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ピッチコムの使い方

ピッチコムの使い方

ピッチコムの仕組み(WBCでも使用される最新サインシステム)

近年のプロ野球やメジャーリーグの中継で「ピッチコム」という言葉を耳にする機会が増えました。さらに次回のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)では、日本代表チームの投手や捕手(バッテリー)も本格的にピッチコムを使う予定とされています。

しかし、

  • ピッチコムってそもそも何?
  • どうやって使うの?
  • 投手や捕手だけでなく、野手も使うの?

といった疑問を持っている方も多いと思います。

この記事では、初めて聞く人でもわかるように、ピッチコムの基本的な仕組みから、具体的な使い方、そしてWBC日本代表での活用イメージまで、順番にていねいに解説していきます。


1. ピッチコムとは何か

ピッチコムは、投手と捕手を中心とした「サインのやり取り」を、指サインではなく電子機器で行うためのシステムです。

従来は、

  • 捕手が指で球種やコースのサインを出す
  • それを投手が見てうなずく、あるいは首を振る

という形が一般的でした。しかしこの方法には、

  • 二塁走者などに「サインを盗まれる」リスクがある
  • サインを複雑にすると時間がかかり、試合が長くなる

といった問題がありました。

ピッチコムは、こうした問題を解決するために開発された「電子サイン伝達システム」です。捕手などが腕に装着した送信機のボタンを押すと、その情報が投手や野手の帽子の中にある受信機に送信され、耳元で音声として再生されます。


2. ピッチコムの基本構成

ピッチコムは、大きく分けて次の2つの機器で構成されています。

  1. 送信機(トランスミッター)
  2. 受信機(レシーバー)

2-1. 送信機(トランスミッター)

送信機は、たいていリストバンドのような形になっており、捕手の腕やレガース(スネ当て)の外側などに装着されます。

  • 表面に複数のボタン(一般的には9個)が並んでいる
  • それぞれのボタンに「球種」「コース」などの意味を割り当てる
  • 捕手や投手がボタンを押すことで、サインの情報を送信する

最近では、投手自身が送信機を装着して、自分で球種を選択するケースも増えています。

2-2. 受信機(レシーバー)

受信機は、投手や捕手、必要に応じて内野手などが装着します。

  • 帽子のつばの裏側や耳の近くに小さなスピーカーを固定
  • サインの内容が「音声」で聞こえる
  • 言語は英語だけでなく、日本語対応も可能

メジャーリーグでは、投手・捕手に加えて、二遊間(ショートとセカンド)、センターなど、最大3人の野手が装着できるルールになっています。


3. ピッチコムの基本的な使い方

ここでは、最も一般的な「捕手が送信し、投手が受信する」というパターンで、使い方の流れを見ていきます。

3-1. ボタン入力の流れ

チームや設定によって多少の違いはありますが、多くの場合、

1回目のボタンで「球種」、2回目のボタンで「コース」

を指定します。

【例】

  1. 捕手が送信機の「3」のボタンを押す(球種:カーブ)
  2. 続けて「4」のボタンを押す(コース:内角低め)
  3. 投手や野手の受信機から「カーブ、内角低め」といった音声が流れる

このように、2回のボタン操作で、球種とコースを素早く伝えることができます。

3-2. 投球までの一連の流れ

実際の投球では、次のような流れになります。

  1. 捕手が状況(カウント、打者、走者、守備位置など)を考える
  2. 送信機のボタンを押して、球種とコースを入力
  3. 投手が帽子の中のスピーカーから音声を聞く
  4. 投手が内容に納得すれば、そのまま投球動作に入る
  5. もし気に入らなければ、投手が首を振る、捕手が入力し直す

従来の指サインと似ていますが、「見る」のではなく「聞く」スタイルに変わるのが大きな違いです。

3-3. 投手が自分でサインを出す場合

大谷翔平選手のように、投手自身が送信機を持ち、自分でサインを出すケースもあります。

この場合は、

  1. 投手がグラブ側の腕や腰などに着けた送信機のボタンを押す
  2. 捕手や野手の受信機に、投手が選んだ球種・コースが音声で届く

という流れになります。

投手が自らテンポよく球種を決められるため、ピッチクロックとの相性が良いとされます。


4. 装着位置と役割分担

4-1. 捕手の装着位置

捕手は、送信機の操作性が最重要です。よくある装着場所は次の通りです。

  • 利き手と反対側の腕(前腕部)
  • レガースの外側

投球のたびに自然な動きでボタンを押せる場所が選ばれます。

4-2. 投手の装着位置

投手が送信機を持つ場合や、受信機を付ける場合は、以下のような位置が一般的です。

  • 送信機:グラブ側の手首、二の腕、ベルト付近
  • 受信機:帽子の中、耳のすぐ上あたり

投球フォームの邪魔にならず、なおかつボタンを見なくても押せる位置が求められます。

4-3. 野手の装着

内野手や外野手が受信機を装着することで、

  • 牽制サインの共有
  • シフトや守備位置の細かい指示

などを素早く全員に伝えることが可能になります。

WBCや国際大会では、牽制や守備シフトの意思疎通をスムーズにするために、二遊間や外野の一部にも受信機を付けるケースが想定されています。


5. ピッチコムを使うメリット

ピッチコムには、単に「かっこいい最新機器」という以上のメリットがあります。

5-1. サイン盗みの防止

最大の目的は、相手チームにサインを読まれないようにすることです。

  • 指サインだと、二塁走者やベンチから見破られる可能性がある
  • ピッチコムなら音声で暗号化されており、外から見ても内容がわからない

そのため、安心してサインを出すことができます。

5-2. 試合のテンポが良くなる

ピッチクロックが導入されると、投手は制限時間内に投げなければなりません。ピッチコムは、サイン交換の時間を短縮し、テンポ良く投球するための強力な味方です。

  • 指サインを何度も出し直す時間が減る
  • ミスコミュニケーションによるタイムの回数も減る

結果として、試合全体の進行もスムーズになります。

5-3. サインミスの減少

指サインだと、「見落とした」「見間違えた」というケースも少なくありませんでした。ピッチコムでは、音声で内容を確認できるため、

  • サインの見落としが起きにくい
  • 選手同士の認識ズレが減る

といった効果が期待できます。


6. 使うときの注意点とコツ

便利なピッチコムですが、使いこなすにはいくつかのポイントがあります。

6-1. ボタン配置を体で覚える

試合中にいちいちボタンの位置を目で見て確認していると、テンポが悪くなってしまいます。そのため、

  • 練習の段階で何度も押して慣れる
  • 指の感覚だけで押せるようにしておく

ことが重要です。

6-2. 音量と聞こえ方の調整

観客の多い球場や国際大会では、スタンドの声援が非常に大きくなります。受信機の音量が小さいと、サインが聞き取りにくくなってしまいます。

  • 事前に球場で音量をチェックする
  • 実際の試合に近い環境でテストしておく

といった準備が必要です。

6-3. ピッチクロックとの連携

WBCではピッチクロックも導入されるため、

  • サイン入力のタイミング
  • 首振りやサイン出し直しの回数

などをあらかじめバッテリー間で相談しておくことが大切です。捕手がサインを考えるタイミングも、これまでとは少し変わってきます。


7. WBC日本代表でのピッチコム活用

次回のWBCでは、

  • ピッチクロック
  • ピッチコム
  • 拡大ベース

といった、MLBスタイルの新ルールが一気に導入される予定です。日本代表(侍ジャパン)は、その対応のために、合宿や強化試合の段階からピッチコムを実際に使いながら練習を行っています。

具体的には、

  • ブルペンでの投球練習でバッテリーがピッチコムを使用
  • 投内連係でも二遊間の野手が受信機を付け、牽制サインなどを確認

といった形で、試合さながらの運用を試しています。

現場の声としては、

  • 以前の指サインよりもスムーズにサイン交換ができる
  • サインの見落としがなく、表情にも出にくいので楽

といったポジティブな意見が多く、今後の国際大会では欠かせないツールになっていくと考えられます。


8. まとめ

最後に、ピッチコムのポイントを整理します。

  • ピッチコムは、投手と捕手などが電子機器を使ってサインをやり取りするシステム
  • 送信機のボタンを押すことで、受信機から音声で球種やコースが伝わる
  • サイン盗み防止、試合のテンポ改善、サインミスの減少といったメリットがある
  • 投手自身がサインを出す運用や、野手も受信機を付けて守備シフトや牽制を共有する運用も可能
  • WBCでは日本代表もピッチコムを使用し、ピッチクロック対応を含めて練習を重ねている

ピッチコムは、単なる「ガジェット」ではなく、野球の戦略やテンポを大きく変える可能性を持ったツールです。これからWBCやメジャーリーグの試合を見る際には、「今どんなサインがピッチコムで伝わったのか」を想像しながら観戦すると、より深く楽しめるようになるでしょう。

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