されました。試合ではALS患者が始球式を務めたり、MLB選手がゲーリッグのスピーチを朗読するなどの感動的な場面も見られます。
この記念日は2021年に正式に制定されました。6月2日が選ばれた理由は、1925年6月2日にゲーリッグがヤンキースの先発一塁手として初めて出場し、そこから2130試合連続出場という大記録を打ち立てたこと、そして1941年6月2日に彼がALSにより37歳で亡くなったことに由来しています 。
毎年この日には、全30球団がさまざまな形でゲーリッグを追悼し、ALSへの支援活動を行っています。例えば、選手や監督、審判がゲーリッグの背番号「4」にちなんだ特別なワッペンやリストバンドを着用し、試合前には記念映像の上映やセレモニーが行われます 。
2025年の「ルー・ゲーリッグ・デー」は、彼の連続試合出場記録が始まってから100周年となる節目の年であり、特別な意味を持っています。
6月1日に行われたヤンキースとドジャースの試合で、選手たちが背番号「4」のワッペンを着用していました。この記念日は毎年6月2日に設定されていますが、2025年は特別な年であり、各球団が試合日程に応じて6月1日または2日に関連イベントを実施しています。
試合が6月2日に予定されていない球団は、6月1日にイベントを実施しています。
📅 毎年9月中旬
プエルトリコ出身でピッツバーグ・パイレーツのスーパースター、ロベルト・クレメンテは野球だけでなく人道支援でも知られています。彼が物資輸送のために搭乗した飛行機事故で命を落としたことを受け、彼の精神を称えるこの記念日が設けられました。この日には、MLB全体で「クレメンテ賞」の受賞者が発表され、社会貢献活動に積極的な選手が表彰されます。また、ラテン系コミュニティとの結びつきの象徴としての役割も果たします。
📅 5月第2日曜&6月第3日曜
毎年5月の第2日曜日(マザーズデー)と6月の第3日曜日(ファザーズデー)
MLBは家族の絆を大切にしています。毎年、マザーズデー(母の日)とファザーズデー(父の日)には、特別な試合が行われます。マザーズデーにはピンク色の用具が使用され、乳がんの意識向上とサポートを目的としています。
一方、ファザーズデーには青い用具が使用されます。青はプロステートがんの意識向上を象徴する色であり、MLBはプロステートがん基金との提携により、「Keep Dad In the Game」キャンペーンを推進しています。このキャンペーンの一環として、選手やフィールドのスタッフは青いリボンやリストバンドを身に着け、ファザーズデーのキャップの販売収益はプロステートがん基金やStand Up To Cancerに寄付されます。
📅毎年5月の最終月曜日(メモリアルデー)と7月4日(独立記念日)
メモリアルデーと独立記念日は、アメリカの歴史と精神を象徴する非常に重要な祝日であり、MLBもこれらの日を盛大に祝います。
メモリアルデーは毎年5月の最終月曜日に設けられ、戦争で命を落とした軍人たちへの追悼の日として位置づけられています。MLBではこの日に先立って、試合開始前に黙祷が行われ、国歌の演奏や軍関係者の招待が行われることもあります。選手たちはユニフォームにワッペンを着け、観客とともにその意味を共有します。
一方、7月4日の独立記念日には、アメリカ合衆国の独立を祝うための愛国的な催しが各球場で開催されます。スタジアムでは赤・白・青をテーマにした装飾が施され、観客には星条旗柄のノベルティが配布されることもあります。試合後には盛大な花火が打ち上げられ、国を挙げての祝賀ムードが野球を通じて体験されます。MLBにとってこの2つの祝日は、アメリカ社会とのつながりを強く再確認する機会でもあるのです。
📅 毎年7月中旬
オールスターゲームは、シーズン中唯一の公式戦休止期間に開催される夢の一戦。ファン投票により選ばれたスター選手たちが所属リーグの誇りをかけて対戦します。イベント期間中はホームランダービー、フューチャーズゲーム、レジェンドとの交流イベントなどが続き、まるで野球の祭典とも言える豪華な内容です。近年は球場外でもファンフェスや市民参加型イベントが充実しており、地域経済への貢献も大きいとされています。
📅 5月第3土曜日
現役軍人に敬意を表す日として、MLBは特別仕様のカモフラ柄ユニフォームやキャップを着用して試合を行います。軍楽隊による国歌斉唱、戦闘機のフライオーバー、軍人の始球式などが行われ、アメリカの軍隊文化との連帯が強調されます。この週末は「アームド・フォーシズ・ウィークエンド」として複数日間にわたりイベントが開催されるのが通例です。
📅 毎年9月11日
2001年の同時多発テロを受けて設けられた記念日。MLBではこの日、試合開始前に犠牲者を追悼するセレモニーが行われ、ニューヨーク・ヤンキースやメッツを中心に厳粛な雰囲気で進行します。選手や審判は特別ワッペンをつけてプレーし、消防士や救急隊員への感謝の気持ちが込められた演出がなされます。
📅 4月22日近辺
地球環境への配慮をテーマにしたイベントで、各球団はエコ活動を推進します。再生紙のチケット使用、LED照明の導入、交通機関の割引など、サステナブルな球場づくりをアピール。選手やスタッフがゴミ拾いに参加するなど、実践的な環境保護活動も行われます。子ども向けの環境教育プログラムと連携した試合も増えており、次世代への啓発も含めて注目されています。
📅 毎年6月(プライド月間)※球団により日付は異なる
LGBTQ+コミュニティを支持し、インクルーシブな社会を目指すMLBの姿勢が反映されたイベント。レインボーフラッグが掲げられ、キャップやユニフォームにもレインボーカラーが施されるなど、視覚的にも鮮やかな演出が特徴です。地域LGBT団体とのコラボや、選手によるメッセージ発信も行われ、多様性の尊重をスポーツを通じて伝えています。
📅 日付は球団により異なる
退役軍人や軍属の家族に感謝の気持ちを伝える日で、アームド・フォーシズ・デーとは別に設定されている場合もあります。軍人の招待や表彰、特製ユニフォームの着用、軍事車両の展示など、地域密着型のイベントとして親しまれています。ファンと軍人が直接触れ合う機会としても貴重です。
MLBの各球団は、リーグ全体で定められた記念日の他にも、地域性やファン層に合わせた独自のテーマデーやイベントを年間を通じて企画しています。これらは、単なる野球観戦を超えたエンターテイメントとして、また地域社会との結びつきを深める機会として、ファンに大きな人気を集めています。
📅 開催日は球団やイベントにより異なる(例:ロサンゼルス・ドジャースの「Japanese Heritage Night」は2024年7月2日に開催されました)
各球団が特定の民族や文化を称えるために開催するイベントです。例えば「Japanese Heritage Night(日本文化デー)」では、日本人選手への敬意を示すと共に、和太鼓の演奏や日本の伝統舞踊の披露、日本食の販売などが行われます。球場全体がその国の文化に彩られ、多様なファン層を歓迎するMLBの姿勢を象徴しています。他にも「Irish Heritage Night」「Filipino Heritage Night」など、その地域に根ざした多様なヘリテージ・ナイトが開催されます。
📅 開催日は選手や球団により異なる(例:ドジャースの「大谷翔平ボブルヘッド配布日」は2024年5月16日と2024年8月28日でした。また、イチロー選手の殿堂入り記念イベントは2025年8月8日〜10日に開催予定です) 球団の歴史に名を刻んだレジェンド選手や、現役で活躍するスーパースター選手を称えるために設けられる日です。
📅 開催日は球団により異なる(例:ロサンゼルス・ドジャースは2024年6月2日に「Pups in the Park」(*下記参照)を開催、サンディエゴ・パドレスは2024年4月3日に開催。
2025年のドジャースのPups in the Parkのイベントは6月22日に開催予定 (前売り入場券はすでに完売)
愛犬家にはたまらない、愛犬を連れて球場に入場できる特別なイベントです。特定の日には、ファンが自分の犬と一緒に外野席や特定のエリアで試合を観戦できます。入場には犬用のチケットが必要となる場合が多く、チャリティーを兼ねていることもあります。犬用のグッズが販売されたり、犬のファッションショーが開催されたりと、ユニークな光景が広がります。
*「Bark in the Park」が一般的な呼称。ドジャースはこのイベントを「Pups in the Park」という名称で開催しています。多くの球団が「Bark in the Park」や「Bark at the Park」という名称を使用する中で、ドジャースは「Pups in the Park」を採用している点が特徴です。
📅 開催日は球団により異なる(例:ロサンゼルス・ドジャースは2024年5月6日に開催) 人気映画「スター・ウォーズ」とコラボレーションしたテーマデーです。球場全体がスター・ウォーズの世界観に彩られ、キャラクターのコスプレをしたファンや、特別なライトセーバーなどの限定グッズが配布されることもあります。選手がスター・ウォーズのテーマに合わせた特別なバットや手袋を使用したり、マスコットキャラクターが劇中BGMに合わせて登場したりと、野球ファンと映画ファンの両方を楽しませる趣向が凝らされています。
📅 開催日は球団により異なる アメコミの人気キャラクターをテーマにしたイベントで、特に若年層のファンに人気です。マーベル・コミックやDCコミックスのキャラクターに扮したファンが集い、限定グッズの配布やキャラクターとのグリーティングが行われることもあります。具体的な日付は各球団のプロモーションスケジュールで発表されます。
📅 開催日は球団により異なる
上記以外にも、各球団は様々なテーマでプロモーション・ナイトを実施します。例えば、特定商品のサンプリングデー、限定グッズ(ボブルヘッド、Tシャツ、キャップなど)の配布デー、花火大会付きゲーム、ライブ音楽パフォーマンスなど、ファンサービスの一環として多岐にわたるイベントが企画されます。これらの日程は、各球団の公式サイトやチケット販売サイトで随時発表されます。
このようにメジャーリーグではシーズンを通して数々の記念日があります。 いつもと違うデザインのユニフォームを選手が着ていたり、セレモニーなどがありして、あれっ、メジャーリーグでは今日は何の日?と思ったときはこれらの記念日の情報を是非参照にしてください。
MLBの記念日は、単なる年中行事にとどまらず、「歴史」「社会貢献」「多様性」「家族」「愛国心」「環境保護」「平等の尊重」など、野球を通じてアメリカ社会が大切にしている価値観を表す象徴です。選手やファン、地域社会が一体となって祝うこれらの記念日は、次世代への教育的意義も含んでおり、MLBの公共性と文化的意義を再確認する好機といえるでしょう。