大陸間プレーオフの仕組
FIFAワールドカップ「大陸間プレーオフ」の仕組みをやさしく解説
サッカーのワールドカップ予選のニュースでよく目にする 「大陸間プレーオフ(インターコンチネンタル・プレーオフ)」。
「アジア〇位のチームが大陸間プレーオフへ回る可能性」 「南米〇位は大陸間プレーオフ行き」
といった表現が出てきますが、仕組みが少し分かりにくいですよね。
この記事では、FIFAワールドカップにおける大陸間プレーオフの
- 基本的な意味
- 参加枠の決まり方
- 試合形式(昔と今の違い)
- 2026年大会用の新しいプレーオフ・トーナメントの仕組み
を、できるだけ分かりやすく整理して解説します。
1. そもそも「大陸間プレーオフ」とは?
ワールドカップ本大会の出場枠は、FIFAに加盟する6つの大陸連盟(コンフェデレーション)に配分されています。
- AFC:アジア連盟
- CAF:アフリカ連盟
- CONCACAF:北中米カリブ海連盟
- CONMEBOL:南米連盟
- OFC:オセアニア連盟
- UEFA:ヨーロッパ連盟
それぞれの連盟には「何枠分の出場権があるか」が決められていますが、その中に
0.5枠(半枠)
という形で配分されることがあります。
この「0.5枠」を巡って、大陸と大陸の代表チームが争うのが
大陸間プレーオフ(インターコンチネンタル・プレーオフ)
です。
例:
- 南米の予選〇位チーム(0.5枠)
- オセアニアの予選勝者(0.5枠)
が、最後の1枠を懸けて直接対決する、といったイメージです。
つまり、大陸間プレーオフは
- 各大陸予選で「あと一歩届かなかったチーム」
- 0.5枠どうしをぶつけて「どちらを本大会に出すか」を決める最終決戦
と言えます。
2. どの大陸が大陸間プレーオフに回るのか?
2-1. 枠配分はFIFA理事会が決定
「どの大陸に何枠配分するか」「どの大陸が0.5枠扱いになるか」は、FIFA理事会の決定事項です。
男子ワールドカップでは長らく、
- UEFA(ヨーロッパ)は枠が多いため大陸間プレーオフには出さない
- 他の大陸(アジア・アフリカ・北中米・南米・オセアニア)の一部が0.5枠を持つ
という形が続いてきました。
2-2. 2022年カタール大会の例
2022年カタール大会では、大陸間プレーオフの参加は次の4つでした。
- AFC(アジア)
- CONCACAF(北中米)
- CONMEBOL(南米)
- OFC(オセアニア)
それぞれの大陸予選で「大陸間プレーオフ行き」となったチームが、
- 抽選で決められたカード
- 例:アジア vs 南米
- 例:北中米 vs オセアニア
で対戦し、勝った2チームが本大会の残り2枠を獲得しました。
アジア側から見ると、
- アジア最終予選で自動出場圏に入れなかったチーム
- しかし、まだチャンスが残されていて、他大陸とのプレーオフで勝てば出場
という“ワンチャンスの舞台”が大陸間プレーオフです。
3. 試合形式はどうなっている?
3-1. 昔はホーム&アウェーの2試合制
かつての大陸間プレーオフは、
という ホーム&アウェー方式(2試合合計スコア) が基本でした。
2試合の合計得点(アグリゲートスコア)で勝敗を決め、 同点の場合はアウェーゴール・延長戦・PK戦などで決着をつける方式です。
3-2. 2022年からは「開催国での一発勝負」に変更
しかし2022年カタール大会の大陸間プレーオフから、形式が大きく変わりました。
- 開催国(カタール)で行う中立地の一発勝負
- 日程もワールドカップ本大会の直前にまとめて実施
というスタイルです。
この変更により、
- 長距離移動が減る
- 試合数も減る
- テレビ・チケット的にも「決戦」という分かりやすい盛り上がり
といったメリットが生まれましたが、その分、
という側面もあります。
3-3. 基本ルール
大陸間プレーオフの試合そのものは、ルールとしては通常のノックアウト戦とほぼ同じです。
- 90分で勝敗がつかなければ延長戦(30分)
- それでも決まらなければPK戦
- 選手交代枠は通常の国際試合規定に従う(延長に入ると交代枠が1つ増える形式が一般的)
要するに、「トーナメント戦の決勝」と同じような感覚で捉えて問題ありません。
4. 2026年大会は「プレーオフ・トーナメント」に進化
2026年のワールドカップ(カナダ・メキシコ・アメリカ共同開催)からは、 本大会の出場国数が 32か国 → 48か国 に拡大します。
これに合わせて、大陸間プレーオフも
6チームによる小さなトーナメント(FIFA World Cup 26 Play-Off Tournament)
という形に進化します。
4-1. どの大陸から何チーム出る?
2026年大会の大陸間プレーオフには、次のように6チームが参加します。
- AFC(アジア):1チーム
- CAF(アフリカ):1チーム
- CONMEBOL(南米):1チーム
- OFC(オセアニア):1チーム
- CONCACAF(北中米):2チーム ※開催地枠の追加
ヨーロッパ(UEFA)からは出場しません。
4-2. 開催地と時期
- 開催地:北中米(2026年大会開催地の一部スタジアム)
- 予定地:メキシコのスタジアムで行う方向で調整
- 時期:2026年3月のFIFAインターナショナルマッチウィンドウ
本大会の数か月前に、
も兼ねて行われる「プレ大会」のような位置づけになります。
4-3. 6チームをどうやってトーナメントにする?
6チームを次のように扱います。
- FIFAランキングに基づきシード分け
- 上位2チーム:シード扱いで「決勝」から登場
- 残り4チーム:準決勝(プレーオフ準決勝)からスタート
- トーナメントは2つの“道”(パス)に分かれる
- パスA:準決勝 → 決勝A
- パスB:準決勝 → 決勝B
- 各パスの決勝に勝った2チームが、本大会出場権を獲得
イメージとしては、
- 2つのミニトーナメントが同時に行われて
- それぞれの優勝チームがワールドカップ行き
という構造です。
4-4. マッチフォーマット
各試合は、
- 一発勝負のノックアウト形式
- 同点なら延長 → PK戦
という、非常にシンプルなルールです。
ホーム&アウェーはなく、すべて2026年大会開催地のスタジアムで行われます。
5. 実際の流れを例でイメージしてみる
2026年大会のプレーオフ・トーナメントを、仮の例でイメージしてみましょう。
- 各大陸予選が終了し、次の6チームがプレーオフ行きになったとします。
- アジア予選:〇〇代表
- アフリカ予選:〇〇代表
- 南米予選:〇〇代表
- オセアニア予選:〇〇代表
- 北中米予選:2チーム(例:北中米最終予選の成績次点チーム)
- FIFAランキングをもとにシード決定
- ランキング上位2か国 → シードとして決勝へ
- 残る4か国 → 準決勝へ
- 準決勝
- 準決勝1:チームA vs チームB(勝者が決勝Aへ)
- 準決勝2:チームC vs チームD(勝者が決勝Bへ)
- 決勝
- 決勝A:シード国1 vs 準決勝1の勝者
- 決勝B:シード国2 vs 準決勝2の勝者
- 決勝A・決勝Bの勝者2チームが、
- ワールドカップ本大会の残り2枠としてグループステージへ
という流れです。
6. 対戦カードはどう決まる?抽選とシードの考え方
大陸間プレーオフの対戦カードは、基本的に
- FIFA本部(スイス・チューリッヒなど)で行われる 抽選会
によって決まります。
6-1. 2022年大会の例
2022年カタール大会では、
- AFC、CONCACAF、CONMEBOL、OFCの4チーム
を、2カードに分ける抽選が行われました。
- アジア代表 vs 南米代表
- 北中米代表 vs オセアニア代表
という形になり、それぞれ勝ったチームが本大会出場権を獲得しました。
6-2. 2026年大会のシードルール
2026年大会のプレーオフ・トーナメントでは、
- FIFAランキング上位2チームがシード
- 残り4チームが「シードなし」として同じポットに入り抽選
- 2つのパス(AとB)に振り分け
- 北中米からの2チームは同じパスに入らないよう配慮
といった細かいルールが設けられています。
これにより、
- ランキング上位国には負担がやや軽い(決勝のみ)
- それ以外の国は準決勝から2試合勝たなければならない
という構図になります。
7. 大陸間プレーオフのメリット・デメリット
7-1. メリット
- 大陸間のバランス調整
- 実力差がある大陸同士の場合、「0.5枠」という形で柔軟に調整できる。
- 国際的な注目度アップ
- 他大陸との真剣勝負はファンにとっても魅力的で、視聴率も高くなりやすい。
- ワンマッチならではのドラマ
- 一発勝負での番狂わせ、劇的なゴール、PK戦など、記憶に残る試合が生まれやすい。
7-2. デメリット
- 一発勝負ゆえの“運”の要素
- 実力的に上でも、コンディション不良や一瞬のミスで敗退する可能性が高い。
- 移動・日程の負担
- 開催地が遠い場合、選手にとって移動負担が大きい(特に欧州クラブ所属選手)。
- クラブとの調整の難しさ
- シーズン中や終盤に実施されることが多く、クラブと代表の間で調整が必要。
8. 女子ワールドカップの大陸間プレーオフとの違い
女子ワールドカップでも大陸間プレーオフ(インターコンチネンタル・プレーオフ)は存在し、 2023年大会(オーストラリア/ニュージーランド共催)前には、
- 10チームによるプレーオフ・トーナメント
- 開催国の一方(ニュージーランド)で実施
という形で行われました。
男子と共通しているポイント:
- 大陸ごとの0.5枠を争う場である
- 中立地での一発勝負を採用
一方で、
は男子とは異なり、その大会ごとのレギュレーションで決まります。
9. 日本代表と大陸間プレーオフ
日本代表にとっても、大陸間プレーオフは無関係ではありません。
- アジア最終予選で自動出場圏を逃した場合
- アジアの決められた順位に入ったチームが大陸間プレーオフへ
というレギュレーションになっている大会が多いためです。
過去には、アジア代表としてオーストラリアやその他の国が大陸間プレーオフに回り、
と死闘を繰り広げてきました。
ワールドカップ出場争いの中で、
「アジア予選だけでなく、大陸間プレーオフも視野に入れた戦い」
が求められることも少なくありません。
10. まとめ:大陸間プレーオフは「最後の2枠」を懸けた世界横断決戦
最後に、ポイントを整理します。
- 大陸間プレーオフとは
- 各大陸に配分された「0.5枠」どうしが争う
- ワールドカップ本大会の“最後の枠”を懸けた決戦
- かつてはホーム&アウェーの2試合制だったが、
- 2026年大会からは
- 6チームによる「プレーオフ・トーナメント」に進化
- アジア・アフリカ・北中米×2・南米・オセアニアから1チームずつ
- ランキング上位2チームがシードとして決勝から登場
- 2つのパス(A・B)それぞれの勝者が本大会出場
大陸間プレーオフは、
- 各大陸の予選であと一歩足りなかったチームが
- 世界の別の地域の代表と、本大会行きを懸けて戦う
という、非常にドラマ性の高いステージです。
ワールドカップ予選を追いかけるときは、
「この順位だと大陸間プレーオフに回る」
というポイントを押さえておくと、
が、より立体的に理解できるようになるでしょう。